3周年を迎えたファインモータースクールの「楽エコ教習」
6000人が受講、20%の燃費改善

2011年11月15日開催



 埼玉県の自動車教習所「ファインモータースクール」は11月15日、同校のエコドライブ教習「楽エコ教習」が3周年を迎えるにあたり、報道関係者に楽エコ教習の成果を発表した。

菰田潔氏

エコドライブは人間次第
 同校は2008年11月に、自動車教習所として初のエコドライブ講習を「楽エコ教習」と銘打って開始。新規免許取得者のためのカリキュラムに標準で楽エコ教習を組み込んでいるほか、すでに免許を持っているドライバーのための「楽エコ運転講習」や、法人向けのエコドライブ講習も請け負っている。環境対策面でのイメージアップや燃料費節減のため、法人向けの講習が伸びていると言う。

 楽エコ教習のカリキュラムはモータージャーナリストの菰田潔氏が監修。「クルマが進化しているのだから、教え方も新しくしよう」と氏が同校に提案したことから、楽エコ教習が始まったと言う。

 「エコカーに乗ればエコドライブは終わっていると思っている人が多いが、エコカーに乗ったからエコドライブが完結したわけではない。あくまで運転で変わる。同じプリウスで同じ道を走っても運転次第で燃費が変わるし、エコカーでも普通の車でも燃費がよくなる運転ができる」と氏の考えが、エコ楽教習のそもそもの発想だ。

 また、「新しい技術が出てきてもドライバーが追いつかなければ生かし切れない。ABSやESPなどがどんなものか知らなければならない。ABSが作動してブレーキペダルが振動すると、びっくりしてブレーキペダルを外してしまう人もいる。アイドリングストップでいちいちエンジンが停まったりかかったりするのは、運転が下手になったみたいでカッコ悪いという人もいる」ということから、同校ではハイブリッド車に特化した「ハイブリッド教習」「プリウス教習」を用意しているほか、日産「リーフ」による「EV教習」も準備していると言う。

 世界のエコドライブとエコカー事情に精通する氏の知見をカリキュラムに活かし、インストラクターに周知させることで、最新のエコドライブテクニックが習得できるわけだ。

臼田和弘 会長兼社長

燃費20%改善の実績
 楽エコ教習は当初、同校の大宮校で始まり、指扇校、上尾校に広げられた。3年間の新規免許取得者の受講者は約6000人で、2012年には1万人を突破する計画と言う。また免許保有者向けの講習は約200名、法人向け講習は年間約100件にのぼる。

 新規取得者向けの楽エコ教習の場合、教習を受けたドライバーは、受けていない一般のドライバーよりも約20%の燃費改善が見られたという。

 また同校では4月~9月に、復興支援チャリティプログラムとして、通常1万5000円で3時間の免許保有者向け楽エコ講習を、80分の短縮カリキュラムにアレンジして1000円で提供。収益は全額、被災地支援として寄付した。

 このチャリティプログラムは43名が受講したが、うち39名の燃費が向上し、平均の燃費向上率は15%となった。アンケートでは、参加者のほとんどがエコドライブを今後も継続すると答えたと言う。

 今後もこのチャリティプログラムは継続して開催する。

 同校の臼田和弘 会長兼社長は「この3年間を振り返ると、エコドライブがいかに知られていないかを感じた。法人関係のは意識は高いが、一般はエコドライブという言葉を知っていても、どうしていいかわからない。個人法人含め、講話だけでも、企業や公民館でやり、“エコドライブっていいんだよ”とひろめたい」と今後の展望を語った。

同校の楽エコ教習のラインアップ。プリウスコースやハイブリッドカーコースもある6000人が楽エコ教習を受講した免許保有者に対して、新規免許取得者の受講生は約20%の燃費改善が見られた
エコ楽教習のインストラクターの皆さん

教習所ならではのエコドライブ
 当日は報道関係者向けに、チャリティプログラム同様の短縮版カリキュラムの体験も行われた。

 まずは教習車で、教習所周辺の一般路に設定されたコースを、インストラクターと共に普段通りの運転で走り、教習車に設置された燃費計で燃費を確かめる。

 次に教室でエコドライブについての座学がある。その後、教習車で今度は教習所内のコースで座学で学んだアクセス操作などを練習。最後に最初と同じように教習所外の一般路コースを走る。このときは同乗しているインストラクターが「ここでアクセスを戻して」といったようにエコドライブのアドバイスをする。

 教習所に戻って燃費計を確かめ、インストラクターによるアドバイスをもらって終了となる。

 座学では、「燃費」という言葉の説明、エコドライブによる経済効果と環境への影響といった、エコドライブの基礎知識から学ぶ。そして、エンジンを掛ける前に乗員全員がシートベルトをすること、発進・加速時に最も燃料を使うこと、ATのクリープを使いながら発進し、約1秒でブレーキペダルからアクセスペダルに踏みかえ、20km/hまで5秒で加速し、目標速度の少し手前でアクセルペダルを戻すといったように、アクセルオフによる燃料カットを有効に使うことなど、具体的なテクニックを得る。

 また巡航時には、先行車と2秒以上の車間距離を維持するようにとも教えられる。2秒の計測の仕方は、先行車が目標物(標識など)を通過してから「ゼロ・イチ・ゼロ・ニ」と数えてから、自車が同じ目標物を通過するようにする。

 こうすることで視界が広がって先読みができ、先行車の影響を受けずに一定走行でき、エコ運転できると同時に、安全にも繋がる。安全にも考慮したところが、教習所ならではのエコドライブというわけだ。

記者のインストラクターの鈴木教官記者の場合、教習によって約9.8km/Lから約12km/hに改善したが、コースの交通状況によっては改善しない場合もある
座学では燃費の概念から教えられる
楽エコ運転による効果
エンジンをかけるまえにシートベルト発進・加速時に最も燃料を消費する
アクセル一定(同校ではイーブンアクセルと呼ぶ)の低速走行がもっとも燃費がいいエコ運転のためのアクセス操作
2秒以上の車間距離を開けるキャンペーン「0102運動」を埼玉県で展開したところ、全国平均よりも追突事故が減った

(編集部:田中真一郎)
2011年 11月 16日