トピック
「奥飛火が発生する前」がポイント。NGKスパークプラグに聞く、オススメのプラグ交換時期
「オートアフターマーケットEXPO 2018」で実施された日本特殊陶業のセミナーより
- 提供:
- 日本特殊陶業株式会社
2018年3月30日 07:00
- 2018年3月14日~16日 開催
3月14日~16日に東京ビッグサイトで開催されていた「第16回 国際オートアフターマーケットEXPO 2018」では、自動車メンテナンスに関わる国内外の企業が数多く出展。会場には最新のメンテナンス機材やアイテムなどが展示されていた。そしてその会場にはクルマやバイク好きにはおなじみの「NGKスパークプラグ」や「NGKイグニッションコイル」の日本特殊陶業もブースを構えていた。
国際オートアフターマーケットEXPO 2018の開場時刻と同時に入場して日本特殊陶業のブースを探すと、日本人初のインディ500優勝を達成したレーシングドライバーの佐藤琢磨選手の姿が入った大きなパネルを掲げるブースはすぐに見つかった。
さて、この国際オートアフターマーケットEXPOは整備業者向けの展示会である。そこで日本特殊陶業も整備士向けの内容を盛り込んだブース展開でテーマとしていたのが「予防整備、予防交換」というものだが、我々ユーザーにこの言葉は聞き慣れないもの。そこでまずはこの「予防整備、予防交換」について、日本特殊陶業 自動車営業本部 市販部 4課(マーケティンググループ) 課長の山田勇志氏に伺ってみた。
山田氏から説明されたのは「予防整備、予防交換とは、スパークプラグやイグニッションコイルが壊れる前に整備を行なってもらうことを勧めるものです」ということ。続けて「自動車のエンジンが高性能化するとともに、スパークプラグ(以下プラグ)も高性能化しています。それに伴い長期間の使用も可能になりましたが、長く使えるぶん整備の現場でもプラグのメンテナンスが見落とされがちになりました。しかし、プラグがエンジンにとって重要な部品であることは変わりありません。そこで予防整備、予防交換の必要性をご理解していただき、そのことをお客さまのクルマを整備する際に役立ててもらいたいというところから『予防整備、予防交換』というテーマにしました」とのこと。
同じく日本特殊陶業 自動車営業本部 市販部 4課(マーケティンググループ) 広告宣伝担当 主任の岩井大明氏は、「最近の傾向としてプラグを交換する機会は以前と比べて少なくなっています。そこで、我々は走行距離からの交換啓蒙だけでなく、技術的な情報を伴ったプラグ交換に関する情報を発信しています。しかし、その内容が整備の最前線である整備工場さんに伝わりにくくなっているのも現状ですので、多くの方が来場する場所で今回のセミナーのような場を設けて情報を広める活動をしています。そして整備士の方々にはセミナーで得た情報を元に、説得力ある説明でお客さまにプラグ交換を勧めていただきたいと思っています」と話した。
確かに白金プラグの登場以来、プラグを交換するという意識は薄れているように思える。筆者は10代のころバイクに乗っていたのだが、当時はプラグを外して「焼けを見る」ことが当たり前に行なわれていたし、クルマに乗り換えてからもプラグのチェックを行なっていた気がする。
そして、エンジンに変調が起こるとまずプラグを含む点火系に「なにか問題が起こったのか?」という発想をしていたと思う。
ところが、今では自分でプラグ交換をしたのは「いつだっけ?」というくらいである。また、エンジン不調の話を耳にしてもプラグの存在を飛び越えて、なにかと難しく考えるようになっている。でも、そうではないのだ。お2人の話を聞いていろいろ忘れていたことに気がついた。
自身にそんな部分があったので、日本特殊陶業ブースの展示物は非常に興味深く見ることができた。そして、がぜん楽しみになったのが、これからご紹介するNGKブースのハイライト、整備仕向けセミナーの「スパークプラグ・イグニッションコイル『予防整備・予防交換』」というものだった。
このセミナーはタイトルのとおり整備士に向けたものだが、難しい技術面の話ではなく、プラグを交換する理由を思い出してもらい、プラグの消耗が原因となるトラブルを回避することを伝える内容なので、日ごろクルマを運転しているCar Watch読者さんにとってもきっとタメになるはず。この機会にぜひ、覚えていってもらいたい。
プラグ交換が必要になる理由とは
では、セミナーの内容を紹介しよう。解説を担当したのは日本特殊陶業 自動車営業本部 市販技術サービス部 2課 課長 副主管の所慎司氏だ。セミナーの会場はブースの一画でおよそ十数名ぶんのイスが用意されていたが、今回は技術スタッフと一緒に全国の修理工場を回ってプラグ交換キャンペーンをしていた「プラグチェッカーズ」のメンバーがブースに立ち寄った人への声がけも行なったので、開始時刻にはほぼ満席になっていた。
所氏がモニター前に登場してセミナーがスタート。所氏は「エンジンには燃焼の3大要素というものがあります。それは『よい混合気』『よい圧縮』そして『よい火花』ですが、プラグはこのなかの『よい火花』の部分を担う非常に重要な部品です。しかし、プラグは消耗部品です。定期的な交換をしていないと、よい火花が保てないのでよい燃焼を得ることもできなくなります。すると、アイドリング不安定、加速がよくない、燃費がわるい、それからエンジン始動性の悪化などの不具合につながってきます。だからこそ、よい火花を保つためにプラグは適切なタイミングで交換をしていただくことをお勧めします。この適切なタイミングで交換することを私たちは『予防整備・予防交換』と呼んでいます」と切り出した。
次は交換時期を過ぎたプラグを使い続けた場合について。所氏はモニターに電極消耗と走行距離の関係を表したイラストを表示し、「予防整備・予防交換のことをお話しする前に、消耗したプラグを使い続けたときのことを説明します。走行距離が伸びてプラグが消耗してくるとエンジンの調子は落ちてきます。なぜこのようなことになるかというと、電極消耗に応じてプラグの放電形態が変化するためです。プラグの電極が消耗して徐々にギャップが広がると、そのぶん大きな火花を飛ばさなければならないので、より強い放電電圧が必要となります。しかし、イグニッションコイルが供給できる電圧は決まっているので、プラグの消耗が進むとプラグから要求される電圧がイグニッションコイルの容量を超えてしまう状態になります。こうなるとプラグは火花を飛ばせなくなり、失火が起こるのです」という説明を行なった。
電極の消耗が進むと、電極間ではなく中心電極から碍子の表面を電気が走り、プラグの奥で放電を始めるようになる。これを「奥飛火(おくひか)現象」と呼ぶ。では、奥飛火が起こるとどうなるのかだが、このことについて所氏は「奥飛火が起こりますとクルマの加速や燃費が悪化します。では、なぜ奥飛火すると状態がわるくなるのかを説明します。ひと言で言うと奥飛火すると燃焼効率が低下するからなのです。正常に放電しているプラグでは中心電極と外側電極の中央から火炎が広がりますが、奥飛火しているプラグでは中心電極の奥の方から火炎が広がるようになるのです。こうなると、火炎が広がる際に中心電極や外側電極が邪魔となり、結果、火炎の広がる速度が遅くなります。この速度が遅くなるとピストンを押し下げるタイミングが遅れるのでトルクが低下し、トルクが低下すれば加速性がわるくなります。そして、加速性がわるくなるとドライバーは余計にアクセルを踏み込むようになるので燃費も悪化します。つまりプラグが劣化すると、このような負のスパイラルが起こってくるということなのです」と解説。
ここまでの解説は非常に分かりやすく、興味深い内容なので会場のお客さんも集中して話を聞いているようだった。そして次はいよいよ交換時期の話だが、モニターに出されたプラグの種類ごとの交換推奨距離の数字は、筆者としてはちょっと衝撃的な内容だった。では、ここからはそのことについての解説を紹介していこう。
注目すべきは奥飛火が発生する前の“経済寿命”
所氏は「プラグが失火するところが製品寿命になりますが、交換していただきたいのはそのタイミングではなく、奥飛火が発生する前となります。このタイミングのことを私たちは“経済寿命”と呼んでいます。そして経済寿命がきたタイミングで交換することを“予防交換”と呼びます」と説明。
この経済寿命に関しては日本特殊陶業から一覧表が出ているが、これが驚き。種類によってこれほどの差があるのかと思う内容だ。一般プラグでは2万kmが経済寿命となっているが、それよりも「え?」となったのが、長期間持つと思い込んでいたイリジウムプラグも一般プラグと同じ2万kmに指定されていること。しかもイリジウムプラグでは経済寿命の時期に2万kmのものと10万kmのものと2つの種類があった。その差8万kmである。これはいったい何なのだ。
この理由についても所氏から解説されたが、それは電極の仕様の違いだった。経済寿命が10万kmのイリジウムプラグでは外側電極に白金チップが使われている。これを「両貴金属プラグ」と呼ぶ。そして経済寿命2万kmのイリジウムプラグは外側電極に白金チップのない「片貴金属プラグ」となっていた。
その違いはどんなものかというと、ズバリ電極の消耗度の差。白金/イリジウムが片側のみの片貴金属プラグだと、両貴金属プラグに比べて外側電極の消耗が激しくなるため経済寿命に差が出るということだ。
つまり、巷で広く言われている「イリジウムプラグだから長寿命」という話は半分当たりで半分外れ。正しくは「両貴金属プラグのイリジウムプラグは長寿命だが、片貴金属プラグのイリジウムプラグだと一般プラグと寿命は同じ」だったのである。
なお、軽自動車はエンジンの使用回転数が普通車より高めになる傾向で、エンジンの圧縮比も高めということから交換推奨距離は「普通車の半分」となっているので、軽自動車に乗っている方はだいたい1年ごとの交換と思ったほうがいいということになる。
でも、これを実行できている軽自動車はどれだけいるのか、また、軽自動車だけでなく普通車も推奨距離でプラグ交換をしていないケースはかなり多いはず。すると、気がつかないうちに前記した「点火の奥飛火」が発生した状況のまま乗っている可能性も高い。これはクルマが好きなドライバーとしてはかなり気になることのはずなので、しばらくプラグを変えた記憶が無いということであれば、この機会にプラグを外してチェック、もしくは交換をしてみるのはいかがだろうか。
ここまででもかなりタメになる内容が聞けたと思っていたが、まだ続きがあった。今度はイグニッションコイルの話で、所氏からは「当社ではイグニッションコイルに関しても予防整備、予防交換を推奨しています。このイグニッションコイルはたいてい1気筒ずつ故障していきますが、ほかのイグニッションコイルも同じエンジンに付いているわけですから、受ける熱も同じ、受ける振動も同じ、そしてプラグの消耗度合いも同じなので、かかる電圧も同じです。つまり1つが故障したのならば、残りも全て近いうちに同様に故障する可能性が非常に高いのです。それだけに私どもは故障が発生したものだけでなく、全気筒同時の交換をお勧めしております。ただ、市場を回っておりますと、整備工場さまからは全気筒交換をお勧めしても、お値段などの面からお客さまに受け入れていただけないケースがあるようです。でも、同時に劣化するものなので1カ所だけ直しても、しばらくすると未交換コイルが故障して再入庫することになります。そうなればお客さまとしては“この前直したばかりなのにまた壊れた、ここは信頼できない”という気持ちになると思うので、修理工場さま、お客さまともにいいことはありません。だからこそイグニッションコイルも予防交換、予防整備の観点でトラブルが出たら全気筒交換をお勧めします」とのことだった。
セミナーはここで終了。時間にして30分ほどのものだったが、内容が濃く、それでいて整備士ではない筆者でも分かりやすい解説だったので、あっという間に終わったという印象だ。それに、こうして改めてプラグ交換の意味を伝えられるとかなり気になってくるもので、実際、しばらくクルマのプラグを変えていなかった筆者はこの時点でプラグを変えることを決断。戻ってから早速ネット通販でNGKのイリジウムプラグを購入(ホントです!)、仕事がひと段落したら交換しようと思っている。
日本特殊陶業ブースでは、セミナーのほかにもいろいろな展示物があったので最後にそれらを写真で紹介するが、この記事を読んでプラグ交換に興味を持っていただいたのなら、ぜひ「予防交換・予防整備」の観点からプラグを変えてみてはいかがだろうか。