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写真で見る スズキ「スーパーキャリイXリミテッド」

パーソナル感を高めたスーパーキャリイ X リミテッド

 日本独自の進化を遂げているモノやジャンルを紹介する時に「ガラパゴス」なんて枕ことばを使うことがあるが、軽トラックもそうした言葉がピタリとハマるカテゴリーだ。中でも今回紹介するスズキ「スーパーキャリイ」は、ボディサイズはそのままにキャブを拡大することで居住性をアップしたモデルで、軽トラックの中でも特異な存在といえる1台。2023年12月に追加された特別仕様車「X リミテッド」は、「X」のLEDヘッドライト(オプション、5万5000円)装着車をベースに、ブラック塗装のパーツや専用デカールの装着などにより、パーソナル感をアップさせているのが特徴だ。

 キャリイの歴史を振り返ってみると初代モデルとなる「スズライト キャリイ FB型」の登場は1961年と、同社が初の四輪車として1955年に発売を開始した「スズライト」とともに、四輪事業黎明期を牽引してきたといえるモデル。発売以来、高い経済性と耐久性、そして優れた使い勝手は多くのユーザーに受け入れられ、2010年には400万台を突破するなど着実に販売台数を積み重ねてきた。近年では先代型が1999年1月のフルモデルチェンジによりデビュー。これは1998年10月に軽自動車のボディサイズが全長3.10m、全幅1.48mに拡大されたことを受けたもので、短いボンネットがあるセミキャブオーバースタイルとなった。同時に「軽量衝撃吸収ボディ」の採用により軽量化とともに新しい安全基準にも対応している。続いて2013年8月に14年ぶりのフルモデルチェンジにより登場したのが現行モデルだ。居住空間の拡大をはじめ燃費性能の向上、長期サビ保証の採用、収納スペースの増大など軽自動車の限られた枠の中で大きく進化を遂げている。

スズキ歴史館(静岡県浜松市)に展示されているスズライト キャリイ FB型

 そして2018年5月に追加モデルとして設定されたのが「スーパーキャリイ」だ。ボディサイズは3395×1475×1885mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは1905mm。全高のみ標準車と比べて120mmアップしてハイルーフ仕様となっているが、3.6mの最小回転半径など取りまわしのよさはそのまま。積載性の面では荷台床面をキャビン下まで伸ばすことで、荷台フロア長はキャリイの2030mmには及ばないものの1975mmとしており、脚立など高さが低い長尺物なら標準車と遜色のない積載性を実現している。

撮影車両のボディカラーはクールカーキパールメタリック
グリル部のガーニッシュは専用のブラックを採用
ボディやハイルーフ部の専用デカールがX リミテッドの証
ドアミラーやドアハンドルもブラック。ドアミラーは手動調節タイプ
荷台床面地上高は650mm。290mmの高さを持つ“あおり”は3方向とも開閉可能
荷台寸法は1480×1410mm(長さ×幅)
ハンドル部には樹脂製の保護パーツが付いている
右後方に給油口がある。レギュラーガソリン仕様でタンク容量は34L
荷台に上がるステップは運転席側のみに用意。キャリイは助手席側にも用意される
荷台フロア長はキャビン下部まで伸びており1975mmを確保。キャビン下部のスペースは幅1315mm、高さ230mm

 価格および機能優先といったイメージがある軽トラックながら、先進安全装備もしっかり。フロントウィンドウ上部に備えられたステレオカメラにより車両はもちろん歩行者まで検知。ブザーと表示による警報からブレーキアシスト、衝突被害軽減ブレーキと段階を踏んでサポートしてくれる。そのほか、前方後方への誤発進抑制機能、車線逸脱防止警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能など、イマドキのクルマらしい充実した内容となっている。坂道発進時に一時的にブレーキを作動させ、ペダル踏み替え時のずり下がりを防止する「ヒルホールドコントロール」も搭載している。さらに、ヘッドライトは乗用車でもハイグレード向けの装備となるLEDタイプがなんと標準。内部のブラック化やクリアレンズのウインカーと組み合わされたルックスは、カスタマイズモデルのような雰囲気を感じさせる仕上がりだ。

フロントウィンドウ上部に先進安全機能のためのステレオカメラを配置
ブラックに塗装された専用LEDヘッドライトを装着。ブラックベゼルに収まるハロゲンタイプのフォグランプも標準装備
リアのランプ類は荷台下部に
荷台用の作業灯も標準で装備される

 パワートレーンは標準車と同様。エンジンは直列3気筒DOHC12バルブ 0.66リッターエンジンの「R06A」型を搭載。軽トラと侮るなかれ吸排気VVTも備えており、過給器を持たない自然吸気ユニットながら最高出力37kW(50PS)/6200rpm、最大トルク59Nm(6.0kgfm)/3500rpmを発生する。サスペンションはフロントがストラット、リアはリーフスプリング。トランスミッションは5速MTと4速AT、駆動方式はパートタイム4WDのみが設定される。WLTCモード燃費は4速ATが15.4km/L、5速MTが17.7km/L。

シート下に収まるR06A型エンジン。最高出力37kW(50PS)/6200rpm、最大トルク59Nm(6.0kgfm)/3500rpmを発生する
撮影車両のタイヤは横浜ゴム「スーパーバン355」を装着。サイズは145/80R12。スチールホイールは専用のブラックメタリック塗装が施される

 ボディの全長と全幅は標準車と同数値ながら、キャビンを後方に拡大することで居住性を大幅アップしているのがスーパーキャリイの一番のポイント。とくに運転席では180mmのシートスライドや最大40度のリクライニングを可能とすることで、ちょっとした空き時間などにシートを寝かせてリラックスできるのがうれしい。助手席側は100mmのシートスライド&最大24度のリクライニングと数値的には及ばないものの、シートバックを前倒しすることで簡易テーブルとして活用できるようになっている。加えて、シート後方に荷物を置くことのできるスペースも確保されており、バッグや買い物袋といったちょっと大きめの手荷物を車内に置くことが可能。また、ハイルーフ化により頭上高に余裕が生まれたことを活かし、オーバーヘッドシェルフを装備しており、収納力をアップさせているのも見逃せないポイントだ。

さすがに高級感はないものの乗用車ライクに仕上げられたインパネ
ステアリングはウレタンタイプ
シフトまわり
メーターは速度計のみと至ってシンプル。液晶部は燃料系の下部でオドメーターとトリップメーターの切り替えが可能
2WD(2H)と4WD(4H)の切り替えは走行中でもOK。ローレンジ(4L)は停車して切り替える必要がある
4Lにシフトすると先進安全機能は自動的にOFFになる
ペダルまわり
AV関係は標準では2スピーカーのみのオーディオレス仕様。撮影車両はオプションで用意されるナビゲーションのパナソニック「CN-FZ796W」を装着
エアコンはマニュアルタイプ
エアコン下には走行系のスイッチが並ぶ。強力なトラクションが得られるデフロックも可能
オーバーヘッドシェルフにはA4サイズのファイルだけでなくボックスティッシュも収納可能
運転席側のサンバイザー裏にはバニティミラーも
メーターパネルの左横にはペンホルダーを用意
メーター右側にはドリンクホルダーや小さなポケット
灰皿ではなくカードホルダー
インパネ下部には大きめのポケット。オプションのETC車載器もここに
助手席側にはワイドなトレーとグローブボックス。中にあるケーブルはナビゲーションのUSB接続用
ヘッドレスト一体型のシートは表皮に撥水加工が施される。運転席は180mmのシートスライドや最大40度のリクライニング、助手席は100mmのシートスライドや最大24度のリクライニングが可能
ドアトリム
パワーウィンドウスイッチ
助手席は前倒しすることでテーブルとしても使える
シートバックスペースは250×1235×920mm(長さ×幅×高さ)とタップリ。ウィンドウの上下にはオプションのフックやルーフバーが装着できるボルト穴を用意
助手席側にはジャッキを収納
運転席側にはポケット
ルームランプも用意

 ボディカラーは「モスグレーメタリック」「シルキーシルバーメタリック」「クールカーキパールメタリック」「ブルーイッシュブラックパール3」の4色を設定。価格は「X」が133万5400円(5速MT)~144万7600円(4速AT)なのに対し、LEDヘッドライトと専用装備を加えて151万3600円(5速MT)~161万2600円(4速AT)と、20万円弱のアップとなる。