【第59回】独特のつけ汁で味わう伝統の「高遠そば」ですの、の巻


つゆに特徴あり! の高遠そばをご紹介

 

 流線型のカッコいいフォルムのプジョーRCZに乗り込んで、中央自動車道をひた走るグルメ隊。今回は長野県伊那市高遠町で江戸時代から伝わるという「高遠そば」をご紹介します。高遠そばと聞いて会津を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれません。実はわたくしも何年か前に南会津の大内宿で高遠そばを食べたことがあるんですの。

 なぜ遠く離れた会津地方で高遠と名前の付いたおそばが食べられているのでしょうか? 実は江戸時代のはじめに信濃国・高遠の藩主だった保科正之が、会津松平家の初代藩主として陸奥会津藩に移った際に、高遠でそれまで食べられていたそばの食べ方も一緒に伝えられたという歴史があるからなんですの。

 ちなみに高遠町では、15年程前から町おこしの一環としてノボリを立てるなどして高遠そばをアピールするようになったんだとか。300年以上の時を経て、ようやく本家本元で脚光を浴び始めているという歴史あるおそば、それが高遠そばというわけです。

高遠町に入るとこんな看板が! 気分が盛り上がります今回おじゃましたのは「高遠そば ますや」さん漆喰の壁に総木曽檜張りの床。南側にはウッドデッキのテラス席も

 その高遠そば、「からつゆ」と呼ばれる味噌味のつゆで食べることが特徴で、現在高遠町では10数軒のおそば屋さんで食べることができるのですが、今回グルメ隊がおじゃましたのは桜で有名な高遠城址公園にもほど近い「高遠そば ますや」。オープンしてこの春で6年目。毎日石臼で自家製粉しているというこだわりのお店です。ご主人がさっそく「からつゆ」に欠かせないあるものを見せてくださいました。

「これがつゆに入れるという大根ですか?! 丸っこくてなんだかカブみたいですわね」
「そうですね。『高遠辛味大根』といって、ちゃんと地元で作られているものなんですよ。水分が少なくて辛みが強いのが特徴です」

 ますやで食べられるおそばには「玄(げん)」と「抜き」という2種類があります。「玄」は透明感があってツルツルとのど越しがいいおそば。一方「抜き」は、あらびきでザラッとした感じの癖の強い十割そばだそうで、

「どちらも食べられる合い盛り(1000円)が人気ですね」

 ということなので、高遠そば(1200円)と、合い盛り(1000円)をそれぞれ注文することに。

つゆに使用する「高遠辛味大根」。汁気が少なくて強い辛味が特徴なんですのますやのお蕎麦は2種類。こちらは透明感のあるツルツルののど越しの「玄(げん)」玄2枚の高遠そばは1200円。1枚を「抜き」にする合盛りも可(+150円)
辛つゆの作り方。まず焼き味噌を半分すり鉢に入れます出汁を注いで味噌を溶きます薬味の辛味大根とネギを加えてできあがり

 まずは高遠そば。こんがり焼かれた味噌が、木しゃもじにたっぷり塗られて出てきました。それを器に半分くらい取って、出汁を加えて混ぜます。そこに長ネギと、さっき見せてもらった辛味大根のおろしを投入すれば「からつゆ」のできあがり。さっそくそこに玄をつけて食べてみたところ、

「たしかに辛い!でもこのピリリとした辛味がおいしいですわ~!」
「ちょっと固めのお蕎麦がよく合いますね」

 と、あっという間に1枚目のざるを完食。うれしいのは1枚目のザルを食べ終わる頃に茹でたての2枚目を持ってきてもらえること。なるべく茹でたてを食べて欲しいというご主人の気持ちが伺えます。抜きに箸を伸ばしたエイミーは、

「んんん! これはのどごしのよい玄と対照的で、野趣あふれるというか、風味が強くて全然違います! ゆきぴゅーさんちょっと食べてみてください」
「どれどれ……あらホントですわ~! ざらっとした感触で、この太切りがまた味わい深いですわね。玄もいいけどこの喉ごしは初めてでちょっと衝撃的ですわ」

ではさっそくいただきまーす! どのくらい辛いかドキドキこちらは「玄」と「抜き」を食べ比べられる合い盛り1000円。通常は1枚食べ終わる頃、2枚目が出てきます「そばって碾き方でこんなに色や風味が違うものなんですのね~」
合い盛りには瀬戸内の藻塩がついてきますこちらは「抜き」。ほんのり薄緑色なのは甘皮まで碾きこんでいるためなんだそう「抜き」はぜひ藻塩で味わってみてくださいということで初挑戦。なんだか通っぽい
ますやのそば湯、これがまた濃厚でおいしいんですの。辛つゆに割ると最高です長野県中部地方の郷土料理、五平餅。甘さのなかにも山椒の香りがピリリと効いていて美味デザートで出たそば寒天。桜の季節など繁忙期には出ないこともあります

 そして最後に出てくるそば湯がこれまた濃厚で、味噌入りおつゆで割ると格別のおいしさなんですの。味噌入りと味噌なしを両方楽しめるのもうれしいところ。

「ひきたてのそば粉で打ったおそば、最高でしたわね」
「ホント、蕎麦そのものを贅沢に味わった感がありますね」

 こうして存分に高遠そばを堪能したグルメ隊、郷土料理である五平餅もペロリと平らげて、大満足でお店を後にしたのでした。

さくら名所100選にも選ばれていて全国的にも有名な高遠城址公園は、ますやからわずか2kmほど毎年お花見客で賑わう様子が撮られる場所。今年の見頃予測は15日~20日くらいだそうです高遠の桜はソメイヨシノではなくタカトオコヒガンザクラといって小振りの薄ピンク色。薄紅色に染まるのももうすぐ!

高遠そば ますや(http://massya.com/
長野県伊那市高遠町東高遠1071
電話:0265-94-5123
営業時間:11時~16時 夜間は予約営業
定休日:火曜日
どのおそばも玄350円、抜き500円でざるの追加が可能です。

※観光協会さんに聞いたところ今年の高遠城址公園の桜の見頃予測は4月15日~20日頃とのこと。天下第一のさくら見物の後は、ご主人のこだわりの2種のお蕎麦をぜひとも味わって帰ってくださいませね。

 

 

このクルマでドライブしました!

プジョー「RCZ」

プジョー初の「数字じゃない車名」のRCZは、やはりプジョー初のコンパクトスポーツクーペ。2010年の登場からもう2年が経とうとしているけれど、そのスタイルは依然として魅力的。1.6リッターの直噴ツインスクロールターボエンジンで、遠出もラクラク

プロフィール

ゆきぴゅーゆきぴゅーおふぃしゃるほーむぺえじ
イラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”。長野でフツーのOLをしていたが何の因果か鬼畜デジカメライターの弟子(奴隷)となり2000年に上京。日々の過酷でセクハラな毎日を絵日記で綴っているうちに絵の道に目覚め、ついに2005年独立。以降あちこちでタダでごはんを食べながらポンチ絵画家としてのお気楽な人生を歩んでいる。

 


エイミー
女性カメラマン。カメラマンとして名を馳せるべくボスニアに戦場カメラマンとして渡るも、行った早々流れ弾に当たってしまいあえなく帰国。車にまったく興味がないゆきぴゅーとは正反対に機械モノが大好き。食べるのも大好き。封印したはずの赤いバンダナは、ネット上で復活希望の声があるとかないとか(でももうしません!)

 



2012年 4月 4日