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ブリヂストン、中低層建物向けと高層建物向けの免震ゴムの新製品2種

60年以上の耐久性を有し、気象庁が定める最大震度7にも対応

免震ゴムの新製品について解説したブリヂストン インフラ資材販売促進部 インフラ資材販売企画課長 太田雅己氏
2013年5月13日開催

免震構造の基本概念

 ブリヂストンは5月13日、免震ゴムの新製品「高減衰ゴム系積層ゴムシリーズのX0.4R」の発売を開始するとともに、「鉄粉・ゴム混合材プラグ挿入型積層ゴム(eRB)」のサイズラインアップを拡充して発売した。いずれも60年以上という長期の耐久性を備え、気象庁が定める最大震度7にも耐える構造と言う

 同日記者発表会を開催し、ブリヂストン インフラ資材販売促進部 インフラ資材販売企画課長 太田雅己氏が出席して免震ゴムの構造やX0.4R、eRBについての概要を説明した。

 そもそも免震ゴムとは、「免震構造」と呼ばれる建築技術で使われるもの。地震のゆれを直接建物に伝えないよう考えられた構法で、建物自体の被害を防ぐだけでなく、室内に置かれる家具などの転倒や破損等といった2次災害を最小限に抑えることを目的とした技術。地震のゆれを直接建物に伝えないように、基礎部と上部構造の間に絶縁体(アイソレータ)を配置するが、ここに免震ゴムが使われている。

 これまでにも建物を硬くして振動に対抗する「耐震構造」、建物にダンパーなどを採用し、建物に粘りを持たせて振動を低減する「制振構造」もあったが、免震構造はこれらよりも新しい建築技術になる。

免震構造の特長
2011年の東日本大震災が起きた際の免震建物と耐震建物の比較。免震建物では上の階でのゆれが小さかった(図のグリーンの矢印)が、耐震建物では上の階でのゆれが下の階よりも大きかった(図のレッドの矢印)
東日本大震災では、ブリヂストンの免震ゴムを採用した免震建物(仙台市内のマンション)でおいて柱、梁、壁および室内(転倒・散乱)で大きな被害はなかったと言う
東日本大震災による免震ゴムの変形量。東北地方で10~30cm(最大40cm)、関東地方で5~20cm(最大20cm)の変形が確認されている
免震ゴムの特長
免震ゴムには大きく「天然ゴム系積層ゴム」「高減衰ゴム系積層ゴム」「鉛プラグ挿入型積層ゴム」「鉄粉・ゴム混入材プラグ挿入型積層ゴム」「弾性すべり支承」の5つの種類がある
X0.4Rは高減衰ゴム系積層ゴムに分類される。「減衰機能があるために別置ダンパーを使用しなくても免震構造が実現できる」「免震部材のコストを安くできる」「リサイクルが容易なために環境負荷が小さい」といったメリットがあると言う
免震構造の建物は日本では約30年経過し、採用物件は全国で3000棟を超える
免震ゴムの導入例
ブリヂストンの免震技術

 今回発表されたX0.4Rは、およそ5~10階程度の中低層の建物向けに設計されたもので、比較的柔らかい性質のゴムを使うことで地震時の建物の揺れをより緩やかにするという特長を備えるとともに、地震の繰り返しの揺れに対して免震ゴムが毎回安定した揺れ方をするように改善したことで、建物を設計する際に行われる地震シミュレーションの精度を向上させることができたと言う。

 太田氏はX0.4Rについて、「高減衰ゴム系積層ゴムは、繰り返し変形を与えると荷重が低下する『荷重履歴依存性』という性質があるが、これが極力小さくなるように開発した。これにより高減衰ゴム系積層ゴムの解析が容易になり、免震設計の精度向上が期待できる」と述べるとともに、「一昨年に発表したX0.6Rと比べ低弾性化し、およそ2/3の柔らかさにした」と特長について紹介。

 また、鉄粉・ゴム混合材プラグ挿入型積層ゴム(eRB)は、天然ゴム系積層ゴムの中心に鉄粉とゴムを混合した「プラグ」と呼ばれる減衰材料を挿入していることが特長。主に高層建物向けの製品で、ラインアップを14サイズから70サイズに大幅拡大することで、設計の自由度を向上させたと言う。

(編集部:小林 隆)