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写真で見る スズキ新型「スペーシア」「スペーシア カスタム」

11月22日に発売されるスズキの新型「スペーシア カスタム」(左)、新型「スペーシア」(右)

初代誕生から10年、移り変わる軽ハイトワゴンの市場環境とともに進化

 スズキ「スペーシア」は2013年3月に初代がデビュー。そして2016年12月に「スペーシア カスタムZ」が登場。2代目は2017年12月に発売されて、翌年の2018年に派生モデルの「スペーシア ギア」、さらに2022年8月には商用車の「スペーシア ベース」とシリーズを拡充。現在はスズキにおける日本市場での販売台数はトップの人気車となっている。

 その一方で、市場の環境は人々の価値感や家族のあり方、コロナ禍以降の生活様式の変化などが起きていた。さらに、クルマに搭載される先進安全装備の進化も早く、カーボンニュートラルに向けての技術の進歩などクルマを取り巻く環境も変わった。

 また、軽ハイトワゴンの保有台数が増えたことから、今後は軽ハイトワゴンから軽ハイトワゴンへの乗り換えも増えていくと考えられているが、使いやすいこの車種に乗るユーザーに対して、新型車では新たな付加価値と機能装備の進化を盛り込むことが必要であるとスズキは考えた。

 そこで新型スペーシアの開発にあたっては、軽ハイトワゴン車ユーザーへのインタビューなどの調査を行ない、ユーザーが求めている細かなニーズを知ることから始めたという。

新型スペーシアのエクステリアデザイン

 2代目スペーシアでは「スーツケース」がエクステリアデザインのモチーフだったのに対して、新型スペーシアはたくさんの物を積み込める貨物用の「大型コンテナ」がモチーフだ。

 ちなみに「ジャパンモビリティショー2023」では新型スペーシアのコンセプトモデルが発表されており、それを見た人の多くが「新型は2代目からのキープコンセプト」と感じたようだが、開発陣にはそういった考えはなかったという。

 コンテナらしさを表す造形としては、ボディサイドにプレス成形されたビード形状のラインを設け、その下にはコンテナを台車に載せた姿を表現するキャラクターラインも盛り込まれている。

 なお、バックドアではビード形状ラインが入らないぶん、キャラクターラインを深くしているが、開け閉め動作が伴うバックドア部分だけに強度を保つように作るのに大いに苦労したとのことだ。そのかいもあって新型スペーシアの後姿はタフなイメージとなっている。

 次に全体的な見え方だが、新型では2代目と比較してルーフの横幅を広く取ったことで車体側面のラインが直立気味になった。これによりコンテナらしいガッシリ見える造形になっている。

 さらに歴代スペーシアでは初めて、Dピラー(テールゲート前のピラー)をボディ同色とすることで「箱」としてのフォルムを作り出し「大容量」「頑丈なコンテナ」をイメージさせている。以上が新型スペーシア、スペーシア カスタムのエクステリアデザインにおいて共通する点だ。

 新型スペーシアと新型スペーシア カスタムでの大きな違いはフロントフェイス。新型スペーシアは2代目の印象を引き継ぎつつ、誰にでも好まれる優しい印象を作るため、一見懐かしいハロゲンバルブのヘッドライトにも見える大型リフレクターLEDヘッドライトを採用している。実は、このサイズのLEDヘッドライトを採用しようとランプメーカーの担当者に話したところ「それはかなり難しい」と言われたそうだ。しかし、どうしてもこの形状にしたかったのでこだわった部分だという。

 それに対して新型スペーシア カスタムは顔つきをガラリと変えている。ヘッドライトは薄型LEDヘッドライトを採用し、ヘッドライトケース内をブラックアウト。そのため、ライトの存在が目立たないのでグリルのデザインと合わせて未来的なイメージになっている。加えてグリルまわりにはメッキ加飾は使用量を抑えているのでギラギラした感じはない。

 また、新型スペーシア カスタムのフロントバンパーは造形も凝っていて、センターには艶ありブラック塗装の大型ガーニッシュを組み込み、両サイドにはメッキガーニッシュが付いたエアインテークふうの造形。軽自動車は車体サイズの規格の関係で起伏が少ないバンパーのデザインが多いが、新型スペーシア カスタムは彫りが深く力強さを感じるものになっている。

 なお、造形が複雑になると走行風の抵抗も大きくなりそうな感じもするが、こちらのバンパーは空力テストを行ない形状を決めているので、走安性や燃費に影響がないという。

 エクステリアデザインではもう1点、ホイールデザインを紹介しよう。新型スペーシアでは標準車は14インチのスチールホイールにホイールキャップを付けていて、新型スペーシア カスタムは15インチアルミホイールと14インチアルミホイールが用意される。

 スズキのホイールキャップは比較的個性的なデザインのものが多いというが、新型スペーシア用はU字形状を6つ組み合わせたシンプルなデザインとした。それに2トーンルーフ仕様車ではホイールキャップの外面と縁の部分をベージュ×シルバーの塗り分けにするというこだわり。

 新型スペーシア カスタムの15インチアルミホイールは「回転」をイメージさせるデザインだが、ホイール前面は「フラットな面」を広めに取ったものとしている。これはホイール部分での空気抵抗軽減の効果があるものということだ。

新型スペーシア。走るコンテナハウスのような造形としている。ボディカラーはミモザイエローパールメタリック/ソフトベージュの2トーン
ヘッドライトからドアハンドルの高さにプレス成形されたビード形状のラインを入れることでコンテナを表現
ナンバープレートの位置からグルッとつながるキャラクターラインは、コンテナを台車に載せたものをイメージする
優しい印象となるようデザインされたフロントフェイス
新型ではルーフの幅を広くしているのでガッシリとしたイメージになった
新型スペーシア カスタムは「イカツイ顔」ではなくて「存在感」と「上質感」を出すデザインとした。ボディカラーは単色のアーバンブラックパールメタリック
新型スペーシア カスタムのリアビュー。ルーフエンドスポイラーとメッキバックドアガーニッシュが追加される。リアコンビランプはランプ単体でも充実感のあるデザインを目指してデザインされ、LEDテールストップランプにはきらびやかな光り方をするインナーレンズを採用して標準車と差別化される
スペーシアらしさを引き継ぎつつ、新しくなった顔まわり。ヘッドライトは薄めにもコンパクトにもできるLED式だが、あえて大型リフレクターを使うことで、レトロな印象を持たせつつ親しみやすいデザインとした
新型スペーシア カスタムは薄型のLEDヘッドライトを採用して凛々しく未来的なイメージのデザインとしている。単眼としたこともライトまわりの厚みが薄く見える。同時にメッキ加飾を使い上質感も高めるている
新型スペーシア カスタムの薄型LED単眼ヘッドライト点灯。ヘッドライトケース内部はブラック仕上げにしているのでライトまわりがよりクールに見える
バンパー部にあるLEDフォグランプも小型のものが使われる。バンパー造形も起伏も大きく凝っているが、風洞での空力テストを行ない燃費や走安に影響がないことを確認しているという
新型スペーシアの標準車は14インチフルホイールキャップを装備。U字形状を6個組み合わせたシンプルなデザイン。2トーンルーフ仕様車ではホイールキャップも2トーンの塗り分けになるというこだわりもある
写真は新型スペーシア カスタム HYBRID XSとHYBRID XSターボ用の15インチ切削アルミホイール。スタイリッシュなデザインだ。風洞での空力テストも行なっていて空気抵抗の軽減も考慮しているデザインとのこと

新型スペーシアのインテリア

 新型スペーシアのインテリアはアウトドアリビングにいるような明るさと心地よさのある空間としている。そして新型スペーシアカスタムはホテルのラウンジのような華やかな上質空間としていて、どちらのモデルもダッシュボードの造形やシート形状は同じながら、素材や色の使い分けでそれぞれが求める雰囲気を作り出している。

 開発陣が運転席まわりのデザインを始める時点で求めていたのが収納を増やすことと、物を置く場所を設けること。軽自動車は普段乗りで使われるのでちょっとした小物を置く場所は欲しい。それにコンビニで買い物をした際、袋を買わずに手で数個の買ったものを車内に持ち込むこともあるが、そんなときでもぽっと置ける場所があることを考えてデザインをしたという。同時に、ダッシュボードの造形に奥行き感を作ることも含めているそうだ。

 そして新型スペーシアのインテリアにおいて大きなセールスポイントが、移動中も停車中も広い室内空間をあますことなく快適に利用することを目的に装備されたスズキ初となるシート座面のフラップ機構「マルチユースフラップ」だ。

 この機能は後席座面前方のフラップをシーンに合わせて動かせるもので、パターンは座面を延長して膝裏をサポートする「レッグサポートモード」、足を伸ばしてリラックスするときの「オットマンモード」、そして後席座面に置いた荷物が足下に滑り落ちないようサポートする「荷物ストッパーモード」を状況によって使い分けできるようになっている。

 冒頭でも触れたように、便利なクルマである軽ハイトワゴンは代替えの際に再び軽ハイトワゴンを選ぶ人も多いという。そのような状況ゆえに軽ハイトワゴンは多くの自動車メーカーが力を入れているジャンルではあるが、その中においても新型スペーシアと新型スペーシアカスタムは十分な存在感があるクルマと撮影を通じて感じた。

 では、リアシートの足もとが広いという特徴をおおいに生かすことのできるこのマルチユースフラップの動作を含め、インテリアの装備や特徴は写真で紹介していこう。

新型スペーシアの運転席まわり。奥行き感のあるデザインだ
ステアリングのセンターパッドが小型化されたのでスポーティな印象。メーターはスピード表示のデジタル化とカラーTFT液晶の採用で視認性が向上している
こちらは新型スペーシア カスタム。ステアリングが革巻きになり、標準車とはメーターのデザインを変えている
新型スペーシア カスタムのメーター
ステアリングスイッチ類は標準車もカスタムも同じ。ステアリング左側のスイッチ類
右側にはスズキセーフティサポート操作用スイッチを装備
ステアリングヒーターを装備。スイッチはステアリング横右下にある
エアコン操作パネルとシフトレバー。シフトポジションの表示はスモールランプを点灯と連動。シフトレバーの奥に電動パーキングのスイッチがある。操作手順的に使いやすい場所。エアコン操作パネル下にはシートヒーターのスイッチがある
オプションの9インチメモリーナビゲーションを装備。スズキコネクト連携、ドライブレコーダー連携、HDMI入力にも対応する
広いスペースのビッグオープントレー。USBソケットは2か所にある
インパネボックス、グローブボックスを開けたところ
ドアトリムのオープナー上にも小さいトレーがある。ガムやリップクリームなど、地味に置き場が困るような小さい物の置き場所になりそう
新型スペーシアの前席シート。表皮は複数の色の繊維を使ったカラーメランジ表皮
助手席は座面の下に収納ボックスがある
収納ボックスの下にはハイブリッド用のバッテリがある
運転席にはアームレストが付いている
アームレストはふた付きの小物入れになる
シート背面にはパーソナルテーブルが付いている
パーソナルテーブルのサイズは幅が255mm、奥行きが144mm。スマホを立てるための溝やペットボトルホルダーもある
リアシートは左右セパレートタイプで前後スライドあり。足下は十分広い
座面前方にマルチユースフラップが付く
レッグサポートモード。ワンノッチ起こした状態
もうワンノッチ起こした状態
フラップを引き出したオットマンモード
後席座面に置いた荷物が前へ落ちないようにする荷物ストッパーモード
引き出すことで大きな荷物にも対応
フラットモードにもできる
新型スペーシア カスタムの前席シート。ファブリック×合皮仕様。HYBRID GSはファブリック仕様となる
シートにはボルドー色のパイピングが入る。ステッチではなくパイピングにしたのは上質感を求めたからということだった
新型スペーシア カスタムは内装にセミマットなボルドー色とピアノブラックを使う。上質感をだすための落ち着いた色使いだ
新型スペーシア カスタムのリアシート。こちらもマルチユースフラップ付き
スズキコネクト用のSOSボタン。エアバッグが開くような事故の場合はオペレーターへ自動で通報する
天井にはスリムサーキュレーター付き。フラップの角度は広範囲に調整できる
リアのスライドドア乗降口に付くアシストグリップは大型で掴みやすいもの。ステップの高さは地面から345mmなので乗り降りはしやすい
スライドドアの窓には引き上げ式のスクリーンが組み込まれている
リアシートを最も下げたときのラゲッジスペース
片側を前いっぱいにスライド
左右シートを前にスライド。シートを立てた状態ではこの位置が一番ラゲッジスペースが広い
リアシートは片側ずつ前倒しできる
リアシートを両側前倒しにした状態