レビュー
【レビュー】パイオニアの1DIN用フローティング構造の大画面ディスプレイオーディオ「DMH-SF700」を試す
スマホ連動でナビはもちろん、Webサイトや動画も見られる、多彩な娯楽アイテムに大変身
2020年7月8日 00:00
ここ数年、カーAV界で注目されているアイテムと言えば、ドライブレコーダーとディスプレイオーディオのふたつ。前者については言わずもがなだけれども、後者に関してはいまさら? って感じもしなくはない。というのも、モノ自体は意外と昔から存在していたものの、人気が出るまでには至らず。どちらかと言えば、一部のマニア(ツウ?)が手を出すタイプの製品だったのだ。
とはいえ、時代が変わってきたのも確か。言わずと知れたスマホ界の2大巨頭が「Apple CarPlay」「Android Auto」をリリース、その後のブラッシュアップにより使い勝手が向上したことに加え、スマホ所有率はもちろん、同時に通信環境や性能面などなど、周辺環境が整備されてきたことも大きい。最近では国産車に純正装着されるケースが増えてきたことから、認知度アップという後押しも加わったと言えそうだ。
ここまでスルっと書いてしまったけれど、そもそも「ディスプレイオーディオってなんぞや?」って話もしておく必要があるだろう。簡単に言ってしまえば、1DINや2DINのオーディオ専用機の表示部分が液晶ディスプレイに置き換わったモノだ。単体では再生中のアルバムアートやタイトル名、FM/AMチューナーの選局表示など、あまりできることは多くないものの、スマホを接続するとガラッと使い勝手が一変。Apple CarPlayやAndroid Autoを使えばカーナビとして利用できるし、Webブラウザがあればウェブサイトや動画の閲覧も可能と、幅広い楽しみ方が可能になるのだ。
日本市場でディスプレイオーディオに力を入れていたのが、カロッツェリアブランド擁するパイオニアだ。「サイバーナビ」「楽ナビ」と据え置き型カーナビをリリースしつつも、カーオーディオの方向性のひとつとしてディスプレイオーディオをラインアップしてきた。
最新型となる2020年モデルでは「DMH-SF700」「DMH-SZ700」の2機種(ともにオープン価格)を発売。前者はなんと9V型HD(1280×720ピクセル)ディスプレイを搭載しつつ本体は1DINサイズと意欲的なモデル。後者はWVGA(800×480ピクセル)6.8V型ディスプレイを搭載した2DIN一体型とベーシックなモデルとなる。
迫力満点の9V型HDディスプレイ
本機を語る上でなんといっても外せないのが、前述した9V型HDディスプレイを搭載したこと。従来、ディスプレイオーディオといえばコストや取り付けやすさなど「お手軽さ」を重視して2DIN一体型とするのが普通で、当然ディスプレイもそこに収る7V型までで打ち止め。だが、本機ではそういった今までの流れを払拭。フローティング機構による9V型&HD解像度を実現と、最新ハイエンドナビ同様のビジュアルスペックを手に入れたのだ。
加えて、カーナビとは違ってナビゲーション部やTVチューナー、CD/DVDプレーヤーなどが不要となることから、本体も1DINサイズにギュッと凝縮。「2DINスペースがなくてカーナビの装着が難しかった」なんて層にも門戸を開いたのだから、攻めに攻めたモデルであることは間違いない。
で、クルマに搭載された実機をチェックしてみると、表示画面はさすがというか当然というか文句ナシの美しさ。表示される文字やアイコンの精細感も高く、いかにも高級機と感じられる雰囲気。この表示品質はナビゲーション時にも遺憾なく発揮され、今までの表示は何だったんだ! と思えてしまうぐらい。もちろん、ウェブサイトや動画を見ても美しさはバツグンなのだ。
お値段お高めながらも充実した基本機能
今回注目するのは上位機種となるDMH-SF700。店頭予想価格は9万円前後(税別)と、ディスプレイオーディオとしては高価格なモデルになるものの、そのぶん充実したスペックを備えているのが特徴だ。
最初に基本的な話をしておくと、チラッと書いたとおり本体が持っているオーディオソースはメカレスのため、CD・DVDが再生不可で極めてシンプル。これを拡張するのが豊富に用意された端子群だ。
まず、最大供給電流3AのUSB端子を使うことで、USBメモリー(別売)内の音楽、映像、画像の再生が可能。細かくは書かないけれど対応フォーマットも幅広く、たとえば音楽であればMP3やWMAはもちろん、FLACなどのハイレゾ再生までOKと嬉しいスペック。その上、グラフィックイコライザーをはじめタイムアライメント、通常音源をハイレゾ音源相当で再生する「マスターサウンドリバイブ」など、豊富な調整機能を備えている。そのほか、Bluetoothによるハンズフリー通話やWebブラウザを介したオーディオのストリーミング再生に加え、HDMI入力端子やAUX端子による映像や音声の再生も利用可能と幅広いソースに対応している。
単なるオーディオではなくディスプレイ付きならではの嬉しいポイントとして、バックカメラ入力も用意。バックカメラユニット「ND-BC8II」(税別1万3000円)のほか、アフターマーケットで販売されている純正バックカメラ接続アダプターを使えば車両純正カメラ映像を利用することも可能になる。
ブラウザなど通信を利用するには、Wi-Fiアクセスポイント機能を利用してテザリング可能なスマホなどと接続する。iPhone/Android向け専用スマホアプリ「CarAVAssist」を利用すれば、ホーム画面やウィジェットなどのカスタマイズ、ブラウザ表示するお気に入りURLの登録、最新ファームウェアのダウンロードといったことも可能になる。専用の通信機器を用意することなく、手持ちのスマホが使えるのはお手軽な感じだ。
Apple CarPlay / Android Autoを使ったカーナビ機能
ディスプレイオーディオの必須機能と言えるのが、「Apple CarPlay」と「Android Auto」への対応だろう。カーナビ機能の詳細に関しては以前に紹介しているので、ここではあまり多くに触れないけれど、高精細&大画面ディスプレイとの相性はとてもイイ感じ。道路や文字情報も見やすく操作感もスムーズだ。さらにGPSアンテナとハンズフリー用通話マイクが付属しているため、スマホナビにありがちな自車位置喪失、音声操作によるイライラが低減できるのも嬉しい。
この際、スマホとのUSB接続が必要となるため、USBメモリを使った音楽再生は同時に行なえなくなる。とはいえ「Google Play Music」や音楽ストリーミングサービス「Spotify」などを使えばこの問題は解消できる。
カーナビ機能ではないものの音声操作で面白いのが、「Amazon Alexa」に対応していること。別途、Amzonのアカウントが必要になってしまうものの、ニュースや天気などの基本機能のほか、カロッツェリア専用の「Alexaスキル」に対応。「アレクサ、カロッツェリアでホーム」と発話して画面を切換えたり、再生ソースやサウンド設定変更など、独自の機能を音声で操作することが可能になっている。
ハイエンドディスプレイオーディオという新たな提案
これまで定期的に新商品がリリースされていたものの、今ひとつ伸び悩んでいたディスプレイオーディオというジャンル。個人的にもあまり食指が伸びなかった。だが、本機を触ってみてその印象は大きく変わった。「これ、イイじゃん!」と。ディスプレイが表示品質、サイズともに大きく向上したことで、わるい言葉で言うところの「安っぽさ」がなくなり、高品質で分かりやすい表示を実現。ディスプレイオーディオなんだから、“ディスプレイ”そのものが重要なんだなぁ、なんて実感した次第。
価格面でお手軽とは言えなくなってしまったのは残念ながら、触ってみればそれを補ってあまりある仕上がりだと断言できる。今までのディスプレイオーディオに満足できなかった人にこそ、改めて使ってみて欲しいアイテムだ。