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NEXCO中日本、より安全な高速道路のために「E-MAC(イーマック)技術研修センター」開設

故障を発生させ修理を体験することで、メンテナンススキルを向上

高速道路のトンネルが再現された「E-MAC(イーマック)技術研修センター」
2014年5月29日開設

 NEXCO中日本(中日本高速道路)の関連会社である中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋は、「E-MAC(イーマック)技術研修センター」(以下、E-MAC)を岐阜県各務原市に5月29日に開設する。E-MACは高速道路のメンテナンススキル向上を目指した施設で、Electricity(電気)、Machine(機械)、Architecture(建築)、Communicatioin(通信)、Civil Engineering(土木)から名付けられている。開設に先立ち報道陣向けに施設公開が行われた。

E-MAC技術研修センター
E-MACのロゴ。右上に向かう道路のイラストは技術の向上を表している

 E-MACは2011年11月に構想を立ち上げ。その背景としては、中日本ハイウェイ・エンジニアリングが日常的に行う業務である高速道路の点検・修理スキルの維持・向上の必要性があった。近年は高速道路の施設において信頼性の高いものが増えたため、点検などは日常的に行っているものの、実際に修理する機会が減少。それ自体は望ましいことだが、結果として修理スキルを向上させるチャンスが減っているという。また、2012年12月には中央自動車道 笹子トンネル(上り)でトンネル天井板崩落事故が発生。死者9名を数えるほどの大事故となり、問題は天井板構造にあったものの、高速道路の点検体制や点検能力も問われる事態となった。

 E-MACはそうしたことを踏まえて作られており、「安全文化を身に付ける」「技術向上」「技術伝承」の3つを柱に研修を行っていく施設となっている。単に修理技術の向上だけでなく、何が危険なのか予測すること(気づき)にも重きを置いている。

施設の中に高速道路を再現

 2階建ての施設は、およそ2/3ほどが吹き抜け構造になっており、その吹き抜け部分には高速道路のトンネル、足場、橋梁などを再現。トンネル設備の点検や修理、落下物除去のためのシミュレーションなどが行えるようになっていた。

E-MACの1階、2階の吹き抜け部分。高速道路6車線分くらいの幅はあるだろうか。トンネルや足場が再現されている

 トンネル設備も、最新のLEDランプや消火栓だけでなく、故障する可能性が高くなっているメタルハライドランプや旧型消火栓などを設置。高速道路で起こり得る事態に対応する経験を積んでいく。また、施設の一部のコンクリート塀には、内部に空間などが故意に作られており、打音検査でエラーを見つける訓練ができるようになっている。これは、トイレのタイル、足場なども同様で、工事ミスを見つける訓練が行えるよう作られていた。

 そのほか、高所で足場を組まずとも点検できるよう、ロープアクセスができる人材を育てているとのこと。そのロープアクセス訓練用の施設や、電柱に上る訓練が行える施設なども用意されていた。

座学による学習施設。映像を見たり、講義を受けたり、インタラクティブ端末で自主学習したりと、危険への“気づき”を意識したカリキュラムが組まれている
トンネルが半分ほど再現された施設。すべてコンクリートに見えるが、重量の問題からベニヤ板で構成されている。そこにトンネルの各種設備が取り付けられている
最新式のプロビーム照明を行うLED灯
こちらは旧型の蛍光灯
旧型の消火栓
新型の消火栓。消火ノズルが軽量化されている
火災検知器
消火栓など水回りの上部には水噴射式の消火ノズルが設置されている
水噴射部
実際に水を噴射するデモが行われた
消火ノズルの点検・整備車。一度に3つのノズルに対して作業できる
点検・整備車のノズル点検用ボックス
高速道路の落下物を取り除く訓練エリア。330インチのスクリーンに投影されるクルマのタイミングを見極めて飛び出す
施設内に組まれていた足場。間違って組まれている個所があり、それを見つけるなどの訓練を行う
各種の電柱。電柱に上る訓練や電柱上で作業を行う訓練が行える
打音点検実技パネル。コンクリート内部に剥離や空間が設けてあり、叩いていくと音が変わるようになっている。その音の違いを学習する
ロープアクセス訓練用施設。ロープアクセスの技術を持つ点検員が増えることで足場を組むことなく各種の点検が行えるようになる。ロープで壁面を上りながら打音点検を行っていた

 中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋のスタッフは、「高速道路ではミスができないが、ここ(E-MAC)ではミスができる」という。訓練のために実際の高速道路を使うことは難しく、橋梁の裏側点検など一般道を利用しての訓練は基本的に行われない。それが、ここでは何度も訓練を繰り返すことができ、「なぜ作業にミスがあったのか」「なにが問題だったのか」など、高速道路のメンテナンス作業を深く学べる。

 E-MACは、当初中日本ハイウェイ・エンジニアリングのスタッフの訓練施設として使われ、同社のスタッフの訓練がある程度進んだ段階で、要望があればNEXCO東日本(東日本高速道路)、NEXCO西日本(西日本高速道路)などへの貸し出しを行うことを視野に入れているとのことだ。

高速道路に設置されている受電盤の故障訓練設備。実際に高速道路で使われていたものが移設された
ワーニングランプが点灯
図面を見て配線を追いながら故障個所を探り当てていく
旧型の電光掲示板も移設してあり、修理訓練が行える
LEDのモジュールが交換されていた
トイレの壁面タイルも打音点検ができるようエラー個所が用意されている。エラー個所を見つけたらテープでマーキング
高所作業車による橋梁の打音点検訓練。高所作業車のバスケットを適切な個所に安全に近づけていく
バスケットのコントロールパネル
この位置だと遠いので安全に打音点検ができない
しっかり近づけて打音点検。橋梁もベニヤ板でできており、打音点検を行っている四角いエリアのみコンクリート

(編集部:谷川 潔)