「ダンロップ・サーキット・レッスン」でサーキット初走行してきた
1秒以上のラップタイム短縮に成功

「ダンロップ・サーキット・レッスン」は埼玉県の本庄サーキットで行われた

2012年5月12日開催



 5月12日、埼玉県の本庄サーキットでダンロップ(住友ゴム工業)が後援するドライビングレッスン「ダンロップ・サーキット・レッスン」が開催された。

 同レッスンは、タイムアタックイベント「DUNLOP DIREZZA CHALLENGE(ダンロップ ディレッツァチャレンジ)」の前日に開催されることから、ディレッツァチャレンジ参加者が多く参加するが、プロドライバーから丁寧なレクチャーを受けられることもあり、サーキット走行が初めてという人も気軽に参加している。今回は、同レッスンを主催する競技長の大井貴之氏、SUPER GTで活躍しているプロドライバーの青木孝行選手、平中克幸選手の3名が講師を務めた。

同レッスンの競技長である大井貴之氏青木孝行選手は、開会式で「レッスンではちゃんとクルマを止めて、曲げるという、基本的な操作を見直して欲しい」と述べた
平中克幸選手は「レッスンが終わったときにタイムアップできるよう全力でサポートしていきたい。ささいなことでも分からないことがあればどんどん聞いてほしい」と話した「体調管理に十分気をつけて楽しい一日にしてもらいたい」と話した、今回のレッスンを後援するダンロップ(住友ゴム工業)の杉本毅史氏

講師陣と初のサーキット走行の上田。表情がやや堅い!?

 筆者は以前、福井県のタカスサーキットで同レッスンを受講しており、コーナーの攻略やブレーキングの仕方など、サーキットの走り方をしっかり学ぶことができた。とくにブレーキングについては、普段街中でフルブレーキする機会はほとんどないものの、どの程度の踏力でどのくらいの制動距離が必要になるなのか、自分の愛車で確認できるというのはタメになったと記憶している。

 今回はImpress Watch社内の上田に参加してもらい、サーキット走行の楽しさを体感してもらった。ちなみに上田は以前、日産「シルビア(S15)スペックR」を駆り、現在はスバル(富士重工業)の「レガシィ B4」に乗っているというクルマ好きだが、サーキットを走るのは今回が初めて。タイヤは純正を装着していたので、今回のレッスン参加にあわせてダンロップの新スポーツラジアルタイヤ「DIREZZA ZII(ディレッツァ ズィーツー)」に変更した。

今回のサーキット走行にあわせて装着した「DIREZZA ZII」。街乗りからサーキット走行まで幅広くカバーしてくれるハイグリップタイヤだが、「純正タイヤに比べ、若干硬くなった印象があるものの、ロードノイズは純正とあまり変わらない。タイヤが劣化していたこともあるが、ZIIの方がむしろ静かかもしれない」とはオーナー談
上田の愛車、レガシィ B4。タイヤ以外、足まわり、ブレーキなどすべて純正品を装備するまずは受付を行い、資料やゼッケンをもらう参加者用はクルマを駐車するスペースと、荷物を置くスペースの2枠が用意される。まずはゼッケンを左右ドアとボンネットに貼る
講師からの指示を聞くための無線機を、助手席のシートベルトを利用して固定するタイム計測用のトランスポンダーはリアナンバーに固定サーキットでは全開走行に集中するため、余計な荷物は降ろす
軽量化(!?)のためテンパータイヤも外すフロアマットやFMトランスミッター、携帯電話を充電するコードといったサーキット走行に必要のないものもすべて降ろした開会式の後にブリーフィングが行われた
ブリーフィングでは、サーキットを走る上で必要な知識となる各種旗の種類の説明や、本庄サーキットの攻略法などが各ドライバーから説明された

 本庄サーキットは全長1112m、最大直線260m、幅12~15mで、大小のヘアピンを含め11カ所のコーナーが設けられたショートサーキットとなる。このサーキットの攻略ポイントは、第2ヘアピン、シケイン、最終コーナーの3カ所となっており、そのことからこの3カ所を使ったレッスンが実施された。レッスンの内容は次のとおり。

・フリー走行1(グループ分け/15分)
・レッスン1(ブレーキ特訓/18分)
・レッスン2(ヘアピン特訓/15分)
・レッスン3(S字~最終コーナー特訓/15分)
・フリー走行2、3(10分×2本)

 始めにフリー走行を行い、タイム等によって3グループに分けてから、第2ヘアピンを使ったブレーキ特訓、ヘアピン特訓を、そしてレッスン3ではS字から最終コーナーの特訓が行われた。

まず始めに行われたフリー走行の初心者クラスでは、大井氏先導(S15)のもと3周慣らし運転
フリー走行の様子を伺う講師陣。このフリー走行のタイムをもとにグループ分けが行われる
全開走行した後はクーリングブロック剛性の高さ、ステアリングへの応答性のよさなど、抜群の性能を誇るDIREZZA ZII。サーキットを走ってこそその真価を発揮する

 レッスンでは青木選手、平中選手がコースサイドに立ち、無線を通じて各参加者に改善点やアドバイスなどを送った。ブレーキ特訓は、第2ヘアピンの途中に置かれたコーンのところでしっかりクルマを止める、という内容で、曲がりながらのフルブレーキングになるため、はじめはなかなかうまくいかない参加者もいた。しかし講師陣から「ブレーキングポイントやハンドル操作が手前すぎる」「(コーンの)手前で止まれているのはしっかりブレーキを踏めている証拠。次はパイロンでしっかり止まれるよう、もっとブレーキングポイントを遅らせるように」といった、具体的なアドバイスにより多くの参加者がコーンで止まれるようになっていた。

 初参加の上田も、始めはコーンの手前で止まっていたため「白線に合わせて停止せず、ブレーキを掛けてから最短で止まるように」「ブレーキングポイントが手前すぎる(結果、白線の手前で止まってしまう)もっと奥で」という指示が講師陣から送られていたが、指示を受けるごとに止まる位置がコーンに近くなり、上達しているのが端から見ていてしっかりと分かった。

無線で参加者に指示を送る講師陣
ブレーキング特訓で始めはかなり手前に止まっていた上田のレガシィ B4。講師からも「ブレーキングポイントが手前すぎる」とアドバイスが送られていた

かなり楽しそうにレッスンを受講していた上田

 また、コース上でのレッスンは2グループが受講し、1グループは休憩という形をとっていたが、休憩中もコースサイドに立つ大井氏に熱心にアドバイスを聞く姿もよく見られ、参加者から「ABSあり・なしの走り方について」「ブレーキの踏み方」などについて聞かれた大井氏は、「始めからフルブレーキをかけると止まりにくいので、“ドーン”と踏まず、“速く”踏むイメージ。蹴飛ばすような踏み方はダメで、なるべく乱暴に踏まないことを心がけたい」といった具体的なアドバイスを参加者に送っていた。筆者は「百聞は一見にしかず」のタイプだが、レースの世界で生きているプロのドライバーからのアドバイスは、聞いていて本当にタメになる。実際にコースを走って試してみて、うまくいかないことがあればすぐにレクチャーしてもらえるところが、このレッスンの最大の魅力だろう。

 一通りレッスンが終わると昼食休憩になるが、昼食後には各コーナーがどのくらい曲がっているのか、また各コーナーを講師陣はどのようなラインで攻略しているのか、講師陣にアドバイスを受けながらコースを1周歩くという時間も設けられた。

 さらに、この後に参加者のクルマに講師陣が乗り、プロの技を体感できる同乗走行も行われ、上田は「(レベルが違いすぎて)正直参考にならなかったが、ブレーキングやアクセルを踏むポイントなど、自分とかなりの違いがあった。第3コーナーはもっと奥でブレーキ踏んでも曲がれること、最終コーナーの立ち上がりはもっとアクセルを踏めることが分かった。どんなクルマでもたやすく乗りこなしてしまうプロのドライバーはとにかく凄いの一言」と、プロドライバーの技に驚くと同時に、コース攻略の糸口をつかんでいた。

第2ヘアピンでのヘアピン特訓を行う上田レガシィ。第2ヘアピンの攻略にはかなり手こずっていたよう
S字~最終コーナー特訓。最終コーナーはかなり鋭角で、ここは駆動方式によってもラインが異なっていた
休憩中も参加者はコースサイドに立つ大井氏に熱心にアドバイスを聞いていた大井氏から直接アドバイスをもらう場面も。ここまで熱心にプロからアドバイスを聞けるレッスンもなかなかないだろう
昼食のときも分からないことがあれば講師に気軽に相談できる昼食後に、講師陣にアドバイスをもらいながらコースを1周歩くという時間も設けられた

 こうしたレッスンの後、午後はフリー走行枠(10分×2本)が用意され、午前1発目のフリー走行からどれだけ成長できたかを試す機会が設けられた。午前のフリー走行では、慎重になっていたこともあってコースアウトすることもなかったが、午後はタイムを意識するあまりにS字の1つ目を突っ込みすぎてコースアウトするシーンもあった。

 しかし、午前のフリー走行でのベストタイムは51秒218だったが、午後には49秒937と1秒以上短縮することができた。「練習したポイントと、同乗走行のイメージを意識しつつ午後のフリー走行を走ってみたが、第2ヘアピンのブレーキングからアクセルへの繋ぎ方が難しく、ここは結局最後まで走り方が分からなかった」(上田)と、課題は残ったものの、大幅なタイム短縮はレッスンによるものであるのは間違いないだろう。

 何より、「レッスンに参加する前はサーキットは“敷居が高い”というイメージがあったが、実際参加してみるとまったくそんなことはなく、初心者でも十分に楽しめた」と、自分の愛車で思い切り走れる楽しさにも開眼したようだ。

 また、ABSが効くほどのブレーキングを行ったのはレガシィでは初めてだったそうで、「普段なかなかできない、フルブレーキング時の車の挙動を確認できたことは、いざという時に役立つと思った」と話していた。サーキット走行を楽しむためのドライビングテクニックの向上も大事なことだが、レッスンを受けることでクルマの限界、ドライバーの限界を知ることができる。限界を知ることで、クルマを制御できないことへの恐怖や、限界で走ることがいかに危険なことかがよく分かる。公道で安全運転をするためにも、意義深いレッスンだと言える。

 次回のレッスンは10月6日に福井県のタカスサーキットで行われる。近くにお住まいの方は、ぜひレッスンに参加してみてその楽しさを体感してみてはいかがだろうか。

一通りのレッスンを受け、1秒以上タイムを短縮した上田。運転のスキルアップを体感できる、次回のレッスンは10月6日に福井県のタカスサーキットで行われる

(編集部:小林 隆/Photo:堤晋一)
2012年 5月 29日