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ユーザーが選んだNo.1峠、伊勢志摩スカイラインで開催された「86S(ハチロックス) J006 ISESHIMA」

2014年11月1日開催

あいにくの雨の中ながら、「86S(ハチロックス) J006 ISESHIMA」に続々と集まってくる参加者

 11月の3連休初日となる11月1日に、86ファンの集いである「86S(ハチロックス) J006 ISESHIMA」が開催された。開催場所となったのは、三重県の伊勢志摩スカイライン。トヨタマーケティングジャパンが運営する86 SOCIETY(http://toyota-86.jp/)の人気投票でNo.1となった峠だ。

 86Sは開催ごとにナンバーが振られており、J006は6回目の開催ということになる。このJナンバーはトヨタマーケティングジャパンが運営するイベントに付けられており、そのほか86 SOCIETYに集った86ファンが運営するJFナンバーのイベント(オフ会)も活発に行われている。当初はJナンバーのイベントだけだったが、今ではJFナンバーのイベントが頻繁に開催されており、86ユーザーの裾野は着実に広がりつつあるようだ。

 J006 ISESHIMAは、Car Watch本誌の人気連載「高橋敏也のトヨタ『86(ハチロク)』繁盛記」で取り上げた、86S J005 TOKACHIに次ぐものとなる。

●高橋敏也のトヨタ「86(ハチロク)」繁盛記 その17:「そうだ、十勝へ行こう 86S HACHI-ROCKS J005 TOKACHI」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/longtermreview/86/20141017_671277.html

 J005 TOKACHIは2日間にわたる大規模なものだったが、J006 ISESHIMAは1DAYイベントとなっており、多くの人が海を越える必要のあるTOKACHIよりは参加しやすいものとなっており85組138人が伊勢志摩スカイラインに集まった。

J006 ISESHIMA
受け付けエリア。これまでのハチロックスにおけるメッセージバナーがお出迎え

 但し、11月1日はあいにくの雨。雨は降ったり止んだりという状況で、落ち着かない天気だったが、参加者はさほど気にせずイベントを楽しんでいたようだ。

ずらりと並んだ86。ノーマルの86もあれば、カスタマイズした86もあり、壮観

 J006 ISESHIMAで最初に挨拶に立ったのは、ハチロックスではおなじみとなった、ハチロクの開発者である多田哲哉チーフエンジニア、ハチロックスの仕掛け人である喜馬克治氏、そして司会のピストン西沢氏。ピストン西沢氏から話をふられた多田チーフエンジニアは、雨の天気について「86は雨のテストも一杯やっている」と雨にも強いことをアピール。雨のFR車となると高速の直進性が気になるところだが、それについても「雨のアウトバーンを200km/hで3時間走り続ける」テストなどを行っていると、万全の開発を行ってきたと語った。

オープニングの挨拶に立つ、ハチロックスではおなじみの3人。左からトヨタマーケティングジャパン 喜馬克治氏、トヨタ自動車 スポーツ車両統括部 部長 多田哲哉氏、ピストン西沢氏

 喜馬氏は86 SOCIETYで2015年2月28日まで開催している「86 選定峠ラリー 2014」の進行状況を紹介。去年は2人だった全峠制覇者が、すでに5人も出ているといい、86を楽しむ人が増えていることを参加者に報告した。

イベントを支えるスタッフ、サイドターン体験の講師、カスタマイズメーカーのスタッフも最初に紹介。最初に顔を覚えてもらうことで、イベント中の会話が弾みやすくなる

 オープニングの挨拶の後は、各組に分かれてサブイベントに順次参加していく。J006 ISESHIMAに用意されたのは、多田哲哉チーフエンジニアと語り合う「CEミーティング」、特設エリアでサイドターンに挑戦する「サイドターン体験」、No.1峠での記念写真「86Sフォトスポット」、TRD、モデリスタ、トムスの3社による「86カスタマイズカー講座」などなど。お昼休みにはみんなでバーベキューを楽しむ「Ridge BBQ」が開催された。以下に紹介していく。

●CEミーティング

できるだけ多くの参加者と過ごそうとする多田チームエンジニア。日本で最もユーザーの声を聞いている自動車開発者といってよいだろう

 多くの参加者が楽しみにしているのがこのCEミーティングだろう。直接、愛車の生みの親と話すことができ、愛車に込められた作り手の思いを知ることができる。同時並行でサブイベントが開かれているため、初回のCEミーティングしか取材することができなかったが、多田チーフエンジニアに鋭い質問が飛んでいた。その中でも、とくに参加者が気になっていたのがオープンカーについて。

 オープンカーについての質問に答える形で、多田チーフエンジニアはスポーツカー作りについて語った。

 「オープンはいろんなモータショーで展示したように技術的な検討はいろいろやっている。本当に出せるかどうかは、いまだによく分からない。アメリカと日本は結構需要はあると思うが、大きなマーケットのヨーロッパは景気がわるく売れないだろうとみている。そうすると全体的な数量が足りず、(製品として)成立しなくなってくる。ちょっとくらい赤字でも売ればよいと言われるけど、1回そういうことを始めると昔のトヨタがそうだったように、景気のよいときはいろいろなスポーツカーが出るけど、景気がわるくなったらみんなスポーツカーをやめちゃった。その結果、スポーツカーを復活させるまでにすごい時間がかかって、みなさんにもお待ちいただいて、やっと86を出せた。ああいくことを繰り返すのは非常によくないと。ま、そういう思いで(オープンカーについては)慎重にやっています」

 「ほかにも、雑誌に出ているような大きなスポーツカーとか、小さいとのかいろいろやっているけど、どれを最初に出すと皆さんが喜んでくれるのかを考えている」

 「86自体もどんどん進化していく。そのときに、今までだったら『新しい86にどんどん買い換えてね』みたいなことを一杯言ってきたのだけど、そういうことだけじゃないよねと。最初に(86の)オーナーになってくれた皆さんは、大事な私たちの宝物。そういう人たちと一緒に86の進化を体感いただけるようにしたいというのが変わらない思いです。その1つがボルトの改良みたいなことで、スポーツカーのユースケースの中で一番大事にしています。今後も楽しみにしてください」

 多田チーフエンジニアが強調していたのは、スポーツカーを作り続けることと、86を買ってくれたお客さんに対する感謝。86の今後についても質問があり、「86は毎年進化させる。発売してからしばらくは納車待ちなどがあり、その段階で仕様を変更するということは考えられなかった。今は納車待ちも解消しており、前回のボルトのように毎年毎年進化させていく」と、毎年の進化を約束するとともに、すでに86ユーザーとなった人も進化を実感できるような改良方法を意識して行っていくようだ。

●サイドターン体験

 サイドターン体験だが、サイドターンを安全に行うにはある程度のスペースを必要とする。そのスペースが峠の駐車場の一角に作られていたのには驚いた。また、その一角はダートとなっており、泥を跳ね上げながらのサイドターン体験。86がラリーを走るときは、こんな感じなのだろうなという風景になっていた。

狭い峠の駐車場を工夫する形でサイドターン体験を行っていた

●86Sフォトスポット

雨の中、参加者をフォトスポットで撮影する小林稔カメラマン

 86Sフォトスポットは、伊勢志摩スカイラインの風光明媚な個所で、プロカメラマンが記念写真を撮ってくれるというもの。カメラマンは、JRPA(日本レース写真家協会)会長の小林稔氏で、86ACADEMYのフォトカルチャースクールの講師も務めている。モータースポーツ写真の第一人者で、カメラ誌「CAPA」の流し撮りGPの審査委員長でもある。

 そんなプロ中のプロが撮影してくれるのだが、天候には勝てないのが事実を写す写真というもの。海が広がるはずだった背景は、濃い霧となっており、やや残念は風景となっていた。ただ、そうした降りしきる雨の中でも、小林カメラマンは参加者に明るく声をかけ、しっかりとした構えでシャッターを1枚1枚切っていた。「雨の日は、雨の日にしか撮れない写真を撮る!!」というあるカメラマンの言葉を思い出しつつ、小林カメラマンの撮影風景を見学させていただいた。

撮影風景を後ろから
本来は参加者の背景には伊勢志摩の海が美しく見えるという
雨の中、参加者に声をかけつつシャッターを切っていた

●Ridge BBQ

バーベキューは楽しい。とくにお腹が空いているときには、美味しく食べられるもの。初めて会った人同士でも会話が弾みやすい

 ある意味一番盛り上がっていたのが、お昼のRidge BBQかもしれない。主催者が用意したテントの中で、お肉や野菜を焼きつつ、あちこちで86ユーザー同士の会話が弾んでいた。このRidge BBQにはサプライズが用意してあり、途中から860gの牛肉をプレゼント、さらにその牛肉に「86S」の焼き印を押して回るなど、主催者が会話のきっかけ作りを意識しているのがハチロックスというイベントの魅力かもしれない。

Ridge BBQのスタートは乾杯から。乾杯ドリンクに使用するのは、ノンアルコールシャンパン
乾杯ドリンクは、シドルリ・ミニャール
多田チーフエンジニアは、各参加者のテントで乾杯
バーベキューのためにお肉や野菜をセッティング
炭火で中からしっかり焼き上げる
サプライズの牛肉。860gとのこと
登場した「86S」の印
バーナーで加熱する
焼き上げた肉に86Sの印を押しつけると
「86S」の文字が刻まれた
多田チーフエンジニアも楽しみながら86Sの文字を刻んでいた
カスタマイズカーのコーナー
地元となる三重からは、鈴鹿のエリア86がデモカーを展示
86 SOCIETYは、一部改良後の86を展示
TRDの展示コーナー。100台限定で販売された「86 TRD 14R-60」 や、各種パーツ装着車など
モデリスタのデモカー。外見はおとなしめだが、エンジンルームなど随所におしゃれなアイテムが装着されていた
トムスは、スーパーチャージャーをアドオンした86を展示
参考最高出力は170kW(232PS)、参考最大トルクは278Nm(28.4kgm)
トムスのLEDテールランプ。とても人気の商品とのこと。ハチロックス参加者のクルマについていることも多かった
こちらは、4本出しのマフラー。配置はレクサス RC Fと同様の雰囲気に
TRD、モデリスタ、トムスのスタッフによる、86カスタマイズカー講座。各社の特色などが分かり、興味を持ったらブースで直接相談

 トヨタは2012年2月2日に幕張メッセで開催した86の発表会において、“ドライバーと語り合い、ともに進化できる”と86を紹介。86というスポーツカーでスポーツカーカルチャーを推進していくことを宣言した。従来のスポーツカー好きからすると、「そうまでしなければスポーツカーを楽しめないのだろうか?」と思われたその活動もすでに3年目。ハチロックスの参加者たちと一緒にいると、クルマをコミュニケーションツールとして捉える新しいスポーツカー好きが育っていることを感じる。

 86で思い切りレースを楽しみたい人のためには「GAZOO Racing 86/BRZ Race」というプログラムを用意し、86というエッジの効いたガジェットを楽しみたい人には86 SOCIETYやハチロックスを用意する。そんな取り組みが40回以上のユーザーイベント開催や、J006 ISESHIMAで見られた女性同士のペアによるハチロックス参加につながっているのだろう。

 そして、多田チーフエンジニアが語るように、トヨタは大きなスポーツカーや小さいスポーツカーの発売を検討しているのだろう。多田チーフエンジニアは、ハチロックスにマメに参加することで、ユーザーの生の声を体感。86のユーザーに真摯に向き合うことで、新しいスポーツカーの世界を生み出そうとしているように見えた1日だった。

イベントもいよいよ終盤へ。各組ごとにどのようなハチロックスを行いたいかが提案され、「温泉86S」がベスト作品に選ばれた
ハチロックスバナーが渡され、温泉86Sで使われていくことになる
ピストン西沢氏の「ハーチ」というかけ声に「ロックス!!」、喜馬氏の「ハーチ」というかけ声に「ロックス!!」、多田チーフエンジニアの「ハーチ」というかけ声に「ロックス!!」という、ハチロックス三唱でイベントをシメる
お家に帰るまでがハチロックス。イベントの最後は伊勢志摩スカイラインを貸し切ってのパレードラン
霧の夜に86のテールランプが消えていった。ちなみに、手前のクルマはトムスのLEDテールランプのようだ

(編集部:谷川 潔/Photo:安田 剛)