飯田裕子のCar Life Diary

DRIVE ~マルホランド・ハイウェイ~

マルホランド・ハイウェイの入口

 「MULHOLLAND HWY」(マルホランド・ハイウェイ)。ロサンゼルスからサンフランシスコ方面へ北上するルートとして、内陸を走る国道101号線と太平洋側を走る州道1号線(PCH:Pacific Coast High Way)があります。ややおおざっぱな説明になりますが、マルホランド・ハイウェイはこれら2本の道路を東西に結ぶルートの1本です。PCH側はマリブから始まるため、例えばサンタモニカあたりから左に海を眺めながら、PCHを北に向かうと「MULHOLLAND HWY」の道路標識を見つけることができるでしょう。

 海から山、もしくは山から海へと続く景色のよい約50マイルほどのドライブルート。その印象は、箱根周辺のドライブルートと被る印象があります。それにロサンゼルス近郊の峠道として、走り屋さんはもちろん、ジェイ・レノなどクルマ好きな著名人たちもドライブを楽しむ道路として有名です。

 朝、ロサンゼルスのウエストウッドから、走り屋さんたちが集まることで有名なマルホランド・ハイウェイ沿いのカフェ「Rock Store」をとりあえず目指し、カーナビをセット。州間高速道路405号線から国道101号線に入り、マルホランド・ハイウェイを走ってみることにしたのでした。


より大きな地図でマルホランド・ハイウェイを表示

 幸いにもこの日は土曜日。日本のように週末の朝をドライブで過ごすクルマ好きがやって来ているかもしれません。一方で、この道路は取り締まりの厳しいことでも知られているので、調子よくワインディング・ドライブを楽しみ過ぎてはキケン。スピード・オーバーにも気を付けなければいけません。

 ひとつお詫びしないといけないのは、今回は101号線を北上しているときに「MULHOLLAND HWY」の標識をやり過ごしてしまい、Rock Storeを目指すカーナビの指示に従ってルートをややショートカットしているであろうことです。私がフリーウェイを降りたのは「KANAN ROAD」でした(詳細は写真をご覧ください)。

州間高速道路405号線(San Diego FWY)は片側5車線もあるアメリカらしいフリーウェイ。平日の朝晩はこの道路もところどころで渋滞し、ビッシリとクルマで埋まってしまいます
405と101の分岐点。マルホランドへはここで101の北、ベンチュラ方面へ
カーナビに表示されたマルホランド・ハイウェイ。国道101号線と州道1号線に挟まれています
カーナビで「Rock Store」をセットしたため、「Mulholland Dr」(マルホランド・ハイウェイの入口はマルホランド・ドライブという名前になっています)のサインでは降りず、そこからまだしばらく走った先のKanan Rdで101を降りました

 交通量もまばらな峠道は道幅もさまざまでした。山に向かって延びる広く長い直線は気持ちよく、タイトなコーナーはアメリカの道路にしては想像よりも狭いところもありますが、ブラインドコーナーを抜けた先の景色がとにかく楽しみ。

 ほどなくして数えきれないほどのオートバイが駐車されているRock Storeに到着。路肩にはフェラーリが2台停まっていて、そこにも人が集まっていました。

 改めて聞くと、ここはバイクが集まる場所として有名なのだとか。カフェというにはまったくシャレてない。周囲に何もないポツンとある地元のお店の中も、外国から来たビジターから見れば古めかしくて気取りのない雰囲気がそれはそれでよいと思えますが、ただの軽食店とも言えるようなお店でした。

 クルマはほとんどいなくて、クラシックカーが1台やって来たけれど、駐車場を埋め尽くすバイクのおかげでUターンもできないほど。実は私も、バイクの数とライダーたちに圧倒され、ふだんなら軽くお話をお聞きするところなのですが、ほとんどお話をうかがうことができませんでした。ただの怪しいアジア人女性に見えたかもしれない……。フェラーリが山に向かってほどなく、私もこのカフェを後にしました。

こちらのお店を角を左折(Sierra Creak Road)。一応立ち寄ってみたら、オートバイとバイクのお客さんが休憩していました
Rock Storeに到着。かつてここはガソリンスタンドだったので、お店のシンボルは給油機。バイクの取材をしたことがないせいか、これほどの数のオートバイが集合しているのを見たのは初めて。ツーリング集団のほかプライベーターも続々とここで小休止するためにやって来ました

 このお店の名前に“Rock”が付く理由が、このあたりが岩山であるからなのか、そこからしばらくは乾いた岩山や岩壁の間を抜けるようなルートが続いていました。大きなコーナーには、クルマを停めて景色や他のクルマやバイクを観ることもできる“見物コーナー”もいくつかあります。が、土曜日の朝だというのに、目ぼしいクルマはGT-Rや数台のコルベットくらい。しかしここは有名なドライブ・ルート。初めて走るのなら、山並みやオモシロイ岩山の色やカタチを楽しみつつ走るだけでも楽しいはずです。

どこか箱根周辺に似た雰囲気がところどころで感じられます
見物コーナーにて。数人がカメラを構えていたため、何かの撮影か取り締まりかと思いきや、勝手に走行シーンを撮影し、その動画や写真が欲しい人はネットで購入できるという“商売”が存在するようです。日本でも誰か始めるかしら?
ところどころに分岐点があるので注意です。右下は看板の撮影で停車したときに遭遇したGT-R
海が見えてきた! 今回のドライブのパートナーはアキュラ「RDX」。ちなみにドライブのお供は私の大好物のドリンク「Dr.Pepper」! 日本ではほとんど飲まないのにアメリカではお水かドクターペッパーばかり。自分でも不思議なのですが……

 これまでずっと上っていた道路が下りへと変わる頃になると、ところどころで空の青さとは違う色をしたブルーが見え、海に向かって山を下っていることがわかってきます。別荘や牧草地が増えて、高級住宅地でもあるマリブ(この道路がPCHと突き当たるあたりの地域)の雰囲気が始まっているようです。

 住宅がますます増えてくるとPCHは近い。ドーンと3車線に広がる道路と、その向こうに海が見えたらマルホランド・ハイウエイのドライブは終了! ところどころでクルマを停めて景色を眺めても、2時間くらいで走ることができそうです。

 逆のルートももちろんよいでしょう。でももし、私のように山から海に抜けるルートを選ばれたのなら、そのままPCHのドライブをぜひ楽しんでください。北に向かうのもよいけれど、南に走ればサンタモニカまでそう遠くはなく、左右に建つ家とガレージに停まっているクルマを眺めながら、ドライブするのも興味深いはず。

 この日はマルホランド・ハイウェイをドライブした後サンタモニカでしばらく過ごし(優雅に聞こえるかもしれませんが、アキュラ「RDX」の試乗記を書くためにクルマの撮影をしていました)、その後ハリウッドセレブが大好きなショップやレストランのあるロバートソン・ブルバードを冷かしてドライブ終了。

西に向かうと1号線(PCH)に下りられます
さらに続くマルホランド・ハイウェイ
どんどんと海が近づいてきます
マルホランド・ハイウェイ終了。目の前は1号線(PCH)。走行するクルマはみんなかなりスピードを出しているので、サンタモニカ方面に向かう左折はくれぐれも注意!
海沿いの路肩にクルマを停めて少し休憩。マルホランド・ハイウェイ入口近く、写真のレストランにもオートバイや速そうなクルマが停まっていました
1号(PCH)をサンタモニカに向かって走る道中の風景
サンタモニカの午後(いわゆる観光地)の無料駐車場は大混雑。有料なら大きなイベントなどがなければ比較的スムーズに駐車できます。サンタモニカで夕日が沈む様子を見るのも素敵です

 デトロイトショー取材に行く前に立ち寄ったロサンゼルスでは、2日間の多くの時間をドライブして過ごしたような気がします。が、クルマ好きとしてはルートをカーナビに任せ、異国の街並みやそこを走るクルマなどを眺めながらドライブするのは楽しいものです。ロデオドライブ周辺やロバートソンのエリアに入ると、とたんに高級欧米車が増えるからこれがまたオモシロイ!

 マルホランド・ハイウェイのドライブ・コースはウェストウッドやサンタモニカのあたりからなら4時間くらい(渋滞を除いて)で楽しめそうです。ただしオートバイや自転車がとにかく多く、事故も取り締まりも多いので、くれぐれもご注意を。また101号線をさらに北に少し行けば、「カマリロ・プレミアムアウトレット」があります。もちろんサンタモニカもお買い物やぶら散歩が楽しいエリアです。ドライブ&ショッピングを楽しむのにもよいコースと言えそうです。

飯田裕子