停車中でも撥水する次元の違う撥水剤

メーカー:カーメイト
価格:オープンプライス(購入価格:5696円)

 

 雨の日の視界をよくするため、昔から撥水剤というものがあった。「●●km/h以上なら水滴が風圧で飛んでワイパー不要」などとうたっているものだ。

 しかし、今回使用するカーメイトの撥水加工セット「ゼロワイパー」は、停車中でも水を弾いて視界を確保するという、今までの撥水剤とは次元の違う撥水剤なのだ。

 その次元の違う撥水性能を味わうためには、施工と維持の手間が今までの撥水剤とはまったく異なる。施工は3段階で行い、下地処理に時間がかかったり、トップコートと呼ばれる撥水層を塗った後はワイパーも使えないというほどデリケートなものとなっている。

 しかも価格は高く、必要なものが全部入ったセットで6000円ほど。1000円以下で買える従来の撥水剤とは価格も別次元なのだ。

ゼロワイパーのパッケージ中身はクリアケースに入っていて、説明DVDも付属液体のボトルは下地処理とトップコートの2本

施工は手間と時間がかかり、天候も選ぶ
 ゼロワイパーは3段階の加工を行う必要がある。下地処理としてガラスの汚れや油分を完ぺきに擦り落とし、ベースコートを塗り、十分に乾かしておいて、雨の日など使う直前にトップコートを塗布するという手順である。

 詳しい施工方法については、最初に買うセットに説明書や施工方法を説明するDVDが入っているので、それを参照してほしいが、いくつか気付いた点を指摘したい。

 まず、コンパウンドのようなものが入った下地処理剤でガラスを擦るのだが、下地処理剤は白い液体で、容器の蓋を開ける場合などに液体が飛び散りやすい。施工中も濃い色の衣服に付くと染みになるので十分に注意が必要。また、研磨性能があると思われるので、施工の際は必要以上にガラスを擦らないようにしたい。

 次にベースコートを塗るのだが、密閉された袋に揮発性の液体が染み込んだウェットクロスが入っており、封を切った瞬間から液体の蒸発が始まる。素早く塗り伸ばす必要があるので十分注意したい。液体は付属していないので、乾いてしまえば新たに買い足すしかない。そのため、基本的に1台用で、2台のクルマに加工しようとしても難しい。

 ここまでの工程は、湿度の低い晴れの日に行っておく必要がある。反対に最後のトップコートは雨当日に行うことが望ましい。何故なら、トップコート剤が十分な皮膜を作るくらいに塗りこむため、すぐに乾いてしまう湿度や温度の天候では高い撥水性能の皮膜にならないからだ。

 だからといって、雨の中でトップコートを塗布するのもおすすめできない。乾いていない皮膜に雨の水滴が当たれば、その場所の皮膜が薄くなってしまい、皮膜が薄い場所は水滴が残ってしまうことになる。理想なのは雨の日に屋根付きの駐車場など、雨滴がかからない場所でトップコートを塗布し、数分待って走り出すことだろう。

 なお、ムラのない十分な皮膜を作るためには、トップコート剤をケチってはいけない。ドボドボと表現したくなるほど、トップコートを塗布ツールにたっぷり塗り、ガラスに皮膜を作っていく必要がある。

下地処理剤を塗る。ムラなく塗ることが必要だ下地処理剤を塗った際に液体を弾く場所があれば、弾かなくなるまで擦るベースコートは密封された中にクロスとともに入っている。封を切ったらすぐ使う
ベースコートの液体が染み込んだクロスでガラスに塗布するベースコートを塗ったフロントガラス。特に色などに変化はないベースコート剤が完全に乾いたら、トップコートを施す。付属のツールにクロスを挟む
トップコート剤をたっぷり染み込ませるオレンジ色の部分が出っ張るまで押し付けながら塗りこんでいく。塗り方の容量はDVDを参照する分かりやすい液体が少ないとムラになる。これは失敗例。これでは水は弾かない
しっかり塗布された状態。わずかにガラスに色が付いた感じはあるが、慣れれば問題ないレベル塗りムラがあると、皮膜の薄い部分に水滴が残るようになる

病みつきになる撥水感
 ゼロワイパーが高価だったり、施工が面倒だったりと、あまりよいことがないが、雨の日に走行すると、高価さも施工の手間も吹き飛んでしまうほどすごい撥水性能を発揮してくれる。

 とにかく水を弾く。笑ってしまうくらい弾く。停車中にフロントガラスに付着した大きな雨滴は、弾かれてコロコロと水滴が下に落ちていく。小さな水滴は弾かれてふんわりと宙を舞うので、運転席側から見るとまるでみぞれが降ったような感覚に陥る。

 水滴が付着しないということは、ワイパーで水滴を拭う必要がない。そればかりか、絶えず水滴が飛んでいくので、ワイパーのように水滴が付着してからワイパーが拭うまでの視界不良の間もないのだ。

 大雨の高速道路で使ってみると違いがよく分かる。隣の車線を走るトラックから、連続的な水はねを受けた場合でも、今まではワイパーが拭うまで視界が戻らないが、ゼロワイパー加工なら一瞬で水が後方に飛んでいく。

 説明書には、雨が降っている感覚がなくなるので助手席側に塗ってない場所を残す、とあるが、まったくそのとおり。トップコートを塗って初めての雨のときは、雨が降っている感覚がなく、アクセル操作やハンドル操作に戸惑いがあった。初めて施工した場合は、最初に慣れの時間が必要ということを言っておきたい。

トップコート塗布前のフロントウインドー。雨滴が付いているトップコート塗布前に車内から外を見てみるトップコートを右半分だけ塗布した状態。しっかりと水を弾いている
助手席側を少し塗り残しておくことで雨の状態を知ることができる皮膜が劣化してくると、水の弾きがわるくなってくる

維持が面倒、ワイパー厳禁
 ゼロワイパーのトップコートの皮膜は、言わば使い捨て。2~3回の雨なら持たないこともないが、徐々に皮膜が薄くなり撥水性能が劣化していく。さらに薄くなると、皮膜の薄いところに水滴に乗るようになってくる。

 そうなった場合は一度車外に出て、クロスなどで皮膜を擦り取る必要がある。ワイパーでも皮膜が取れなくもないが、中途半端にワイパーをかけると、皮膜にムラができるだけで水は弾かない。視界がぼやけるという危険な状態に陥りかねないので、絶対にワイパーを動かさないようにすることを厳守したい。

 最初に購入するセットには、トップコートだけ6回分かけられる液量とシートが入っている。皮膜が弱くなってきたら一度クロスで皮膜を擦りとり、再度かけなおす必要がある。

ワイパーやふき取りをしないように促すメッセージカードが付属している。ぜひ使っていただきたいワイパーレバーを不用意に動かさないように注意の札が付属

雨の日の異次元感覚を味わいたい方へ
 ゼロワイパーは高価な撥水剤なので、これを使うには少々勇気がいる金額だ。その半面、雨の日に異次元の感覚を味わうことができる。また、施工には事前の準備が必要なため、雨が降ったからといって慌てて買いに走っても使うことはできない。

 梅雨の時期など、雨の中でのドライブには非常に効果を発揮する。特に雨の長距離ドライブなら疲労はだいぶ軽減されると思われる。フロントガラスに雨が付かないという異次元感覚を味わいたい方は、一度試してみてはいかがだろうか。

(正田拓也)
2012年 4月 6日

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