NXPセミコン、車載用イーサネットと48V化について説明 48V対応製品は2012年内に量産開始 |
FlexRayトランシーバーファミリー |
NXPセミコンダクターズは3月15日(現地時間)、DC48V電源に対応したFlexRayトランシーバーファミリーの提供を開始したと発表した。
このFlexRayトランシーバーファミリーは、ボルテージレギュレータコントロール付きFlexRay「TJA1081B」、グローバルFlexRay「TJA1083」、ボルテージレギュレータコントロール付きFlexRayアクティブスター「TJA1085」の3製品。TJA1081Bが2012年第2四半期、TJA1083・TJA1085が2012年中に量産を開始する。
この48V化への取り組みと、車内ネットワークのイーサネット化について、NXPセミコンダクターズ グローバル オートモーティブ セールス&マーケティング担当バイスプレジデントのドゥルー・フリーマン氏が報道陣向けに説明を行った。
フリーマン氏は、同社の自動車用車載製品の製品群を紹介し、車載ネットワーク、カーアクセス&イモビライザー、カーエンターテイメント(ラジオオーディオDSP、チューナー、オーディオアンプ)、車載用ロジック、小信号ディスクリート(ダイオード&トランジスタ)の分野で世界No.1にあると言う。磁気センサーに関しては、No.3だとしたものの、速度センサー(ABS、エンジン)に限るとNo.1となっており、この技術力の高さを背景に、次世代以降の製品に取り組んでいくと言う。
その例としては挙げたのは、デジタルラジオ、双方向(2ウェイ)のキー&クルマ通信、LEDヘッドライト用のドライバICなど。
車載ネットワークにおけるドライビング革命 | 車載用イーサネットと48V電源システム | NXPセミコンダクターズについて |
同社の製品概要 | 車内ネットワークと、クルマの外部のネットワークについて |
その1つとしてネットワーク機器の提供があり、クルマの外とつながるテレマティクスやITS、カーエンターテイメントなどのコネクテッドモビリティ、車内で使われているLINやCAN、FlexRayなどの車両ネットワークのいずれにも供給していくと言う。
とくに車両ネットワークにおいては、LINやCANより高速通信が可能なFlexRayが求められる時代になっており、次世代のネットワークシステムとして100Mbpsのイーサネットに対応する製品を開発中であるとする。
駐車支援用のバードビューカメラ、衝突保護用のサイドビューカメラなど、大容量データを高速転送したいというニーズがあり、インフォテイメント向けのアプリケーションがイーサネットを採用した場合、この流れはさらに加速するとみている。
イーサネットの導入について | 車載イーサネットの立ち上がり時期を2013年と見ている |
車載用イーサネット規格に関しては、ブロードコムのBroadR-Reach(ブローダー・リーチ)」をベースとしたものを採用。BroadR-Reachは、車載要求を満足させる仕様と言い、その上で、同社のSOI(Silicon on Insulator)ABCD9プロセステクノロジを採用した半導体を提供していく。ABCD9プロセステクノロジを採用することで、高いEMC(Electro-Magnetic Compatibility)性能を備えるとし、2014年度の出荷開始を予定している。
この車内イーサネットに関しては、相互接続性や各社の意見交換を行うためにブロードコム、フリースケール、ハーマンなどとOPEN Alliance SIG(オープンアライアンス)を2011年に設立。自動車メーカーのBMWやジャガー・ランドローバーなどすでに30社以上が会員となっている。
この100Mbpsイーサネットのケーブルには、シールドなしのシングルツイストペア線を使うとしており、将来的には1000Mbps(=1Gbps)のギガビットイーサネットの標準化策定に向けて活動していく。
ブロードコムのBroadR-Reachを採用する | OPEN Alliance SIGで相互接続性を確保していく | 車載イーサネットの概要 |
■エネルギーロスを低減するDC48V化
現在、多くの乗用車では車内電源はDC12V(トラックなどではDC24V)が採用されているが、同社はこの電圧をDC48Vに引き上げることにも取り組んでいく。2011年6月にドイツで開催された自動車エレクトロニクス会議では、アウディ、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲン、ポルシェがDC12VからDC48Vへの移行を発表。それを早期に行うため、半導体業界に対してサポートを求めたことを紹介。
フリーマン氏は、「現在の自動車は、電動パワーステアリング、電動VDC、電動ターボチャージャー、エアコンの電動コンプレッサーなど大電力の要求が高い」と言い、それを解決するのがDC48V化だとする。
一般に電圧を上げることで、同じ電力量であれば電流を小さくでき、ケーブル径を小型化することや各種機器を小型化することが可能になる。また、送電ロスが減ることで、省エネルギーにも貢献する。
一方、DC電圧が60Vを超える場合には、人体への安全性を確保する必要があり、車内供給電圧をDC60V近辺にするのは現実的な選択ではないと言う。DC48Vは、電圧が変動してもDC60Vに近づくことがない電圧であり、従来のDC12Vよりも、効率がよくなる電圧であるとした。
これまでも自動車業界では、何度が電圧を上げることが検討されてきたが、導入には至っていない。今回のDC48V化の動きに関しては、「ハイブリッド車やEV(電気自動車)などの普及もあり、これまでとは違うだろう」との見方を示した。
NXPはDC48V対応製品の提供を開始する | これらは、自動車メーカーの要求に応えたものでもある |
DC48Vとなった背景 | NXPの用意する製品群 |
(編集部:谷川 潔)
2012年 4月 11日