女神湖2012
クワトロでドリフトしながらの円旋回をすると、ご覧のように1本のパイロン(コーン)をほぼ真正面に見ながらドリフト走行をすることができるんです。私の目線で撮影してみました。そんなことが可能なほど、安定しているワケです |
取材から一旦帰宅してすぐに出かけて向かった立科。夜の中央高速道路を走り、徐々にライトが照らす景色に白い雪が浮かび上がる面積が増えてくる様子にワクワク……それはまるでBGMにユーミンが流れる「私をスキーに連れてって」の1シーンみたい。そんな気分でクルマを走らせていた理由は、翌日の女神湖での氷上走行と、ホテルで食事を終えた友人知人たちがお酒を飲みながらクルマ談義を楽しむ時間に間に合いたくて……夜のスノードライブは安全上おすすめしませんが、私は好きです。
サーキットでのハイグリップ走行もいいけれど、氷上でタイヤをチュルチュルと滑らせて走るのはなかなか出来ない体験ゆえ、余計に楽しいものです。特に湖上は自然相手ですから、冬のごく限られた期間しか走行できませんが、運よく青空の下で走ることができたなら、爽快なウインタードライビングを楽しむことができます。
しかも今回は超久しぶりのプライベート参加でした。そこで自分のクルマで思う存分走り、さらに友人知人たちのクルマまでお借りして走らせてもらうこともできました。異なる駆動方式のクルマをつまみ食い! 美味しかったです。
氷上のフリー走行を改めていろいろなクルマで体験してみて感じたのは、やはり楽しみながらクルマの挙動を感じることができること。ただし、半日とか1日など限られた時間のなかでより貴重な体験をするのであれば、ただ楽しむだけではなく、自分のクルマの駆動方式を理解したうえで、少しだけ冷静にクルマの挙動を感じることも大事なのではないかと思います。
コースは3つのセクションが用意されていて、一般走行路、円旋回&8の字、スラロームがありました。
氷のコンディションを良い状態に保つためと、湖を汚さないように環境への配慮のため、氷上に降りる前は必ず高圧洗車で融雪剤やオイルを洗い流します |
比較的コースアウトのリスクの少ないスラロームや円旋回セクションでは、少しずつペースを上げていったり、ハンドルを切る量は同じで途中でアクセルを踏み足したり、同じ速度でハンドルを切る量やハンドルを切る速さを変えてみると低い速度でもアンダーステアやオーバーステアになる要因や挙動を確認することができるはずです。また氷上と言っても、ツルツルのところもあれば雪が載っているところもあり、ブレーキやハンドルの利き具合も違うのでそれらをリアルに感じることも大事。
なんてことは日頃から分かっている方でも、せっかくの機会ですから少しの間だけ冷静にそれを体験してみることをおすすめしたいのです。すると、挙動が乱れた原因がスピードなのかハンドル操作なのか両方なのかなどが分かり、状況に応じたコントロールを工夫してみることができるはずです。そういう体験をウオームアップ的にやったところで、実際にフリー走行するとなると「曲がらな~い、停まらな~い」とドライバーは車内で1人もがくわけです。結局はそれが楽しいのですが、少しでも安全に楽しむためには前述のようなウオームアップがおすすめです。
3つの円旋回セクションの奥にはオーバルに氷面の作られた8の字セクションがあり、常に誰かが走行していました | 様々なコーナー、滑りやすさがドライバーを夢中にさせる一般走行路がやはりオモシロイ! | サーキットでいうパドック的なスペースに停車中の参加車たち。ちなみに湖上では過剰な重量負荷を氷にかけないため、ある程度の間隔を空けて駐車する必要があります。走行前の注意はきちんと聞いて楽しみましょう |
「ポルシェ 911 GT2をぜひ運転してみるべきです」と勧めていただいたものの、最初はビビッて躊躇していたんです。が、お恥ずかしながら、ご覧のとおりポルシェの運転が面白くてルンルン…… |
アウディのスクールでインストラクターをしている私は、この頃テストコースなどの滑りやすい路面でも4WDのクワトロ走らせるばかりで、FRやRRなどリア駆動のクルマはすっかりご無沙汰でした。久しぶりにお借りしたそれらの駆動方式を持つクルマがまた楽しいではありませんか。
最近、「クワトロはドリフトスピードもドリフト角も圧倒的に有利で、楽しいし、安定感もあるし……」と感じることが必然的に多かったのですが、ポルシェもやっぱり素晴らしい! ハンドル操作に対するリアタイヤの直結ぶりをダイレクトに感じるクルマの動きにただただ感動。でもポルシェ911 GT2で「お~、お尻(リアタイヤ)で曲がる感覚が超気持ちいい! オッと、ちょっと滑り過ぎた……」なんてことをサーキットでやろうと思ったら……、いやそんなこと恐ろしくて考えられません。タイヤのグリップの限界が低い氷上ゆえ、自分のクルマの奥深さや性能の高さを知りやすい、というのも氷上ドライビングの魅力です。
その点ではFFのアウディ A1やフォルクスワーゲン ゴルフが走っていましたが、氷上でも軽快かつ速く、その姿を思わず目で追ってしまいたくなるほどでした。あれは相当にドライバーが自分のクルマを知り尽くしている様子でした。A1はサイドブレーキを上手に使いながらの走行も楽しいです。
マツダのロードスターはオンロードでの走りの魅力は知っていたつもりですが、氷上でもしかり……。軽いボディと一体となって走らせるFRの面白さはクセになるし、欲しくなります。ロードスターが今でも世界で一番売れているオープン2シーターモデルであるのというのも頷けます。
と言う具合で、今回もクルマの運転はやっぱり楽しい! という結論に至るわけです。
女神湖の氷上ドライビングはスタッドレスタイヤもしくはウインタータイヤを履いていれば走行可能です。ちなみに今回、私のクルマには横浜ゴムのアイスガードというタイヤを履いていました。タイヤに詳しい同業者の斉藤聡氏いわく「コントロール性に優れる」というコメントの通り、滑りやすい氷上や雪上で応答性がよく、おかげで汗ばむほど夢中になって氷上ドライビングを楽しむことができました。
横浜ゴムのタイヤを選んだ理由は、サマータイヤも同社のdb(デシベル)を装着しており、タイヤサイズもすんなり選べたからですが、スタッドレスタイヤに変更した直後はさすがに足元が柔らかく、落ち着かなかったものです。が、乗り心地はよりよくなり、あっという間に高速道路の走行も冬用タイヤを履いていることを忘れるほど自然で安定感もあり安心しました。ず~っと昔は高速道路の車線変更に気を使っていた時代もありましたが、今ではそれが懐かしいくらいほどです。
ちなみに、スタッドレスタイヤを上手に翌シーズンも効果的に使用するためには、保管の仕方はもちろんのこと、走行面では舗装路で急ブレーキや急ハンドルはしないほうがいいですよ。ご存知の方も多いとは思いますが、念のため……。
女神湖の氷上ドライビングも間もなくシーズン終了となりますが、寒さ次第ではまだ可能だそうです。チャンスがあれば、来年はみんなで楽しく走りますか? 夜のクルマ談義付でいかがですか?
■飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/
(飯田裕子 )
2012年 2月 13日