写真で見る スバル「BRZ」


 2011年の東京モーターショーでもっとも注目を集めたクルマといえば、間違いなくトヨタ自動車「86(ハチロク)」とスバル(富士重工業)「BRZ(ビー・アール・ゼット)」だ。「もっとも」と前置きしつつ2台挙げるとはナニゴトか! と怒られるかもしれないが、「ハチロク」と「BRZ」は両社の共同開発のため、基本的には同じクルマと考えてよい。

 とはいえ、両車とも発売前のため詳細は未発表。モーターショーでも断片的な情報しか公開されなかったが、少しずつではあるが内容が明らかになってきたため、簡単に紹介していこう。また、ほぼ最終段階とはいえ、詳細が変更になる可能性があることも一応頭に入れておいてほしい。

 トヨタとスバルの共同開発は、企画&デザインをトヨタ、開発&生産をスバルが担当し、トヨタは86を、スバルはBRZを販売するという形を採る。

 開発を担うことになったスバルがこだわったのが低重心化だ。実現した数値は460mm。関係者曰く「膝より低いぐらいの位置」という高さを為し得たのは、自然吸気エンジン×FRレイアウトの組み合わせによるところが大きい。自社のアイデンティティ的な“4WD&ターボ”の組み合わせを捨ててまでそれを追求したのは、ロールモーメントやボディーロール、荷重移動の減少などコーナリング性能に大きな影響を与えるからだ。タイヤのパフォーマンスに頼らず、高いコーナリングパフォーマンスを得られれば、スポーツカーにとってはこれ以上ないメリットになる。そこで開発当初から先代レガシィをベースに実験が重ねられ、その後、インプレッサをベースに現在のスペックに近い車両を製作するなど、可能性とメリットがとことん検証されている。

 これでピンときた人もいるかもしれないが、BRZには「4WDのラインアップは、現状のレイアウトでは存在しえない」。スバルの4WDシステムは、前輪軸にしっかり荷重をかけるレイアウトとなっており、BRZを(スバルシステムを用いて)4WD化しようとすると、根本からのデザイン変更を強いられる。また、ターボ化に関しては、エンジンルームに若干の余裕はあるものの、エンジン位置を低くするために排気管形状の変更を行っており、補器類の取り回しなどを考えると、すぐには難しいと思われる。いずれにしろ、“4WD&ターボ”は、現在のコンセプトを根底から覆すことになってしまうからだ。

 スバルファンの中には寂しく思う人もいるかもしれないが、逆にいえば、スバルのスポーツモデルの記号性にとらわれず、一から作り上げたクルマがBRZなのだ。

 ちなみに、BRZと86は基本的なコンポーネンツ、エンジンやシャシー、サスペンション形式などはすべて共通。味付け、つまりセッティングのみ若干異なると言う。グレードは、ロー、ミドル、ハイ(いずれも仮称)と3グレードが用意され、ローは6速MTのみ、ミドルとハイには6速MTと6速ATが用意される。撮影車両のグレードは不明だが、装備からすれば最上級グレードのように思える。ボディーカラーは、ブルーとシルバー、そしてブラック。このブルーがスバル専用色となり、トヨタの専用色は東京モーターショーで展示された86のボディーカラーであるマルーン。インテリアは6速ATモデル。

ロングノーズ&ショートデッキのスポーツカーらしいシルエットトヨタ2000GTを思わせるリアビュースマートかつ存在感のあるフロントマスク。「目力」を感じる
後部が丸くラウンドしたドア形状も2000GTっぽいフェンダー後端にはエアアウトレット風のアクセントドアミラーはツートンカラー。ウインカーが内蔵されていないシンプルなモノ
スマートキーのため、ドアハンドルに触れるだけで解錠できるドアを開けると1cmほどウインドーが下がり、閉めると上がる。最近少なくなったがサッシュレスドアならではの機構だ小さなウイングを装備
キャラクターラインの入ったルーフ。リアウインドーはかなり大きなサイズリアフェンダーは大きく盛り上がりボリューム感タップリ
シャープな形状のヘッドライトポジション点灯時はヘッドライト外側のラインが光るヘッドライトはプロジェクタータイプ
ウインカーはユニットの内側とボディーサイドのフェンダー前側にもフォグランプはバンパーに装着される
リアコンビランプは丸いストップランプが目立つ形状ストップランプはLED、ウインカーは一般的な電球タイプバックランプの中央は単なるマーカー。欧州仕様はリアフォグになる
撮影車両はSUBARUエンブレムが付いていたが、国内仕様には装着されないというBRZエンブレムは国内仕様にも付くフロントには六連星のエンブレム
ブラックのボディーカラーはかなり精悍な印象だアルミ製のボンネットはかなり複雑な形状
FA20は、新型インプレッサに比べ搭載位置がバルクヘッド寄りに。重量配分は2名乗車時で53:47となる吸気サウンドを室内に導くダクト。実は開発後期になってから追加されたというスロットルが前向きになったFA20。同時に吸気マニホールドが65mm短縮されている
バッテリーはストラットタワーの後ろ側。重心位置に配慮したため反対側にはマスターシリンダー。グローバルモデルのため、左ステアリング車は、マスターシリンダーとバッテリーの配置が入れ替わる
リアバンパーにはディフューザー風の造形。マフラーは2本出しタイヤは215/45 R17。銘柄はミシュランのPrimacy HPのみの設定
スポーツカーらしいムード満点のインパネまわりステアリングはオーソドックスなデザインタコメーターを中央に置いたメーターパネル。フルスケール260km/hのスピードメーターもイイ感じだ
エアコンはこのクラスのクーペとしては異例の2ゾーンタイプスターターはプッシュボタンタイプ本革(のように見える)シフトノブ&サイドブレーキレバー
シフトレバー後方にはVSCとATのモード選択スイッチシートヒーターまで装備。装備だけ見るとかなりラグジュアリーな印象だペダルは滑り止めの付いたアルミタイプ
5角形のバックミラーはフチがない珍しい形状ドアのアームレストにはパワーウインドーとドアミラーのスイッチサイドシルにはペダルのような意匠のパネルが付く
センターコンソール後端は小物入れ。置き場所が変えられるカップホルダーが付属する
シートはスエード調のファブリックとレザーのコンビネーションタイプインテリアはブラック&レッドステッチのコーディネートでスポーティな印象リアシートの空間はさすがにミニマム
トランクの開口部は小さめラゲッジスペースはかなり奥行きがある。リアシートを倒すと、タイヤ4本と工具箱、そしてヘルメットが搭載できるという空間が現れる



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(安田 剛)
2011年 12月 20日