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ユーザーが選んだNo.1峠、伊勢志摩スカイラインで開催された「86S(ハチロックス) J006 ISESHIMA」
(2014/11/28 12:37)
- 2014年11月1日開催
11月の3連休初日となる11月1日に、86ファンの集いである「86S(ハチロックス) J006 ISESHIMA」が開催された。開催場所となったのは、三重県の伊勢志摩スカイライン。トヨタマーケティングジャパンが運営する86 SOCIETY(http://toyota-86.jp/)の人気投票でNo.1となった峠だ。
86Sは開催ごとにナンバーが振られており、J006は6回目の開催ということになる。このJナンバーはトヨタマーケティングジャパンが運営するイベントに付けられており、そのほか86 SOCIETYに集った86ファンが運営するJFナンバーのイベント(オフ会)も活発に行われている。当初はJナンバーのイベントだけだったが、今ではJFナンバーのイベントが頻繁に開催されており、86ユーザーの裾野は着実に広がりつつあるようだ。
J006 ISESHIMAは、Car Watch本誌の人気連載「高橋敏也のトヨタ『86(ハチロク)』繁盛記」で取り上げた、86S J005 TOKACHIに次ぐものとなる。
●高橋敏也のトヨタ「86(ハチロク)」繁盛記 その17:「そうだ、十勝へ行こう 86S HACHI-ROCKS J005 TOKACHI」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/longtermreview/86/20141017_671277.html
J005 TOKACHIは2日間にわたる大規模なものだったが、J006 ISESHIMAは1DAYイベントとなっており、多くの人が海を越える必要のあるTOKACHIよりは参加しやすいものとなっており85組138人が伊勢志摩スカイラインに集まった。
但し、11月1日はあいにくの雨。雨は降ったり止んだりという状況で、落ち着かない天気だったが、参加者はさほど気にせずイベントを楽しんでいたようだ。
J006 ISESHIMAで最初に挨拶に立ったのは、ハチロックスではおなじみとなった、ハチロクの開発者である多田哲哉チーフエンジニア、ハチロックスの仕掛け人である喜馬克治氏、そして司会のピストン西沢氏。ピストン西沢氏から話をふられた多田チーフエンジニアは、雨の天気について「86は雨のテストも一杯やっている」と雨にも強いことをアピール。雨のFR車となると高速の直進性が気になるところだが、それについても「雨のアウトバーンを200km/hで3時間走り続ける」テストなどを行っていると、万全の開発を行ってきたと語った。
喜馬氏は86 SOCIETYで2015年2月28日まで開催している「86 選定峠ラリー 2014」の進行状況を紹介。去年は2人だった全峠制覇者が、すでに5人も出ているといい、86を楽しむ人が増えていることを参加者に報告した。
オープニングの挨拶の後は、各組に分かれてサブイベントに順次参加していく。J006 ISESHIMAに用意されたのは、多田哲哉チーフエンジニアと語り合う「CEミーティング」、特設エリアでサイドターンに挑戦する「サイドターン体験」、No.1峠での記念写真「86Sフォトスポット」、TRD、モデリスタ、トムスの3社による「86カスタマイズカー講座」などなど。お昼休みにはみんなでバーベキューを楽しむ「Ridge BBQ」が開催された。以下に紹介していく。
●CEミーティング
多くの参加者が楽しみにしているのがこのCEミーティングだろう。直接、愛車の生みの親と話すことができ、愛車に込められた作り手の思いを知ることができる。同時並行でサブイベントが開かれているため、初回のCEミーティングしか取材することができなかったが、多田チーフエンジニアに鋭い質問が飛んでいた。その中でも、とくに参加者が気になっていたのがオープンカーについて。
オープンカーについての質問に答える形で、多田チーフエンジニアはスポーツカー作りについて語った。
「オープンはいろんなモータショーで展示したように技術的な検討はいろいろやっている。本当に出せるかどうかは、いまだによく分からない。アメリカと日本は結構需要はあると思うが、大きなマーケットのヨーロッパは景気がわるく売れないだろうとみている。そうすると全体的な数量が足りず、(製品として)成立しなくなってくる。ちょっとくらい赤字でも売ればよいと言われるけど、1回そういうことを始めると昔のトヨタがそうだったように、景気のよいときはいろいろなスポーツカーが出るけど、景気がわるくなったらみんなスポーツカーをやめちゃった。その結果、スポーツカーを復活させるまでにすごい時間がかかって、みなさんにもお待ちいただいて、やっと86を出せた。ああいくことを繰り返すのは非常によくないと。ま、そういう思いで(オープンカーについては)慎重にやっています」
「ほかにも、雑誌に出ているような大きなスポーツカーとか、小さいとのかいろいろやっているけど、どれを最初に出すと皆さんが喜んでくれるのかを考えている」
「86自体もどんどん進化していく。そのときに、今までだったら『新しい86にどんどん買い換えてね』みたいなことを一杯言ってきたのだけど、そういうことだけじゃないよねと。最初に(86の)オーナーになってくれた皆さんは、大事な私たちの宝物。そういう人たちと一緒に86の進化を体感いただけるようにしたいというのが変わらない思いです。その1つがボルトの改良みたいなことで、スポーツカーのユースケースの中で一番大事にしています。今後も楽しみにしてください」
多田チーフエンジニアが強調していたのは、スポーツカーを作り続けることと、86を買ってくれたお客さんに対する感謝。86の今後についても質問があり、「86は毎年進化させる。発売してからしばらくは納車待ちなどがあり、その段階で仕様を変更するということは考えられなかった。今は納車待ちも解消しており、前回のボルトのように毎年毎年進化させていく」と、毎年の進化を約束するとともに、すでに86ユーザーとなった人も進化を実感できるような改良方法を意識して行っていくようだ。
●サイドターン体験
サイドターン体験だが、サイドターンを安全に行うにはある程度のスペースを必要とする。そのスペースが峠の駐車場の一角に作られていたのには驚いた。また、その一角はダートとなっており、泥を跳ね上げながらのサイドターン体験。86がラリーを走るときは、こんな感じなのだろうなという風景になっていた。
●86Sフォトスポット
86Sフォトスポットは、伊勢志摩スカイラインの風光明媚な個所で、プロカメラマンが記念写真を撮ってくれるというもの。カメラマンは、JRPA(日本レース写真家協会)会長の小林稔氏で、86ACADEMYのフォトカルチャースクールの講師も務めている。モータースポーツ写真の第一人者で、カメラ誌「CAPA」の流し撮りGPの審査委員長でもある。
そんなプロ中のプロが撮影してくれるのだが、天候には勝てないのが事実を写す写真というもの。海が広がるはずだった背景は、濃い霧となっており、やや残念は風景となっていた。ただ、そうした降りしきる雨の中でも、小林カメラマンは参加者に明るく声をかけ、しっかりとした構えでシャッターを1枚1枚切っていた。「雨の日は、雨の日にしか撮れない写真を撮る!!」というあるカメラマンの言葉を思い出しつつ、小林カメラマンの撮影風景を見学させていただいた。
●Ridge BBQ
ある意味一番盛り上がっていたのが、お昼のRidge BBQかもしれない。主催者が用意したテントの中で、お肉や野菜を焼きつつ、あちこちで86ユーザー同士の会話が弾んでいた。このRidge BBQにはサプライズが用意してあり、途中から860gの牛肉をプレゼント、さらにその牛肉に「86S」の焼き印を押して回るなど、主催者が会話のきっかけ作りを意識しているのがハチロックスというイベントの魅力かもしれない。
トヨタは2012年2月2日に幕張メッセで開催した86の発表会において、“ドライバーと語り合い、ともに進化できる”と86を紹介。86というスポーツカーでスポーツカーカルチャーを推進していくことを宣言した。従来のスポーツカー好きからすると、「そうまでしなければスポーツカーを楽しめないのだろうか?」と思われたその活動もすでに3年目。ハチロックスの参加者たちと一緒にいると、クルマをコミュニケーションツールとして捉える新しいスポーツカー好きが育っていることを感じる。
86で思い切りレースを楽しみたい人のためには「GAZOO Racing 86/BRZ Race」というプログラムを用意し、86というエッジの効いたガジェットを楽しみたい人には86 SOCIETYやハチロックスを用意する。そんな取り組みが40回以上のユーザーイベント開催や、J006 ISESHIMAで見られた女性同士のペアによるハチロックス参加につながっているのだろう。
そして、多田チーフエンジニアが語るように、トヨタは大きなスポーツカーや小さいスポーツカーの発売を検討しているのだろう。多田チーフエンジニアは、ハチロックスにマメに参加することで、ユーザーの生の声を体感。86のユーザーに真摯に向き合うことで、新しいスポーツカーの世界を生み出そうとしているように見えた1日だった。