インプレッション
普通自動二輪免許で乗れるドゥカティ「スクランブラー SIXTY2」
8年ぶりの新作L型2気筒エンジン搭載
Text by 日沼諭史(2016/5/11 00:00)
ドゥカティ「スクランブラー SIXTY2」は、大型自動二輪免許を必要とするドゥカティのラインアップのなかで、ひさびさに普通自動二輪免許で乗れる排気量399ccのバイクとなる。
日本市場向けに排気量398ccのスポーツネイキッドバイク「モンスター 400」を2008年まで販売していたドゥカティ。今回、普通自動二輪免許で乗れるモデルとして新たに導入されるスクランブラー SIXTY2は、一体どんなバイクなのか、4月に行なわれた日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会で乗車した際のインプレッションをお伝えする。
スクランブラー SIXTY2のターゲットとその狙いは明確だ。より大排気量の同社モデルへのステップアップ用として、ドゥカティの若いファンを増やすことにある。同社のメインストリームである大排気量モデルを求めるユーザーは、日本はもちろん世界的にも高齢化が進んでいる一方で、昨今は125ccや250cc、あるいは300ccクラスのニューモデルを他メーカーが相次いで登場させていることからも分かるように、小排気量車の市場が確実に盛り上がり始めている。SIXTY2はこうした動きに合わせたミドルクラスであり、将来的にユーザーのメインストリームへの移行も狙った戦略的な1台と言える。
かつてのモンスター 400は、同社のモデルチェンジの流れで生産可能なラインを確保できなくなり、2008年に製造を終了した。今回の400ccクラスの復活に当たっては現代的かつ自由なイメージをもつスクランブラーをチョイスし、1962年に誕生した元祖スクランブラーが小排気量車だったことから「62(SIXTY2)」の称号が与えられたという。
スクランブラーは803ccの大排気量モデルとして2015年に登場したが、SIXTY2はそれの単なるダウンサイズバージョンではない。単純に考えればLツインエンジンの803ccを半分に“割る”と400cc前後になるわけで、ストローク調整すれば単気筒400cc未満のオートバイとしてSIXTY2を作ることもできただろう。だが、そこはドゥカティのアイデンティティでもあるLツインエンジンにこだわって開発している。
車体のデザインやエンジン造形は、注意して見なければ803ccのスクランブラーと大差ない。実際にはスイングアームやリアフェンダーの形状が変わり、倒立フォークが正立フォークに、4ピストンラジアルブレーキキャリパーが片押し2ピストンにと、各部で最適化およびコストダウンが図られている。それでも、全体的なデザインとしてはスクランブラーに匹敵する完成度を維持しているようだ。
しなやかな乗り心地と、パンチ力のあるエンジン
ぱっと見のスタイリングはなんとなくヤマハ「TW」や、モタードを感じさせる雰囲気があり、乗り味としても脚の長いモタードのようなしなやかさを感じる。幅広のハンドルバーは荒れた路面による振れを軽くいなし、軽快でコントローラブルなハンドリングを実現している。倒し込みから立ち上がりにかけてもナチュラルで、リズムよくスラロームをクリアしていけるのが楽しい。
しかし、ハンドリングや乗り心地以上にインパクトがあったのは、マイルドで扱いやすいにも関わらず、400ccクラスとは思えないパンチ力のあるエンジンだ。最高出力は40HP(8750rpm)、最大トルクは3.5kgm(8000rpm)。やや高回転型で数値上は決してハイパワーというわけではないが、実際にはこのクラスの枠を超えたLツインならではの力強さが低回転域から体感できる。
同社の大排気量モデルでは極低速時の扱いにくさが目立つ部分もあったかもしれないが、SIXTY2ではそういった敏感さ、ピーキーさはゼロ。粗雑さを感じさせるエンジンノイズはなく、その分Lツインの鼓動感も少ないけれど、吸気音らしきキューンという響きが加減速そのものの面白さにもつながっていると思える。
ドゥカティによる400ccクラスへの再チャレンジで、400cc未満の新車の選択肢が広がるのは、オートバイの入門者はもちろんのこと、日常の足としてドゥカティを使いたい既存のファンにとってもうれしいこと。さすがにスーパースポーツモデルである「パニガーレ」の小排気量モデルというのはないだろうが、モタードもしくはネイキッドなどの小排気量モデルの展開にも期待したくなる。