10万円、10年落ち、10万km超の軽バン買いました

第2回:激安中古軽バン選びは成功or失敗? 乗り始めのがっつり整備

丸テールが特徴的な、日産・クリッパーバン

 約10万円で乗り出したわが軽バン、日産・クリッパーバンを使い始めてしばらくたつが、感想を言えば、便利で気楽なクルマ。走りがいいとかを一切考えなくていい気楽さが気に入っている。気楽さの1つに安かったこともあるが、安さと引き換えに犠牲したものはなかったのか、その後かかった費用面から考えてみたい。

“ネットオークション=闇”は違う

 最初に言っておくが、今回はネットオークション購入だが、“ネットオークションの闇”のようなことはまったくなかった。過去にもネットオークション購入の経験があるが、きちんと確認したり、不明点をコミュニケーションしたりしていれば問題があったことはない。そもそも、ネットオークションだから問題があり、中古車販売店だから問題ないということにはならないし、中古車販売店でも信用できない店もあり、ネットオークションで言われる以上にひどい問題になったこともある。

ヘッドカバーを開けたところ、この走行距離でこの状態はそれなりにオイル管理をしてきた証拠。格安購入でこの状態は上出来ではないだろうか

 そのなかで、トラブル回避をする方法としては、とにかく安く買っておき、多少の不具合を想定する「準備」をしておくこと。このなかには、自分でなんとかするスキルや、不具合があった場合の費用の算段も含まれる。安く買うことはトラブルがあったときに自分を納得させるためでもある。

 また、中古車店は、一部を除けば見た目がいい状態のものを店に並べるのが普通だ。だから今回のように、外見や内装の劣化はほどほどでいいから機関に問題のないものを安く欲しい、となると、通常の中古車店では希望を叶えることが難しい。

 つまり、一般的な中古車販売店以外に頼むということになり、ネットオークションで吟味した上で安い個体を探すのは理にかなっていることになる。

 ちなみに中古車販売店で中古車を買うことは否定しない。たまたま今回の希望と合致しなかっただけで、車種や状態、価格帯によっては中古車販売店が圧倒的に有利なこともある。一部の事例や、誇張した見出しの記事や動画だけを見て、選択肢を狭めることだけは避けてほしいと思っているだけだ。

格安の理由は商品車にはならない傷や汚れ

 今回、使い始めて数か月がたつが、トラブルと言えるようなトラブルはまったくなく、中古車であるがゆえの劣化に伴う異音などがあった程度。それでも、最初から多少のパーツ交換は想定していたため、ほぼその範囲で収まっている。

 第1回で、安い理由としては全体的に外装のツヤがないこと、商品車の基準から見ればボディに錆が多めなことなどを挙げた。もちろん、大きく目立つものではないが、凹みや傷もある。あまり気が付かなかった点では、ボディ下部にも凹みがあった。

 これは、ジャッキアップ場所を間違えたための凹みと思われる。通常のクルマならサイドシル下部がジャッキアップポイントとなることが多いが、軽バンでそこにかけるとボディパネルが確実に凹む。それをやってしまったのだ。軽バンの場合は骨格が内側にあり、サイドシル下部はただのボディパネルであって骨格ではない。

サイドシル下部の凹み。ジャッキアップをしようとしたと思われる

 ジャッキアップポイントの正確な位置は車種ごとの説明書で確認してほしいが、筆者が確認したなかでは、後輪駆動でリアがリジッドアクスルの軽バンや軽トラックのリアのジャッキアップポイントは、リジットアクスルのホーシングの部分となる。これを知らずにサイドシルでジャッキアップしようとすると持ち上がる前に凹んでしまうはずだ。

 そして、この凹みも大きなマイナス点になるのではないかと思う。筆者のクルマの場合は内外装の劣化などからすでに査定はゼロに近いから、この部分はどうであっても誤差の範囲でしかないと思うが、もう少しお金を出してきれいなクルマを買う場合は要注意ポイントだ。なお、凹みの程度にもよるが、この部分はただのボディパネルなので修復歴にもならないはずで、ほとんど目立たない。凹んだクルマを見つけても、気にしなければ購入の際の値引きのネタにできるかもしれない。

やったことは消耗部品の交換だが……

 とはいえ、このままほったらかしで乗るつもりはない。タイヤや足まわりについては車検時に問題なく、劣化も進んでいないことを確認しているので、それ以外の消耗品の交換を行なった。結果的に一般的な中古車の納車整備よりも手厚く消耗品を交換してしまったが、今後のことを考えると、気持ちよく乗るための安心料でもある。

交換した消耗部品

・オイル交換
・ワイパー交換
・エアフィルター交換
・プラグ交換
・サーモスタット&クーラント交換
・ヘッドカバーパッキン交換
・エンジンマウント交換
・トランスミッションマウント交換
・イグニッションコイル交換
・トランスミッション&デフオイル交換
・ベルト交換
・ドアチェック交換

 最初に、オイル交換やワイパー交換は基本として、車検点検時の汚れの多さからエアフィルターを交換し、プラグギャップの拡大を確認したためプラグ交換もすぐに実行した。その後は乗り始めてから、気になった点を少しずつ交換していった。

 まず、ちょうど真冬だったことあって、暖房のききがわるいと思い、すぐにエンジンの冷却でもありながら暖房の要であるサーモスタットを交換した。その際、クーラントの補充も必要になるが、クーラントは色違いを補充したのか赤系と緑が混ざったような複雑な色をしていたので交換した。年代的もスーパーLLC(青かピンク)が初期充填されるクルマだが、手持ちと充填方法の問題から普通のLLCを充填した。

交換したサーモスタット。結果的に大きな劣化はなかったが、交換すればすっきりする
新しくなったクーラント

 軽自動車の場合660ccという小さな排気量で熱量も少ないため、残念ながら交換後も大きな変化はなかったが、気持ちだけ水温の温まりが早くなった気がした。最近のエンジンは高めの温度で設定されていることもあり、水温が適正温度で維持されることは排出ガスや燃費対策の点でも有効だ。

 続くヘッドカバーパッキンはプラグ交換の際、プラグホール内にオイルにじみががあったため。プラグホールへの漏れの原因はプラグホール上のO型のパッキンだが、アフターパーツではヘッドカバーパッキンのセットとして売られているので、セットで交換した。

ヘッドカバーパッキン
パッキンの劣化でプラグホール内にオイルが侵入する。この穴はほとんどにじみがないが、3本のうちの1つは盛大に漏れていた

 あとは、エンジンの振動が大きい気がしたので、マウント類を交換し、さらに爆発が不揃いのような気がしてイグニッションコイルを交換した。

交換したエンジンマウントとトランスミッションマウント。ゴムのちぎれなどはなく、多少硬化している程度。わりと最近交換していた可能性もある
新品のエンジンマウントと交換したマウント。力をかけてない状態ではゴムの位置が違うが、大きく劣化しているようには見えない
外したイグニッションコイル。純正品番の刻印のないモノだったので、途中で交換している可能性が高い
イグニッションコイルを交換したエンジン

 ただ、マウントとコイルは結果的に効果がなかった。エンジンマウントの交換でエンジン始動時の左右の振れは大きく吸収するようになったものの、走行時に変化がみられなかった。つまり、マウントもコイルも元から問題はなかったことになる。

 続いて、前回交換時期が不明なため、リセットの意味を込めてトランスミッションと前後デフオイルを交換、変化を期待したものではないが、汚れたオイルを排出でき、気分的にもすっきりした。

 いわゆるファンベルト交換は、春になってエアコンを使うようになり、滑る音がするようになったため。確認したところエアコンのコンプレッサーベルト以外にも、劣化があったため3本ともまとめて交換した。

鳴きが発生したのでベルトを3本交換した。エアコンコンプレッサーはストレッチベルトなので、切断して外した。長いベルトはひび割れが進行していた
新品のベルトがかかっている。社外品だが、もともとついていた純正品の一部と同じ三ツ星ベルト製を選んだ

 最後のドアチェックだが、これは非常に効果が大きかった。ドアを開く際に半開と全開の部分で止めるためのものだが、運転席側がかなり緩くなっていて、意図せずにドアが閉まってしまうこともあったが、それが解消した。

 半開で止めておく場合でも、風が吹いた日に隣のクルマにドアパンチをしてしまう恐れも少なくなり、2000円にも満たないパーツながら効果はかなり大きい。軽バンに限らず、すべてのクルマでドアの止まりがわるい場合に交換をおすすめしたいパーツだ。

 ちなみに、ドアチェックのパーツを発注する際、品番を間違えた。この型のミニキャブ/クリッパーでは途中でボディ側のビス径が変わっており、自分のは太いタイプ(三菱:5702A086)だったが、ネットの事例を鵜呑みにして細いタイプ(三菱:5702A085)を頼んでしまった。

今回交換して最も効果のあったのがドアチェック。交換にはドア内張りを外す必要があるが、難易度は低い
新品との比較。実は型番を間違えてボディ側の金具部分の穴が小さいほうを頼んでしまった

 違いはボディ側の穴サイズだけだったのでヤスリで広げて装着して無駄にはならなかったが、途中改善でパーツが変わっていることはよくあるため、自分で部品を発注する際は十分に注意したほうがいい。パーツ誤発注は自分で整備する際のリスクだが、通販で購入でなく、純正パーツをディーラーで購入する場合は確認してくれることが多いため、ネット通販ばかりに頼らないことも重要だ。

 このほか、交換したいものとしてはブレーキフルードがある。動作や色で目に見えた劣化は確認できていないが、近日中に整備工場で交換しようと思っている。

軽バンの維持にお金がかかるのか?

 最初に乗り出しで10万円、さらに前述の交換パーツ類で4万円近くかかっている。とはいえ、これだけ交換して4万円は軽自動車ならではの安さ。そのうち効果を確認できなかったマウント類とコイルで2万円を超えているため、油脂類と本当に必要なことだけなら2万円以下で済んだかもしれない。工賃は自分でやったものばかりなのでプライスレス。

 工具や準備としてはジャッキやウマ、基本的なスパナやレンチ類などが揃っているとして、筆者が新たに購入したものとしては、この3G83エンジンのプラグ交換には不可欠な薄肉タイプの16mmプラグレンチと、デフオイルのドレンは六角レンチのため、10mmの六角のソケットを購入したくらい。なお、ベルト交換にあたり、エアコンコンプレッサーベルトが最近多いストレッチタイプだったのではめ込みに専用工具が必要となるが、簡易工具付きのベルトを選んだので工具を揃える費用はかからなかった。

 しばらくは大きな整備費用はかからないと思われるが、維持で重要なのはガソリン代。昨今のガソリン高騰は軽自動車ながら決して燃費のよくない軽バンにはかなり厳しい。肝心の燃費だが、真冬に近所にちょい乗りを繰り返したところ、1月ごろは11.6km/L(満タン法)まで落ちた。3月に郊外であまり信号にかからずスムーズに走ったときの最高は17.0km/Lだったので上下の変動は大きい。

 これからエアコンを多用する時期になる。ちょい乗りを繰り返しがちな軽自動車のため、車重が約1tと重量級軽自動車である軽バンでは、燃費がわるい点は覚悟しておいたほうがよさそうだ。

 そして、5月には自動車税の支払いというクルマ乗りにはビッグイベントがあるが、これは軽貨物車。2015年3月31日までに最初の新規検査を受けたクルマでまだ13年超でもないため税額は4000円。一度の給油にも満たない金額で済んでしまい、これだけは軽自動車、しかも貨物車であるバンである恩恵は大きい。

クルマ選びは当たりか? これから便利にカスタマイズ

 結果的には、大きな問題もなく順調に走行しているマイ軽バンの日産・クリッパーバン。安くて年月のたったクルマだけにトラブルを期待している人もいるかもしれないが、残念ながら順調だ。

 これは、きちんと整備されてきた個体であり、前オーナーの使用終了から自分のところで使い始めるまでの動いていない期間があまりなかったことが、順調の理由であるとも考えられ、自分で言うのもなんだが今回のクルマ選びはまずまず成功だっとも言える。

 ちなみに、まだカスタマイズなどはほとんど行なっていない。ボディの傷や錆の対策もまだまだこれからだ。現在、大きなものはシートカバーをかぶせたこと。カー用品店でよく見るボンフォームの「ファインデオ」というもので本来は夏場のムレを防止するものだが、ビニル表皮のシートの場合は冬場のシートの冷たさを緩和してくれ、氷点下になった冬の朝でも冷たさをほとんど感じずに乗車できた。

 今回でだいたい初期の整備が終わり、季節もよくなってきたので、次からはもう少しクルマを便利にすることを考えてみたい。

現時点での最も効果のあった主な(?)のカスタマイズがシートカバー。ハンドルにもカバーを付けているが、これは滑り防止のため
正田拓也