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15年の進化に驚いた!! 岡本幸一郎の最新レーシングスーツレビュー
軽く、涼しく、動きやすく、しかも安全! 走る大人のマストアイテム
- 提供:
- CUSPA R&D
2019年7月16日 00:00
最近はネットなどでも申し込みができるようになって、走行会などへのエントリーのハードルが下がってきているように感じる。参加したことがある人なら分かると思うが、そうした際に着用する服装は、ヘルメットとグローブ、そして長袖&長ズボンと運転しやすいシューズ。大半のイベントはならそんな感じだろう。もちろん、長袖と長ズボンで肌が露出していなければ基本的に問題ないのだが、せっかくならレーシングスーツを着てみてはいかがだろうか?
そもそもレーシングスーツを着用する一番の目的というのは、火災があったときに体を守るためだ。ヘルメットなどと同じで、いざと言うときに身を守るために着用するもの。それならジムカーナ練習会のような火災の起こらなさそうなイベントなら不要なのではと思う人もいることだろうが、それでも着たほうがよい理由がある。それはレーシングスーツというのはすべてがドライビングに最適となるよう設計されているからにほかならない。
普通の服だと背中あたりがどうしてもつっぱって、ステアリングが切りづらかったりシフトが操作しにくかったりするところ、レーシングスーツならそんなことはない。とくにアルパインスターズのように座った状態に合わせて立体裁断されているタイプであればなおのこと。実際、それまでつなぎでタイムアタックしていた人がレーシングスーツに替えただけでタイムが上がったという話もあるし、無駄な動きが減るので1日走り終わったあとの疲労感もぜんぜん違うらしい。それにレーシングスーツを着るだけでテンションが上がって本人の気持ちも引き締まるし、それだけで傍目にも上手そうに見えることだし……(笑)。
値段が高くて手を出しにくいという人もいることだろう。たしかに少し前まではちゃんとしたレーシングスーツの価格は安くなかった。ところが今や、公式のレースでも使えるFIA8856-2000公認のものでもかなりリーズナブルな価格帯から選べるようになった。しかも近年では中身が飛躍的に進化しているというから気になる。
筆者が現在愛用しているレーシングスーツは15年ぐらい前に買ったもの。実はけっこう高価だったのだが、当時はカッコイイと思って奮発した。でもそんなデザインも、やはり15年もすると古く見えるようになってきたし、厚いので持ち運ぶのも着るのも手間がかかって、とくに夏場は着るのがおっくうになるのが正直なところ。
長年モータージャーナリストをやっているが、そういえばこれまで別のレーシングスーツを着たこともなかった。そんな中、今回Car Watchからアルパインスターズの最新のレーシングスーツを試す機会をいただいたわけだが、こうしてD-SPORTのイベントに参加して最新のレーシングスーツを試す機会に恵まれて、本気でカルチャーショックを受けたことを、あらかじめお伝えしておこう。
走行会にもオススメなミドルグレードを試す
試したのは、アルパインスターズの「GP PRO COMP SUIT」と「STRATOS SUIT」だ。1963年に設立されたアルパインスターズは、モトクロス用ブーツを皮切りにオートバイ向けのレーシングギア全般を手がけ、やがて4輪にも進出。今やモータースポーツ用総合メーカーとしての確固たる地位を築いていて、2輪、4輪を問わず多くのプロレーサーがその製品を愛用しているのをご存知の人も大勢いることだろう。そんなアルパインスターズの製品のうち、4輪用とカート用のギアは、総輸入代理店をSPKが手がけている。
件のF1ドライバーが使用しているものと同じ本格的プロ仕様まんまのモデルも、がんばれば手が届く価格で市販されているのだが、徹底して軽量化や通気性を最優先して設計されていてデリケートなので、僕らが走行会で使うにはいささか不向きなんだとか。(なんとF1ドライバーは毎回新品のスーツを着るのだそうだ!)今回推奨いただいた2モデルは、レーシングスーツに求められる諸機能と、多少雑に扱っても平気な耐久性を両立した最新版のエントリーモデルとエキスパートモデルという位置づけとなる。
両モデルともバッグに収められた状態で手渡されたわけだが、まずケースを見た時点で驚きである。スーツが収められたバッグ自体が自分の愛用品とぜんぜん違って、薄くてコンパクト。本当にレーシングスーツが入っているのかと思ったくらいで、その印象のとおり両モデルとも手で持ち上げてみると軽くて再度ビックリ。
エントリーモデルとされるSTRATOS SUITでも十分に軽いところ、エキスパートモデルのGP PRO COMP SUITはさらに軽い。聞いたところでは最新のエントリーモデルが少し前のトップモデルと同じくらい素材が進化しているらしい。
そしてバッグから出してみると、スタイリッシュなデザインにひと目ボレ。こういうのもなんだけど、カタログで見た写真よりも実物のほうがカッコイイ気がする。さらには実際に両モデルを試着してみても、自分の愛用品とはまさしく隔世の感がある。とにかく軽い。よい意味で装着感が希薄で着心地がよい。取材日はけっこう気温が高かったのだが、暑苦しい感じがぜんぜんない。繰り返しになるが自分の愛用品とは大違いだ(結構お高かったのに!)。
両モデルの違いをお伝えすると、まずやはり素材が異なる。GP PRO COMPがアラミドの3レイヤーで、STRATOSがアラミドの2レイヤーとなっていて、同じアラミドでも素材感がだいぶ違う。また、内側の感じもぜんぜん違う。むろん軽さや価格の差は素材の違いによるところが大きいのではないかと思う。
レーシングスーツには運転時に動きやすいよう随所にストレッチ素材が組み合わされているのだが、その範囲も異なる。STRATOSもショルダーまわりにぐるっとストレッチ素材が入っているので、一般的な長袖と比べれば十分に動きやすいのだが、GP PRO COMPはさらにわきの下がよりたくさん伸びるようになっているほか、股の部分にもストレッチ素材が入っている。これらは通気性にも効果があるそうだ。また、袖や裾、首のギャザーの部分も、GP PRO COMPはより軽くしてある。
2輪由来のアルパインスターズらしく前述のとおり立体裁断になっていて、座ったときに一番動きやすい形になっているのも特徴で、どちらもフィット感は軽くソフトで、着ている分には快適であることに違いはない。しかしながら、撮ってもらった写真を見てみると、STRATOSがリラックスフィットでややボテっとしているのに対し、GP PRO COMPはアスリート/レギュラーフィットということで、装着感がややタイトで、写真で見てもシルエットがシュッとしているのが分かる。シュッとしているのに動きにくさを感じない、というあたりにストレッチ素材の配置が効いているのかもしれない。
レーシングウェアと言えば、スーツだけでなくレーシンググローブやレーシングシューズもそれで、こちらもまたアルパインスターズで豊富なラインアップを取りそろえている。
例えばレーシンググローブは手のひらの部分のラバーの進化が著しく、よりシフトミスしにくく、ステアリングも意識して押さなくても上手くひっかかってくれるので切りやすくなっている。シューズもフォーミュラドライバーが愛用するという革質のソフトなカンガルー革を用いたものから、走行会やラリーに適した耐久性に優れるものまでズラリ。以前GTドライバーの石浦宏明選手や立川祐路選手に話を伺った際も、「シューズだけは絶対に譲れない」と口をそろえるほどで、実はレーシングドライバーが最もこだわるのはシューズなのだそうだ。
走ってさらに実感!! 15年分の進化は走りでも現われる
その実力を体感するため、D-SPORTがダイハツ車オーナー向けに開催しているドライビングレッスン「D-SPORT GYM」にお邪魔して、D-SPORTのデモカーで体験させてもらうことに。試着したのはGP PRO COMPだ。
今回試乗したコペンはサーキットタイムアタック仕様ということで、ロールケージやフルバケットシートが付いていて、普通のコペンより圧倒的に乗り降りしにくい。まずは、そんなクルマでも随所のストレッチが効いて乗り降りしやすいことが好印象。
そして、いざコースを走っても目からウロコ。自分の愛用品のようにゴワゴワした感じもなく、ちょっと大げさにいうとシルクのようになめらかで軽く、ステアリングも切りやすい。さらにレーシンググローブはスタンダードモデルの「TECH1-RACE GLOVES」を試したのだが、手のひらや指の部分のグリップがよくシフトワークもしやすく、アクセルもブレーキも踏みやすい。やっぱり本当に動きやすい。これはもう感動モノ。まさにカルチャーショック! 15年ものの自分のレーシングスーツと比べて、最新のレーシングスーツがここまで進化しているとは思わなかった。想像をはるかに超えていた。
これでちゃんとFIAの規格をクリアしているというのだからたいしたもの。しっかり耐熱性や断熱性を持った装備を身に着けているのだから、もし火災が起こった場合にも自分の体を守ってくれる。安全性能においても普通の服とは比べものにならないわけだ。そして、こんなに優れた製品がリーズナブルな価格で手に入ることもあらためて念を押しておこう。高い安いは個人の価値観にもよるだろうが、社会人をやっている人であれば、万が一にも出火して大やけどをしてしまい、何日も仕事に穴を開けてしまうことを考えれば、決して高くはない価格だと思う。そんなわけで、走行会や練習会などライトなモータースポーツをたしなむ皆さまにも、ぜひレーシングスーツの着用を強くオススメしたいと実感した取材であった。