パイオニア カロッツェリアから登場した新製品に注目が集まっている。それがディスプレイオーディオの「DMH-SF700」だ。最大の特徴は、9インチという大画面を持ちながら1DINスペースに装着できるという点。これまで取り付けスペースの問題でカーナビの装着をあきらめていた人にはもちろん、HD画質で9インチという、ディスプレイオーディオとしては頭ひとつ抜けたスペックを持つことから、最新ガジェットが気になるユーザーからも注目を集めているのだろう。

ディスプレイオーディオってなに? という人向けに簡単に説明すると、ディスプレイオーディオとはオーディオでありながら、スマートフォンを接続してその機能を使えるようにしたもの。普段ドライブでもスマホナビを使っている人にとっては、スマホよりもずっと大きな画面でナビアプリのルート案内ができる。しかもこのDMH-SF700は、渋滞中などにはスマホの中の動画や、ストリーミングのコンテンツなども大画面でみんなで楽しむこともできるし、よりよい音でドライブミュージックを楽しむこともできる。さらに一般的なカーナビの半分、1DIN分のスペースで装着できるので、ナビはスマホで十分って思っている人はもちろん、スペース的にカーナビの取付ができないとあきらめていた人にも気になる存在というわけだ。

そこで今回は、新車も旧車も好きなCar Watch編集部 編集長 小林隆と、国内・国外問わず旅先でナビが欠かせないトラベル Watch編集部 編集長 湯野康隆、そして唯一の20代、もっぱらクルマはカーシェアリングというケータイ Watch編集部 新人 竹野弘祐の3名に実際に触ってもらい、それぞれに視点でチェックしてもらった。クルマ好きの視点としてはもちろん、旅行好き、ケータイ好きがどのように評価するのか? リアルな声をお届けしたい。

Car Watch 編集長 小林 隆(中)、トラベル Watch 編集長 湯野康隆(右)、ケータイ Watch 編集部 竹野弘祐(左)の3名がチェック

1DINでの取り付け状態が気になる!!

まずは製品を目の前にして取り付け状態が気になるというのは、最近1995年式のクルマを購入したというCar Watch小林。まさに1DIN分のスペースしかなく、カーナビの装着を断念していたところで、1DINで装着可能なDMH-SF700は気になる存在だという。

ディスプレイ部が振動で揺れないかが気になるというCar Watch 小林

そんな小林が気にしていたのは、フローティングタイプのディスプレイが走行中に振動で揺れないかということ。加えて、車種によってはディスプレイの後ろ側にエアコンの操作部やハザードスイッチなどが来るため、そうした場合の対応についてだ。

この点について、まず取り付け方法をチェック。ディスプレイ部は取り付け位置が調整できるようになっていて、高さ方向で5段階・最大60mm、横方向ではセンターの他に、左右方向にそれぞれ30mmずつのオフセット、奥行き方向では2段階・20mmの調整が可能だ。そのため、装着時点でハザードスイッチなどに影響が少ない場所への取り付けができる。加えて装着後もパネルを手前60度まで倒す(奥は15度)ことが可能なため、エアコン操作などであれば、そのときだけパネルを倒して、といった使い方もできそうだ。

高さなどはネジ止めでの調整になるため、装着後に稼働できるのはディスプレイのチルト変更だけになる。これは走行時にディスプレイが振動することを防ぐための選択だ。この考え方は徹底していて、唯一稼働するチルトについても、パネル操作をしたぐらいでは容易に動くものではなく、結構な力を加えて初めて動くという具合になっている。

そうしたこともあって、実際に走ってみてもディスプレイはしっかりと固定されており、走行中の振動で画面がブルブルと震えて見えにくいことはなかったと小林。

また、フラットキーの採用による、タブレットを取り付けたようなシンプルな見た目も気に入ったようで、「これなら車種を選ばず取り付けられそう」とのこと。

縦方向に5段階、横方向に3段階で調整可能

奥行方向に2段階、そしてチルトは手前に60度、奥に15度可動する

チルトを手前に倒した状態

チルトを奥に寝かした状態

チルトを最大限手前にすれば後ろ側にエアコンスイッチなどがあっても操作できそう

フラットなパネルでシンプルなデザインは車種を問わずに似合いそうと小林

続いて小林が気にしたのがその機能について。

DMH-SF700は、「Apple CarPlay」や「Android Auto」に対応したディスプレイオーディオなので、手持ちのiPhoneやスマホをUSB接続することで「Apple CarPlay」や「Android Auto」が使えるようになる。今回の試乗では主に「Android Auto」で「Google マップ」のナビ機能を中心に使ったが、対応アプリが入っていれば、ほかのナビアプリを利用することもできるし、Spotifyといった音楽ストリーミングアプリなども使うことができる。

また、あくまでオーディオなので、接続したUSBメモリーやポータブルHDD内の音楽(動画や画像も)の再生や、AUX接続やBluetooth接続したオーディオプレーヤーやスマホなどの再生、またAM/FMラジオにも対応する。さらに、HDMI入力にも対応するため、Amazon Fire TV Stickなどを接続してコンテンツを楽しむといったことも可能だ。

加えて、スマホなどを使ったテザリングにも対応。ブラウザー機能を持ち合わせているので、Webブラウザーを介してお気に入りのサイトを閲覧したり、大画面でYouTubeの動画を再生することもできる。Webサイトは専用アプリ「CarAVAssist」を使って事前にブックマークしておけるので、お気に入りの動画を友達と楽しんだり、子供が好きな動画をすぐに呼び出すこともできる。また、テザリングすれば、音声サービス「Amazon Alexa」も利用可能だ。

iPhoneやAndroidスマホを接続することで「Apple CarPlay」や「Android Auto」を利用することができ、「Google マップ」などのアプリを使ってカーナビとしても利用できる

「Android Auto」の画面。対応するアプリのアイコンが表示される

ストリーミングサービスのSpotifyも利用でき、バックグラウンドで音楽を聴きながらナビアプリを使うといったことも可能

スマホの代わりにUSBメモリーやポータブルHDDを接続すれば、音楽データや画像、動画の再生もできる

USBメモリー内の音楽を再生

ほかにもBluetoothオーディオやAUXなどもある

ラジオにも対応

テザリングすればブラウザーも利用可能。ブックマークはアプリから登録できる

ブラウザーを使ってWebサイトの閲覧も可能

YouTubeのチャンネルも楽しめる

HD画質の9インチ大画面で小さな文字でもはっきり読める高精細ディスプレイ

テザリングすればアレクサも利用可能

「アレクサ」の発話をトリガーに天気予報などさまざまな情報を引き出せる

ハード面で見れば、ディスプレイは9V型HDパネルと最新のハイエンドカーナビと同レベルの画質。動画のコンテンツも高画質で楽しむことができる。静電容量式のタッチパネルで、マルチタッチにも対応しているので、その操作感覚はスマホそのものだ。

また、拡張性については、対応車種であれば、純正のステアリングリモコンとも連動でき、音量調整などが可能。また、バックカメラ入力もあって、ギヤをリバースに入れれば自動でバックカメラに切り替わる。拡張性という部分ではリアモニター出力もあるので、後席用モニターを接続することも可能だ。

バックギヤに入れることでバックカメラの映像が映し出せる

オプションでバックカメラも用意される

「Android Auto」で試す。カーナビとしての使い勝手はいかに?

ということでそれぞれの機能を使ってもらった。まず気になるのはやはり「Apple CarPlay」やGoogleの「Android Auto」を使ったカーナビとしての機能だろう。

クルマのドライブ旅行ではカーナビとスマホナビを併用することが多いというトラベル Watchの湯野。特に渋滞情報についてはスマホのほうが反映されるのが早く、渋滞回避ではいいルートを選ぶ印象だと語る。そのため、特に年末年始といった大型連休などで、スマホナビの渋滞情報を活用すると言う。

自分でも「Android Auto」を使ってみているというトラベル Watch 湯野

ちょうど海外でのドライブで使うために「Android Auto」を試してみていたと言う湯野。その印象について、「普段のスマホの地図アプリと比べて、たとえば画面の構成をシンプルにするなど工夫されていて、『Android Auto』ではより安全性に配慮された設計になっている」という。

また、従来のカーナビとは違うポイントとして挙げるのが、目的地の検索方法だ。従来のカーナビであれば、目的地の正式な名称や地名、電話番号などが必要となるが、Google マップなどでは、おおよその場所や俗称などを言えば候補を挙げてくれる。

例えば、最近リニューアルした「三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド」に行きたいと思ったとき、一般的なカーナビでやりがちなのが、うっかり「三井プレミアムアウトレット」と入力してしまい目的地が見つからないパターン。通常のカーナビでは正式な名称と違うと検索ができないこともある。

それが「Android Auto」のGoogle マップであれば「八景島のアウトレット」と言えば、候補として三井アウトレットパークが見つかる。厳密に言えば八景島ではないのだが、こうしたアバウトな検索ができるのはスマホナビならではと言えるだろう。

「八景島のアウトレット」と発話すると「三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド」が候補に選ばれる柔軟性はGoogle マップならでは

ピンチやフリックなど操作感はスマホそのもの

航空写真を組み合わせたり、渋滞情報を重ねて表示するといったこともスマホのアプリと同様にできる

この点についてはケータイ Watchの竹野もおおきく同意する。カーナビを手にするより先にスマホを手にした世代の彼にとって「普段からお店の営業時間を調べるのも予約するのもスマホで済ませるので、電話番号を使う機会がない。なのにカーナビで目的地を入れるためだけにスマホで電話番号を調べるというのが、とても不便に感じる」と語る。

ただ、それでもカーナビを使うのは、首都高のような複雑な分岐でも大きな画面表示でとっさに判断が付きやすく、安心感が高いからだと竹野。最近東京に引っ越してきたばかりの竹野にとっては、首都高などは走るのがとても難しいといい、そうした余裕のない状況ではスマホの小さな画面と簡素な案内では心許ないとのことだ。

この点、DMH-SF700であれば9インチという一般的なカーナビ以上の大きな画面で確認できるし、加えて「Yahoo!カーナビ」のようなクルマでのナビに特化したアプリを使えば、複雑な分岐の案内をより分かりやすいものにすることもできそうだ。

いつも使っているナビアプリがクルマの中では使いにくいと感じる場面でも、このDMH-SF700に繋げば、大画面で地図も綺麗で見やすく誘導してくれそうで安心できると竹野。さらにインターフェースもクルマでの使用に最適化されるから、他のアプリでもスマホのまま使うより操作もしやすくて便利になることは、クルマを利用する人にはとても重要な部分と言えるだろう。

加えて、通常のスマホを使ったナビでは、スマホ本体のGPSだけに頼ることになるが、DMH-SF700では、専用のGPSアンテナが用意されており、クルマの受信しやすい位置にセットしておくことができる。そのため、スマホ本体の置き場所に寄らず安定したGPS受信が可能となる。

案内画面はややシンプル。このあたりはアプリにもよる

GPSアンテナがあるため、スマホの置き場所によらず安定してGPSを受信できる

メカレスだから実現したハイレベルなオーディオ性能

実はオーディオにもこだわりを持っているというケータイ Watch 竹野。普段はハイエンドのイヤホンで音楽を楽しんでいるというので、ハイレゾ音源にも対応したDMH-SF700でオーディオを聴いてもらった。

オーディオにもこだわりが強いケータイ Watch 竹野

その結果はかなり驚きだった様子。「普段はカーシェアなので、そもそも車内で音質にこだわるという考えがなかったですが、ここまでいい音で楽しめるというのは驚きでした」と語る。

DMH-SF700はスペック的にもハイレゾ音源再生、そしてハイレゾWireless(LDAC)に対応し、さらにタイムアライメントや13バンドグラフィックイコライザーなどによってこだわりの音質セッティングも可能とする。そして試乗車ではスピーカーはパイオニア製のトレードインスピーカーに交換され、音質向上アイテムとタイムアライメントなどによるセッティングが行なわれていた。

ハイレゾ音源にも対応

試乗車はトゥイーター別体のトレードインスピーカーを装備していた

ただしアンプは内蔵で、スピーカーもミドルクラスのものと、ある程度カーオーディオをいじったことのある人なら想像できる範囲の内容だ。にも関わらず竹野が驚くほどの音質を実現できていたのは、DMH-SF700のオーディオ性能の高さにある。

実はDMH-SF700は、1DINに収めるという理由もあって、CDドライブやDVDドライブを搭載していない。仮にもオーディオ機器なのに思い切った選択だとも思えるが、スマホを中心にした今時のスタイルを考えれば妥当な選択なのだろう。

メカレスとした上で、コンデンサーなど高音質パーツを厳選して贅沢に使用。これによりかなりレベルの高いオーディオ性能を実現しているのだ。ハイレゾ音源の音質がいいのはもちろんだが、MP3のような圧縮音源をより高音質にする「マスターサウンドリバイブ」も搭載しているので、YouTubeの音も高音質化して聴くことができる。音源からハイレゾなどこだわる人はもちろんだが、もっぱらストリーミングというユーザーでも、手軽に高音質を楽しむことができるのだ。

内蔵アンプはPower MOS FET 50W×4chという贅沢な仕様。さらにハイパスフィルター/ローパスフィルターやスピーカー出力レベル調整も持つ。加えてフロント用アンプでトゥイーターを、リア用アンプでウーファーを駆動するネットワークモードも用意され、内蔵アンプを生かしたマルチアンプ・マルチスピーカーシステムにも対応する。加えて3プリアウト、ハイボルテージプリアウト(4V)といった機能も持ち、外部アンプを組み合わせてより高音質を追求することもできる仕様となっている。

音の届くタイミングを左右でそろえるタイムアライメント

細かな音質調整ができる13バンドグラフィックイコライザー

スピーカー出力レベルも調整可能

ハイパスフィルター・ローパスフィルターも設定できる

DMH-SF700はアレクサに対応しているのは前述のとおり。音声認識でさまざまな操作が可能だが、加えてカロッツェリアスキルも持っているので、たとえば「アレクサ、カロッツェリアでラジオに切り替えて」とか、「アレクサ、カロッツェリアで低音を上げて」などと話しかければ、オーディオソースの切り替えや音質のセッティングまで音声による操作が可能となる。

「Apple CarPlay」や「Android Auto」の使用中はアレクサは使えなくなるが、その場合はSiriなどが使えるので、音声操作だけで誰かに電話をかけたり、渋滞で遅れそうな旨をメッセージで送ったりという使い方も可能だ。

こうした音声操作も精度も非常に高く、「子供のころに、親の使っていたカーナビの音声認識のイメージがあるので、車内でこの認識率というのは驚き」とケータイ Watch 竹野。これは専用マイクがあることで、スマホの置き場所に影響されないという点も大きいだろう。

マイクが付属するため、声を張り上げなくても音声認識をしっかりとしてくれる

最後に3人にDMH-SF700を使ってみた印象を聞いてみた。

Car Watch 小林 隆

従来のカーナビのよいところとスマホナビのよいところの両方がうまく取り込めていて、そのバランスがいい。普段はもっぱら車載カーナビでスマホナビを使う機会は少ないですが、実際に使ってみるとその使い勝手は分かりやすく、スマホを使っている人なら誰でも使えそう。カーナビの機能としても普段からGoogle マップを使っている人ならまったく問題なく使えると思う。

それと音もすごくよかった。オーディオ機器として見ても十分魅力的だと思いました。

トラベル Watch 湯野康隆

あいまいな言葉でも検索できる柔軟さは、土地勘のない旅先で食事処を探すような場合にも頼もしいと感じました。それと9インチという大画面は後席から見ても見やすいので、検索のしやすさも手伝って、旅先で後席の人も一緒にワイワイと次の目的地を探せそうで旅がもっと楽しくなりそうですね。

「Apple CarPlay」や「Android Auto」はこれからもっと進化していくと思うので、旅行系のアプリなんかも充実してきたらもっと楽しくなりそうだと思いました。オススメの行き先をランダムで何個か表示してくれるとか、そんなアプリができると新しい旅の楽しみ方ができそうですね。

ケータイ Watch 竹野弘祐

なによりスマホで探したスポットを電話番号など調べずにそのまま目的地設定できるのが便利でした。ナビアプリで事前に行きたいリストを保存しておくこともできますし、スケジュールアプリに登録した住所をナビアプリに送って目的地にするといった使い方もできるので、普通のカーナビで感じる煩わしさがなくなります。地図がいつも自動で更新されてるというのもいいですよね。

普段もスマホナビは使っていますが、画面が大きくなったことで見やすさが格段によくなりました。さらに同じナビアプリでもDMH-SF700を使った場合は、「Apple CarPlay」や「Android Auto」を介した車載で使いやすいインターフェースに変わるので、スマホ単独で使うのとは使い勝手が違います。

それと音がとてもよかったです。普段イヤホンで聴いているのとはまったく違って、空間を広く感じて、高域と低域の伸びも感じられてすなおに驚きました。ハイレゾ音源が楽しめるのもいいです。サブスクの高音質な音源も楽しめますし、ストリーミングの音源も高音質で聴けるというのは、ドライブの楽しみが広がりますね。カーシェアでも導入してほしいです。