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レーシングスーツにフルプリント、アルパインスターズの魅力的な新サービスについてD1参戦チームに聞いてみた
- 提供:
- CUSPA R&D
2021年7月13日 00:00
世界のモータースポーツシーンでプロ、アマ問わずに愛用者が多いイタリアのレーシングギアブランド「アルパインスターズ」。日本ではSPKが4輪モータースポーツ用およびカート用のアイテムの輸入総代理店となっている。
そして近年は魅力あるスポーツカーが多く登場していることの影響から、趣味としてモータースポーツを楽しむ人は増えているが、それにあわせてアルパインスターズ製品への注目度も高くなっている状況でもある。
JAF競技はもちろんのこと、アマチュアレース参戦、サーキットのスポーツ走行を趣味とするなら、ドライバーの装備としてレーシングスーツが必要になる。着用することにより万が一のときにドライバーの身を守ることができるだけでなく、スポーツドライビングに適した形状になっている。シートに座った姿勢での身体の動きにストレスがないため操作がしやすいのだ。また、レーシングスーツに使われる生地は摩擦などに強いだけでなく耐火性も必要だ。そのため生地は重層になっていて、一般的にはレーシングスーツ自体の重さを感じるものが多い。
それに対してアルパインスターズ製のスーツは耐熱性、難燃性、通気性に優れたノーメックスの3層という構造ながらとても軽く仕上がっていて、スーツを持った手応えは春先や秋に羽織る少し厚手のコートくらいに感じるレベル。そのため着た感じではスーツの重さはほぼ感じない。このことについては、以前SUPER GTに参戦しているアルパインスターズ愛用のドライバーから「着用感を意識させないくらいに軽い印象」という話を聞き、記事でも紹介したことがある。
レーシングドライバーが本音で語るレーシングギアの選び方
https://car.watch.impress.co.jp/docs/topic/special/1241961.html
軽いことに合わせて動きやすいことも特徴に挙げられる。アルパインスターズ製スーツは「アスリートフィット」というタイトなシルエットになっているので、一見すると窮屈そうに見えるかもしれない。しかし生地に柔軟性を持たせているのと同時に、手足や腰など大きな可動部には動きやすさを重視したストレッチパネルという独自の構造を用いているのでとても動きやすく、カラダにフィットしたシルエットながらクルマへの乗り降りからシートに座った状態での身体の動きに対してもつっぱり感や窮屈さは感じないものになっている。
このような特徴を持つアルパインスターズ製スーツは、プロはもちろん幅広いモータースポーツ愛好家に使われているのだが、その流れがさらに加速しそうなある“仕上げ”がオーダーできるようになったので、今回はその仕上げについて紹介していこう。
レーシングスーツにグラフィックをプリントする新サービスが登場
アルパインスターズが新たに開始したのがレーシングスーツに模様やイラスト、画像などのグラフィックをシルク印刷の技術でプリントする「フルプリント」サービスだ。
近年はメーカーロゴやドライバーの名前などを刺繍やワッペンなどの代わりにプリント技術も使われているが、今回のサービスはそれを発展させてレーシングスーツ全体にグラフィックデザインを丸ごとプリントできるのが特徴だ。
従来のレーシングスーツでは肩や腕、胴体などの部位に色分けやラインを使うことでデザインを表現することが多かったが、その方法は表現の幅が広がりにくい。また、レーシングスーツと一緒に着用するヘルメットはカラーリングによるデザイン性が高いのに対し、レーシングスーツのデザインレベルや環境は後れを取っている感じでもあった。
しかし、その状況を一気に変えるのがこのサービスだ。プリントであればデザイン性は格段に向上するし、対応するカラーも多いので色における表現の幅もがぜん広まった。独自の発想で描いたグラフィックをレーシングスーツで表現することも、模様の中に愛車の写真を入れるような個性的なデザインのレーシングスーツを作ることだってできるのだ。また、豊富に用意されたカラーを活かして、既製品にはない色のレーシングスーツを作ることも可能になっている。
レーシングスーツは着ているだけでもカッコいいものだが、種類はそれほど多くないだけにモータースポーツ人口が増えると他の人と被るケースも増えてくるし、もっとデザイン性に優れたレーシングスーツを着たいと思う人もいるだろう。そういった課題を解決してくれるのがアルパインスターズのフルプリントというサービスなのだ。
TECH VISIONをベースとするフルプリントのオーダー方法
それではフルプリントのオーダー方法を紹介しよう。このサービスはアルパインスターズの本国が行なうもので、SPKを通じてアルパインスターズ製レーシングスーツを扱う店舗が窓口になる。そのため、オーダーのときは自宅近くの該当店舗へ相談することになるが、店舗がどこにあるか分からない場合はSPKが近くのお店を紹介してくれる。
デザインは自分で持ち込むのはもちろん、デザイン担当者がいる場合はショップに依頼することも可能。その際はラフ画や参考にした写真などでイメージを伝えてデザインを起こしてもらうのだが、この場合はスーツ代とは別にデザイン料が発生する。この費用はデザインの内容、リテイク回数などによって変わるので、オーダー前にしっかりと確認しておくことが大事だ。
フルプリントに対応しているのはアルパインスターズの「TECH VISION」シリーズ。体型に合わせてのサイズ展開もあるがフルオーダーも行なっている。筆者の感想ではプリントデザインのスーツはデザインが正しく(きれいに)見えることも大事だと思うので、店舗で既製サイズを試着した際、体型にフィットしないと感じたらサイズオーダーで製作することを検討してほしい。参考までに、既製サイズのTECH VISIONでフルプリントのオーダーを行なった際の金額は25万円~とのことだ。
サイズオーダーでは手足の長さやお腹まわりのサイズなど体型ごとに寸法してくれるので、どんな体型の人にもぴったりなスーツが作れるのだ。なお、スーツの仕立てはイタリアにあるアルパインスターズの工場で行なわれているが、プリントも同工場で行っているとのこと。
納期についてはサイズオーダーとプリントサービスを一緒に頼んだ場合、国内でのデザイン作業にロゴデータなどの準備、そしてデザイン確認して本国へ発注という手順を踏むので、納品まで約2~3か月ほというスケジュール感ということだ。ちなみにレースシーズン前の繁忙期などに重なると納期は延びる傾向だ。
「カッコよさ」にこだわる舞台で戦うドライバーに聞く、フルプリントスーツの印象
日本生まれのモータースポーツであるドリフト競技。その代表格がプロドリフトドライバー同士で競うD1 GRAND PRIXだ。
モータースポーツは原則的に速さを競うものではあるけど、人前で行なうドリフトは走りを評価する大会からスタートしているので、「速い走行速度、鋭い振り、安定したドリフトアングルの維持」という勝敗を決めることに対して独特の指針がある。それだけに、ほかのモータースポーツでは改まって表現しない「カッコいい走り」という要素が重要となっていて、ドライバーもそこにこだわりを持っているのが競技の特徴だ。
さて、そのD1 GRAND PRIXへ参戦している2人のドライバーを紹介しよう。1人目はカーナンバー16の山口孝二選手、そしてカーナンバー79の目桑宏次郎選手だ。この両選手は2021年シーズンにSPKのサポートを受けていて、着用するレーシングギアはアルパインスターズ製で、スーツはTECH VISIONのフルプリント仕様である。
SPKと大嶺氏はアルパインスターズからグラフィックのサービスが始まった当初から表現の可能性が広がることを見通していた。そこで数あるモータースポーツの中からビジュアル面での注目度が高いD1 GRAND PRIXでフルプリントを用いたレーシングスーツを投入することとした。そしてパートナーとなったのが山口選手が率いるチーム。レーシングスーツの機能性とデザイン性を強くPRできる場として、ドリフト競技へのサポートには多いに期待しているとのことだ。
そんな経緯から両選手が着用することになったレーシングスーツ。デザインはマシンに施されたチームのグラフィックに合わせたものになっているのが特徴だが、これまでもレーシングスーツのデザインでマシンカラーを意識したものはあった。でも、フルプリントは「意識する」ではなくて「同じ柄」を表現できるところが大きな違いである。D1 GRAND PRIXではファンサービスの一環としてドライバーには走行時以外もレーシングスーツを着用するケースが多いのだが、このマシンと同じ柄のスーツはとても目立つしファンからの評判もいいとのことだった。
6月25日~27日の日程で開催されたD1 GRAND PRIX 2021 ラウンド2&3「2021 TSUKUBA DRIFT」にて山口選手、目桑選手にフルプリント仕様スーツの着用感と印象を伺う機会を得たので、その内容を紹介していこう。
山口選手のチームである「alpinestars LINGLONG G-MEISTER」では、2台のマシンとも白いボディに青系のグラフィックを組み合わせたデザインとしている。そこでレーシングスーツのデザインもマシンと同じ柄にすることで、チームのイメージをよりスタイリッシュなものにしている。
レーシングスーツのグラフィックは山口選手が経営する会社のデザイン部門が担当していた。そして仕上がったスーツを初めて目にした印象はひと言「カッコいい」だった。山口選手いわく「ドリフトドライバーは目立つのが好きなタイプが多いと思います。走りで目立つことはもちろん大事ですし、自分自身がカッコよく目立てることも大事です。それに、自分の会社ではD1マシンを含めて多くの競技車のグラフィックデザインを手がけていますが、そこでも『カッコいいものを作る』という気持ちを強く持っています。そうした中、紹介されたのがこのレーシングスーツでした。これまでにないカッコいいレーシングスーツを着ることで、クルマのデザインや走りといったこと以外でもファンの方にわれわれが思う“カッコよさ”を見せることができました。当初はデザインをしながらも“どう仕上がるのかな?”という気持ちもありましたが、でき上がったレーシングスーツを見て驚きました。想像していた以上のよさでした。そんなことから今回のコラボレーションにはとても大きな意味を感じています」と語った。
さらに「D1ファンには小さいお子さんも多いので、彼らに“カッコいい”と感じてもらえれば、将来のクルマ好き、モータースポーツファンになってくれるのではとも思ったりします。そういった点でもこのレーシングスーツは最高です。あと、余談ですがほかのドライバーからもうらやましがられています(笑)」と語ってくれた。
また、着心地については「初めて袖を通したときはキツイかな? と思いましたが、クルマに乗り込むときやシートに座ったときには動きやすい印象になってました。あとから聞いたのですが、アルパインスターズのレーシングスーツはシートに座った姿勢で動きやすいよう作られているとのことでした。また、通気性もいいのでクルマを降りてちょっと風が当たるだけでもスーッとするのが気持ちいいです」という印象を語ってくれた。
ちなみにドリフト走行は操作が忙しいイメージなので、そのあたりのこととレーシングスーツの関係性も聞いてみた。その問いに対して山口選手は、「走りを見ていると手足が忙しそうに思うかもしれませんが、実はそれほど忙しくないんです。忙しくなっているときはたいてい失敗しているときです(笑)。でも、そうはいっても通常のレースよりステアリングをまわす量は多いのですが、それでもレーシングスーツの着心地に違和感を感じることはないです」と答えてくれた。
続いて話を伺ったのは、カーナンバー79 G-MEISTER as ORIGIN Labo. 180SXに乗る目桑選手。目桑選手は2020年までD1 Lightsに出場していたが、そのときから走りに光るものがあったので山口選手のチームがスカウト。そして2021年からD1へとステップアップした。
ラウンド2は朝の練習走行でエンジンブローがあったのでラウンド2は出走できず。それでもスペアエンジンを取り寄せて修復し、2日目のラウンド3には出走。完調とは言えない状況ながら追走トーナメントまで駒を進める活躍となった。
目桑選手にもレーシングスーツの印象を聞いてみたところ、「デザインがよくてすごく気に入っていますし、ほかのチームからもカッコいいと言われいるのもうれしいことです。D1は走りだけでなくクルマが目立つことも大事ですが、プラスしてスーツでも話題になってくれることはチームとしてメリットがあると思います。それにほかのチームの人だけでなくD1を目指す若いドライバーもカッコいいと言ってくれますので、これからはこうしたスーツを着る人が増えてくるのではないでしょうか」と語ってくれた。
着心地については「ドリフトはステアリングを多くまわしたり、サイドブレーキを引いたりする場面があります。そういった操作をするときにはやはり動きやすいスーツがいいです。ボクはピッタリした服を着るのが苦手なので、ゆったりしたサイズばかり着ています。だからこれまで着ていたレーシングスーツもゆったりしたサイズで選んでました。でも、アルパインスターズのTECH VISIONを試着したところ、身体にフィットしたサイズでも窮屈さはなく動きやすかったので、初めてフィットするサイズを選びました」とのことだった。
スポーツを趣味とする場合、プレイだけでなくウエアやグッズなどに凝ることも楽しみの1つだ。そしてそれは趣味のモータースポーツにも言えること。初めてサーキットを走るときからヘルメットやレーシングスーツなどのギアを揃えることは趣味を楽しむうえで有効なことだし、安全性を考えれば最初からちゃんとしたものを揃えた方がいい。
そんなことから、モータースポーツ趣味を持つ方に知って欲しかったのが、今回紹介したアルパインスターズのTECH VISIONスーツで展開するフルプリントのサービスだ。道具にこだわりたいと考える人は、このサービスの利用を検討してみてはいかがだろうか。
撮影:高橋 学