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11月14日~15日はSUPER GT 最終戦もてぎ。ノーハンデ勝負でチャンピオンを決定!!

東名と東北道が圏央道で直結し、神奈川・静岡から便利になったツインリンクもてぎ

2015年11月14日~15日開催(15日決勝)

現在66ポイントを獲得し、ドライバーランキングトップの12号車 カルソニック IMPUL GT-R

 11月14日~15日の2日間にわたり、SUPER GT最終戦となる「MOTEGI GT 250km RACE」が栃木県茂木町のツインリンクもてぎにおいて開催される。

 SUPER GTは、日本で最も人気があるレースシリーズ。観客動員の面でも、日本の3大メーカー、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業が参加しているという観点からも、現時点で日本の最高峰のレースシリーズと言える。その最終戦となるMOTEGI GT 250km RACEは、例年チャンピオンが決まるレースとして各チームともに力を入れている。

 本記事では、SUPER GTを初めて見に行く読者を対象に、SUPER GTの魅力や基礎的な話、実際にサーキットに行ってレースを観戦するうえで見所はどのあたりになるのかなどを紹介していく。

スポーツカーを改造して争われるGTレース

GT300クラスの9号車 PACIFIC マクラーレン with μ's

 SUPER GTとは、1994年に始まった全日本GT選手権に源流を持つ、GT(Grand Touring)カーを利用したレースシリーズだ。GTカーとは簡単に言えば、市販車の中でも長距離の高速ドライブに適したスポーツカーのことと定義されており、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェ、アウディやメルセデス・ベンツなどの高級ブランドのスポーツカーや、日本メーカーで言えばトヨタ「86」、日産「GT-R」、ホンダ「NSX」、スバル「BRZ」などが該当するだろう。

 そうしたスポーツカーをレーシングカーに改造してレースをやろう、それが1994年に全日本GT選手権として始まった時のSUPER GTのコンセプトで、それは今も続いている。つまり街中を走っているGTカーがものすごいレーシングカーに仕立てられ激しいレースを戦っている、この点がF1やスーパーフォーミュラなどの、レース専用のオープンホイールカーを利用するフォーミュラカーレースとの最大の違いと言ってよい。

GT300クラスの11号車 GAINER TANAX SLS

 SUPER GTには車両規定の違いで、GT500とGT300という2つのクラスが用意されており、速さの違う2つのクラスが混走していることが最大の特徴となっている。言ってみれば、F1とスーパーフォーミュラの2つのマシンが同時に走っているようなもので、それぞれのクラスにタイトルが掛けられており、どちらのクラスでもハイレベルな選手権争いが行われている。

 GT500とGT300の違いは、元々はGT500が500馬力程度、GT300が300馬力程度という意味だったらしいのだが、現在ではその意味は失われており、あくまでより速いクルマのカテゴリーがGT500、やや遅めのクルマがGT300と考えてよいだろう。以前はGT500が上位クラス、GT300が下位クラスと考えられることも多かったが、現在ではどちらかと言えばGT500が自動車メーカーがワークス体制で参加するクラス、GT300は自動車メーカーも参戦するが同時にプライベートチームも参戦するクラスという位置づけに変わってきている。

 どちらのクラスもそれぞれ特色があり、どちらの争いに注目してもおもしろいし、速いGT500が遅いGT300クラスを周回遅れにする時には、言ってみればGT300が“動くシケイン”状態になり、それによりドラマ(順位変動)が起こることもSUPER GTの2クラス混走の特徴となっている。

GT500とGT300が混走する世界でも類を見ないユニークなSUPER GT

 GT500クラスは2014年からドイツのGTカーのレースシリーズであるDTMと車両規定を合わせるために、共通モノコックという仕組みが導入され、自動車メーカーがそれを利用して外見を自社のGTカーとして製造するルールが導入されている。同時にエンジンに関してもNRE(Nippon Race Engine)と呼ばれる2.0リッター直列4気筒ターボエンジンの規定が導入されており、新世代のレーシングカーとして生まれ変わっている。

GT500マシン

 現在GT500には、レクサス、日産、ホンダのそれぞれば、LEXUS RC F、NISSAN GT-R、HONDA NSX CONCEPT-GTという名称でレーシングカーを作り、それをユーザーチームに供給して参戦している。

 車両を製作するのはそれぞれのメーカーだが、走らせるのはレーシングチームで、トヨタならトムス、日産なら星野レーシング、ホンダなら中嶋レーシングといった、往年の名ドライバーなどが設立しているユーザーチームや、NISMOといったワークスチームがこれを担当する。GT500は基本的に自動車メーカーが積極的に関わっており、各メーカーが自社の威信を掛けて開発し、強い車両を作ろうと日々切磋琢磨しているクラスとなる。

GT300マシン

 これに対してGT300は、自動車メーカーが車両を製作して供給している例もあるが、基本的にはプライベートチームが参戦するためのクラスとなる。GT300には2つの車両規定があり、1つがFIA-GT3、もう1つがJAF-GT300となる。FIA-GT3は、国際的に決められているGTカーの規格で、言ってみればメーカー純正の市販レーシングカーという扱いになる。メーカーによってチューンアップされそのままでレースに通用するが、FIAにより上限価格が決められ、レーシングチームは低コストで高いパフォーマンスを持つレーシングカーを入手できる。性能差はBOP(Balance Of Performance)と呼ばれる仕組みで調整されており、大きな不公平がないように調整されている。

GT300マシン

 JAF-GT300は日本のSUPER GT独自の仕組みで、メーカー自身やレーシングチームが自分で車両を大幅に改良してレーシングカーを仕立てることができる仕組みだ。さらに、今年からはマザーシャシーと呼ばれる、SUPER GTの主催者が作ったシャシーがベース車両として提供されており、レーシングチームがそれをベースに改造してレースに出場することも可能になっている。なお、FIA-GT3とJAF-GT300の性能差はSUPER GTの主催者による性能調整により、こちらも不公平がないように調整される。

 なお、GT500とGT300の車両は外見から見分けることができる。ヘッドライトカバー、ゼッケン、フロントウインドウステッカーの3個所が、白ないしは透明の場合にはGT500、黄色の場合にはGT300となる。

GT300マシン

観客を飽きさせず、激しい競争を促進

 SUPER GTを観戦していて楽しいのは、競争が激しく、見ているだけ面白くなるような工夫が随所に加えられていることだ。

 SUPER GTがユニークなのは、GT500とGT300というスピードが異なるレースが同時に行われていることだ。通常のレースだと、クラスは1つしかないので各車がまとまって走行するため、全車が一周するまで観客の前からクルマが消えてしまうということがよくある。しかし、速度の異なるGT500とGT300が混走するSUPER GTではそのようなことは少なく、サーキットの全域でどちらかのクルマが争っている状況になる。

 GT500と比べて速度が低いGT300のクルマをGT500のクルマが周回遅れにすることはよくあるものの、GT300もレースをしているので簡単に譲れない場合もある。それらの駆け引きがGT500のトップ争いに影響を及ぼすといったこともよく起こる。

 また、ドライバーが1人ではなく、2人ないしは3人が交代で乗る(今回のツインリンクもてぎの場合には2人)ことも面白いポイントだ。SUPER GTでは途中にピットインして、タイヤ交換(義務ではない、チームによってはその時間を節約するために交換しない場合もある)や給油、そしてドライバー交代をする必要がある。かつどちらかのドライバーはレースの1/3を最低でも走らないといけないため、どのタイミングでエースドライバーに交代するのかなども見所となる。

 なお、どちらのドライバーが乗っているかは、車両のフロントウインドーについているランプで確認することができる。エントリーリストで第1ドライバー(リストで左側に掲載されているドライバー)として登録しているドライバーが乗っている場合には赤になり、第2ドライバーなら青、第3ドライバーがいる場合には緑となる。

 そしてもう1つSUPER GTを特徴付けている制度がウェイトハンデ制度だ。SUPER GTでは特定の車両が独走したりすることがないように、第2戦以降はポイント×2kgのウェイトハンデを積むことになる。例えば優勝すると20ポイントを得ることができるので、20×2kg=40kgのウェイトを積む。なお、GT500のみ、ウェイトが50kgを超えた場合には、50kg分をエンジンの燃料流入制限(エンジンに送り込む燃料を制限する装置がGT500にはつけられている)の1段階ダウンに置きかえることができる。ポイントを獲得するほどハンデが重くなるため、速いクルマは遅くなり、よりエキサイティングなシリーズを演出することになる。

 ただし、このウェイトハンデは、第7戦ではポイント×1kgに減らされ、さらに最終戦ではノーハンデとなる。今回のツインリンクもてぎのレースは最終戦なので、全車ノーハンデで戦うことになる。つまり、今回のレースは1年間戦ってきた各車の本当の性能が明らかになるレースなのだ。

ファミリーにお勧めしたいキッズピットウォークは土曜日の予選後開催

 このように観客を飽きさせない仕組みを導入しているSUPER GTだが、実際にサーキットで見ると、さらに楽しい仕掛けがいくつも用意されている。

 F1を含む国際レースでは、観客とドライバー、パドックと呼ばれるメカニックや関係者のいるエリアの距離がやや遠いというのは以前から指摘されており、最近ではそうした国際レースでも観客との距離を縮める取り組みが多数行われるようになっている。だが、SUPER GTではそうした取り組みでも最先端をいっており、サーキットに行けば実際にドライバーやマシンに近づくことは難しいことではない。

 例えば、予選日となる土曜日にはピットウォークとキッズピットウォークというピットレーンが開放される時間がある。ピットウォークは文字どおりピットレーンを歩ける時間で、30分程度の時間を利用してピットの中にあるクルマに近寄ってみたり、ピットレーンまで出てきてくれるドライバー達にサインをもらったりすることが可能になっている(人気ドライバーの場合には行列なので、お目当てのドライバーがいる場合には早めに並んだ方がいい)。

 決勝日となる日曜日にはピットウォークとグリッドウォークが行われる。グリッドウォークはクルマがグリッドに整列した後に行われるスタート前のイベントで、実際にグリッドに並んでいるクルマに近づいて撮影したり、レースに向けて準備しているドライバーの近くに行ったりすることができる。

 筆者のお勧めは、土曜日の予選後に行われるキッズピットウォークだ。土日どちらのピットウォークも人気のイベントであるため参加者も多く、なかなかすべてのピットを見て回るというのは難しいが、キッズピットウォークは子供同伴が条件であるため比較的空いている。家族で行くことが可能であれば、キッズピットウォークはゆっくり見ることができるのでお勧めだ。ドライバーとて人の子、やはり女性と子供には優しくしたくなるのは世の常で、サインや写真をゲットするにはやはりファミリーで行くというのが一番確率が高くなるということは付け加えておきたい。

 パドック側に入るにはパドックパス、ピットウォークに入るにはピットウォークパスが観戦券とは別に必要になる。今回のレース向けにはファミリー向けのチケットが用意されているほか、ピットウォークパスに関しては子供(中学生まで)は無料になっている。従って、ファミリーで行くことを検討している場合には、大人のパドックパス、ピットウィークパスなどを前売りで入手しておくのがお勧めだ。

 なお、観戦券に関する情報はツインリンクもてぎのWebサイト(http://www.twinring.jp/supergt_m/ticket/index.html)を参照して頂きたいが、自由席であれば大人5200円で、中学生以下の子供は無料となっている。パドックパス、指定席券などを希望する場合にはそれらのチケットが別途必要になる。

グランドフィナーレなど最終戦ならではのイベントもあり

 このほか、今回のレースでは最終戦ならではのイベントが用意されている。1つにはグランドフィナーレと呼ばれるシリーズのクロージングイベントがレース終了後に行われる。グランドフィナーレにはSUPER GTに参加している全ドライバーが参加するほか、チームから観客へのプレゼントなども計画されおり、毎年このイベントを楽しみにしている人は多い。特に今年は、ドライバーがフィナーレの会場から退出する時に観客とハイタッチして退出する演出が行われる予定になっており、シーズン終了後の余韻を楽しみたいのであればお勧めのイベントだ。

 また、土日の両日に航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」がツインリンクもてぎ上空に飛来するほか、ブルーインパルスのパイロット/クルーのサイン会、撮影会が行われる予定だ。このほかにも多数のイベントが予定されており、詳しくはツインリンクもてぎのWebサイト(http://www.twinring.jp/supergt_m/event/index.html)で御確認願いたい。

航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」(松島基地 第4航空団 第11飛行隊)

 なお、ツインリンクもてぎでは、今回のレース開催に向けて、新しいアクセス路の紹介を行っている。ツインリンクもてぎにアクセスするには、東北自動車道の宇都宮IC(インターチェンジ)、常磐自動車道の水戸ICないしは水戸北スマートICからのアクセスが定番となっているが、東北道の宇都宮都賀JCT(ジャンクション)から常磐道の友部JCT間に北関東自動車道が開通したこともあり、北関東道の真岡ICからのアクセス路が新ルートとして使われるようになっている。サーキット側のアナウンスでは東北道で来る来場者には、この真岡ICの利用が推奨されており、渋滞が発生しやすい帰路には迂回路がツインリンクのWebサイト(http://www.twinring.jp/access_m/)で紹介されている。快適なアクセスのために、ぜひそれらを参照して参考にするといいだろう。

1位と2位がわずか2点差のGT500は激しい予選、レースが予想されている

現在66ポイントを獲得してドライバーランキングトップの12号車 カルソニック IMPUL GT-R

 来週末に迫ったMOTEGI GT 250km RACEだが、第7戦の結果により、GT300に関してはドライバーチャンピオンが決定しているため、ハンデウェイトがない状況でどのクルマが純粋に速いのかを見定める点が焦点となりそうだ。1年戦ってきて、どのクルマが熟成が進んでいるのか、特に今年まだ勝てていない有力チーム(0号車 グッドスマイル 初音ミク SLS、11号車 GAINER TANAX SLS、61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTなど)に関しては是が非でも勝ちを狙ってくるのではないだろうか。

64ポイント獲得してドライバーランキング2位の1号車 MOTUL AUTECH GT-R

 最大の見所はGT500のチャンピオン争いになりそうだ。第7戦の結果、現在のポイントスタンディングは以下のようになっている。

GT500のドライバーポイントランキング(第7戦終了時点)
順位カーナンバードライバーポイント
1位12安田 裕信/J.P.デ・オリベイラ66
2位1松田 次生/ロニー・クインタレッリ64
3位38立川 祐路/石浦 宏明53
4位46本山 哲/柳田 真孝50
5位100山本 尚貴/伊沢 拓也49
6位36伊藤 大輔/ジェームス・ロシター49
7位37A.カルダレッリ/平川 亮36
8位17塚越 広大/武藤 英紀36
9位24佐々木 大樹/ミハエル・クルム31
10位6大嶋 和也/国本 雄資30

 優勝で20点を獲得できるので、6位の36号車のドライバーまで権利があるが、点差を考えると、実際には1位の12号車 カルソニック IMPUL GT-Rのドライバーと1号車 MOTUL AUTECH GT-Rのドライバーにほぼ絞られたと言ってよいだろう。その2台に何かが起きた時だけに3位以下にはチャンスがある状況になっている。1位の12号車と2位の1号車のポイント差はわずか2点であり、優勝で20点、2位が15点、3位12点というポイント付与の仕組みを考えると実質的には差がない状況だ。

53ポイント獲得でドライバーポイントランキング3位の38号車 ZENT CERUMO RC F

 どちらにとっても優勝すれば、自力でチャンピオンを獲得することができる。最終戦のもてぎで勝つことが最大の目標となるのは疑いの余地がない。このため、予選から激しい争いが予想されており、要注目のイベントとなりそうだ。

【お詫びと訂正】記事初出時、記事タイトルに文字抜けがありました。お詫びして訂正させていただきます。

(笠原一輝)