三菱自動車、EVから電力を供給できる「MiEV power BOX」発売 ジャパネットたかたの代表取締役が参加したトークセッションも開催 |
三菱自動車工業は3月9日、電気自動車(EV)「i-MiEV」「MINICAB-MiEV」用のオプションとして、1500Wの出力が可能な「MiEV power BOX(ミーブ パワーボックス)」を4月27日に発売すると発表した。価格は14万9800円。i-MiEV、MINICAB-MiEVすべてのモデルに対応するが、他社製EVで利用できるかはこれから検証するとしている。
同日、都内で発表会を開催し、代表取締役社長の益子修氏、EVパワートレインシステム技術部 部長付 吉田裕明氏がMiEV power BOXの概要を説明するとともに、ジャパネットたかた 代表取締役の高田明氏、日本EVクラブ 代表の舘内端氏、益子氏の3名によるトークセッションを行った。
MiEV power BOXについて語る益子氏 | EVパワートレインシステム技術部 部長付 吉田裕明氏 |
■1000台の携帯電話の電力を同時に供給可能
MiEV power BOXは、i-MiEVやMINICAB-MiEVの急速充電コネクターに接続し、駆動用バッテリーに蓄えられた電力の一部を交流(AC)100Vで最大1500Wまで取り出すことができる電源供給装置。リチウムエナジージャパン製のリチウムイオンバッテリー(総電圧:330V、総電力量:16.0kWh)を搭載した「G」グレードでは、満充電から一般家庭の消費電力の約1日分にあたる約9kWhを車外に給電できる。また、東芝製のリチウムイオンバッテリー(総電圧:270V、総電力量:10.5kWh)を搭載した「M」グレードでも、満充電から約5.6kWhの給電が可能。Gグレードに接続し、1500Wで連続使用した場合で約5~6時間使用できるとしている。
また、給電した後に充電スポットまで移動する電力を残すため、駆動用バッテリー残量が全16目盛りのうち、残り3目盛り(約25%)まで使用可能と言う。
会場ではMiEV power BOXを使って携帯電話の充電やポットでお湯を沸かすデモを行っていた |
MiEV power BOX主要諸元 | |
外形寸法(凸部含まず) | 395×334×194mm |
接続ケーブル長 | 1.7m |
重量 | 11.5kg(本体9.5kg、ケーブル部2kg) |
出力電圧 | AC100V |
最大出力 | 1500W(15A) |
出力端子(AC100Vコンセント) | 1個 |
動作温度範囲 | -30~60度 |
保存温度 | -40~85度 |
同社はi-MiEV発売当初からEVを「走る電池」として位置づけ、こうした電源供給装置の開発を進めてきた。そして昨年の東日本大震災では、電力インフラの復旧の早さから被災地域でEVが活用するなど、新たなEVの有用性が確認されるとともに、「復旧が進まない地域での一時的な電力供給の利便性が認識された」と吉田氏は言う。
そこで、昨今の環境問題に加え、震災の影響によるエネルギー需給逼迫への対応として、定格100Wまでの家電製品に電源供給が可能な「AC パワーサプライ EZ」を昨年に発売。さらに今回、そのバージョンアップとしてMiEV power BOXを設定した。AC パワーサプライ EZでの給電対象は、携帯電話、ノートPC、照明器具、小型液晶テレビ、扇風機などとしていたが、大容量のMiEV power BOXでは炊飯器、電子レンジ、洗濯機などとしており、従来では想定できなかった家電製品までを給電対象としている。
吉田氏はMiEV power BOXの能力について、「MiEV power BOXは1000台の携帯電話の電力を同時に供給できる」と述べるとともに、「自動車が移動という機能だけでなく、電力を供給するという機能を備えた記念すべき日になった」とし、災害時の移動式電源としての活用をはじめ、屋台や屋外イベント、キャンプなど、幅広い用途で利用できることをアピールした。
また、益子社長は「MiEV power BOXを備えたEVは、災害時の対応のみならず移動電源車としてさまざまな社会のニーズに、あるいは個人のニーズにも応えられると確信している」とし、計画停電の際に問題となった信号機用の電源として、また野外イベントなどでの電源として利用できることを例に挙げ、「趣味や地域活動をサポートするツールとしての利用が期待できる」と紹介。さらに、「EVの駆動用バッテリーを蓄電池として利用することで、EVはエネルギー問題に対する新たなモビリティとして進化する可能性を示すことができた。これにより、住宅等への電力供給が可能とする準備が整ったが、今後はこの技術を応用し、次世代の電力網として注目されているスマートグリットへの展開についても積極的に取り組んで行きたい」と、今後の抱負も述べた。
トークセッション |
■トークセッションではジャパネットたかたの“あの人”が登場
同日行われたトークセッションには、日本EVクラブ 代表の舘内端氏を司会役とし、ジャパネットたかた 代表取締役の高田明氏と益子氏が参加。
そもそも、三菱自動車工業とジャパネットたかたは、昨年12月にi-MiEVとMINICAB-MiEVを通信販売で取り扱うことについて覚書を締結しており、ジャパネットたかたは同社が制作するテレビショッピングでi-MiEVとMINICAB-MiEVを取り扱っている。このテレビショッピングで、すでに70台を販売したと言う。
まだテレビショッピングで取り扱うことが決定していないものの、高田氏ならMiEV power BOXをどのように売るのかと舘内氏が聞いたところ、「日本のモノづくりが弱くなったというが、私はまったく思っていなくて、何が弱くなったかというと伝える力が弱くなったのではないか。職人がいくらいても、商人がいないと伝わらない」と述べ、消費者にいかに商品の魅力を伝えるかが重要になると、高田氏ならではの考え方を示した。
それに対し、益子社長は「大変恥ずかしい話だが、どうしても製造業というのは技術屋集団。いいものを作ったのだから、消費者も必ず理解してくれると思い込んでしまう。従って、高田社長が仰るようにどういうところがよいのか、あるいはどういうところが不足しているのか、これを丁寧に伝える技術が我々には不足している。それを打破するために高田社長にお願いをした」と、ジャパネットたかたのテレビショッピングで同社のEVを取り扱うことになった経緯を説明した。
また、高田氏は「電力は夜の方が安いということを知らない人がたくさんいらっしゃる。EVの充電は夜にするものだと知っていただくことで、電力のピークシフトができていくわけで、こういう知恵を絞って地球温暖化の問題を解決していくという、モノづくりをしていって欲しい。小さい力だが、今後もEVの魅力を伝えていければ」と述べるとともに、益子社長は「石油に代わる代替燃料をいかに確保していくかも、我々の使命。そしてどのようにしてCO2排出量を減らしていくか、あるいは次の世代にどのようにしてよい環境を残していくかということも使命だと思っている。時間がかかるかもしれないが、EVの開発を加速させ、これからも電動車両を市場に投入していきたい」とし、トークセッションを締めくくった。
益子氏はトークセッションにも参加 | 日本EVクラブ 代表の舘内端氏 | ジャパネットたかた 代表取締役の高田明氏 |
(編集部:小林 隆)
2012年 3月 9日