写真で見るフォルクスワーゲン「シロッコ」


 小型5ドアハッチバックの「ポロ」から、大型SUVの「トゥアレグ」まで幅広いラインアップを用意するフォルクスワーゲン。そこに新たに加わったのがコンパクトクーペ「シロッコ」だ。

 シロッコは初代モデルが1974年から、2代目が1981年から製造されていたが、1992年の生産中止をもって一時消滅。17年ぶりの復活となった。

 新型となる3代目はコンパクトクーペというキャラクターはそのままに、新たにプレミアム&スポーティーな要素を盛り込んでいるのが特長。

 基本的なベースとなっているのは5代目ゴルフだが、ボディサイズは4225×1810×1420mm。全長は同等ながら全幅は50mm広く、逆に全高は75mm低く、ロー&ワイドなプロポーション。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアが4リンク。こちらもゴルフ5と同様だが、専用にチューニングされたスポーツタイプとなると同時に、広げられたトレッド(フロント25mm、リア55mm)、低重心ボディー、アダプティブシャシーコントロールDCCなどの採用により、リニアでシャープなハンドリングを実現している。

 グレードは2リッターのTSIターボチャージャーエンジンを搭載する「2.0 TSI」と、1.4リッターTSIツインチャージャーエンジンを搭載する「TSI」の2モデル。価格は2.0 TSIが447万円、TSIが392万円。

初代シロッコと新型(3代目)シロッコ

TSI
 ベースグレードとなるのが1.4リッター 4気筒 DOHCエンジンを搭載するTSI。1.4リッターと聞くと非力なイメージがあるが、このTSIが搭載するのはスーパーチャージャーとターボチャージャーを組み合わせたツインチャージャーエンジンで、最高出力118kW(160PS)/5800rpm、最大トルク240Nm(24.5kgm)/1500-4500rpmと、2.4リッター自然吸気エンジン並みの出力を誇る。乾式デュアルクラッチを採用した7速DSGトランスミッションとのマッチングも素晴らしく、数字から受ける印象以上にスポーティーな走りが楽しめる。

新生フォルクスワーゲンのアイデンティティとなる水平基調のフロントデザインを採用。また、旧世代のシロッコがいわゆるファストバッククーペだったのに対し、新型はリアエンド近くまでルーフを伸ばした独創的なフォルムを採用。リアシートの居住性とラゲッジルームの容量を確保している。ルーフエンドにはスポイラーが装着されるほか、リアウインドー両端に小さなフィンを取り付けることで、空力特性の向上も図られている
1.4リッターエンジンはツインチャージャーの搭載により走りは軽快。過給切り替えによるラグやトルクの落ち込みもほとんど感じられず、大排気量の自然吸気エンジン車に乗っているような印象だ
2.0 TSIが18インチホイールを装着するのに対し、こちらは17インチの5ツインスポークタイプ「Donington(ドニントン)」を標準装着。タイヤは235/45 R17で、前後同サイズ新世代のフォルクスワーゲンであることを感じさせるフロントデザイン。グリルとともにブラックアウトされたヘッドライトが、ボリューム感とシャープさを強調。ヘッドライトはコーナーリングライト、オートハイトコントロール機能を内蔵したバイキセノンタイプ。ヘッドライトウォッシャーも標準装備だ
エンブレムはTSIのみとシンプル。テールランプは赤/クリアのコンビタイプで、リアフォグランプも内蔵マフラーのテールエンドはパイプをナナメにスッパリと切り落としたような処理だが、これでも十分にスポーティーな印象を受けるTSIに搭載されるのは1.4リッターエンジン。排気量だけを見ると「シティーカー?」的な印象だが、その中身はターボ&スーパーチャージャーで武装したマッチョなモノ。最高出力は118kW(160PS)、最大トルクは1500~4500rpmで240Nm(24.5kgm)を発生させるとあって、0-100km/h加速8秒とヘタなスポーツカー顔負けの動力性能を誇る。燃費も10・15モードで15.8km/Lと良好
内装はグレーを中心としたモノトーンでコーディネート。エアコンの吹き出し口などにメッキ処理が施される2.0 TSIとは雰囲気が異なるが、安っぽい印象はまったくなく、プレミアム感のあるフィニッシュとなっているシフトノブ前方には灰皿やシガーライターが収まるボックスとともにESPのオフスイッチを用意ライトスイッチの下にはフタ付きの小物入れも。容量は小さいがカードなどを入れておくには便利そうだ
グローブボックスはごく一般的なサイズ。上部にはエアバッグをオフにするためのキーシリンダーのほかETCユニット、地デジ用のB-CASカードユニットを配置ルーフ部にはマップランプなどのほかサングラスなどを入れておけるポケットを用意。運転席&助手席のサンバイザー裏には照明付のメイクアップミラーも備わるルームミラーは自動防眩タイプ。後続車両のライト光量が一定以上になると自動的に減光してくれる
シートはアルカンターラとファブリックのコンビネーション表皮で、身体や腰まわりなどのホールド性が高められたスポーツタイプ。リアシートへの乗り降りを助けるイージーエントリー機能を含め、各部の操作は手動式だ
2人分がきちんと確保されたリアシート。仕上げや素材はフロントシートに準じたもの。こちらもホールド製に優れた形状で、シートベルトも左右とも3点式だ。2.0 TSIと同じく50:50の分割可倒式

2.0 TSI
 上級モデルとして用意されるのが2.0 TSI。TSIとの大きな違いは、グレード名からも分かるように搭載されるエンジン。2リッターの直列4気筒DOHCターボは、ゴルフGTIに搭載しているタイプよりも世代の新しいEA888シリーズ。基本構造は変わらないものの、カムをベルト駆動からチェーン駆動に変更するなど、パーツのほとんどを新設計とすることで効率を追求。燃費性能の改善や排気ガスの低減などを実現している。

 組み合わされるミッションは、大トルクに対応した6速DSG。デュアルクラッチの採用によりトルクを途切れさせず瞬時にギアシフトが可能で、スポーツ走行を思う存分に楽しめる。ちなみに7速DSGが乾式クラッチなのに対し、6速は湿式を採用している。

 また、サスペンションには「アダプティブシャシーコントロールDCC」を採用。このシステムはボディーの動きを検出する加速度センサーをはじめ、サスペンションのストローク量を検出するセンサー、加えてアクセルペダルやステアリングの切れ角などから走行状態を判断。1000分の1秒単位で作動する電子式アジャストバルブによりダンパーの減衰力を切り替えたり、電動パワーステアリングの特性をコントロールしたりすることで、ハンドリングと乗り心地を高いレベルで両立するもの。ドライバーはノーマルのほかスポーツ、コンフォートの各モードを選択することが可能だ。

 そのほか大きな違いとなっているのがインテリア。特にシートはレザー&電動調整タイプが標準となっており、見た目はもちろん、機能面でも差別化が図られている。

TSIの軽快感に対し、こちらは圧倒的な動力性能によるスポーティーな走りが身上。6速DSGによる加速感、DCCをはじめとした電子制御による安定感、よりファットな235/40 R18タイヤのアドバンテージなど、とにかく走りを楽しむことに集中できる
2リッターの直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載。最高出力は147kW(200PS)/5100-6000rpm、最大トルクは280Nm(28.6kgm)/1700-5000rpmとスペック上はゴルフGTIに搭載されるBWA型ユニットとほぼ同じ。だが、シロッコが搭載するCAWユニットは効率化が図られ、10・15モード燃費は12.6km/Lから13.2km/Lと向上している(※車重はシロッコ2.0 TSIが1360kg、ゴルフGTIが1460kg)水平基調のグリル、ブラックアウトされたヘッドライト、ハニカム形状のバンパーエアインレットなど、フロントまわりはTSIと同様だシャープな造形のドアミラーはウインカーを内蔵するタイプ。ヒーターおよび助手席側にはリバース連動機能も搭載している
ホイールは18インチの10スポークタイプ「Interlagos(インテルラゴス)」を標準装着。タイヤは235/40 R18でTSI同様、前後同サイズとなるガソリンは2.0 TSI、TSIともに無鉛プレミアム指定で、タンク容量は55L。給油口はプッシュオープンタイプボディーサイドはフロアに近づくにつれボリュームを増していく独特のスタイル。そこからフェンダーへと続くなめらかな盛り上がりは、アスリートの筋肉のような力強さを感じさせる
テールランプもTSI同様、レッドとクリアのコンビネーションタイプ。また、リアバンパーにはオプティカルパーキングシステム用のセンサーを用意。障害物を検知すると警告音とともにナビディスプレイ上に障害物を表示、視覚的に危険を教えてくれるハイマウントストップランプを内蔵したルーフスポイラーは標準装備。また、リアガラス左右に配置される黒色のパネルには小さなフィンが設けられており、ボディーを流れてきた空気がスムーズに後方に流れるように配慮されている
エンブレムは左サイドにSCIROCCO、右サイドにグレード名の2.0 TSIを装着ルーフエンドに用意されるアンテナは小型の固定式
リアワイパーはヒンジ部にウォッシャーの吹き出し口を用意。ワイパーゴム部は最近増えつつあるフラットタイプマフラーのテールパイプにはクロームタイプのフィニッシャーを装着。外観では数少ないTSIとの差異がある部分だ
基本的な造形はTSIと同様ながら、エアコン吹き出し口のクローム処理やレザーの内装などにより、ラグジュアリー感が高められている。内装の機能や装備はエアコンやAV機能などを含め、TSIとの違いはないといってよいステアリングは各種オーディオ機能の操作が可能なボタンを配置したマルチファンクションタイプ
左にタコメーター、右にスピードメーター、その間にマルチファンクションインジケーターと水温、燃料計を配置。シンプルな表示だがとても見やすい
マルチファンクションインジケーターには時刻をはじめ、瞬間/平均燃費、走行距離、平均速度、運転時間、外気温度などの表示が可能。さらに言語切り替えなどのメニューや進行方向、ナビのルート案内時には矢印による簡易案内も可能だ
電動式のチルト機構を持ったパノラマガラスルーフは2.0 TSIのみオプションで装着が可能。さらにキャンディホワイトおよび、ディープブラックパールエフェクトのみと、装着可能なボディーカラーも限定されるので注意が必要だステアリングコラム右手にはダイヤル式のライトスイッチ。メーターパネルの照度変更用ダイヤルも用意されている。左右のスポーク背後にはマニュアル操作用のパドルシフトを配置エアコンの吹き出し口にはクロームタイプのリングを装着。TSIにも同様のリングが装着されるが、そちらはブラック仕上げとなっている
クーペならではの長いドアにはウインドウスイッチのほか、ドアミラーの操作ダイヤル、下部にはトランクのオープナーが配置される2.0 TSI、TSIともにDSGミッションとなるため、アクセルとブレーキの2ペダル仕様。どちらもアルミ調のペダルクラスターが装着されるシフトレバーはP-R-N-D-Sの5レンジ。Dレンジでは左に倒すことでマニュアル操作も可能。同時にステアリング奥に設けられたシフトパドルでの操作も可能だ
シフトレバー奥には灰皿およびシガーライターを収納するボックス。手前にはESPのスイッチのほか、DCCのモード選択スイッチ、タイヤ空気圧設定用のスイッチ(ともに2.0 TSIのみの装備)を配置センターコンソールには「RNS 510」と呼ばれるフォルクスワーゲン専用のAVナビゲーションシステムと、2ゾーンフルオートエアコンの操作パネルが並ぶ運転席と助手席でそれぞれ異なる温度・風量に設定できる2ゾーンフルオートエアコンを採用。エアフィルターにより花粉やダストなども除去することができる
RNS 510の核となるナビゲーション部には30GBのHDDを採用。FM VICSによる渋滞表示や、声による操作を実現するボイスコントロール機能のほか、ETC車載器も標準装着。さらにフルセグ対応地デジチューナーにより高品質なテレビ再生が行なえるほか、DVD/CD/SDメモリーカードに記録した音楽データをHDDにコピーし再生することが可能。また外部機器へも幅広く対応し、外部入力としてUSBデバイスの接続が可能なほか、オプションのケーブルを用意すればiPodの接続も可能だ。スピーカーはフロント4、リア4の8スピーカーシステムを採用
ナビの操作はダイヤルによる選択、決定で行なうほか、タッチパネルによる操作も可能。直感的で分かりやすく、HDDモデルということもあってストレスなく扱える
2.0 TSIのシートはレザータイプが標準。さらに運転席が8ウェイパワーシートとなるほか、運転席&助手席ともにパワーランバーサポートとシートヒーターを採用。イージーエントリーも電動化されている。写真のトリュフカラーはキャンディホワイトとディープブラックパールエフェクトのボディカラー選択時のみ装着可能。それ以外はブラックレザーとなる(前記2色はブラックレザーも選択可能)
シフトレバー後方にはサイドブレーキと2個分のカップホルダーを装備。アームレストとの間に見えるのはオーディオの外部入力端子アームレスト下はボックスではなく、小さな収納スペースのほかRNS 510用の外部機器用USB端子を備える。iPod接続時はここにオプションケーブルを接続する
ラゲッジスペースはフル乗車時で312L、5:5分割可倒式のリアシートを倒せば1006Lもの容量を確保できる。リアシートを見れば分かるように深さがかなりあるため、大型の荷物も積載可能だラゲッジスペースの右サイドにはランプのほか、12Vの電源ソケットを用意。荷物を固定するのに便利なラゲッジフックも
ラゲッジスペースを見えなくするトノカバーも標準。一般的なハッチバック車などに用意されているのと同タイプだラゲッジスペース下部にはスペアイヤとジャッキ、牽引フック、工具類を効率的に収納。ホイール盗難防止用ボルトを標準採用しているため、専用の解除ナットも用意されているのが分かる

オプション

2.0 TSI標準サイズより、さらに1インチアップの19インチホイール、「Sagitta(サジッタ)」。適合タイヤサイズは235/35 R19ノーマルバンパーの下部に装着するシンプルなフロントスポイラー。よりアグレッシブなスタイルのフロントスカート、ボディーサイドを引き締めるサイドスカートも用意
リアゲートに装着する小振りのリアスポイラー。フロント、サイドと組み合わせてより迫力のあるスタイルを楽しむリアスカートもホワイトとブラックのチェック模様をあしらったフロアマット。このほか、キャリアなども純正オプションとして用意されている

(安田 剛)
2009年 6月 4日