2016 ニューヨークショー

【インタビュー】スバル 新型「インプレッサ」開発主査 阿部氏に聞く

プラットフォーム、デザイン、エンジンのすべてを刷新

2016年3月23日(現地時間) 発表

ニューヨーク国際自動車ショーでワールドプレミアされたスバル(富士重工業)新型「インプレッサ」

 ニューヨーク国際自動車ショーでワールドプレミアされたスバル(富士重工業)新型「インプレッサ」のハッチバックとセダン。両モデルは、スバルがこれから10年先を見越して開発したというSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用した第1弾モデルになる。

 次世代プラットフォームは、「スバル史上最高レベルの総合性能進化」「将来の電動化にも対応し、全車種の開発を1つのプラットフォーム設計構想で実現する」という2つの目的を持ち開発された。この新規プラットフォームを使い、デザインテーマの「ダイナミック&ソリッド」を全面に採用したのが新型インプレッサになる。

ワールドプレミアされた新型インプレッサハッチバック

 内外装、シャシーともに大幅に進化した新型インプレッサについて、開発を取りまとめた阿部一博PGM(プロジェクト・ジェネラル・マネージャー)に特徴や求めた方向性を聞いてみた。

──SGPを採用する第1弾モデルとなりましたが、どんなインプレッサに仕上がっていますか?

新型インプレッサのPGM(プロジェクト・ジェネラル・マネージャー)を務めた阿部一博氏

阿部氏:新しいプラットフォームを採用した理由は、効率化や原価低減ではありません。スバルらしさを際立たせようというのが狙いです。つまり、安心と愉しさの両立になります。安全性能やハンドリングについてはかなり高いレベルに持っていけたと思っています。

──なぜ、インプレッサからSGPを採用することになったのでしょうか?

阿部氏:特にどのモデルから導入しようと思ってはいませんでした。ですが、インプレッサから採用して正解だと思っています。理由は、エントリーモデルであるインプレッサでプラットフォームを熟成できるからです。相当高いレベルになったプラットフォームですが、使いきるにはノウハウが必要です。それをインプレッサで学び、レヴォーグ、レガシィ、フォレスターに使うことができるからです。

──SGPはどの開発者に聞いても凄いという話が出るのですが、どのように感じていますか?

阿部氏:次世代プラットフォームがよくなっているのは机上でも知っていましたが、完成車に乗ってみて、その進化に驚いています。社内では“レオーネからレガシィへ移行したときのようだ”と言われています。若い世代には分からないと思いますが……。

──モデルラインアップは、現行と同様でハッチバックとセダンになっていますが、どちらが主力なのですか?

阿部氏:セダンの人気が高い北米市場ですが、インプレッサに関しては7:3でハッチバックのほうが売れています。アメリカで販売されているCセグメントのAWDモデルでいえば、インプレッサのシェアは8割を越えています。それだけスバル車とインプレッサはAWDというイメージが強いのが事実です。ただ、安心とAWDというキーワード以外の燃費やスポーティさという面では競争力がなかったとも思っています。そこで、新型インプレッサは安心とAWDはもちろん、燃費やスポーティさも感じさせるモデルにしました。

──スポーティさというのはデザインでしょうか?

阿部氏:そうなります。エクステリアは、新中期経営ビジョンの「際立とう2020」にも示しているデザインコンセプトであるダイナミック&ソリッドを全面的に採用した初のモデルとなります。ダイナミックとソリッドのバランスはハッチバックとセダンで異なりますが、洗練されたデザインを実現できています。

──インテリアについても大幅に質感がアップしましたね。

阿部氏:インテリアについては、ドアを開けた瞬間に買いたくなる品質を求めました。グローバルプラットフォームの全貌が見えてきた4年くらい前に、インテリアの品質が進化しないと置き去りになることが明確になりました。そこで、製造も含めてプロジェクトチームを作りました。デザインだけでなく使用する材料や原価なども検討の対象にして、品質の向上に努めました。ドアパネルからインパネに続く合せラインは、しばらくの間、止めていたデザインですが、新型インプレッサから採用しました。インテリアの広がり感とほどよい包まれ感が実現できたと思います。

質感向上を果たしているインテリア

──プラットフォームやデザインとともにエンジンも新しい直噴モデルになりました。

阿部氏:多くのパーツをリファインしたので、同じFB20という型式ですが新しいエンジンと言えます。従来型に対して燃焼効率を上げて燃費性能を引き上げました。そして、低速域のトルクをアップさせ、最高出力は4PSほど向上させています。数値的なものよりもドライバビリティが格段に上がっています。

セダンモデルも初公開
ハッチバックと同様のインテリアに仕立てられる

 というように、プラットフォーム、デザイン、エンジンのすべてが刷新された新型インプレッサ。SGPの第1弾モデルとして導入されるだけあり、どのようなハンドリングになっているかも注目される。今年の夏以降には市場へ導入されるようなので、その完成度がどの程度なのか楽しみな存在となる。

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。