無限、オリジナルEVバイク「神電(SHINDEN)」でマン島TTに参戦 「鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デー」で公開 |
無限(M-TEC)は3月3日、「鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デー」においてオリジナルEV(電動車両)バイク「神電(SHINDEN)」でマン島TTレース(5月26日~6月8日開催)に参戦することを発表した。同時に、発表会を鈴鹿サーキット内で開催。神電の実車を初公開した。
鈴鹿サーキットでアンベールされた、無限のオリジナルEVバイク「神電(SHINDEN)」 |
フルカウルをまとうレーシングバイクのため、EVバイクであるとは分かりにくい | ||
左にはクラッチレバーではなく、リアブレーキレバーを装備 | シンプルなステップまわり。写真左が左ステップ、写真右が右ステップ |
テールカウルには、起動スイッチが装備される。これはレギュレーションによるものとのこと | ドライブスプロケット部 | マシン名は神電 |
神電のボディーサイズは、2125×680×1130mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベース1485mm。車重は260kg。三相ブラシレスモーターを搭載し、最高出力90kW(122PS)、最大トルク220Nm(22.4kgm)発生する。バッテリーはリチウムイオンバッテリーで、出力電圧は370V以上としている。
マン島TTレース参戦を発表する勝間田代表 |
無限代表の勝間田氏は、全日本モトクロス(1976年~1991年)、鈴鹿8時間耐久ロードレース(1984年、1985年)といった、無限のモーターサイクルにおけるレース活動を紹介。その上で、オリジナルEVバイクで2012年のマン島TTレース「TT Zero Challenge」クラスに参戦することを発表した。TT Zero Challengeは、2009年にスタートした新たなクラスで、動力にCO2を排出しないクリーンエミッション機構を持つことを定められ、一般公道を60km使ったタイムレースになる。
ライダーは、マン島TTレースで数多くの優勝経歴を持つジョン・マクギネス選手。勝間田代表は、マン島TTレースへのEVバイクでの参戦を、昨年のマン島TTレース開催前に考えていたと言い、EVバイクの開発はマン島TTレースの視察後始まったものだ。
無限のモーターサイクルレース活動 | マン島TTレース参戦体制 |
参戦マシン名称 | マシンスペック |
モーターやバッテリーメーカーについては非公開。制御関連などは、すべて無限のオリジナル開発と言い、宮城光選手を開発ライダーにレースに向けて鋭意開発中だ。神電のネーミングについては、「海外レースへの参戦なので、インパクトを重視して漢字にした。電動ということで、電気の神様という名前にした」とのことだ。
この神電の特徴として、通常のバイクと異なりクラッチがない。そのため、クラッチレバーやシフトペダルがなく、ステップまわりはステップのみとシンプルな構造。ステアリング左側には、通常クラッチレバーが配置されるが、リアブレーキレバーとなっている。
また、ラジエーターを装備しているのも特徴と言えるだろう。これは、インバーターやモーターを冷却するためのもので、それぞれの機器を適切な温度に冷却する役目を果たす。
勝間田代表は、目標を「平均速度で100マイル/h(約160km/h)を出すこと」と言い、これまでTT Zero Challengeクラスでは誰も記録したことのない、平均速度100マイル/h超えを狙うと言う(平均速度100マイル/hを超えると、特別な賞金が出るとのこと)。
開発ライダーを努める宮城選手によると、「これまで乗ったことのない感覚。40年バイクは乗ってきたけど、非常におもしろい」と言う。トルクの出方も最初のテスト時から不安なく、低速時のアクセルワークも心配ないと言う。鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デーで、低速でのパレード走行をこなしていた。
パレード走行に備え、整備を行う | ラジエーターを装備 |
EVバイクらしく、テスターでのチェック | 作業には、絶縁のためのゴム手袋を用いていた |
開発ライダーは宮城光選手 | スタッフと走行手順について調整中 |
ほかのライダーと、EVバイクの乗り味について語り合う | 音もなく、静かに走行していく。パレード走行では低速走行に徹していた |
午後には、同じく世界的なレースに参戦しているモリワキのマシンと同時間帯にサーキットコースでの走行を披露。ライダーは開発ライダーを務める宮城光選手。宮城選手は、スタートで静かな加速のよさを見せつけた後、可能な限り速い速度でグランドスタンド前を通過。静かでありながら高速で移動する物体の通過に、グランドスタンドには静かなどよめきが広がっていた。後で宮城選手に通過速度を確認したところ、「メーターを見ていなかったので分からんかった(笑)、インパクトのある走りを心がけた」とのこと。その思いは伝わっていたように見えた。
走行後、神電は日曜日の走行に備えバッテリーを充電。充電コネクターは専用のもので、オリジナルの分電ボックスから4個所に充電ケーブルを分岐。ただし、4つのバッテリーユニットがある構造ではないと言う。開発者によれば、バッテリーは四角いためそれほど低く搭載できているわけではないとのこと。
260kgの車重は、一般的なレーシングマシンと比べると(Moto GPの規定では、2気筒以下で135kg以上、4気筒で150kg以上)100kg程度重たいが、「とくに乗りにくいわけではない」(宮城選手)と、その乗り味を語る。
また、神電はEVらしく、回生ブレーキを備える。回生ブレーキが組み込まれているのは後輪のみで、アクセルOFF時にエンジンブレーキのような役割をするのだろう。制御関連の詳細についての発表はなく、マン島TTレースの本番に向けてマシンを熟成していくことになる。
いよいよ、大観衆の前で走行シーンを披露 |
起動スイッチを入れると、リアランプが点滅を開始した | スルスルっと加速していった |
レーシングコースを走行中 |
コース走行後ピットへ | メーターパネル。速度と回転数などが出るようだ | PCをつないで、すぐに走行ログの確認を開始 |
充電中の神電 |
鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デーは、3月4日も開催される。3月4日の神電の展示予定は以下のとおり。
8時~9時45分 46番ピットで展示
10時15分~10時30分 デモラン
11時~イベント終了 センターハウス2階で展示
(編集部:谷川 潔)
2012年 3月 3日