間もなく3歳になる娘は、最近成長が著しい。走りまわるのは当然のこと、自転車にも挑戦。おしゃべりだってかなり得意になってきた。ま、たまに言い間違えをするのはご愛敬なのだが、そのやり取りが面白く、微笑ましい時間だったりもする。新たな体験をすれば即座に行動に跳ね返ってくるこの時期は、毎日が成長の連続だ。だからこそ、そんな娘に少しでも多くの体験をさせてあげたい、そんな思いが最近は日に日に増している。まだ見ぬ景色を見せたらどう反応するのか? 独身時代は出不精まっしぐらであり、ヒマさえあれば寝ていることを好んでいたのに、娘を連れて出かけることばかりを考えるようになった。僕もまた少しは成長できたということだろうか? スポーツカーしか目に入らなかった人間が、いまではミニバンばかりが気になっていることもまた、ずいぶん変化したものである。

そんな僕が最近気になっているのがセレナ e-POWERだ。3気筒1.2Lエンジンを発電機にして、モーターで走行するというこのクルマは、セレナの大本命といっていいグレード。かつてノート e-POWERが登場した際、「このユニットをセレナに搭載しましょうよ!」と日産の技術者に懇願したことがある。アクセルひとつで走行可能なe-POWER Driveは、運転の新たな楽しみを提供していたし、静粛性だって可能性は高いときている。もちろん、燃費だって期待できるのだから、チョイ乗りからロングドライブまであらゆるシーンで役立ちそうだと感じたからだ。それが現実のものとなるとは……。

だが、もちろんノートのユニットをそのまま搭載するには無理があったようで、セレナ用にかなりの部分をアレンジして登場となった。エンジンはノートよりも500kgほど重いことに考慮して出力を7%アップ(62kw)。それに対応するためにオイルクーラーを追加している。また、モーター出力を25%アップ(320Nm/100kW)したほか、バッテリー容量も20%アップ(1.8kwh)している。さらに極力モーターのみで走行できるマナーモードを追加したほか、それを成立させやすいようにするバッテリーを充電するチャージモードを追加。これによりマナーモードでは最大約2.7km走行可能。マナーモードオフの場合はそれが約1.3kmとなるという。これなら大通りから自宅までの間はモータードライブだって可能。深夜の帰宅時、さらに早朝出勤時などは家族が寝静まっていたとしても迷惑をかけることがなくなるだろう。

EVに発電用エンジンを組み合わせたセレナ e-POWERが気になる!!

グリルに入ったブルーのラインとサイドにはe-POWERのエンブレム

マルチディスプレイにはエネルギーモニターが表示でき、充電状態や発電状態を確認できる

モーターだけで走れるマナーモードと積極的に充電するチャージモードを持つ

セレナ e-POWERで家族とロングドライブに!!

そんなセレナ e-POWERに乗って今回は家族と共にロングドライブに出かけることになった。目指すは千葉の館山。春がいち早く訪れるといわれる南房総で海を眺め、海鮮素材に舌鼓を(これは主に夫婦の狙いですが(笑))というわけだ。パートナーとなるのはセレナ e-POWER ハイウェイスターV。カシミヤグレージュ×インペリアルアンバーの落ち着いた雰囲気とプレミアムインテリアが実にマッチした1台だ。日頃使っているちょっとくたびれ気味のチャイルドシートを取り付け、いよいよ出発だ!

セレナ e-POWER ハイウェイスターVに乗って家族3人でドライブへ出発

横浜のみなとみらいにある日産グローバル本社から走り出したセレナ e-POWERは、ECOモードを選んでいたとしても過不足なくスムーズに街中を駆け抜ける。過敏すぎることなく、求めたとおりにトルクがスムーズに発生してみるみる加速。エンジンはバッテリーの充電状況を見て始動&停止を繰り返しているが、エンジンが始動した時にその音が気にならなくなったところは興味深い。というのも、このユニットが登場した時、ノートで走った時には始動時の音がやや大きいように感じていたからだ。ノートの場合は燃費を追求するために、エンジンの一番燃焼効率のよい部分である2400rpmまで瞬間的にエンジン回転を引き上げていたのだが、セレナの場合は燃費に加えて静粛性も追求するために速度に応じてエンジン回転を設定する制御が盛り込まれたのだ。おかげで音の変化もスムーズであり、違和感がなくなったように思える。

一方、アクセルひとつでほとんどの走行領域をカバーするe-POWER Driveは、アクセルの離し方次第で減速Gをコントロールできる。ある程度アクセルを踏んでいる状況からポンッとアクセルを離すと、およそ0.15Gの減速Gを発生させながら減速を開始。感覚としてはATのセカンドレンジくらいでアクセルオフした時のようだ。停止寸前はスッとブレーキを抜き、カックンブレーキになることもなく停止してくれるのだ。はじめは減速しすぎて停止線の手前で止まりそうになったりもしたのだが、それもすぐに慣れてくる。ジワリとアクセルを離して行けば狙ったところに止まりやすい。おかげで普段以上に運転がスムーズになり、自然と丁寧になってくるから面白い。ドライビング矯正マシンとして威力を発揮してくれそうな気配がありそうなところも興味深い。ま、それはちょっとマニアックな発想なのだが、いずれにしても同乗者を無駄に揺することなく走れそうなところはマルだ。

アクセルひとつで加速から減速、停止までできるe-POWER Drive。ちょっと慣れが必要だけどコツをつかむと結構使える!

静粛性アップで車内の会話も花が咲く

高速道路に入って力強さが欲しいとなれば、Sモードが有効だ。アクセルをそれほど踏み込まずしてトルクが得られるこのモードなら、力不足を感じることもない。巡行スピードにおける速度維持のしやすさもあり好感触。プロパイロットを作動させた際の速度変化も、ガソリンモデルやハイブリッドに対して少なくなった感覚があった。実用域における即座に反応するトルクと、要求したとおりに忠実に反応できるモータードライブだからこそ達成できた芸当ではないだろうか。決して街中のみが得意というわけではないところがe-POWERの特徴といっていいだろう。そんなシーンにおけるe-POWER Driveは街乗りとはちょっと違った感覚だ。アクセルオフしたとしても一気に減速しないようにセッティングされたことが功を奏したのだろう。高速域ではおよそ0.1Gしか減速Gが出ないことから、これもまた操りやすい。減速感は昔のATでオーバードライブをONからOFFにした時のような感覚。少し前に割り込まれたとしても、ブレーキを踏むことなくアクセルオフだけでかわせる感覚がある。

モーターで走るe-POWERは、先行車両のスピードに合わせて速度を調整できるプロパイロットとの相性もよさそう

さらに感心したのは静粛性が引き上げられたことだ。ガソリンやハイブリッドモデルに対して25アイテムもの遮音仕様を追加。代表的な部分としては、フロントガラスには、遮音中間膜を持つウィンドウシールドガラスを採用したほか、フロアカーペットは4層構造としている。もちろん、エンジンルームにも遮音材をかなり奢っていることもあるが、これらと前述したe-POWERユニットの制御が進んだことで、車室内はまるで上級クラスのクルマに乗っているかのような静けさなのだ。おかげで後席の妻や子供と会話もしやすいからありがたい。セレナの持ち味である見晴らしのよさがあるせいか、娘はアクアラインを走行中に「あ、飛行機が飛んでいる!」とか「クジラさんがいたよ!?」なんて突拍子もないことを言い出すのだが、それにも即座に対応できるから会話が弾む。「クジラはいねーだろ、クジラは(笑)」なんて。音が大きいクルマや、低くて外が見えないクルマじゃこうはいかない。これぞセレナ e-POWERの威力なのかもしれない。

遮音性の高いフロントガラスの採用など、静粛性を向上しているので、移動中も後席にいる娘との会話が弾む

奥さま視点にe-POWER Driveはどう映る?

千葉に渡ったところで妻とドライバーチェンジ。僕は後席に移動して休ませてもらうことにした。妻は高速道路では、e-POWER Driveよりも、ノーマルモードを好んでしばらく走行していた。そうすればフツウにアクセルとブレーキで操れるから安心なのだとか。やや頑固で新しいものにすぐに馴染めない性格だから仕方がない。そんな人にも違和感なく乗れるようにノーマルモードをあえて残したところに日産の良心を感じる。新技術を何が何でも押し付けないあたりはやさしい。

が、高速を降りて街中を走り出したと同時に、e-POWER Driveのよさに気づいたようで、ECOやSモードを使い出した。「信号が多いところではコレは便利だね!」なんて言い始めるまでになり、少しホッとした。日本には20万7738個もの信号があるという(日産調べ)。その度にアクセルとブレーキの踏みかえが必要となるわけだが、SやECOモードを使用すれば約7割減になるというのだから便利に決まっている。実は妻の運転は僕からしたらやや乱暴で、停止寸前のスッとブレーキを抜くところに違和感があるからだ。e-POWER Driveまかせのブレーキのほうが遥かに快適! ま、妻にはそんなこと直接言えませんけど(笑)。

高速道路を走っている間はe-POWER Driveに慣れない印象だった妻も一般道に降りるとその恩恵に満足した様子。スマートなブレーキで同乗していても疲れることなく宿までたどりついた

快適な室内に同乗者も疲れ知らず

こうしてe-POWER Driveが実力を発揮すれば後席は快適そのもの。両側にアームレストを持つキャプテンシートは程よく体をホールドしながらも乗り心地はソフトで快適。実は当日、若干体調がわるかったのだが、気持ちわるくなることもなく過ごせたのはフラットな乗り味があったからだろう。テーブルも備えられるし、USBもあって携帯の充電だっていつでもOK。娘はそこから充電を取り出したiPadでゴキゲンに動画を見ている。どの席にいても満足できそうなところは有難い。館山に行くまでのロングドライブは、こうして飽きることもなく疲れることもなく過ごすことができたのだ。

アームレストもついた1列目と2列目のシート

大人3人が座れ、たためば広い荷室になる3列目シート

3列目シートでも使いやすい位置にスライドドアのスイッチやUSB端子、テーブルなどもある

現地に到着して花摘みや海鮮を楽しめば妻も娘も上機嫌。娘は「次はクジラを見に行こう!」なんて張り切っている……。千葉でクジラは難しいと思うのだが、テンションアゲアゲの娘にそれはナイショにしておいた。「見られたらいいね」なんて言いながら帰路についたのだった。次はどんな景色を見せてあげようか? そんな優しい気持ちになれるのは、セレナ e-POWERが生み出す快適で疲れ知らずの走りがあったからに他ならない。出不精でもロングドライブが億劫にならないその仕立はなかなかだ。

プロパイロットパーキングで車庫入れも自動、これは便利!!

館山でひと足早く春を満喫。食事も海の幸をおいしくいただきました♪

楽しかった海沿いドライブ。次は本当にクジラが見えたらいいね