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【連載】西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ
第13回:フロントバンパーをイメージチェンジ
(2013/1/22 08:50)
皆さん、明けましておめでとうございます。本年度も愛車の赤いGT-Rともども、本連載をよろしくお願いいたします。
前回、「スポーツリセッティングコンピュータを取り付けてみた(前編)」を紹介させていただいたが、1回開けて今回はフロントバンパーのイメージチェンジを図ったので、そちらを先に紹介したい。後編は次回紹介する。
2012年モデルのGT-Rの見た目を変える!
さて、筆者の愛車の赤いGT-Rは2012年2月に納車され、現在の走行距離は9000kmオーバー。そろそろ満1歳が見えてきたわけだが、GT-Rと言えば世間の目線はリファインされた2013年モデル(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20121107_571238.html)の方に目が行きがちだ。
2013年モデルは2012年モデルから外観上の変更はないため、街中を走っている分には筆者のGT-Rが古く見られることはない(と思う)。しかし、各メディアに掲載されているインプレッションに「全然違う」といったコメントが踊っているのを見ると、オーナーとしてはちょっとだけ切なくなる(笑)。
だからといって自分の愛車が嫌いになることもないのだが、ただ、2013年モデルの登場がきっかけで、筆者は愛車の見た目を変えたくなった。
そもそも、R35 GT-Rの見た目は以前の愛車マツダ「RX-7(GF-FD3S)」と比較すると、個人的にエレガントさがないと感じていた。大きく6角台形状に開いたインテークグリルが特徴的なフロントフェイスはカピバラか、ビーグル犬のアップ写真みたいに見える。愛嬌があると言えばそうなのだが、「かっこいい」路線からは少々離れて見える。
外観のイメチェンと言えば、社外エアロパーツの装着ということになるわけだが、しかし、本連載第8回(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120904_557256.html)でも紹介したように、認証が取れている製品以外のエアロパーツの装着はR35 GT-Rの車両保証規定上、許されない。
そこで、思いついたのは純正エアロのまま見た目を変えるアイディアだ。
イメージはジャガー「XKR-S」、トヨタ「アクア」?
R35 GT-Rのデザインを見ていて、以前から気になっていたポイントがある。それは上記でも触れたフロントバンパーのインテークグリルだ。
このインテークグリル、実は新型クラウンのような大きなグリルがあるのではなく、6角台形状はそう見えるように塗り分けているだけで、実際には2つのグリルが上下に積み重なっており、この2つのグリルを仕切るように横長のバンパー部が存在するのだ。
また、R35 GT-Rのフロントバンパーはボディーカラーとなっているメイン部分と、インテークグリルは一体成形パーツとなり、インテークグリル部は黒く(正確にはメタリックブラック)塗り分けられているのだ。簡単に言うと、別体パーツの組み合わせのように見えるR35 GT-Rのフロントバンパーは、実はガンプラ塗装と同じテクニックでそう見せているだけなのである。
ということは、ガンプラがその塗装の塗り分けテクニックだけで見た目をがらりと変えられるように、GT-Rのフロントバンパーもこの塗り分けを工夫すると個性を出せるのではないか。女性がお化粧を変えるだけで美人度が変化するのと近いことが、GT-Rのフロントマスクにも起こるのではないか……。そこで考えたのが、上下グリルを仕切っている横長バンパー部分をボディー同色に塗ってみてはどうか、というアイディアだ。
こうした大型グリルの仕切りをボディー同色で塗装するデザインは、スポーツカーだとジャガー「XKR-S」が採用している。身近な最近車種ではトヨタ「アクア」がまさにそんなイメージだ。
施工はオートバックス大宮バイパス店に依頼
さすがにペンキとハケで塗るわけもいかないので、プロに施工をお願いすることにした。
お願いしたのは、筆者宅から徒歩圏内にあるスーパーオートバックス大宮バイパス店(http://sa-omiyabp.buffalo.co.jp/)。ここは自前で大がかりな板金塗装スタジオを持っており、スタッフも優秀で東京オートサロン2009ではオリジナルエアロを装着したRX-7でスポーティーカー部門最優秀賞(http://sa-omiyabp.buffalo.co.jp/event/democar.php)を受賞しているほどの実力を兼ね備えている。
今回、筆者の愛車を担当していただいたのは、ピット主任の中島良太氏。主旨を説明したところ、理解していただけたようだったが、念のためにXKR-Sの写真や、筆者がペイントソフトでフォトレタッチした完成予想図などを手渡しておいた。
今回塗装するのはフロントバンパーのグリルを仕切る横長バンパー部なのだが、色ムラなどを避けるためにバンパー全体の塗り直しを行うことになった。つまり、バンパーの脱着工程が伴うことになるのだ。
R35 GT-Rのバンパー塗装をDIYでやろうと思う人は少数派だと思うが、R35 GT-Rのフロントバンパーには、対人事故時の衝撃を感知して、ボンネットを跳ね上げて歩行者へのダメージを低減させるポップアップエンジンフード機構(http://www.nissan-global.com/JP/TECHNOLOGY/OVERVIEW/puehfpp.html)が付いており、バンパーを不用意に外すとこれが事故と判断して作動してしまう。
作動した場合は、ボンネットをエアバッグのように火薬の爆発力で跳ね上げてしまうので、ボンネットは折り曲がるし、ポップアップエンジンフード機構自体も使い切りなので、総取り替えが必要になってしまう。バンパーのメンテナンスであっても、R35 GT-Rの場合はバッテリーカットが必要不可欠なのだ。
なお、バンパーを取り外した状態でエンジンを掛けてしまっても、これまた事故と勘違いしてポップアップエンジンフード機構が作動してしまう。そう、バンパーを取り外した状態での車両移動が面倒なのだ。どうしてもDIYでやりたいという人はここは留意すべきポイントだ。
さて、上で「フロントバンパーは一体成形されている」と述べたが、アゴ下のリップスポイラー、上下グリルのインナー部分は別体パーツになっている。塗装の際にはこれらを分離する必要がある。
リップスポイラーは、リップスポイラー本体部と車体底面を覆うアンダーカバー部とはリベットの打ち付けによって固定されており、非常に堅牢な造りになっていたのが印象的だった。
作業は約一週間で完成。
今回、下側のインテーク部は純正状態と同じメタリックブラックの塗り分けを維持してもらったのだが、中島氏によるとここが難しかったと述べていた。最初、このメタリックブラックを塗ったときには、この塗料がボディーカラーの赤色の部分にまで飛んでしまい、結局塗り直しをしたとのこと。閉じて窪んだ部分の塗りは、吹きつけの際の巻き返しが予想外な方向へ拡散するのだろう。
また、一体成形されたフロントバンパーなのに、別体風の見映えにするために、どこを塗り分け境界にするかについても悩んだとのことだった。
例えば、下部グリルの左右端にあるサブインテーク部。ここは正面向かって左側のサブインテークの奥にオイルクーラーがあるので実際に穴が開いているが、右側はダミーなので穴が開いていない。ここの接合部の境界はボディーカラーで塗るべきか、メタリックブラックで塗るべきかで悩んだというのだ。
その結果、接合部は塗り分けで表現される仮想的なインテークパーツには厚みがあるものとして、メタリックブラックで塗り分けている。
これが西川善司の2013年仕様GT-R!?
完成写真がこちら。
どうだろうか。意外にも違和感がないのではないか?
クルマ好きの友人達に「フロントバンパーの塗り分けを変えました」とだけ告げ、どちらが塗装前/塗装後かを言わずに写真を見せたところ、「どこが変わったのか、分からない」という人が多かったのが印象的だった。中には塗装前の方を今回の「塗り分け」モディファイと勘違いし、「インテーク、全部黒く塗っちゃったの? バンパーはボディー同色の方がよかったのに」と言う人までいたりして、総合的に見るとかなり「自然」に見えるようだ。
また、GT-R開発ドライバー・鈴木利男さんのショップ「ノルドリンク」を訪れた際、鈴木利男さんにも見せたところ、「なんだかかわいく見えるね」という言葉をいただいた。社外エアロパーツに変えずとも、見た目を変えるモディファイ。皆さんも挑戦してみてはいかがだろうか。
ちなみに今回の施工工賃はバンパー脱着と取り付け、塗装費用、ガラスコーティング、リップスポイラーのストーンガードの貼り替えで計6万768円であった。
西川善司
テクニカルジャーナリスト。元電機メーカー系ソフトウェアエンジニア。最近ではグラフィックスプロセッサやゲームグラフィックス、映像機器などに関連した記事を執筆。スポーツクーペ好きで運転免許取得後、ドアが3枚以上の車を所有したことがない。以前の愛車は10年間乗った最終6型RX-7(GF-FD3S)。AV Watchでは「西川善司の大画面☆マニア」、GAME Watchでは「西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィック講座」を連載中。ブログはこちら(http://www.z-z-z.jp/BLOG/)。