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ブリヂストン、人工知能(AI)を実装した最新鋭タイヤ成型システム「EXAMATION」

技能員に依存してきた従来の生産工程、品質保証の判断・動作をすべて自動化

2016年5月25日 発表

最新鋭タイヤ成型システム「EXAMATION(エクサメーション)」の外観

 ブリヂストンは5月25日、乗用車/小型トラック用ラジアルタイヤを生産する彦根工場に、人工知能(AI)を実装した最新鋭タイヤ成型システム「EXAMATION(エクサメーション)」を導入したと発表した。今後このシステムを既存工場、新設工場などグローバルに展開していくことで、生産競争力の強化を図るとともにより高品質な商品を提供するとしている。

 同社は1990年代後半から高性能タイヤの開発、品質向上に向け、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)や最先端技術を導入したタイヤ生産システムの研究、開発を行なってきた。2002年には世界で初めて部材工程から製品検査工程までを全自動化し、また生産現場の状況をリアルタイムで把握するネットワーク技術を導入した生産システム「BIRD」を開発している。

 Evolutional(革新的な)、Attractive(魅力的)、AutoMATION(自動化設備)を由来とする今回の「EXAMATION」には、これまで「BIRD」で培ってきたICTを進化させるとともに、新コンセプトとなる「Bridgestone Intelligent office BIO」(BIO)、「Bridgestone Intelligent Device BID」(BID)に基づいた革新的な生産技術を実現する独自のICTを搭載した。

ブリヂストン流モノづくりICT開発の取り組みについて

 BIO/BIDは、同社のコア技術である高分子・ゴム・複合体の材料加工に関する知見を加えた独自のデータ解析に、生産工程等で得られる膨大な情報をビッグデータ解析し、さらに技能員が培ってきた技術・ノウハウを加えた独自のアルゴリズムを搭載する新技術。このBIOによって生み出される、これまでの知見を超えたアルゴリズムに基づき、BIDが生産システムを自動制御する独自の人工知能(AI)を搭載することで、技能員のスキルに依存してきた従来の生産工程や品質保証の判断・動作を「EXAMATION」側ですべて自動的に行なうという。

 これにより、人によるさまざまなバラツキが極小化され、従来にない高精度なモノづくりが可能となるとともに、同システムで得られた情報は既存の成型システムや前後の工程間、製品情報などさまざまなデータに繋ぐことで、工場全体の工程能力向上にも貢献するとしている。

「EXAMATION」ではタイヤ1本あたり480項目の品質データをセンサーで計測し、すべての部材が最適条件で組み立てられるようリアルタイムで自動制御する人工知能(AI)を実装。これにより、極めて高精度なタイヤ製造を可能とし、従来製法と比べ真円性(ユニフォミティー)を15%以上向上することに成功した。写真左はセンシング機構(イメージ図)、右はセンサーで計測しているところ

「EXAMATION」の特長は以下の3点。

品質向上

 同システムは、タイヤ1本あたり480項目の品質データをセンサーで計測し、すべての部材が最適条件で組み立てられるようリアルタイムで自動制御する人工知能(AI)を実装。これにより、極めて高精度なタイヤ製造を可能とし、従来製法と比べ真円性(ユニフォミティー)を15%以上向上。

高生産性

 従来製法は単一のドラム上に部材を順番に積層していくため、すべての部材を積層するまで次の作業工程に移れず、生産リードタイムにロスが生じていた。同システムは、複数のドラムを配置したマルチドラム製法を採用することで、部材の貼り付け動作を同時並行で実施。これにより、既存成型と比べて約2倍の高い生産性を実現している。

自動化によるスキルレス化

 従来製法は手作業による成型を前提としてきたため、技能伝承や教育が重要な要素になっていた。同システムでは、これまで技能員のスキルに依存してきた生産工程や品質保証の判断・動作も含め、すべて設備側で自動化。これにより、人の介在に伴うバラツキを抑制し、さらなる品質の向上を図る。また、技能員は生産現場の状況をリアルタイムに把握できる携帯端末を装着し、本システムに生じた不具合や材料交換などを迅速に対応することで、より効率的な生産を実現する。

(編集部:小林 隆)