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ボッシュ、年次記者会見でコネクテッド・カーのコンセプトを日本初披露

日本国内における2015年売上高は2700億円に

2016年6月8日 開催

コネクテッド・カーのコンセプトを日本初披露した2016年ボッシュ・グループ年次記者会見

 ボッシュは6月8日、「2016年ボッシュ・グループ年次記者会見」を開催した。

 第1部、第2部と続いた会見で、第1部では世界のボッシュ・グループと日本のボッシュ・グループの2015年業績とビジネスのハイライトについて説明。第2部では「コネクティビティ(Connectivity)」をテーマに、ボッシュの提供するIoTソリューションについて、自動車を含むモビリティの分野に関するソリューションをテーマにした技術講演会が開催された。

ボッシュ 代表取締役社長 ウド・ヴォルツ氏からの2015年度の業績説明

ボッシュ株式会社 代表取締役社長 ウド・ヴォルツ氏

 会見に登場したボッシュ 代表取締役社長 ウド・ヴォルツ氏は、アメリカ、ドイツに次いで世界で3番目の披露となるコンセプト車両をアンベールして「これは単なるクルマと呼べる次元のものではなく、パーソナルコンパニオンと呼べるもの。みなさんの自宅とビジネスの場、生活という3つの環境をつなげていけるものだ。自動運転によりドライバーはコミュニケーションを取ったりリラックスしたりできる。これはまさに、次の10年を見通す窓だ」と紹介した。

 記者会見では、まず2015年の業績について「戦略的優位性としての事業多角化 テクノロジーカンパニーであり、サービスプロバイダーでもあるボッシュ」と題したプレゼンテーションを実施。

 すでに情報は公開されているが、ボッシュの2015年度の日本における第三者連結売上高は約2700億円(約20億ユーロ)となった。中国の景気減速などの影響で日本国内での売上高は前年比で3.8%減少したが、日本の自動車メーカーに対する全世界での売上高は前年比17%増。日本における2016年の第三者連結売上高は、自動車のセーフティシステムやガソリン直噴システム、医療用検査・包装技術などへの需要増加が見込め、経済動向の影響にもよるが、わずかに改善するものと予想しているとのこと。

 ヴォルツ氏は「ボッシュにとって好調な年となった。世界経済が低迷するなかでも大きな一歩を踏み出すことができ、成長目標と収益目標を達成できた。2016年も売り上げを3~5%伸ばそうとしている。利益率もほぼ横ばいと考えている。2016年以降はイノベーティブな製品とサービスを用いることで、ますます成長していきたい」と語り、自動運転やスマートホームなどに寄与すると考えている買収や子会社化を検討していることや、2輪向けモビリティ部門の新設、商用車、オフロード車のビジネスユニットについても触れた。

 今年の状況については「グローバルな経済環境が重要なファクターになる。現在の見通しでは、グローバルな成長率は2.5%、世界の自動車生産高の伸びは2%を見込んでいる。その中でボッシュのグローバルな成長率は3~5%、モビリティーソリューションが最大の伸びとなると考えている。単なる自動車テクノロジーを超えた部分であるモビリティーアシスタントを立ち上げた。交通機関の予約などの手間を減らし、渋滞を減らし時間の無駄も減らす。新しいパワートレーン、自動運転、コネクティビリティーの3つにフォーカスし、急速な成長をしていく」と、ボッシュのグローバルビジネスの状況と今後について話した。

ヴォルツ氏の、事業概要から将来の展望までを含めたプレゼンテーションのスライド。ネットワーク化による多様性を、攻勢をかける好機であるとの判断がされている
日本のカーメーカーなどの顧客を、グローバルに展開するボッシュの強みとしてサポート。横浜の研究開発センターでは、エンジン関係の試験設備を50%増強するなど、国内メーカーへの力の入れようが分かる

「ボッシュはIoTイネイブラー」、各事業ドメインを繋げられるのがボッシュの強み

 第2部の技術講演会では、ヴォルツ氏が「ボッシュにおけるコネクティビティ IoTのイネイブラーであるボッシュ」とタイトルされたプレゼンテーションを実施。

 ネットワーク化ソリューションの事業基盤についてヴォルツ氏は「コネクテッドの世界は大きな潜在性を秘めています。コネクティビティーは1つのドメインを超えて、複数のドメインで世界をつなげていきます。スマートホーム、スマートシティ、コネクテッドインダストリー、コネクテッドモビリティーの各事業ドメインがボッシュにとって『キー』となる分野で、すべてが繋がっています。ボッシュはセンサーやサービス、ソフトウェアなど、IoTに必要なすべての要素を提供することで、IoTをイネイブルにしています」と話した。

 そののち、スマートホーム、自動駐車とコネクテッドパーキング、そして「インダストリー4.0」の具現化に向けた動きについても「ボッシュは世界の3つの主要経済地域でパートナーと協力している」とコメントしたほか、IoTサービスのための独自のクラウド運用や、IoTサービスとアプリケーション用のミドルウェアの開発だけでなく、新たな事業領域として千葉大学、つくば大学と共同の「スマート農業プロジェクト」についても話していた。

「ボッシュは、IoTに必要なすべての要素を提供できるベンダーである」とヴォルツ氏は語り、IoT以外の新たな事業領域にも拡大していく旨をコメントしていた

「IoTが最も私たちの生活に影響を与えるのはモビリティーの分野」と、カーマルチメディア部門の水野氏

カーマルチメディア部門 部門長の水野敬氏

 続いて、プレゼンテーターがヴォルツ氏から、ボッシュのカーマルチメディア部門の部門長、水野敬氏に代わり、コネクテッドモビリティーに関する「未来のクルマの実現に向けて インターネットの一部としてアクティブに機能するクルマ」とタイトルされたプレゼンテーションに移った。

 その中で水野氏は「スマートホーム、スマートシティー、コネクテッドインダストリー、コネクテッドモビリティーの4つの分野で、IoTが最も私たちの生活に影響を与えるのはモビリティーの分野です。今や人々の生活はインターネットなしでは考えられませんが、近い将来、クルマも同じようになるでしょう。インターネットに接続されたクルマはより安全で効率的なものとなり、ドライバーの負担を軽減してくれます」とコメントしたあとに、ボッシュのテクノロジーを紹介した。カーブの先を見通す「ドライバーアシスタンスシステム」については「ボッシュの『コネクテッドホライゾン』は、どんなセンサーや地図よりも、最新の情報を入手できます。クルマの位置データとクラウドを通じて得られるリアルタイムの情報を組み合わせることで、危険な状況をはるか手前からドライバーが把握でき、ナビゲーションは最適かつ安全なルートを提供するようになります。また、多数のクルマが横滑りをした情報があれば、気象情報なども参照し、ドライバーに路面凍結の危険性を知らせることもできます」と、コネクテッドホライゾンの有効性について語った。

 また、ソフトウェアによる自動緊急通報サービスについて「ボッシュの自動緊急通報システムの『eCall』は、クルマのエアバックを作動させるセンサーと同じ仕組みで、事故を起こした場所、時刻、走行方向などをボッシュのコールセンターに送信し、オペレーターがドライバーにコンタクトし、必要に応じて警察や緊急車への通報を行なえます。すでに41カ国でコールセンター業務を手掛けており、2016年末から日本でもサービスの提供を開始します」と話し、「『eCall』は、新車装着はもちろん、後付けで、クルマのシガーライターソケットにユニットを差し込んでスマートフォンアプリと連動させることで、あらゆるクルマに簡単に取り付けてご利用いただけます」ともコメントしていた。

 さらに、走行車両のGPS情報を分析して逆走車両がいると特定できた場合に、10秒以内にクラウドベースで逆走車両周辺のドライバーに警告して事故を未然に防ぐ安全システムの紹介や、走行中のクルマが路肩の駐車スペースを検知し、空きスペースの広さなどからリアルタイムで駐車スペースマップを作成し、駐車させたいクルマの大きさとのマッチングなども行なえる「コミュニティーベースパーキング」、自分のクルマのトラブルの兆候をクラウドで発見し、メンテナンスのネットワーク化を図る「予測診断」も紹介されていた。

「コネクテッドホライゾン」「eCall」に始まり、現実のものとなりつつあるモビリティー技術について紹介した水野氏のプレゼンテーションは、ついつい聞き入ってしまう内容。早く実用化してほしい

コンセプト車両をアメリカ、ドイツに次いで、世界で3番目に披露

 1月にラスベガスで開催された「CES2016」で展示されたコンセプト車両を使用し、未来のコネクテッド・カー(Connected Car)のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)コンセプトのデモンストレーションも行なわれた。

 実際に車両を走らせるデモではないものの、ドライバーの利用環境ごとに "このときはこうして" という動画をスクリーンに投影しながら、コンセプト車両のユーザーインターフェイスを操作するもの。家を出るとき、オフィスについてクルマを降りたあとにクルマが勝手に駐車場に向かう、今日はタイヤ交換する予定だったので勝手にサービスガレージに向かう、など、まるで夢物語のようではあるが利用シーンを想像できるものとなっていた。

これは単なるクルマではなく「第三の生活空間」というコンセプト車両。さまざまな情報をドライバーが選択して操作できる。もちろん実用までの法整備なども必要だが、近い将来に現実のものになるのだろうと感じた