2016 デトロイトショー

顔認識によるパーソナライズなど未来のクルマを示すアキュラ「プレシジョン コンセプト」

“ダイヤモンドペンタゴングリル”だけでなく、HMIに新しい提案

2016年1月11日~14日 開催

「quantum continuum(量子連続体)」というデザインテーマにより世界デビューしたアキュラ「Precision Concept(プレシジョン コンセプト)」

 本田技研工業は1月12日(現地時間)、「North American International Auto Show」(北米国際自動車ショー、以下デトロイトモーターショー)の2日目にプレスカンファレンスを実施。本田技研工業 八郷隆弘社長が30年目となるアキュラブランドの紹介を行なうとともに、次世代アキュラのデザインコンセプトとなる「Precision Concept(プレシジョン コンセプト)」を世界初公開した。

30周年を迎えるアキュラの歴史に触れ、プレシジョン コンセプトを世界初公開する本田技研工業株式会社 八郷隆弘社長
Acura Precision Concept

 プレシジョン コンセプトは、ホンダが米国でプレミアムブランドとして展開するアキュラの未来のデザイン提案が盛り込まれたモデル。今回のデトロイトモーターショーでは、インフィニティ(日産自動車)「Q60」、レクサス(トヨタ自動車)「LC500」とも、赤いボディカラーで世界初公開されており、日本メーカーのプレミアムブランドすべてで“赤”となったのには正直驚いた。

 ただ、各メーカーとも色味は違い、インフィニティQ60はスタンダードな赤系統、レクサスLC500は深みのある赤、そしてアキュラ プレシジョン コンセプトは華やかな赤となっていた。いずれもシルバー系のフレークが加わっており、独特な発色となっているため、光源の位置によって色味が違って見えるものだ。

 また、ホンダは、米国ではホンダブランドを青で、アキュラブランドを赤で訴求しているとのことで、アキュラのハイエンドモデルが赤で登場するのは必然なのだろう。ちなみに日本でのホンダのイメージカラーは、とくにホンダ自身が語ることはないものの白/赤。これはホンダF1が日の丸を背負って走って以来つきまとうイメージだ。さらに世代が上で、ホンダ=2輪の人には銀と赤かもしれないが。

デザインコンセプトは「quantum continuum」

 このプレシジョン コンセプトのデザインテーマは「quantum continuum(量子連続体)」で、速報でお届けしたとおり“ダイヤモンドペンタゴングリル”と呼ばれるグリルが採用されている。ボディサイズは、全長が204インチ(約5182mm)、全高が52インチ(約1321mm)、全幅が84インチ(約2134mm)。ホイールベースが122インチ(約3099mm)と発表されている。そこに22インチのミシュランのハイパフォーマンスカー向けスポーツタイヤ「Pilot Super Sport(パイロットスーパースポーツ)」を装着している。

 デザインテーマのquantum continuumという言葉は奥が深く、量子(粒)でありながら連続する状態を表現。つなぎめがなく変化していく素材と構造を表わしているという。実際、プレシジョン コンセプトではダイヤモンドペンタゴングリルから始まる鋭角的ラインはフロンドドアで収束し、それを前輪からの化キャラクターラインが支え、さらにリアのホイールハウスのラインがリアコンビネーションと一体になっている。

アキュラの赤をまとうプレシジョン コンセプト。華やかな発色となっていた
各部写真

 タイヤは前後とも22インチで、前後同サイズとなると4WDを示唆していると思われ、後述するIDS(Integrated Dynamics System)セッティング画面に「SH-AWD」の文字を見ることができた。

 フロントドアとリアドアは観音開きを採用。これはインテリアを特に見せたいショーカーでは採用されやすい機構で、フロアから浮くようにデザインされたフロント&リアシート、センターコンソールなど浮遊感の高いインテリアとなっている。

観音開きのドアを採用

 そしておそらくアキュラが表現したかったのが、ステアリングホイールやフローティングメーターと表現されたコンパクトなデジタルメーター、それに横長で湾曲した大型のインストルメントパネルディスプレイだろう。コンパクトなステアリングホイールはレースにインスパイアされたものだとし、パドルシフトに加え、動的セッティングを変更可能な「IDS」ボタンを装備する。

インテリアまわり

 IDSのモードとしては「QUIET」「COMFORT」「SPORT」「TRACK」「RACE」を用意。調整項目としては「SH-AWD」「TURBO」「SUSP」「EXHAUST」「AERO」の文字が並び、同時に表示されるパワートレーンはフロントにエンジンが表示されている。

フローティングメーターの表示
IDSの画面と思われる。パワートレーン配置やIDSのセッティング項目が見て取れる
Acura Precision Concept HMI

 インストルメントパネルディスプレイには、3Dリアルタイムレンダリングでナビ画面が描かれるほか、車室内に設けられたカメラによるパーソナライズを実現。乗り込んだドライバーの顔を認識し、そのドライバーに最適なユーティリティを提供する。例えばシートポジションやステアリングポジションはもちろん、会社に通勤するお父さんが乗り込んだらナビの目的地を会社に設定するとか、お母さんが乗り込んだらIDSの設定をソフトにするとかはすぐに実現できるところだろう。

 このドライバーモニタリングという技術は、今もっとも注目されているもので、多くのメーカーが自動運転と一緒に開発を行なっている。ドライバーが突然意識を失った際に安全に停止するとか、登録者以外が乗ったらエンジンがかからないなどの盗難防止とか、クルマをよりセキュアにしてくれるだろう。

 インパクトのある外見を持つプレシジョン コンセプトだが、インテリアやHMIに込められた要素技術は非常に魅力的。これらの要素技術をいかに自然にドライバーに提供してくれるかが現代の新車開発に求められており、HMIにおいてもquantum continuumを実現した市販車の登場に期待したい。

編集部:谷川 潔

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