ファインモータースクール、「楽エコ講習」を体験してきた これから免許を取る人も、すでに持っている人も受けられるエコドライブ講習 |
埼玉県にあるファインモータースクール。さいたま市大宮区堀の内町にある大宮校のほかに、上尾市平塚に上尾校がある |
埼玉県にある教習所「ファインモータースクール」は、2008年11月に教習所として初めてエコドライブ教習をスタートした学校。通常の免許取得のための授業の中に、エコドライブのための内容を組み込んで「楽エコ教習」を行っている。
これは、従来のコースと別メニューとして用意しているのではなく、同校の生徒全員に楽エコメニューを教えるというもの。料金も27万6870円~と、従来のままだと言う。
また、免許をすでに持っている人には、半日コースでエコドライブの講習や練習をする「楽エコ講習」が用意される。価格は1万4500円。そのほか、7月からは法人を対象とした出張楽エコ講習もスタート。これはインストラクターが2日間企業を訪問し、社員に楽エコを指南すると言うもの。30名までで基本料金35万円だ。
7月8日、報道関係者向けに、時間を短縮したメニューではあるが、楽エコ講習の体験会が開催されたので、その模様をお届けする。
ファインモータースクールが独自で作っている楽エコ運転教本とエアゲージが全員に配られる |
エコドライブ講習はこれまでにもあったが、不定期での開催が多かった。しかしファインモータースクールでは、事前予約は必要なものの、毎週日曜日に楽エコ講習を開催している。内容は1時間の座学と2時間の実習で、実習の前後に街中を走行し、それぞれの燃費の比較も行う。また、受講者には、座学でも使う楽エコ運転のための教本と、燃費のために2週間に1度はタイヤの空気圧をチェックしたほうがよいということで、エアゲージがプレゼントされる。
今回は報道関係者向けの体験会だったため、講習の前に臼田和弘社長のあいさつと、楽エコ教習メニューを開発した古田秀人氏による楽エコの紹介が行われた。続いて講習に入るが、通常では最初に座学になるところを、今回は1回目の燃費測定から開始となった。
燃費測定には、教習車のマツダ「アクセラ」を使用。ちなみに楽エコ講習では、マイカーを持ち込んでの講習も可能だと言う。燃費の測定には、テクトムの「燃費マネージャー」が使われる。これはECUの信号を読み取り、瞬間燃費や平均燃費を表示してくれるもの。コースは教習所周辺の生活道路で、助手席にインストラクターが同乗して「楽エコ運転チェックシート」という評価シートで、運転や燃費をチェックされる。
最初はインストラクターのアドバイスなしにスタート。と言っても記者も自動車雑誌で働いて10年近いので、どうすれば燃費がよくなるかはある程度は理解している。いつも以上に丁寧な運転で、大人げなく低燃費を狙いに行った。結果、途中信号での停止が4回あり、走行時間は9分43秒、9.24km/Lという燃費になった。ちなみにほかの参加者には7km/L前半という人もいたので、記者の本気度がうかがえるだろう。
実習に使ったのはマツダのアクセラセダン、ATモデルだ | まずはインストラクターのアドバイスなしで自力で燃費走行に挑む | 結果は9.24km/L。バイパスなどもないごく普通の生活道路でこの燃費は悪くないだろう |
続いて教室に戻っての座学。座学の時間も一般参加者向けのものより短くなっているので、かけ足での授業となった。
まず楽エコという名前の意味だが「ラクという意味ではなく楽しくエコを学ぼうという意味」だと言い、楽エコ運転がエコなことはもちろん、安全でスムーズな運転にもつながると説明した。そのために、実習では角がないスムーズな運転を心がけるようにし、助手席の人の頭が揺れないようなショックのない運転を目指すと言う。また、運転経験の豊富な人は、癖が付いている場合も多いそうだ。通常の楽エコ講習では、2時間の実習の中でこの悪い癖をすべて取り除くと言う。
ちなみに、教習所のインストラクターや一般ドライバーを対象にして楽エコ講習を行った結果では、平均で32%の燃費向上をしたとのこと。
では、燃料の消費を少なくするにはどうすればよいかというと、まず運転する前に、タイヤの空気圧をチェックしてほしいと言う。空気圧が下がれば燃費も悪化するし、スローパンクチャーの発見にもつながるので2週間に1度はチェックしてほしいとのこと。また、シートベルトはエンジンをかける前にする。その理由は第1に安全性の確保という理由があるが、無駄な燃料のカットにもつながる。また、暖機運転は必要ないと言う。これは、走りながら暖機した方が早く水温が上がるため。ただし、いきなりアクセル全開にすることはNGとのこと。
なお、アイドリングでの燃料の消費量は、エンジンが暖まっている状態で1分間に15ccとのこと。1日5分のアイドリングを1年続けると、ガソリン代で3456円、CO2排出量で67kgの無駄につながると言う。これは杉の木約5本分のCO2吸収量に相当するそうだ。
ただしアイドリングストップもするべきでないタイミングがあると言う。それは信号待ちや渋滞の時。これはキーをオフにすることでブレーキの倍力装置やパワーステアリング、またエアバッグなどが機能しなくなり危険なため。
続いてアクセルの使い方については、走行状況を加速、巡航、減速に分けて解説した。
まず減速時に関しては、道路状況を先読みし、早めにアクセルペダルを離すことで、燃料カットを効果的に使う。次に巡航時は、加速も減速もしないイーブンアクセルが効果的。実際に高速道路を80km/h一定で走った場合と、75km/h~85km/hの間で加減速を繰り返した場合では、圧倒的に一定走行のほうが燃費がよかったと言う。このイーブンアクセルのためには、先読みが重要になる。そのためには車間距離が大切になるが、前走車との間隔が2秒というのが世界基準とのこと。
続いて難易度が高いという加速時。加速には強い加速も弱い加速もあり、一般的には弱い加速がエコ運転には必要だと思いがち。しかし弱い加速と強い加速の使い分けが必要だと言う。具体的には、先に渋滞や信号がなく、スムーズな走行ができる状況では、強い加速で目標速度まで短時間で到達し、一定速走行の時間を長く取る。さらにその先の減速時には、早めにアクセルペダルを離すことで、燃料カットの時間を長く確保するとよいと言う。
逆に前方が込んでいたりカーブが連続したりする場合などは、弱い加速が有効。では弱い加速とはどれくらいかと言うと、5秒で20km/hに到達する程度で、逆に強い加速は、車種にもよるが2500rpmを目安にシフトアップするような加速がよいと言う。なお、AT車で任意にシフトアップしたい場合は、シフトアップしたい回転数になったらアクセルペダルを戻すことでシフトアップできると言う。
加速時のアクセル操作は、弱い加速と強い加速の使い分けが必要 | 一定走行区間を確保できる場合は強い加速をする | 走行区間が短い場合は弱い加速をする |
強い加速は2500rpmでシフトアップを目安に、弱い加速は5秒で20km/hを目安に加速する | 走行中の燃費向上の3大秘訣 |
座学で楽エコを頭にたたき込んだところで、いよいよ実習。まずはインストラクターが運転し、先ほど解説のあったイーブンアクセルなどの手本を見せる。記者は先の走行でステアリング操作はよかったが、アクセルやブレーキの操作に荒さがあったとのことで、特にイーブンアクセルに重点を置いて解説された。
続いて記者がハンドルを握ってトレーニング。デジタルメーターを見ながら20km/h一定で走る練習を行った。
本来であれば、もっとじっくり実習を行うのだが、今回は体験版なのでそのまま燃費測定に入る。走るコースは1回目と同じだが、今回はインストラクターから随時アドバイスが入る。
先ほどは、どこでもゆっくり加速していたが、今度は場所によって加速を使い分ける。これはなかなかうまくできたのだが、早めのアクセルオフに関しては、インストラクターに「前が詰まってますよ」と指摘されて、慌ててアクセルを戻すような機会が多かった。記者は普段MT車に乗っているのだが、MT車と比べるとエンジンブレーキが利かないAT車は、より早い段階でアクセルオフができる。この空走感と先読みに慣れれば、さらに燃費のよい走りができるようになるハズだ。
結果はと言うと、1回目と比べて0.11km/L悪化の9.13km/L。なぜか燃費が悪化しているが、その理由は、今回の走行では信号に引っかかった回数が最初より1回多い5回で、混雑も多く、同じコースを回るのにかかった時間は12分と2分17秒も多くかかっているため。つまり、走行時間が2割程度増えたのに燃費が1%程度の悪化で済んでいるわけで、これはやはり楽エコの効果と言えるだろう。実際インストラクターに指摘されて慌ててアクセルを離した機会も多く、明らかに今までの我流よりもアクセルオフの時間は増えている。これだけでも燃費がアップすることは間違いない。
残念ながら道路状況によってスマートな結果にはならなかったが、燃費はもちろん、安全でスムーズな運転をできるようになるためにも、初心者はもちろん、自信のある方もトライしてみてはいかがだろうか。
(瀬戸 学/ Photo:大湊博之)
2009年 8月 11日