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スズキ、まったく新しいジャンルの新型軽自動車「ハスラー」発表会

「41%という軽自動車の販売比率が今後増えることはあっても減ることはない」と鈴木修社長

鈴木修社長(写真手前)と田村実副社長(写真中央)、本田治副社長(写真奥)、新型ハスラー(パッションオレンジ/ホワイトルーフの2トーンカラー)
2013年12月24日開催

 スズキは12月24日、2014年1月8日に発売となる新型軽クロスオーバー「ハスラー」の発表会を都内で開催。鈴木修社長と田村実副社長が出席するとともに、本田治副社長がハスラーの概要を紹介した。

 ハスラーは「今までなかった新ジャンル アクティブなライフスタイルに似合う軽クロスオーバー」をコンセプトとし、広い室内空間とラフロードにおける走破性を備えた“軽クロスオーバー”という新ジャンルの軽自動車となる。

 ワゴンRと共通のプラットフォームを使い、エクステリアではAピラーを立ててロング&ボクシーキャビンを実現したほか、165/60 R15という大径タイヤとともにサスペンションストロークの変更により、180mm(4WD車は175mm)の最低地上高を確保。また、アプローチアングルを28°(ワゴンR FXは25°)、デパーチャーアングルを46°(同41°)とすることで、起伏のある路面でのバンパー接地を低減している。

自然吸気エンジン搭載のA/Gグレードは5速MTも展開

 室内サイズは2160(Aグレードは2035mm)×1295×1250mm(室内長×室内幅×室内高)とワゴンR同等に仕上げるとともに、ヒップポイントは前席で24mm、後席で23mm高くなる。

 また、ボディーカラーに関しては、新色の「キャンディピンクメタリック」「サマーブルーメタリック」「パッションオレンジ」にホワイトルーフを組み合わせた2トーンカラー車、「スチールシルバーメタリック」「パールホワイト」「フェニックスレッドパール」にブラックルーフを組み合わせた2トーンカラー車に加え、モノトーンカラーを5色設定する。

 グレードは自然吸気エンジンの「A」「G」「X」と、ターボエンジンの「Gターボ」「Xターボ」で、全車トランスミッションはCVTを組み合わせるが、自然吸気エンジン搭載のA/Gグレードは5速MTも展開する。車両価格は104万8950円~157万6050円。

ハスラーのボディーサイズは3395×1475×1665mm(全長×全幅×全高)。ボディーカラーはホワイトルーフまたはブラックルーフの2トーンカラーモデルをそれぞれ3色設定するとともに、モノトーン5色を用意
ベーシックグレードの「A」(104万8950円)。15インチのスチールホイールを装備するとともに、エコドライブアシスト照明、テーブル機能付きインパネボックス(助手席)、ラゲッジユーティリティナット(8個所)などが付く。直列3気筒DOHC 0.66リッター自然吸気エンジンの最高出力は38kW(52PS)/6000rpm、最大トルクは63Nm(6.4kgm)/4000rpm。2WD(CVT)車のJC08モード燃費は26.0km/L。ちなみにハスラーの燃費最良グレードはG/Xの2WD(CVT)車で、29.2km/Lを達成している
Aグレードのインテリア。インパネのカラーパネルはパッションオレンジのボディーカラーを除きすべてピュアホワイトを採用。また、シートパイピングの色はボディーカラーによって異なり、キャンディピンクメタリック、サマーブルーメタリック、パッションオレンジはそれぞれピンク、ブルー、オレンジに、それ以外のボディーカラーはすべてホワイトのシートパイピングとなる
フェニックスレッドパールにブラックルーフを組み合わせた2トーンカラー車。直列3気筒DOHC 0.66リッター ターボエンジンを搭載し、最高出力47kW(64PS)/6000rpm、最大トルク95Nm(9.7kgm)/3000rpmを発生。ターボ車のJC08モード燃費は2WD車が26.8km/L(4WDは25.0km/L)
パッションオレンジとホワイトルーフの2トーンカラー車。インパネとシートパイピングのカラーはオレンジ
サマーブルーメタリックとホワイトルーフの2トーンカラー車。インパネはピュアホワイト、シートパイピングのカラーはブルー
ハスラーではアウトドアシーンに合わせた5つのアクセサリーパッケージを用意。写真は「スキー&スノーボードパッケージ」(6万3946円)で、ラゲッジマット(ソフトトレー)、マルチルーフバー(サイド)、ラゲッジネット、ラゲッジバーが備わり、さらにアクセサリーのベースキャリアやスキー&スノーボードアタッチメントなども付いている
「キャンプパッケージ」(6万219円)はカーテン&タープキット、ラゲッジマット(ソフトトレー)、ラゲッジネット、ユーティリティカラーリングフック×2をパッケージにしたもの

これまでになかったまったく新しいジャンルの軽自動車

本田治副社長

 発表会でハスラーについて解説した本田副社長は、「ハスラーは、ワゴンタイプの軽乗用車と同等の広い室内空間にSUVの走破性・機動性を持たせ、お客様の毎日を生き生きとしていただける、これまでになかったまったく新しいジャンルの軽自動車。スズキらしい商品で、新しい市場を作ることを目標に開発した」と紹介するとともに、近年の軽自動車市場の動向を紹介。

 本田副社長によると、2013年4月~11月における軽乗用車の届出台数をタイプ別で見たところ、「軽ワゴン」47.3%、「軽ハイトワゴン」31.3%、「セダン」18.4%、「軽1BOX」2.1%、「クロスカントリー」0.9%、「2シーター・その他」0.01%となり、「経済性や室内の広さが支持されている軽ワゴンと軽ハイトワゴンを合わせると約78%になる。これら6つのタイプでの構成はここしばらく変わっておらず、ここで私どもは『ちょうど今のような雪のシーズンでももっと使いやすい軽ワゴンを作ろう』『活動的に、もっと楽しくなる軽ワゴンを作ろう』と考えた。そこから作ったのが今までになかった新ジャンルの軽クロスオーバーを商品コンセプトとするハスラーだ」と紹介。

 エクステリアデザインは、立てたAピラーとロングキャビンにより独自の存在感を持ったシルエットとし、「軽ワゴンとSUVを融合させた個性的なデザインに仕上がった。初めて見た時から楽しさを感じ、乗りたくなるようなプレミアムなデザインにスズキのデザイナーが仕上げてくれた」と述べるとともに、初代/2代目「エスクード」のデザインテーマと共通する前後ブリスターフェンダーを採用するなど、「各所にこれまでスズキがリリースしてきたSUV車の流れを汲む、懐かしさの中に新しさを感じさせることにも気を配った」と解説した。

 インテリアは「乗ってワクワク、使って楽しい、アイデアたっぷり空間!!」をコンセプトとし、鮮やかなカラーパネルをインパネ全体に使うとともに、ダークグレーの内装色とのハイコントラストな組み合わせによってスポーティな演出がなされる。ヘッドランプと共通のモチーフをメーター、スピーカーリング、エアコンルーバーリングに採用することで内外装の統一感も図っている。

 また、停車中にテーブルとして使える「テーブル機能付きインパネボックス」や、食事の際などに便利な「助手席シートバックテーブル」、インパネに加えラゲッジルームにも備わるアクセサリーソケット、ペットボトルを2本収納できるリアドアポケットなど、高いユーティリティ性能を備えるとともに、「汚れをふきとりやすい素材を使ったラゲッジフロアは、海やスキーなど屋外でアクティブにクルマを使うお客様の声を取り入れた」(本田副社長)。

2013年4月~11月における軽乗用車の届出台数をタイプ別で見たところ。「軽ワゴン」47.3%、「軽ハイトワゴン」31.3%、「セダン」18.4%、「軽1BOX」2.1%、「クロスカントリー」0.9%、「2シーター・その他」0.01%との比率となっており、軽ワゴンと軽ハイトワゴンで約78%を占める
ハスラーの商品コンセプトは「今までなかった新ジャンル アクティブなライフスタイルに似合う軽クロスオーバー」
5つの商品特長
ワゴンRと同等の広い室内空間を確保
ハスラーは180mm(4WD車は175mm)の最低地上高を確保するとともに、アプローチアングルを28°(ワゴンR FXは25°)、デパーチャーアングルを46°(同41°)とし、起伏のある路面などでのバンパー接地を低減する
シルエットは独自の存在感を持つ
ボディー各所にスズキのSUV車の伝統を連想させる、個性的な造形を採用
空力性能はワゴンRと同等を実現
インテリアのコンセプト
ボディーカラーは全11パターンを展開
インパネとシートパイピングカラーはボディー色によって異なる
収納も多数用意される
ラゲッジルームに汚れを拭き取りやすい素材を採用した

 パワートレーンについては、A/G/Xグレードが自然吸気の直列3気筒DOHC 0.66リッター、Gターボ/Xターボが直列3気筒DOHC 0.66リッター ターボ。全グレードに2WD(FF)と4WDを設定し、A/Gグレードでは5速MTも設定する。また、減速エネルギー回生機構「エネチャージ」、13km/h以下になると自動でエンジンを停止する「新アイドリングストップシステム」といった燃費対策も盛り込まれ、JC08モード燃費は自然吸気エンジンのCVT車(2WD)で29.2km/Lを達成した。

 4WD車では、ブレーキペダルで車両のコントロールをするのが困難な際に、ブレーキ操作なしに約7km/hの一定速度で降坂する「ヒルディセントコントロール」、雪道やぬかるみといった滑りやすい路面での発進時にスムーズな発進をサポートする「グリップコントロール」を、軽自動車として初めて採用(ともにAグレード除く)している。

 本田副社長は最後に、先日行われた東京モーターショーでハスラーを展示したことについて触れ、「お客様の行動範囲を広げる道具としてさまざまな用途が予感できる、またお客様のライフスタイルを表現するクルマとして、東京モーターショーにご来場いただいた方に多くの興味を持っていただくことができた。ハスラーは軽自動車に求められる燃費、機能、室内の広さに加え、走破性、安全性、そして存在感のあるデザインを兼ね備えた、これまでにない楽しさと多用途を備えたクルマ。スズキならではの軽クロスオーバーという新たな市場を切り開いていきたいと考えている」と今後の抱負を述べ、プレゼンテーションを締めくくった。

寒冷地仕様について
グレード展開とJC08モード燃費
4WD車では「ヒルディセントコントロール」「グリップコントロール」を軽自動車として初採用
追突事故の被害軽減を図る「レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)」、ペダルやシフトの操作ミスによる衝突回避に貢献する「誤発進抑制機能」といった安全装備も付く

軽自動車税の税率アップに「心の中は燃えちぎっている」

鈴木修社長

 発表会の最後に行われた記者との質疑応答の場で、新しいジャンルとなるハスラーを発表した理由について聞かれた鈴木修社長は、「これまで実用的な分野で軽自動車を作ってきたが、少し遊び心が足りなかったのかなと思う。大きいクルマだけじゃなく小さいクルマでも遊べる、皆が楽しめるクルマが必要だと思った」と述べた一方で、今年度の軽自動車の販売台数が210万台になるとの見通しについては「“軽自動車で仕方がない時代”から“軽自動車がいいじゃないか”という考え方に皆さん変わってきたのではないか。当初はアメリカナイズされて大きいことがいいことという考え方だったが、ヨーロッパと同じく実用車の方向に変わってきたと思う。(省燃費という観点で)小さく作るということは、素材を少なく使うということで省エネルギーであり、そういう点では時代の方向が(軽自動車に)向いているのではないか。従って(軽自動車の販売比率が)41%という構成比は今後増えることはあっても減ることはないと思う。超小型モビリティは噂されるが超大型モビリティが話題になることはない。超小型モビリティが噂になるのは世相を反映していると思う」との見方を示した。

 なお、12月12日に自由民主党と公明党から発表された「平成26年度税制改正大綱」では、2015年度以降に新たに取得される4輪車等の軽自動車税の税率を1.5倍にすることが明らかになっているが、そのことがすんなりと決まりすぎで業界として跳ね返せる部分もあったのではないかとの質問に対しては、「おとなしく解決したと言われたが、心の中は燃えちぎっている。どこかで恨みを晴らしたいと思っている。それが41%の構成比を高めることだ」と心中を明かすとともに、今後より軽自動車の販売比率を高めていくことを誓った。

(編集部:小林 隆)