無限、オリジナルEVバイク「神電(SHINDEN)」でマン島TTに参戦
「鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デー」で公開

オリジナルEVバイク「神電(SHINDEN)」と、無限(M-TEC)代表勝間田氏(左)と、開発者の宮田氏

2012年3月3日発表



 無限(M-TEC)は3月3日、「鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デー」においてオリジナルEV(電動車両)バイク「神電(SHINDEN)」でマン島TTレース(5月26日~6月8日開催)に参戦することを発表した。同時に、発表会を鈴鹿サーキット内で開催。神電の実車を初公開した。

鈴鹿サーキットでアンベールされた、無限のオリジナルEVバイク「神電(SHINDEN)」
フルカウルをまとうレーシングバイクのため、EVバイクであるとは分かりにくい
左にはクラッチレバーではなく、リアブレーキレバーを装備シンプルなステップまわり。写真左が左ステップ、写真右が右ステップ
テールカウルには、起動スイッチが装備される。これはレギュレーションによるものとのことドライブスプロケット部マシン名は神電

 神電のボディーサイズは、2125×680×1130mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベース1485mm。車重は260kg。三相ブラシレスモーターを搭載し、最高出力90kW(122PS)、最大トルク220Nm(22.4kgm)発生する。バッテリーはリチウムイオンバッテリーで、出力電圧は370V以上としている。

マン島TTレース参戦を発表する勝間田代表

 無限代表の勝間田氏は、全日本モトクロス(1976年~1991年)、鈴鹿8時間耐久ロードレース(1984年、1985年)といった、無限のモーターサイクルにおけるレース活動を紹介。その上で、オリジナルEVバイクで2012年のマン島TTレース「TT Zero Challenge」クラスに参戦することを発表した。TT Zero Challengeは、2009年にスタートした新たなクラスで、動力にCO2を排出しないクリーンエミッション機構を持つことを定められ、一般公道を60km使ったタイムレースになる。

 ライダーは、マン島TTレースで数多くの優勝経歴を持つジョン・マクギネス選手。勝間田代表は、マン島TTレースへのEVバイクでの参戦を、昨年のマン島TTレース開催前に考えていたと言い、EVバイクの開発はマン島TTレースの視察後始まったものだ。


無限のモーターサイクルレース活動マン島TTレース参戦体制
参戦マシン名称マシンスペック

 モーターやバッテリーメーカーについては非公開。制御関連などは、すべて無限のオリジナル開発と言い、宮城光選手を開発ライダーにレースに向けて鋭意開発中だ。神電のネーミングについては、「海外レースへの参戦なので、インパクトを重視して漢字にした。電動ということで、電気の神様という名前にした」とのことだ。

 この神電の特徴として、通常のバイクと異なりクラッチがない。そのため、クラッチレバーやシフトペダルがなく、ステップまわりはステップのみとシンプルな構造。ステアリング左側には、通常クラッチレバーが配置されるが、リアブレーキレバーとなっている。

 また、ラジエーターを装備しているのも特徴と言えるだろう。これは、インバーターやモーターを冷却するためのもので、それぞれの機器を適切な温度に冷却する役目を果たす。

 勝間田代表は、目標を「平均速度で100マイル/h(約160km/h)を出すこと」と言い、これまでTT Zero Challengeクラスでは誰も記録したことのない、平均速度100マイル/h超えを狙うと言う(平均速度100マイル/hを超えると、特別な賞金が出るとのこと)。

 開発ライダーを努める宮城選手によると、「これまで乗ったことのない感覚。40年バイクは乗ってきたけど、非常におもしろい」と言う。トルクの出方も最初のテスト時から不安なく、低速時のアクセルワークも心配ないと言う。鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デーで、低速でのパレード走行をこなしていた。

パレード走行に備え、整備を行うラジエーターを装備
EVバイクらしく、テスターでのチェック作業には、絶縁のためのゴム手袋を用いていた
開発ライダーは宮城光選手スタッフと走行手順について調整中
ほかのライダーと、EVバイクの乗り味について語り合う音もなく、静かに走行していく。パレード走行では低速走行に徹していた

 午後には、同じく世界的なレースに参戦しているモリワキのマシンと同時間帯にサーキットコースでの走行を披露。ライダーは開発ライダーを務める宮城光選手。宮城選手は、スタートで静かな加速のよさを見せつけた後、可能な限り速い速度でグランドスタンド前を通過。静かでありながら高速で移動する物体の通過に、グランドスタンドには静かなどよめきが広がっていた。後で宮城選手に通過速度を確認したところ、「メーターを見ていなかったので分からんかった(笑)、インパクトのある走りを心がけた」とのこと。その思いは伝わっていたように見えた。

 走行後、神電は日曜日の走行に備えバッテリーを充電。充電コネクターは専用のもので、オリジナルの分電ボックスから4個所に充電ケーブルを分岐。ただし、4つのバッテリーユニットがある構造ではないと言う。開発者によれば、バッテリーは四角いためそれほど低く搭載できているわけではないとのこと。

 260kgの車重は、一般的なレーシングマシンと比べると(Moto GPの規定では、2気筒以下で135kg以上、4気筒で150kg以上)100kg程度重たいが、「とくに乗りにくいわけではない」(宮城選手)と、その乗り味を語る。

 また、神電はEVらしく、回生ブレーキを備える。回生ブレーキが組み込まれているのは後輪のみで、アクセルOFF時にエンジンブレーキのような役割をするのだろう。制御関連の詳細についての発表はなく、マン島TTレースの本番に向けてマシンを熟成していくことになる。

午後のレーシングコース走行前に、モリワキエンジニアリングのピットを訪れていたワイン・ガードナー選手と歓談する宮城選手。2人ともモリワキの卒業生である途中からは、ガードナー選手の息子であるレミー・ガードナー選手も参加。レミー・ガードナー選手は、モリワキの車体開発に協力している午後の走行に備え、タイヤウォーマーを装着した神電
剛性の高そうな、カーボン製のリアスイングアームリアフェンダーもカーボン製。スイングアームの剛性部品として機能しているスタッフの手によってメインストレートへと向かう
いよいよ、大観衆の前で走行シーンを披露
起動スイッチを入れると、リアランプが点滅を開始したスルスルっと加速していった
レーシングコースを走行中
コース走行後ピットへメーターパネル。速度と回転数などが出るようだPCをつないで、すぐに走行ログの確認を開始
充電中の神電

 鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デーは、3月4日も開催される。3月4日の神電の展示予定は以下のとおり。

8時~9時45分 46番ピットで展示
10時15分~10時30分 デモラン
11時~イベント終了 センターハウス2階で展示


(編集部:谷川 潔)
2012年 3月 3日