【連載】西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ
第3回:純正の半額以下のコストで汎用バックカメラを装着


 RX-7(FD3S)に乗っていた自分からすると、R35 GT-Rはボディーの大きさに時々、苦労させられる。

 走行時はあり余るパワーと4輪駆動システム「アテーサ E-TS」の制御で、とても身軽なドライビングテイストが味わえるのだが、駐車する際などには、寸法の数値通りの大きさをダイレクトに体感することになる。RX-7は4285×1760×1230mm(全長×全幅×全高)、R35 GT-Rは4670×1895×1370mm(同)。スケール的にひとまわりは大きいという印象だ。

 またホイールベースはRX-7が2425mm、R35 GT-Rが2780mmで、最小回転半径はそれぞれ5.1m、5.7mになる。狭い場所でのUターンは切り返しが必要なシーンもあり、後ろの見切りはよくないし、リアガラスからの後部視界も限定的。後退しながらの駐車は極めて気を遣う。となると、必要性が高くなってくるのがバックカメラ(リアビューカメラ)だ。

「バックビューモニター」は工賃込みとは言え7万5635円という高額商品

高価なバックカメラにまつわる「なぜ?」
 R35 GT-Rには、純正バックカメラが「バックビューモニター」という製品名でディーラーオプションとして設定されている。こちらは取付工賃を含め7万5635円とかなり高い。一般的なカーナビ用のバックカメラ単体が1万円前後であることを考えると、取付工賃を含んでいるとしてもやや高すぎる印象がある。

 筆者が独自に調べたところでは、価格の内訳はバックカメラ接続用のハーネスが2万6705円、取付工賃が3万5000円とのことで、実はバックカメラ自体は1万3930円程度らしい。

 その高価なリアハーネスはどのようなものか、これについても調査してみたところ、純正のバンパー内にある既存ハーネスに置き換えるものということが判明。その工場出荷状態で車両に組み込まれているハーネスと、純正バックカメラキットに含まれる2万6705円のハーネスの資料を入手して両者を比較してみると、なんともやるせない気持ちになる相違点が発見された。

 工場出荷状態の車両のバンパー内部にある既存ハーネスは、車体前方部から伸びている電気系統配線と結ばれていて、番号灯(ライセンスランプ)やトランクオープナーのメカを駆動するためのスイッチと接続するコネクタ等が取り付けられている。一方、純正バックカメラキットに含まれるハーネスは、このハーネスとほとんど一緒なのだが、末端にカメラ接続用のコネクタが増設されているのだ。違いは「カメラ接続用の端子があるかないか」だけ。

さらに調査を進めると、車両前方から伸びてきてバンパー内部に潜り込んでいるハーネスのコネクタには、バックカメラの駆動電源(リバースギア連動)とグラウンド(GND)、バックカメラの映像信号入力線とそのGNDがきていることも判明。つまり、電気的にはリアバンパーにはバックカメラ取付に必要な配線は最初からあって、社外バックカメラを勝手に接続させないためにハーネスを置き換えさせる仕組みになっているようだ。

 取付工賃が3万5000円となるのは、「バックカメラを取り付ける際にリアバンパーを脱着する必要があるため」らしい。

GT-Rに社外バックカメラは繋げられる!
 「リアバンパーまで配線はなされている」というのが分かっただけでも大収穫だ。

 純正バックカメラキットに付属する高価なハーネスと、車両側の既存ハーネスとを置き換えるだけでバックカメラが取り付けられるということは、車両側の大元コネクタには、バックカメラ電源や映像信号がアサインされていることにほかならない。その各ピンの仕様の調査に乗り出すと、予想どおりの事実が判明する。映像信号自体は普通のコンポジットビデオ信号で、カメラの電源はDC6V~9V(エンジン回転数によって変動)なのだ。

PIN1 カメラ映像GND
PIN2 カメラ映像
PIN3 カメラ電源GND
PIN4 カメラ電源(リバース連動:6~9V)

 これはつまり、市販のカーナビ用のアクセサリーとして発売されているバックカメラが、電気的にはそのまま繋がると言う見通しが立つ。

 問題は取り付け作業だ。

 ここまでは独自に調査できたが、自宅にバンパーを脱着する作業スペースはないし、そもそもやったこともないのでうまくできる自信もない。

 そこでプロの手を借りようと言うことで、比較的自宅から近くにあるカーオーディオ専門店の「カーオーディオサービス」(http://www.cas30.net/)に飛び込みで相談してみたところ、バックカメラ代と取り付け工賃込みで3万1500円との見積もりが。なんと、ここはバンパーを取り外さずに取付ができるというのだ。さっそく来店して前段で説明したような、ここまでの自分の調査内容を告げると「よく分かりました。2012年モデルのGT-Rは初めてですが、問題ないです。できます」とのお返事。

 聞くところによると、カーオーディオサービスで代表を務める大澤博幸氏は周辺ディーラーからのカーナビ、カーオーディオ取り付け関連の下請けを一気に引き受けているそうで、多様な車種のバックカメラの取付の経験があるとのこと。そうした過去の経験から、バックカメラ自体は社外品としての取り付け実績が多いアルパインの「HCE-C90」(http://www.alpine.co.jp/camera/back-view/)を推奨するとのことで、その提案を自分も承諾した。

 HCE-C90は電源ボックスが付属するが、今回の取り付けではこれを使用せず、カメラ自身から出ている映像線とそのGND、駆動電源線とそのGNDの4ラインを剥いてギボシ化し、車両前部からきている配線の大元コネクタの該当ピンに接続する手法をとる。ということで、必要なのはバックカメラユニットだけ。純正バックカメラキットに含まれるハーネスは使わず、既存ハーネスを加工する方策を取るわけだ。

アルパインのバックビューカメラ「HCE-C90」(1万3440円)。この製品はもともと社外カーナビとの接続を想定した商品大きさは23.6×25.9×23.6mm(幅×奥行き×高さ)と極めて小さく、重さは33g
アルパインのバックビューカメラ「HCE-C90」のスペック。画角は純正よりも広く、撮影解像度も高い。感度も純正と比べ優秀で、アンチスミア機能も搭載しているため暗がりにも逆光にも強いカメラを車体に取り付ける際に使用する取り付け金具。カメラの性能面での対応力の広さはもちろんのこと、この取り付け金具の調整自由度の高さもあって、カーオーディオサービスでは社外品バックカメラの取り付けにはこの「HCE-C90」を組み合わせることが多いと言う

GT-Rのバックカメラをリアバンパー脱着なしで取り付ける方法
 カーオーディオサービスの大澤氏は、R35 GT-Rの後輪を作業スペース内の路面のバンプ部に移動させて高さを稼ぐと、リアバンパーの下部に潜り込んでリアディフューザーの取り外しに掛かった。作業のためのボディーパーツの脱着はこれだけ。リアバンパーも、トランク部の内装も結局取り外さずじまい。ジャッキアップもしなかった。

 ナンバープレート部のランプを取り外し、車両前部からの配線の大元の8ピンコネクタを探して位置を確認したあとは、リアディフューザーを外した個所から潜り込み、このコネクタを取り外す。

 工場出荷状態でバンパーに装着されているハーネスの8ピンコネクタのうち、4ピンには配線がなく、配線があるのは車両前部からのコネクタの方だけ。つまり、工場出荷状態でバンパーに装着されているハーネスの8ピンコネクタのうち、使われていない方の4ピン分が映像線とそのGND、カメラ電源線とそのGNDという当たりを付けられる。

 この4ピンのうち、2ピンはカメラ電源線とそのGNDのはずだから、リバースギアを入れたときに電流が流れるはず。これはなんてことはない話で、テスターで探せばよいだけ。

リアバンパーを潜って見上げたところ。写真上部がリアバンパーの内側天井方向。写真右に見えるのが工場出荷状態でリアバンパーに装着されているハーネスの8ピンコネクタ(メス)。下4列が配線されていないことに注目。この未使用の4端子がバックカメラ電源とそのGND、映像信号とそのGNDになるバックカメラからのラインを剥いてギボシ化。リアバンパー内のハーネス側のコネクタ部分にはめ込んで、車両前部からきている配線のコネクタと接続する床に置いたバックカメラがちゃんと映った

 最初は仮配線で実験。

 少しドキドキしたがリバースギアに入れたところ、問題なく一発でコクピットの液晶画面に作業場の風景が映った。実験は成功。あとは取り付けだけだ。

 取り付けはせっかくなので、純正バックカメラの取り付け位置に行うことにした。取り付け位置は工場出荷状態ではシールされているが、これを剥がすとバンパー内部に通じる穴が露呈する。ここからカメラからのラインを通し、リアバンパーの下に潜って手を伸ばしてたぐり寄せ、先ほどの仮配線と同じ要領で配線するだけだ。

ゴムシールを剥がして露呈した純正バックカメラ取り付け穴バックカメラを穴に通しているところ

 カメラの固定はさすがに両面テープだけでは心許ないのでビス留めをする。純正バックカメラの取り付け口付近は幸い樹脂製なので、ここには簡単にビスを打つことができる。HCE-C90の取り付け金具は4点のビスを打って固定できるようになっていたが、純正バックカメラの取り付け穴が大きかったために4点は打てず、3点打ちとした。

ビスでしっかり固定純正位置に装着。社外品とは思えないようなしっくり感

「2012年モデルのGT-Rは初めてだったけど、何をどうするかは今回で分かったし仮配線の実験も不要なので、次回からはもっと短時間で作業できます(笑)」と大澤氏

 あとはカメラの角度調整だが、これはリアバンパーが若干視界に入るような角度で適当に調整。これでひとまず、取り付け作業はほぼ完了。もう1度リバースギアに入れたとき、自動的にバックカメラビューになることと、アクセル開度の違いで映像にノイズが入ったりしないかをチェック。問題ないことを確認した後、取り外したディフューザー等を戻してカーオーディオサービスでの作業は終了した。

 2012年モデルのR35 GT-Rの社外バックカメラの取付は今回が初めてだったこと、作業の合間に筆者も協力しての手作業的な実験もあったので、作業時間は4時間以上掛かってしまったが、次回以降はそうした手間もなくなるので、2時間強くらいの作業時間でできそうと大澤氏。

 2012年モデルのGT-Rの純正バックカメラの価格に少し尻込みしていた方は、カーオーディオサービスに問い合わせてみてはいかがだろうか。要予約ながら日帰りが可能だし、費用も純正の半額以下でできてしまうのはうれしい。また、同社ではアルパイン製以外の他社製バックカメラの取付にも応じてくれるそうだ。

 そうそう、最後に、車両の保証問題についても触れておこう。

 GT-Rといえば、社外品の搭載を徹底的に排除するマーケティングが行われてきたが、ユーザーからの反感が強かったためか、近年ではこの方針は改められている。改めて「保証問題」関連は取り上げたいと思っているが、簡単にまとめると、エンジンやトランスミッションなどのメカ系、そしてエクステリアの社外部品への交換はきめ細かく「保証外か否か」の条件が設定されているが、それ以外の、例えば今回のような内装関係については保安基準を逸脱しない限りは、とくに保証“外”規定が設定されていない。なので、前回のフロアマット、そして今回のバックカメラの交換は車両保証には影響しないと、筆者が購入した埼玉日産からの回答を得ている。

 ただ、今回のような社外品バックカメラを装着したことにより、万が一カーナビに異常が発生した場合は、カーナビやその他、電装関連の保証はなされないはずだ。これはGT-Rだから、日産だから……ということではなく、一般車種、他社でも同様のスタンスのはずである。いずれにせよ、今回のバックカメラに限ったことではないが、社外品の搭載は自己責任でして頂きたい。


純正バックカメラとほぼ同等の使い勝手で機能させることに成功!

 


 

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(トライゼット西川善司)
2012年 5月 8日