東京モーターショー2013
富士通テンは、クラウド・スマホ連携をテーマにイクリプスの新型カーナビなどをデモ
カーナビのエージェントの「はるか」さん向けに東京モーターショーコスチューム
(2013/11/20 16:54)
“ECLIPSE(イクリプス)”ブランドでカーナビ事業を展開する富士通テンは、東京モーターショー2013に出展し、発売したばかりのカーナビ新製品および、研究開発を進めるテーマに関する展示を行った。
この中で同社は、“クラウドの活用”をテーマにしたプレゼンテーションを行い、将来的にはカーナビがクラウド上のデータにアクセスして、さまざまな処理を行うことができる様子を公開した。また、11月より販売を開始した新カーナビ Zシリーズ「AVN-ZX03i」「AVN-Z03iW」「AVN-Z03i」3製品を展示し、来場者にアピールしている。
クラウドサービスとの連携を意識した開発を進める富士通テン、リモート全周囲モニターをデモ
富士通テンのブースで行われているプレゼンテーションでは、同社が思い描くカーナビの未来像が示されている。その鍵となるのは、クラウドサービスとの連携だ。クラウドサービスというのは、IT業界の用語で、インターネットで接続されているサーバー(雲の向こう側にあるという意味でクラウド[英語で雲])にデータが置かれる、サービスが提供されることを意味している。例えば、以前であれば個人の住所録やデータなどは、携帯電話やPCなどの端末の中に入っていたが、現在ではインターネットで接続されているサーバー側にデータが置かれていて、どの端末からもアクセスできるようになっている。今や、PCやスマートフォンなどの端末では、このクラウドサービスがあたり前に利用されている。
今後、カーナビも、こうしたクラウドサービスを利用できる時代が来ると考えられている。現在は地図表示やルート案内、AV再生が主な機能になっているが、こうしたクラウドサービスを利用できるようにしたカーナビのことを特にIVI(In-Vehicle-Infotainment、車載情報システム)と呼んでおり、カーナビメーカー各社はこうしたIVI時代に向けたさまざまな研究開発を行っている。もちろん、日本のカーナビメーカーの大手である富士通テンもそうした研究を行っており、今回のプレゼンテーションでは、クラウド上にある予定表にカーナビがアクセスし、予定を読み取ってきて自動で行き先を設定したり、クラウドにあるドライバーの健康データを読み取ってきて、それを運転アシスト機能へ反映する様子などを紹介した。
なかでもトピックとなっていたのが、富士通テンが開発している「リモート全周囲モニター」だ。クルマの4方向(前後左右)にカメラを設置し、リモートで確認できるという仕組みだ。自動車側に常に通信できる通信モジュール(3GやLTEなどのセルラー回線で接続できるモデム)と何らかの処理回路を入れ、遠隔地にあるスマートフォンやタブレット端末を利用して、常時クルマの状態を確認できるという。使い方としてはクルマに何らかの異常(例えば揺れなどが発生したり)を検知した場合にモジュールやカメラの電源が自動で入り、ドライバーのスマートフォンにアラートを出し遠隔地から確認できるようにするという。このため、モジュールやカメラには常時電気が入ることになるので、バッテリー上がりなどが気になるところだが、何らかの異常時のみ電源が入るようにするため問題がないということだった。
富士通テンと言えば、一般ユーザーにはイクリプスブランドのカーナビのメーカーという認識だが、実際には自動車向けのECUなどさまざまなカーエレクトロニクス製品を開発し、自動車メーカーに対して供給している。今後は今回のリモート全周囲モニターの展示のように、ITとカーエレクトロニクスを融合した製品に取り組んでいきたいという意向だ。
ZシリーズはWi-Fiに標準対応。テザリング対応のスマートフォンとの組み合わせが便利
富士通テンブースには、「AVN-ZX03i」「AVN-Z03iW」「AVN-Z03i」の通称“Zシリーズ”カーナビの最新製品も展示。Zシリーズは10月に発表されて(別記事[http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20131008_618587.html]参照)おり、11月から量販店などで販売が開始されている。
AVN-ZX03iが9型、AVN-Z03iWとAVN-Z03iが7型の液晶を備えている。AVN-Z03iが一般的な2DINサイズ用、AVN-Z03iWがトヨタ/ダイハツ車で採用の多いワイドコンソール用、AVN-ZX03iが車種別取り付けキットによる大画面カーナビとなる。
このため、装着できる車種はトヨタ「プリウス」「アクア」、ホンダ「フィット」「N BOX/N BOX+」など数は多いが注意が必要だ(なお富士通テンのWebサイト[http://www.fujitsu-ten.co.jp/eclipse/product/navi/9inch/index.html]で装着可能な車種は公開されている)。
このZシリーズの最大の特徴は、スマートフォンと接続する手段として、Wi-Fi(無線LAN)が利用可能なことだ。これまで日本のカーナビは、スマートフォンやフィーチャーフォンと接続することに、Bluetoothを利用してきた。これは、そもそもフィーチャーフォンにはWi-Fiをサポートするものがほとんどなかったことと、スマートフォンのWi-Fiは、スマートフォンが子機として利用する機能がメインだったからだ。だが、昨年ぐらいから、通信キャリアの方針は変更され、テザリングと呼ばれるスマートフォンをWi-Fiの親機(アクセスポイント)として利用する機能が一般的になってきており、カーナビとスマートフォンをWi-Fiで接続する環境が整ってきたのだ。
このような環境の変化にいち早く適応したZシリーズでは、従来と同じくBluetoothを利用することも可能だが、Wi-Fiを利用してスマートフォンと接続して利用することができる。実際、設定パネルからは周辺にあるテザリングが有効になっているスマートフォンなどを親機として登録することができていた。Zシリーズの連携機能は非常にユニークで、スマートフォン側にインストールした「どこでもサポート」というアプリケーションを利用すると、手元にあるスマートフォンで、マニュアルを検索し、目的の機能があった場合には「転送」というボタンを押すと、カーナビが自動でその設定項目を呼び出してくれる(ただし、すべての機能ではない、一部機能)。このほか、オンデマンドVICS(利用は有料、MapFanサービスに可能で利用可能)なども、Wi-Fi経由でアクセスが可能だ。
しかしながら、現在の製品ではWebブラウザや、SNS(FacebookやTwitterなど)のクライアント機能といったスマートフォンでは利用できているものが、カーナビには実装されていない。しかし、Wi-Fiの機能が入った以上、将来はそうした拡張が可能になるだけに、今回のZシリーズのWi-Fi実装の意味は小さくない。もちろん、車載にする以上、内蔵されているWi-Fiコントローラは車載グレード(稼働温度などが車載用に特別に保証されている製品)になっており、安心して使えるのも嬉しいところだ。すでに多くのユーザーは、テザリング可能なスマートフォンや、Wi-Fiルーターを持っているため、他社製品も含め、Wi-Fi機能を持つカーナビの普及が進むことを期待したいところだ。
CarafLに用意されている女性キャラクターは着せ替え機能あり、現在TMS記念コスチューム配布中
Zシリーズにはこのほかにもスマートフォン連携の機能が用意されている。その1つはMirrorLinkの機能だ。MirrorLinkは、USBでカーナビと接続されているスマートフォンで使っているアプリを、そのままカーナビのディスプレイに表示し、タッチパネルで操作するようにした仕組みだ。現状では利用できるアプリは限られてしまうが、対応アプリが増えることでより便利になる可能性がある。現在のZシリーズでは、写真や音楽、ニュースリーダーアプリが利用可能になっている。
もう1つが「CarafL(カラフル)」と呼ばれる音声認識機能で、スマートフォンにCarafLのアプリケーションをインストールすることで、エージェントと呼ばれる女性キャラクターと会話しながらカーナビを操作することができる。以前のカーナビの音声認識と言えば、例えば音楽CD再生やメニューを呼び出す目的にだけ利用可能で、iPhoneの音声認識機能である「Siri」やNTTドコモの「しゃべってコンシェル」のように、「●●を探して」などの会話形式で音声認識できなかった。このCarafLでは、より自然な会話で検索などが行えるようになっており、「近くの駐車場の空きを探して」とエージェントに話しかけると、近くの駐車場を検索してくれる。デモでは検索した駐車場がすべて満車だった時に「空いている駐車場ある?」と質問することで、範囲を広げて空き駐車場を探す様子などが行われた。
なお、このエージェントは「はるか」という女性キャラクター。「着せ替え機能」が用意されており、47都道府県にそれぞれにコスチュームが用意されており、新しい都道府県に行くとその地域のコスチュームをゲットできる。なお、現在は東京モーターショー記念のコスチューム(実際に同社ブースでコンパニオンの女性が着ていたのと同じデザイン)を配布中で、すでに新Zシリーズを持っているユーザーはそれをゲットすることができるそうだ。