「第79回ル・マン24時間レース」リポート 昨年に続きアウディが連覇 |
6月11日、12日(現地時間)、仏ルマン市のサルテサーキットで「第79回ル・マン24時間レース」の決勝が行われた。本稿では、フリープラクティス、予選、決勝をリポートする。
■フリープラクティス&予選
フリープラクティスは8日の16時から行われた。
前半のトップタイムはワークス勢ではなく、プライベートチームが走らせる昨年型のプジョー308 HDI FAP。しかし時間がたつにつれ、ワークスチームがセッティングを詰め実力を発揮し始めた。序盤タイムテーブルの上位を占めたのはプジョーで、オレカのマシンも3番手と健闘した。しかし、最後の1時間になってアウディが猛然とアタックし、1号車がトップタイムをマークした。
2時間のインターバルの後いよいよ予選が開始され、フリープラクティスでは3分28秒台後半だったタイムが27秒台へと入りアウディが上位を占めた。昨年スピード負けしていた予選に懸けるアウディの意気込みはものすごく、「何としてもポールを」といった雰囲気がひしひしと伝わってきた。
予選に懸けるアウディの意気込みはものすごいものがあった |
そんな中、1号車がミュルサンヌでスピンしたマシンに突っ込み赤旗中断となった。10分ほどで再開されたが、その直後プジョー8号車が27秒033というトップタイムをマークし、このタイムが予選1回目のベストタイムとなった。アウディは2位から4位となったが、2位の2号車のタイムは0.9秒遅れだった。
予選2回目はアウディ・プジョーともに昨日のタイムを更新することができずにいたものの、1時間ほどたってようやく2号車が昨日のタイムを更新し、トップに立った。夕方になり(といってもすでに20時をまわっている)気温が下がる中で一気にタイムが詰まり始め、ついに2号車が25秒961をマーク。昨日トップだった8号車もタイムを詰め2位に食い込んだが、26秒156とおしくも25秒台には届かなかった。
22時になって気温が一気に下がったことで好タイムが期待されたものの、タイムアップしたのはわずか3台だった。一時はトップタイムをマークした1号車は2号車に再逆転され2位となり、3位にはプジョー9号車が8号車のタイムを破りプジョー勢最上位となった。
ポールポジションのタイムは3分25秒738で、日本でも活躍中のブノア・トレルイエがマークした。一方でプジョーは26秒の壁を破ることができなかった。これにより1列目がアウディ、2列目がプジョーという配列になった。
ミュルサンヌでスピンした1号車 | 予選トップの2号車。トップタイムはブノア・トレルイエがマークした |
また、期待のローラトヨタは、ぺスカロロを間にはさみガソリンエンジントップの8位と10位に入った。また、ニューマシンで参戦したアストンマーティンはまったくふるわず22位と25位に終わった。中野信治選手はチームドライバーの中でトップタイムをマークし、総合19位で予選を終了した。
GTEクラスではBMWが1位と3位を獲得し、その間にフェラーリが割って入った。注目のロータスだったがまだマシンの熟成には程遠く、54位、56位と最下位に沈んだ。
GTEクラスではBMWが1位と3位を獲得(写真はBMW M3 GT2 55号車) | 中野信治選手はOAKペスカローロ・BMWチームでトップタイムをマーク | GTEクラスで予選2位となった51号車フェラーリF458イタリア |
ちなみに、スタート前に行われた20年前のウィナー、マツダ787Bのデモ走行では、ジョニー・ハーバートが乗り込み甲高いロータリーサウンドをサーキットに響かせた。
「予選タイヤじゃないのか」とジョークを飛ばしていたジョニーだったが、走行後サプライズが待っていた。彼は20年前の表彰式の時、脱水症状を起こし表彰台に上がることができなかった。その後、2位表彰台に上ったものの、今回初めて主催者の計らいで1位の表彰台に立つことができたのだ。
スタート前にはジョニー・ハーバートが駆るマツダ787Bのデモ走行が行われた |
予選タイムは拮抗していて、レースは混戦が予想されていた。案の定、スタートは横一線となり、だれがホールショットをとるかまったく予想もつかなかった。アウディは前にいる強さもあり、ある程度のリードを守ってコントロールタワーを通過した。
3位争いは熾烈を極め、3号車がプジョー4台を抑え込むようにレースが進む。予想以上にルーティンストップが早かったのは、アウディ勢でその間プジョーが幾度かトップに立ちリードを広げようとするもののトップを奪うことはできなかった。
そんな中、スタート後1時間もたたないうちにアウディ勢の一角が崩れた。3号車が周回遅れと接触してダンロップブリッジを下ったところ周回遅れと接触し、そのままガードレールにクラッシュしひっくり返ってしまった。そのためセーフティカーが入った。1時間以上もの間セフティーカーランが続いたが、その間8号車がづレーキのトラブルで順位を落とす。レース再開後は、トップ争いは激しいものの両者ともに淡々とレースを続ける。
周回遅れと接触してクラッシュした3号車。ドライバーのアラン・マクニッシュはオフィシャルの手で起こされたマシンから自力で脱出し観客から拍手を浴びた |
レースに変化が起きたのは23時少し前。3号車がインディアナポリスで大クラッシュを起こした。こちらもドライバーのロッケンフェラーは無事救出されたが病院に搬送された。この事故で2時間以上もの間セフティーカーが入った。1台となったアウディ2号車はトップをキープするもののプジョー勢もわずかの差で追いかける。
夜明けを過ぎてもトップは相変わらず2号車が走行を続けるものの、追いかけるプジョー勢は順位を何度か入れ替え2位には9号車が上がってきた。お昼前から小雨がぱらつく天候となったが、相変わらず僅差のレースは続き、最後のピットインを終えた時点での差は20秒。果敢に追い上げた9号車だったが、わずかに及ばず2号車が何とか逃げ切ってフィニッシュ。アウディは昨年に続く優勝で、ル・マン24時間レースで10度目の勝利を飾った。
ガソリン勢最上位は、レベリオン・レーシングのローラ・トヨタ12号車が獲得した。LMP2クラスは41号車が日産エンジンに勝利を与えた。また、こちらも大接戦だったGTEプロクラスでは、73号車コルベットが51号車フェラーリ458、56号車BMW M3 GTを抑え勝利した。
チェッカーフラッグを受けるアウディR18 TDI(2号車) | 総合優勝を果たした2号車のドライバー。左からB.トレルイエ、A.ロッテラー、M.ファスラー |
LMP2クラスで優勝したザイテックZ11SN・ニッサン(41号車) | 大接戦だったGTEプロクラスは73号車のシボレー・コルベット C6 ZR1が勝利 |
■フォトライブラリー
(Photo:中野英幸)
2011年 6月 15日