前編でお伝えしたとおり、ブリヂストンの新型スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX2(ブリザック ヴイアールエックスツー)」は、これまでのスタッドレスタイヤと方向性が変化していた。VRXより採用されているアクティブ発泡ゴムに新シリカを配合することで吸水性はそのままに、グリップがアップ。さらにブロックトレッドパタンでアイス性能を向上。平たく言ってしまえばゴム自体でアイス性能を高めることが可能になったわけだ。そこでトレッドパターンはブロック剛性を高めるデザインが可能になり、DRY路面でライフ向上、あらゆる路面でシッカリ感が備わってきたように感じたのだ。
雪上ワインディング路ではステアリングを切り始めた瞬間からノーズがコーナーのインをスッと狙い、素直に旋回を始めてくれる。ステアリングインフォメーションが突然途切れてしまうようなこともなく、一定したフィーリングが得られるから安心感が高い。まるでスポーツラジアルに履き替えたかのような感覚には驚くばかり。これは冬のポテンザか!? それくらい操りやすく、頼りがいのある動きを展開するのだ。
そこで今度は思い切り走らせてみた。するとやはりVRX2はそんな走りにも適格に応えてくれた。トラクションやブレーキングといった縦方向はもちろん、そこから旋回してスライドが始まるまでの横方向のグリップがかなり高まった感覚がある。かつてのVRXは、縦方向はかなりのグリップを感じたが、そこから横方向へと使い出した瞬間、ステアフィールが一気に軽くなったり、テールが一気に動き始める傾向があった。そんな独特なクセがなくなり、どんな方向でも操りやすくなったことがVRX2の進化したポイントだろう。一般ユーザーがここまで派手に走ることはないだろうが、雪道はどんな人々でもうっかりその領域に入ってしまうことがある。そんなシーンでもジワリと動き、危険な状況に陥る手前で確実に知らせてくれるインフォメーション性能は、間違いなく安全に繋がるはずだ。
わざとテールが流れるようなペースで走ってみても、横方向への限界は高く、限界を超えてからのピーキーさも顔を潜めた
また、剛性が引き上げられたことはミニバンや軽自動車といったハイト系に対してもメリットは高い。タイヤのヨレがあると、ハイト系ならではのフラつきが気になるところだが、そんなクルマ達であったとしても、高剛性でシッカリと走るようになったのだ。これならスタッドレスタイヤを装着しているからといって、ステアリングをそっと動かさねばと気を遣う必要もない。夏タイヤ同様、リラックスして運転できそうなところが好感触だった。
重心の高いハイト系ミニバンや軽自動車であっても、タイヤの剛性があることでしっかりとした走りを実現している
一方で乾燥路における走りもまた変化を感じることができた。それはまず、パターンノイズがかなり軽減されたことだ。スタッドレスタイヤといえば、いかにもブロックがヨレているかのような音を発するものばかりだが、VRX2はその傾向がかなり軽減されていたように感じる。また、雪の上で感じていた剛性感は乾燥路においても同様のフィーリングがあり、スタッドレスタイヤを装着していることを意識せずに走行することが可能。これならタイヤは簡単に痛むこともないし、ブロックが動くことによるエネルギー損失も少ないだろう。摩耗ライフは22%も向上したというデータもそれを裏付けている。
この日は気温が高く、ドライやシャーベットなどさまざまなシチュエーションを走ることができた。踏切のような滑りやすい場所でも安心して走ることができた
このように、今度のVRX2はゴムを進化させた余裕を使い、高剛性のトレッドパターンを採用することが可能になり、結果としてあらゆる路面状況であっても快適に乗ることができるようになった。アイス性能をシッカリと確保した上で、それ以外の部分をきちんとフォローしたことは、スタッドレスタイヤの新たなる方向性を示したといっても過言ではないだろう。確実なグリップと連続したフィーリング、そしてそれらが生み出すあらゆる領域の操りやすさは、これまでとは一味違う。今度のVRX2は間違いなく試してみる価値のあるスタッドレスタイヤだと思う。