【連載】橋本洋平の「GAZOO Racing 86/BRZ Race」奮闘記
第9回:5位入賞となった第6戦・富士スピードウェイ。躍進の理由は新師匠にあり!?
(2014/8/19 00:00)
すでに速報でもお伝えした通り、ワタクシ橋本洋平、遂に「GAZOO Racing 86/BRZ Race」で5位入賞することができました! 「優勝したわけでもないのに喜びすぎ」とか「速報は大げさでは?」なんて声が聞こえてくるが、アラフォーのオッサンアマチュアレーサーにとってはひとまず快挙ってことで、お許しくださいませ。
●【速報】「GAZOO Racing 86/BRZ Race」第6戦富士で橋本洋平選手が5位入賞
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140726_659669.html
ここまでの結果を得るまでには、かなり苦戦した。連載をご覧になっている方ならご理解いただけると思うが、前厄のせいにしてみたり、クルマのせいにしてみたり、ありとあらゆる言い訳をしなければならないほどの散々な今シーズンだったのだ。ポッと出でそれなりの成績を収めることができた昨シーズンとはわけが違う。タイヤ戦争の過熱化、さらには有名プロドライバーが数多く参戦するなど、今年のGAZOO Racing 86/BRZ Raceの難しさはかなりのもの。だから5位だって騒ぎ立ててしまうほどなのである。
ならば、どうして第6戦・富士スピードウェイでようやく成績が上向いたのか? ここではその理由を冷静に振り返ってみる。
久保凜太郎選手から大きなヒントを得る
上向いたきっかけはレース前に行った練習走行時に、あることに気づいたからだ。それはタイヤの使い方。現在装着している「POTENZA RE-11A 4.0」のポテンシャルを、フルに使い切れていないことが判明したのだ。それは同じタイヤを装着するライバルに対し、タイムが出せていないことからも理解をしていたのだが、走行後のタイヤの摩耗から、“まだまだ”であることを突き付けられたのだ。
それをキチンと示してくれたのが久保凜太郎選手(カーナンバー87)だ。今年はF3に出場し、Nクラスでトップ争いを展開するほどの実力者。若干20歳にしてかなりの落ち着きと、分析力を持ち合わせる期待のホープである。とはいえ、レースが終わればくだらない話をしているところしか見たことがない。エリート街道まっしぐらという感覚は薄く、いい意味で昔ながらのツーリングカードライバー的というか、破天荒な言動が面白いヤツだ。
だが走りはアツいだけじゃなく、非常にクレバー。タイヤの摩耗を見れば、かなりキレイに使っているから恐れ入る。同じ周回をした僕のタイヤを見ると、センター付近にコジッたような減りが見られる。どうしてそんな乗り方ができるのか? その秘密を探ってみることにした。
まずは僕のクルマに乗ってもらい、セッティングをはじめ、何か問題がないのかを指摘してもらうことに。すると「セッティングについては問題ないと思いますよ。かなり乗りやすいし」とお褒めの言葉をもらうことができた。ただ、「LSDは壊れていますね。トラクションがまったくかからない」との指摘があった。
乗り方についてはなかなか興味深い。車載カメラで久保選手の走りを見てみると、メリハリがあるし無駄がない。ブレーキするところはキチンと突っ込み、コーナリング中は無駄にアクセルを踏まずに一瞬タメのようなものを作り、アクセルを全開にできるポイントできちんと全開にすることができている。僕の場合はメリハリがなく、コーナリング中も無駄にアクセルを踏んでいる結果、クルマが曲がりきらず、タイヤをコジっているところが目立ったのだ。
特に違っていたのは最終コーナーの脱出時。シフトアップがとにかく早かったのだ。クルマの向きを素早く変えて、全開にするポイントが僕よりも遥かに手前だからこそ、そんな芸当が可能になっている。
帰宅してから頭を整理し、次の走行までに久保選手が与えてくれた課題を自分のものにしようと、自宅ではPlayStation3のゲームソフト「グランツーリスモ6」を引っ張り出して練習を開始。自分の身体に染み込んでしまったクセをできるだけ取り除くように努力した。
一方、クルマには新品LSDを投入することにした。第2戦が始まる直前に新品に交換したのだが、4戦も持たなかった。やはりレースに使うには純正LSDは力不足。本当なら機械式LSDにしたいところだが、レギュレーションが許さないのだから仕方ない。交換するのに15万円ほどかかるこの純正LSD。最終戦を迎えるまでには、もう1回くらい交換が必要になりそうだから泣けてくる。
師匠の走りに感心しながら最終的に5位入賞
こうして人もクルマもリセットして本番に挑んだ結果、予選では1組目の4番手を獲得。総合では8番手のグリッドを獲得することに成功! 今回のレースで師匠となってくれた久保選手は総合9番手グリッド。左後ろにいるという状況でのスタートとなった。
ただ、レースが始まればこれまでの和やかムードはどこにもない。ロケットスタートを決めた久保選手は、スタート直後の1コーナーで僕のインをズバッと突き、抜き去って行った。さすがはあらゆるレースで鍛えているだけのことはある。上手いもんだなぁ、なんて感心しながら、オッサンは若者の真後ろでコバンザメ走法に徹することに。すると、1周目の混乱で6位まで順位を上げることができた。
その後はずっと耐えるばかりの状況が続き、ゴールまで順位を変えることはできなかった。久保選手はその後も1台をパスして4位に入賞。やはり勢いがあるし、レース運びも学ぶべき点が多かった。それを真後ろから見物させてもらったのだから、その経験を次に活かしたいものである。
ちなみにレース後、前を走っていた選手に接触によるペナルティが与えられたため、順位が繰り上がって5位になることができた。
そして最後に、ベストパフォーマンス賞なるものを頂戴することができた。これはアマチュアドライバーの中でもっとも上位だった人に与えられるもの。次戦のエントリーフィーが免除されるという、とってもありがたい賞なのでありました。これで9月6日~7日に行われる第7戦・岡山国際サーキットも無事にエントリーさせていただけそうであります。
というわけで、ようやく上向いてきた今シーズン。5位で満足することなく、もっと上へ。そして、また速報が流れるよう全力で挑んで行きたいと思います。オッサンレーサーの無謀な挑戦は、まだまだ続きますよ!