10万円、10年落ち、10万km超の軽バン買いました

第1回 軽バンとの新生活、はじめました

買った軽バン

 クルマはいろいろな目的がある。そのなかでも重要な1つとしてモノを運ぶということがある。過去、軽トラを所有した際、荷物運びという点であまりに便利だったということを思い出し、再びモノを運べるクルマに興味が湧き、軽バンをわが家へ迎え入れることになった。

自転車を運びたいから、軽バン買おう

 きっかけは、自転車を運べると便利だと思ったから。例えば駅まで自転車で行ってはみるものの、雨で自転車で帰れない場合があるし、寒い夜は自転車での帰宅は億劫だ。また、夜道に自転車が防犯上好ましくないこともある。軽トラを所有していたときならバスやタクシーで自宅に戻り、自転車を荷台に載せて自転車ごと迎えに行くことが簡単だった。また、軽トラなら荷物運びという点でも便利で、大きなものはもちろん、砂利や大きい道具などもガンガン積むことができて大変便利だった。

軽バンは荷室がフラットで広い。横幅は1370mmで、フロア長は1935mmあるため、ベニヤ板を立てずにそのまま載りそう

 そんなことを考えながら、過去に自転車ごと迎えに行けるクルマについて相談を受けたことも思い出した。自転車が積みやすく、普段使いにも違和感のないクルマとして、当時登場したばかりのホンダのN-VANを推しておいたのだった。しかも、広大な室内空間は雨ざらしにできない大きな荷物運びにも便利だ。

助手席は前にたためる

 2つのことから導き出した答えは、自分も軽バン買ってみよう! というものだった。前述のN-VANは低い床と長物が積めるというすばらしいパッケージだが、新車はもちろんのこと中古車であってもまだまだ高価。サブカーとしての利用になるのでローンを組んでまで購入はしたくない。そして、自転車を躊躇なく載せるのなら、少しくたびれたクルマのほうが気楽に使える。つまりは中古の軽バンだ。そうとなったら、まずは情報集めだ。

軽バンの中古は程度で極端に値段が変わる

 実は過去に軽トラの購入の際、軽バンについてもおおまかな状況は把握していた。軽トラと違うことは、車両がきれいかどうかで大きく値段が変わること。そしてAT車比率が軽トラに比べると高い印象があることだ。

 そして、最近は軽バンをキャンピングカーとして使うためのブームもある。そのせいか中古相場も上がり気味という話も聞いた。しかし、安いほうの物件から見ていくとそうでもない。相変わらず一桁万円のクルマはネットオークションはもちろん、格安中古車店にも並んでいる。

 よく見ていくと、軽バンは実用車のため、荒く扱われたクルマもある。汚れ程度ならまだいいが、むき出しの内装になにかをぶつければ傷から錆が発生する。酷使からシートの破れも起こりやすい。外装もぶつけて凹みのあるクルマは多く、値段が高く付けられたクルマは、内外装のきれいさが大きく違っている。

軽バンではMT車は意外に少なく、需要も少ない

 また、MT車が敬遠されるのも軽バンの特徴。MT車というだけで価格はぐっと落ちる。運転好きならMT車でもぜんぜん構わないと思われるが、車種によってはトランスミッションやデフのギヤ比の関係でMT車は高速巡航のエンジン回転数が高く、長距離走行には向かないため、旅行まで視野に入れるならAT車、できればターボ付きのほうが適している場合もある。軽バンの基本的な需要であるデリバリー用途では、燃費の関係でMT車を好んで選ぶという人もいるようだが、それは少数派だ。

 そこで、外装に目立つ凹みや傷がなく、内装もきれい、走行距離も多くなく、AT車という条件が揃えば中古車価格も高価になる。同じ年式や仕様であっても、きれいかどうかや走行距離で、一桁万円から数十万円の差になっていく。

 それは逆に、上記の条件を外していれば、多少内外装が汚れていても走行距離が多くても、機関が良好な個体が非常に安く手に入るということでもある。

車種を選ぶ、ワゴンでなくてバンを選ぶ

 次に車種。新車で選んだ場合、OEM車を除けばスズキ・エブリイ、登場まもないダイハツ・ハイゼット カーゴと上級のアトレー、ホンダ・N-VANの大きく3種類。中古車となるとエブリィとハイゼット カーゴの旧型、2012年までの自社生産のスバル・サンバー、2014年までの自社生産の三菱自動車・ミニキャブ、そしてホンダ・アクティバンとバモス ホビオのバン仕様となる。

 車種ごとの違いはいろいろあるが、N-VANのみ前輪駆動であとは後輪駆動、そしてそれらをベースとした4WDとなる。4WDといってもバンの場合はパートタイム式が多く、通常の走行安定性よりも悪路脱出性能に振っていると言っていいだろう。

 エンジン搭載位置もN-VANが前端、自社生産のサンバーが後端、アクティやバモスホビオがリアミッド、その他が運転席下となる。騒音という点では運転席下は不利になる。

 反対にエンジンが後ろにあるクルマは整備時は荷室の床下のハッチを開く必要がある。もし、荷室になにか装備を固定する場合は整備時に面倒になるという点は覚えておきたい。

 1998年以降の現在のサイズの軽バンに限っていえば、前輪の位置が自社生産のサンバーだけ運転席下になる。運転席の足下が広く自然な運転ポジションが取れ、ホイールベースが短いため小回り性能と悪路走破性は高いというメリットがあるが、一般的には衝突安全性能が劣ることや、段差の突き上げが大きく乗り心地が不利と言われている。このあたりは軽トラックと同じだ。

 また、軽バンを選ぶなかで、場合によってはその同じ車型のワゴン版も視野に入れることもある。ワゴンとバンの違いは5ナンバーか4ナンバーということだが、軽自動車の場合、車検はどちらも2年で、初回車検が3年か2年かの違いだが3年落ち以上の中古車には関係ない。軽自動車税はバンのほうが安く、初年度登録年にもよるが、現在新車で買うとバンは年額5000円。ワゴンは1万800円だ。

リアシートはミニマム。ヘッドレストがない車種やグレードがほとんど

 ワゴンとバンの違いをもう少し見ていくと、ワゴンは乗用車でバンは貨物車のため、荷室の大きさにも基準がある。そのため、リアシートが立派なものかミニマムな非常用ということがある。さらに、一般的にはバンの内装は質素で鉄板むき出し部分が多いなどの差もあり、空調の効きや遮音という面ではワゴンのほうが優れていることが多い。

フロントストラットのところは鉄板がむき出し。ワゴンなら内装材で覆われている部分だ

 また、バンのほうが積載重量が大きいが、バンはタイヤの選択の幅が狭まる。バンは車種ごとに定められた耐荷重のロードインデックスを満たしたタイヤが必要で、乗用車用タイヤで耐荷重を満たすものを選ぶのはかなり難しく、ほぼ貨物車用タイヤ、しかも純正サイズからしか選べない。この部分のドレスアップを考えている場合は留意しておきたい点だ。

 まとめると、バンのほうが税金が年間数千円安いが、普段使いならワゴンのほうが快適ということになる。ただし、任意保険の保険料のところで型式別料率クラスがもともとないバンが不利になる可能性がある。細かく維持費を比べるならそこまで注意したい。

車種だけでなく、個々の仕様もよく確認する

 さて、車種がおよそ決まったら、次にクルマを見ていくが、軽バンは業務用ということで極端に質素な仕様のクルマも存在する。パワーウィンドウや集中ドアロックはもちろんのことエアコンやパワステがないクルマもあるため、現在の乗用車の常識で装備されて当然と思う装備でも細かく確認しておく必要がある。

現行の軽バンのスペック比較

製造メーカー車名エンジン位置エンジン気筒数通常駆動輪リアドア窓の開閉ターボの有無
スズキエブリィバン運転席下3気筒スライド式設定あり
ダイハツハイゼット カーゴ/アトレー運転席下3気筒ポップアップ式を設定設定あり
ホンダN-VAN前端3気筒ポップアップ式を設定設定あり

※ダイハツの4WDの3モードは、CVT車のみで2WD、4WD、4WDロックが選択できる
※表は代表的なスペック、仕様によってはこれ以外のスペックの場合もある

 特に最近話題になった問題として、リアドアのガラス窓が開かない仕様があること。新型ではダイハツ・ハイゼット カーゴが一部でポップアップ式の仕様はあるものの、窓が下にスライドして大きく開く仕様がない。N-VANも同様だ。反対に旧型のクルマならリアの窓が開くと思っていると、以前のものでも下位グレードでは窓が固定されているものもある。

重視したい後席のウィンドウ開閉の有無

 荷物運びのクルマというのならリア窓が開かないのは問題ないかもしれないが、車中泊など室内で過ごすことを重視した場合は、リア窓の開閉ができるかどうかは大きな違い。現行モデルに一部採用のポップアップ式は、顔を出して外の空気を吸うことができないほか、車中泊愛好者に人気の網戸や換気用ファンなどと組み合わせにくいことは注意しておいたほうがいいだろう。

 そして、後席の利用も想定している場合は、ヘッドレストとリアシートベルトにも注目したい。ヘッドレストのあるバンはN-VANの上級グレードなどを除けばかなり少ない。また、古めのクルマやグレードによっては後席シートベルトが2点式というクルマもある。リアシートはあくまで非常用で、利用には犠牲を伴うという認識を持ったほうがよさそうだ。

2010年頃の軽バンのスペック比較

製造メーカー車名エンジン位置エンジン気筒数通常駆動輪リアドアの窓ターボの有無
スズキエブリイバン運転席下3気筒スライド式設定あり
ダイハツハイゼット カーゴ運転席下3気筒スライド式設定あり
ホンダアクティバン/バモスホビオ荷台下(MR)3気筒スライド式なし
三菱自動車ミニキャブバン運転席下3気筒スライド式なし
スバルサンバーバン後端荷台下4気筒スライド式スーパーチャージャー仕様あり

※表は代表的なスペック、仕様によってはこれ以外のスペックの場合もある

 最後に忘れてはならないのが、ハイルーフと標準ルーフの違い。市場ではハイルーフ仕様のほうが多いように思えるが、標準ルーフ車も混じっている。空力や横風安定性なら標準ルーフだが、スペース重視ならハイルーフを選んだほうがいいだろう。

ハイルーフなら室内空間が上部に広がる

中古車の程度問題は、天に任すしかない?

 次に中古車選びの最大の問題である個々のクルマの「程度」だ。内外装の傷や汚れは見れば分かるが、エンジンや走行系の程度は分かりにくい。これはある程度、運を天に任せるしかないが、走行距離を順調に重ねてきたクルマであれば、毎日順調に走ってきたこととなり、問題がないことが多いというのが筆者の経験からくる考えだ。

 また、軽バンということで法人リース車なら定期メンテナンスはしっかり行なわれてきた可能性は高い。半面、その分法人利用車は荒く扱われたこともある点も考慮すべきところ。また、雪国のクルマは錆が問題になり、一般的には敬遠されがちだが、うまく選べばお買い得なクルマに当たることもある。

 ちなみに法人利用車の場合、カッティングシートで社名やロゴなどが貼られていたため、シートの剥がし跡が残っている場合もある。コンパウンドで磨けば落ちることが多いが、塗装の劣化具合によってきれいに落ちないこともある。

筆者が買ったのは“丸テールの後輪駆動ベースの4WDな日産車”

 そんななかで筆者が買ったのは三菱自動車・ミニキャブの日産版、日産・クリッパーバンとなる。グレードは3つあるうちの真ん中のハイルーフ「DX」で10年落ち、10万kmオーバーという個体。車検なしの現状渡しだったが、問題なく動く状態だったため車検整備項目に該当する点検と整備をして、自分で軽自動車検査協会に持ち込み検査を受けてナンバー取得。その費用も含めて合計約10万円で乗り出した。

丸テールの後輪駆動ベースの4WDな日産車

 この日産・クリッパーバンを選んだ理由は、「丸テールの後輪駆動ベースの4WDな日産車」というあの名車と錯覚する説明をしてみたかった(笑)ことはともかく、基本的には自分の趣味から絶版車狙いで、ホンダのアクティ/バモスまたは三菱自動車製のミニキャブに絞って探していたことにある。

 自分がいくつか個体を見るなかで、アクティよりもミニキャブのほうがエンジンの調子が個体による差が少なく感じたこと、さらにミニキャブのほうがスタイルが直線的ですっきりとしていて古さを感じないこと、何よりも大きなメリットとして、出物が多く相場が安く、同じ予算でも年式が新しいものが買えることに気づいた。

 そして、探していくなかで日産マークの付いた割安な個体にネットオークションで出会い、街で目立たずステルス性の高い白、5速MT、4WDということもあって購入を決めた。

カップホルダー付き
中央は上部に2DINのスペースもあり、ディスプレイオーディオが搭載しやすい
4WDスイッチ。普段は切ってパートタイムで2WD利用

 買った個体はもとリース車で建築関係の会社で使われたクルマ。雪国で使っていたこともあってかMTの4WD。下回りの錆は少し多めだが、骨格への影響はまだない程度。荷室の端にひどい錆があるが大穴はない。ボディは全体的に艶がない。内装も掃除してないため土埃などでかなり汚れた状態だった。

 2011年式の10年落ち(筆者の購入は2021年)と最低価格帯のクルマのなかでは比較的新しいこともあって、磨けばかなりきれいになると判断したほか、2011年型はミニキャブの最後期型に移行する直前ながら、ダッシュボードだけトップに2DINスペースがありカップホルダーも装備した新型になっていることなども決めた理由だ。

 法人利用車ということもあって、定期的な整備はしてあった形跡があり、車検や定期点検しか記録はないが、それ以外にも要所要所で整備や部品交換をした形跡もある。通常の中古車店の納車整備なら掃除と油脂類交換くらいしかしないで渡されると思われる程度なので、そのまま乗り出して必要に応じて整備をしていくことにした。

 ボディは以前使っていた建築関係の会社の社名カッティングシートが剥がされた跡があり、光の加減で社名が浮かびあがる状態だったが、受け取ってすぐコンパウンドで磨くことで痕跡が分からないくらいまでになった。

さて、どう仕上げるか

 そんなことでわが家にやってきた中身が三菱自動車・ミニキャブの日産・クリッパーバン。まずは徹底的な掃除といきたいところだが、水を使うので冬は避けて春までおあずけしていた。シートと手の触れる部分、そして荷室の簡単な清掃にとどめている。外装についてももとの会社名跡を落とした程度だ。

 また、当初の目的だった自転車運びと、できれば移動オフィス的にも使いたい。せっかくの広大な空間なので、移動しなくても自分の駐車場に止めておいて別室的な使い方もいいだろう。季節がよくなったら車中泊も試してみたい。

 ということで、乗り出し約10万円、10年落ち、10万kmオーバーと3つ“10”がそろった軽バン、しばらくは様子をレポートしていきたいので、お付き合いいただければと思う。

これからどう仕上げていくか。ひとまずは近所への軽快な足として大活躍中だ
正田拓也