飯田裕子のCar Life Diary

デトロイト モーターショー 2013

プレスデー初日。最初にアメリカの自動車市場が元気を取り戻してきたと感じることができたのがこの来場者の多さを見た瞬間。市場が停滞していたときの寒々とした雰囲気とは大違いでした

 デトロイトモーターショーと言えば、アメリカはもちろん世界のモーターショーの1年の幕開けとなるショーです。

 しかし2007年にサブプライムローン問題が起き、2008年秋にはリーマンブラザーズが破綻。2009年の開催直前には米国外のいくつかのメーカーが出展を取りやめ、それまで俳優や著名人らとともに華やかなショーを見せてくれていた“ビッグ3”のプレスカンファレンスでは、CEOが語る今後の動向に耳を傾ける、重々しいムードが流れていました。

 そんな数年前に比べ、今回、久しぶりに訪れたデトロイトモーターショーは活気を取り戻していました。

 デトロイトモーターショーには、何度か訪れています。2001年のアメリカ同時多発テロの直後、会場に入る前のセキュリティチェックに長蛇の列ができ、ものものしい警戒の中で開催されました。が、今回は警察犬によるチェックもなく、IDチェックをするアメリカ人も比較的明るく入口で出迎えてくれ、テロ以降続いた暗いムードもそれ以前に戻った様子。

 各メーカーのプレスカンファレンスでも、前年度との比較はもちろん、2007年以降の営業収益や販売台数の伸び率と比較して上向きであることを発表するメーカーばかり。アメリカ経済の細かい背景はさておき、ポジティブなアナウンスができること、そしてそんな雰囲気をクルマからも感じることができました。

 一方で、アメリカでも若者のクルマ離れが不安視されているのが現状。アメリカではクルマ生活が基本。若者のクルマ離れというのは、クルマにこだわりを持つ若者が減ってしまっているということのようです。そのため比較的手ごろな価格で購入できる新車に、魅力的な付加価値やデザインを持たせ、少しでも自分のところのクルマを購入してもうらおうという戦略がうかがえました。

 と言っても、考えるのはどこも同じようで、今やスマートフォンと繋がっていない時間があるなんて考えられないアメリカ(日本も同じ?)。運転中でも外部とのコミュニケーションがとれるソフトを搭載する点を、各社アピールしていた点が印象に残ります。こういう流れはやがて日本にもやって来るのかもしれません。

 デトロイトショーが開催されるCOBOセンターはモーターショーの会場としては比較的規模が小さく、ブースを行き来するのに便利な会場ではありますが、カンファレンスを渡り歩き右往左往したプレスデーでは、なかなか展示車両すべてを見てまわることはできませんでした。そんな中でも印象に残る会場の様子を、沢山の写真とともにご紹介したいと思います。

日本でもショーの様子は報道されていたと思いますが、会場でもご覧のようなTV中継も行われていました
プレスデー前夜にはメルセデス・ベンツがカンファレンスを行い「CLA」を披露。一夜かぎりのお披露目となりました
「テスラのブースが広くなったのでは?」。「モデルS」の販売開始に続き、「モデルX」も市販予定。このガルウイングもそのままと言うから、日本の立体駐車場ではどうなるのでしょう
ランチは簡単にホットドックとポテトチップス。ドリンクは私の大好きなドクターペッパー。余談ですが、私はアメリカに来るとなぜかソフトドリンクはお水かドクターペッパーばかり……。日本では飲みたいと思わないのに、なぜでしょう
どこのブースもカンファレンスに集まる人で溢れ返っていました。カンファレンス直後は発表されたクルマを見るのも大変なため、数時間後に再びブースを訪れることもしばしば。すると、一般公開に向けて会場の模様替えが始まっていました
トヨタは次世代カローラのコンセプトモデルを発表。日本仕様と海外向けとがあり、こちらは当然ながら海外に向けて発売が予定されるモデル。こちらでもコミュニケーションの充実ぶりをアピール。そしてデザインが若い!
ヒュンダイは「ジェネシス」の次期モデルのコンセプトを発表。現行モデルに比べ、内外装の先進ぶりをアピール。成長著しいメーカーとして、日本に居ては感じることのできない進化は見逃せません。ライバルはレクサス「GS」、メルセデス・ベンツ「Eクラス」、BMW「5シリーズ」など
ヒュンダイのカンファレンスでは、元アウディのデザインチーフであり、キアのデザインチーフだったピーター・シュライヤー氏を、ヒュンダイ全体のデザインチーフとして紹介。現代、キアともにますますデザインに磨きがかかる?
昨年のパイクスピークで総合優勝したのはリース・ミレンがドライブするヒュンダイ「ジェネシス」でした。カンファレンスでは今年も挑戦することを発表。勝っても挑戦し続ける姿勢は素晴らしい
キア「オプティマ」。デザインを統括していたのがピーター・シュライヤー氏ということもあり、どこかで見たことのあるようなデザインではあるものの、造り込みの質感も高く、ハイブリッドもあるらしい。2万1000~2万7000ドルくらいで販売されています。キアのブースはカンファレンス時の椅子にも凝っていたのが印象的
フォルクスワーゲンは3列シートタイプのSUV「クロス ブルー」コンセプトを発表。ディーゼルとモーターを組み合わせたプラグイン・ハイブリッドとして紹介
BMWの「4シリーズクーペ」は期待通りにアグレッシブなデザインで登場。このまま市販化されるかどうかは未定だけれど……。ボディーサイズは4641×1826×1362mm(全長×全幅×全高)。3シリーズより少し幅広でわずかに背が低く、ホイールベースも少し長い
ホンダは「アーバンSUVコンセプト」を発表。センタータンクレイアウトを採用するグローバルプラットフォームを使ったコンパクトSUV。市販モデルは今年末に日本から発表される予定だそうです
インフィニティでは「Q50」を発表。日本では「スカイライン」に代わるモデルと容易に想像できるため、新型スカイラインはこんな感じになるようです。これまで海外でG○○と呼ばれていたこのモデルが今回からQ○○に変更になっていました。展示モデルはハイブリッド搭載のため、ラゲッジのリヤ席周辺にバッテリーを積むことからスペースはご覧のとおり。助手席のデザインが印象的。助手席に乗ってみたいと思わせるデザインがステキでした
クライスラーとフィアットの提携により、アメリカの街中でもけっこう見かけたフィアット「500」。そしてさらにこの写真のモデルも含めMOPAR(モパー:クライスラーのパーツ部門)が手掛けるフィアット&クライスラーモデルのスタイリッシュなモデルたちに目にとまることが多く、自分でも驚きました。モパー仕様、いい感じでした
会場内を行き来している中で何度か通りかかり、思わず足を止めたくなるモデルが多く目に留まったのは、ダッジのブースでした。中でも「ダート」は1万6000ドル~2万ドルくらいのモデルで、手頃なわりにデザイン性も高く、若者層にもウケそう
新型コルベットを見にいく途中で足が止まったのは、ダッジ「バイパー」。こういうスポーツカーの存在が痛々しく(頑張っている感)見えた時期を乗り越え、会場をさらに華やかに盛り立てて見えるのは、存在感に“華”と“力”があるからでしょう
近年のアメリカではエコやコンパクトというキーワードが浮かぶモデルも多い中、相変わらず特大ピックアップも“ソレはソレ、コレはコレ”として堂々と存在しています。パワートレーンの展示が面白くて思わず撮影してしまいました。その全長は日本の電車の1両分ほどありそう(オーバーです)
7代目となる新型「コルベット スティングレイ」は、歴代モデルに囲まれて中央に鎮座していました。搭載エンジンはV8 6.2リッター(450PS/610Nm)。日本への導入予定はあるものの時期は未定。けれど、北米でも年末くらいということなので、来年には日本上陸なるか……?日本では名称に“スティングレイ”を付ける予定はないのだとか。理由は想像が付くのでは?

飯田裕子