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憧れのドライカーボンヘルメットもこれなら買える!? イタリア産の注目ブランド「Stilo(スティーロ)」を知る

WRCドライバーのシェア9割! 4輪モータースポーツ専用ヘルメットに注目した

WRCで9割のシェアを持つヘルメットメーカーがあった

 トヨタのWRC参戦やRally JAPANの開催、そしてWRCでの日本人ドライバーであるTOYOTA GAZOO Racing所属の勝田貴元選手の活躍などなど、近年WRCの注目度が高まっている。

 とくに2020年、コロナ禍の影響で開催ができなかったRally Japanに関しては「絶対に観たい」と思っている方も多いのではないだろうか。この件は本当にいい方向になって欲しいところである。

 さて、そのWRCの上位クラスで、なんと9割のドライバー、コ・ドライバー(以下クルー)に使用されているアイテムがあることをご存じだろうか。それがイタリア製の「スティーロ」というヘルメットである。

 プロモータースポーツの世界では、金銭的な契約によって使うアイテムが決まる傾向が強いものではある。でも、ヘルメットは大切な頭部を守るだけでなく、重量や被り心地はクルーのパフォーマンスに大きく影響するので、性能や使い心地が優先される傾向だという。そうした中で9割のシェアを持つということは、やはり「モノ」のよさが評価されていると考えてもいいだろう。

 なお、WRC以外でもF1ではメルセデスのバルテリ・ボッタス選手など数名が使用しているし、欧州で開催されているフォーミュラカー、ツーリングカー、レーシングカートの各カテゴリーでも有力ドライバーが使用しているというように、欧州ではとてもメジャーなヘルメットメーカーだ。

WRCではなんと9割のシェアを持つヘルメットメーカーがスティーロ
WRCで多くのクルーに使用されるモデル。高張力カーボンを使用したドライカーボンヘルメット。価格は81万円(税別)
WRCモデルの特徴はチンガード風の形状でマイクが仕込んである。激しい揺れでも口からマイクが離れることはなく音声もクリアに送れる。また、イヤーマフも搭載していて位置の微調整も可能。騒音がとくに大きいラリーカーの車内であってもクルー同士、クリアな音声で会話ができるヘルメットだ
クルーのヘルメットは埋めこみ型のジャックを使いインターコムでつなぐ。ツマミはそれぞれのボリューム。車両から電源を取るタイプのほか、電源トラブル等が発生してもペースノート読みあげに支障がないバッテリータイプもある
ピーク(ひさし)の部分は角度が調整できるようになっている

4輪に特化したメーカー。日本法人があるのでアフターフォローも安心

 スティーロは1990年に操業を開始した新しい企業であり、ヘルメットメーカーとしては珍しい「4輪用のモータースポーツに特化した」ラインアップでバリエーションは30種類以上という幅広さを持っているのが特徴。

 日本ではWRCでの利用率の高さから主にラリー用が以前、輸入されていたようだが輸入元が在庫を持たないケースがほとんど。そうなると注文の都度、イタリアに発注するのだが、スティーロのヘルメットはすべて受注生産なので手に入るのは発注後、数か月後になる。

 そのため、モータースポーツで使う場合はかなり早い時期にオーダーしないとシーズンに間に合わないなど、知名度があっても日本では広まりにくい販売環境だった。

 これに対して現在は正規代理店である「スティーロ・ジャパン」がある。こちらはスティーロ製品を輸入するだけでなく、日本のモータースポーツシーンでの使用にマッチする製品をセレクトして全国で即納が可能な量の在庫を持つ。さらに修理パーツやオプション品も同様に豊富に在庫しているのだ。それゆえに以前のような不便さは一切なくなった。

今回お話をうかがったのは、スティーロ・ジャパンのアカウントマネージャーである上田昭博氏

 では、スティーロが日本へ本格的にアプローチを始めた理由についても紹介しよう。実はスティーロ・ジャパンの設立は日本の企業から申し出たことではなく、スティーロ自体が日本のモータースポーツ環境に興味を持ったからだった。

 スティーロの代名詞はラリー用のヘルメットだが、日本ではラリーよりサーキットを舞台とするモータースポーツ活動が活発で、スポーツカーユーザーによるサーキットスポーツ走行からアマチュアレース。そしてジェントルマンドライバーの参戦もあるメジャレースのスーパー耐久シリーズ、SUPER GTなどはいずれも盛り上がりを見せている。

 こういったことは遠くイタリアのスティーロでも知ることとなっていて、そうした状況から自社の製品が日本のユーザーに合うことを確信し、日本への本格的な進出をすることになったという。

 スティーロを日本で扱うスティーロ・ジャパンでアカウントマネージャーを務める上田昭博氏は、会社の設立前にイタリアに見学に行ったそうだ。スティーロの本社はイタリアの中でもレースに関わるメーカーが多い北イタリアにある。地域的な特徴としては、もの作りに対してのこだわりを強く持つところだ。

本国イタリアのスティーロファクトリー内にて

 そうした環境下にあるスティーロは工房という表現が似合う建物で、製造現場も白を主体に使う清潔感のある作り。床は小さいパーツが1つ落ちてもすぐ分かるよう真っ白。そこに10名ほどの職人がブースごとに分かれて黙々と作業をしていたという。

 また、スティーロはラインアップにドライカーボンヘルメットを多く持つところだが、製品に使用するカーボン帽体はすべて自社にあるオートクレーブ(高温で焼くことや真空圧縮できる専用釜)を使用しているだけでなく、このオートクレーブから自社で作っているとのこと。

北イタリアのレースに関わる企業が多い街にスティーロ本社はある。少人数のメーカーだが、もの作りへのこだわりは非常に強い
熟練した職人が手がけるカーボンヘルメット。繊維のつなぎ目が分からない。また、ヘルメットに使用するすべてのパーツは吟味したイタリア製のみとしている。こだわりの塊といえるヘルメットだ

スティーロのヘルメットはどれを選べばいいのか?

 スティーロのヘルメットはカーボンが主体だが、エントリーモデルとしてファイバーグラスとケブラーを使った帽体の「ST5F Nコンポジット8859」と「ST5Fコンポジット8859」があり、価格は9万1500円(税別)と11万7000円(税別)。カーボンヘルメットと比べると約10万円ほど安価。

 ちなみに製品名を後ろに付く4桁の数字はFIAのグレード表記で、「8859」は日本ではSUPER GTにも対応するモデルのこと。そしてこの上に「8860」というグレードがあり、こちらはF1やWECなどの世界選手権レースで使用できるものとなっている。

これはファイバーグラスとカーボンケブラー帽体の「ST5N Fコンポジット 8859」。スモールシェル(XS/54、S/55、M/57、L/59)とラージシェル(L/60、XL/61)があり、カラーはシルバー。価格は9万1500円(税別)
こちらはインカム用マイクシステム搭載のST5F。スモールシェル(XS/54、S/55、M/57、L/59)とラージシェル(L/60、XL/61)があり、カラーはシルバー。価格は11万7000円(税別)

 価格的に手を出しやすいコンポジットモデルを選ぶのももちろんいいが、Gに耐えながら走る4輪スポーツ走行において、ヘルメット重量が軽いことは首を中心とした疲れの軽減に繋がるもの。

 とくにアマチュアドライバーに人気の耐久レースだと、1人が受け持つ時間が長い傾向なので後半になると疲れが溜まる傾向。それに気温が高い時期のレースでは体力を激しく消耗することもあるだろう。そうした状態ではドライブに集中できずラップタイムが落ちるだけでなく、危険回避の反応に遅れることがあるかもしれない。そこで首への負担が軽減される重量が軽いカーボンヘルメットの着用が有効なのである。

 スティーロ・ジャパンは6種類のカーボンヘルメットを用意しているが、そのうちFIA公認で「世界選手権以外」のすべてのカテゴリーで使用できる「8859」というクラスの「ST5F N」と「ST5F」に注目したい。安全基準としてはスポーツ走行やアマチュアレースはもちろん、SUPER GTでも使用できるものであり、その重量はST5F N、ST5Fともに1.35kg(スモールシェル)という数値だ。

 これはコンポジットと比べて約2kg軽く、カーボンヘルメットのシリーズ内でも中級モデルより若干軽いというものである。コンポジットと比べて約10万円の価格差はあるが、軽くて疲れにくいヘルメットは「速く安全に走るためのドライバー用チューニングパーツ」でもあるだけに、多少余裕がある場合はカーボンヘルメットを選ぶのがいいのではないだろうか。

ノーマルテンションカーボン繊維を使用したドライカーボン帽体のST5F N。重量はスモールシェルが1.35kg。ラージシェルが1.4kg。サイズはスモールシェル(XS/54、S/55、M/57、L/59)とラージシェル(L/60、XL/61、XXL/63)がある。価格は17万7000円(税別)
こちらはインカム用のマイクシステム搭載のST5Fモデル。重量、サイズ展開はST5F Nと一緒
フォーミュラカ-での着用もあるのでシールドはロック機構付き。黒いツマミを握るとロック解除
口もとのエアインテークから入った風は頭頂部のダクトへ抜けるようになっている
頭頂部の穴は貫通していて、ヘルメット内部の熱気を放出してくれる
正面から見て両脇の内装パッドに「Stilo」の刺繍ロゴが入る
4輪ヘルメットらしいデザインは日本でも好まれるはず。帽体は写真のようなエッジが作られているので、カラーリングなしでもシャープな印象
アゴひもを通すリングの形状やカラーも凝っていて、イタリア製のこだわりが感じられる
欧州人の頭の形に合わせた作りなので、購入前には取り扱い店で試着しておきたい。ただ、欧州人の頭の形は日本人と似た人も多いので、内部パッドの調整で対応できるケースが多いという。パッドは厚み違いのものが用意されている
ひと口にドライカーボンといっても使用する繊維には高張力、中張力、標準張力があって世界選手権では中張力、高張力カーボンを使った製品が使用されるし、ヘルメットに仕上げるための製法も違っている。それ以外は標準張力カーボンが使われる。素材に差はあるがどれも軽く強度が高いモノであることは共通。ちなみにバルテリ・ボッタス選手が使用しているのは「ST5F N ZERO 8860」というモデルで価格は61万5000円(税別)

ドライバーと無線でやり取りがしたいならST5Fが最適

 今回メインで紹介しているコンポジット、カーボンとも「ST5F N」と「ST5F」という2タイプが用意されている。これらの違いはヘルメットにインカム用のマイクシステムが装備されているかどうかで、マイクシステムを装備するのが「ST5F」。ちなみにもう片方の「ST5F N」のNとは、インカム用のマイクシステム未装着を示すネイキッドのNとのことだ。

 インカム用マイクシステムを装備しているST5Fは、ヘルメット内部の口もとにマイクが埋めこまれているので、後付けマイクのように位置決めや脱落に気を使う必要がないのが利点となっている。ヘルメット内にきちんと会話ができるマイクを仕込むことは非常に難しいので、やったことがある人なら「これはいい」と思うだろう。

 そして音声を聞くための装備として、スピーカー内蔵でソフトな耳当てカバー風になっている「イヤーマフ」がオプションで設定されているので、これをヘルメット内のインナーと付け替えればイヤホンより自然な装着感で音声を聞くことができる。同時にイヤーマフは耳への密着性に優れているため、車内の騒音をカットする効果も高い。とりわけノイズが大きいレーシングカーの車内でも相手の声が非常に聞きやすくなるのだ。

口もとの突起がマイク。表面にスポンジがあるので息づかいなどがカットされて相手が聴き取りやすい音声になる
オプション設定されているイヤーマフ。ヘッドフォンのようなソフトなパットの中にスピーカーが内蔵される。これをヘルメット内のインナーと付け替える。イヤーマフの価格は2万1600円(税別)

 ST5Fと無線機の接続はヘルメット左、頬の下あたりに付けられた「インテグレーテッドプラグシステム」で行なう。ここに無線機からのコードを差し込めばいいのだ。

 ちなみに、ヘルメットにこうしたプラグがない場合はマイクやスピーカーと無線機をつなぐ配線をDIYで作ることになるが、その際に配線が複雑になったりノイズを拾いやすかったり、はたまた現場で断線したりと苦労することもあるようだ。なお、ヘルメットは後からの穴開け加工は製品の特性上、一切禁止なので、ジャックが付いていないタイプのヘルメットにジャックを後付けするのは不可能だ。

 こうした装備は他のメーカー製品ではスペシャルとなるが、スティーロではスタンダードな装備。それゆえにインテグレーテッドプラグシステムやドリンク類のホースが引き込めるポートが追加されても、それら装備がないネイキッドモデルより2万円ちょっとの価格アップで済む。これはヘルメットメーカーの特別なサポートが受けられないアマチュアレーサーにとって非常に魅力的なことだろう。

左側の頬のあたりに付く「インテグレーテッドプラグシステム」。規格モノジャックなので、使用する無線機のプラグが合わなくても変換アダプターがあれば対応できる
インテグレーテッドプラグシステムの反対側にもヘルメット内にケーブル類を引き込めるポートがある。なおジャックの後付けはできない
ここの利用法でもっとも多いのが「ドリンクのホースを引き込むこと」だそうだ。夏場の耐久レースではとても有効な装備だろう

全国に12店舗あるスティーロストア

 さて、そんなスティーロのヘルメットはモータースポーツ活動を行なうショップやモータースポーツ用ギヤを扱うショップを中心にした「スティーロストア」と呼ばれる取り扱い店で購入できる。

 スティーロストアは現在、拡充している最中なので全国に12店舗あって順次増えていく予定。スティーロストア各店舗の情報はスティーロ・ジャパンのWebサイト内にあるスティーロストアページで確認できるので、気になった方はチェックしてほしい。

 スティーロストアになるショップはヘルメットを含めてモータースポーツギヤに詳しいことが条件だけに、サイズ選びやオプション品購入の際にも的確なアドバイスが得られる。いまはネットでの買い物が普通にはなっているが、拡張性もあるスティーロのヘルメットを買おうというときは、ぜひ実店舗で詳しい説明を聞いて選んでいただきたい。

 なお、スティーロ・ジャパンではスティーロストアになってくれるショップを募集しているとのことなので、今回この記事を読んで興味を持ったショップの方がいれば、スティーロ・ジャパンへその旨を連絡していただきたい。

スティーロのヘルメットにはバイザーやエアロパーツ、そしてシールド固定用のカラースクリューなどオプション品も多い。とくにカーボンヘルメットは塗装せず被ることが多いので、カラースクリューやシールドで個性を出すケースも多いようだ。こうしたパーツもスティーロストアで手に入る
付属のヘルメット収納袋。コードの取り回しなど日本製とは違っている。ロゴの入り方もカッコいい
これはレーシングカート用の「ST5F N CMR」。日本では小学生などのクラスでの着用率が高いとのこと。インナーのカラーはブラックのほか、レッドとブルーがある
身体を面で支えてくれるリブプロテクター。面あたりなので部分的に痛くなりにくい。あまり知られていないが、一度使用すると気に入ってもらえる製品とのこと。価格は3万7500円(税別)

 ※価格は2021年3月時点となります。