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日産、今夏発売の新型「セレナ」に搭載する自動運転技術「ProPILOT(プロパイロット)」説明会

追従と停止および停止保持、車線の中央付近を維持するステアリング制御を単眼カメラで実現

2016年7月13日 発表

自動運転技術「ProPILOT(プロパイロット)」の試乗&説明会で公開された新型「セレナ」

 日産自動車は7月13日、今夏にフルモデルチェンジを予定する新型「セレナ」に搭載される自動運転技術「ProPILOT(プロパイロット)」の概要を発表した。

 同社は2015年10月に、高速道路上(単一車線)での自動運転を可能にする技術を2016年に日本市場に投入するモデルに採用すること、2018年に高速道路上での車線変更を自動的に行なう自動運転技術を実用化すること、そして2020年に交差点を含む一般道での自動運転技術を導入するという自動運転技術のロードマップを発表。

 今回の「ProPILOT」はその第1弾にあたり、高速道路での渋滞走行や長時間の巡航走行という“負担を感じる2大シーン”での運転負荷を軽減することを目的に、今夏に発売する新型セレナに導入されることが明らかになった。

「ProPILOT」は高速道路における単一車線での使用を前提に、アクセルを自動でコントロールし、ドライバーが設定した車速(約30km/h~100km/h)で走行できるほか、先行車との距離を保つよう自動でアクセルとブレーキをコントロールし、追従と停止に加え、停止保持まで可能にした。さらに直線やコーナーで車線の中央付近を維持するステアリング制御まで行なう。これらの機能をフロントウィンドウ中央上部に設置される高性能単眼カメラのみで実現しているのがポイントの1つになる。

 この発表に先立ち、神奈川県横須賀市内の追浜グランドライブにおいて「ProPILOT」の試乗&説明会が実施された。ここでは日産自動車 電子技術・システム技術開発本部 AD&ADAS開発部 プロジェクト開発グループ 主管 矢作悟氏によるプレゼンテーションの内容を紹介する。

日産における自動運転技術のロードマップ。第1弾として、高速道路における単一車線での自動運転を可能にする技術を新型セレナに搭載
高速道路での渋滞走行、長時間の巡航走行という“負担を感じる2大シーン”での運転負荷軽減を目的に開発された「ProPILOT」

モービルアイ製の画像処理チップを採用

日産自動車株式会社 電子技術・システム技術開発本部 AD&ADAS開発部 プロジェクト開発グループ 主管 矢作悟氏

 矢作氏によると、「ProPILOT」の機能については3点ポイントがあるとし、1つは前走車がいない場合に速度を維持して走行すること、2つ目は前走車がいる場合に追従、停止、停止保持をすること、そして3つ目に両側に白線がある場合にステアリング制御を行なうこと。

 このポイントについて、矢作氏は「速度を維持するほか、追従機能や渋滞のときに前走車に合わせて停止までする機能はスカイラインやフーガに搭載される『インテリジェントクルーズコントロール』でも採用されているが、今回の新しいところは停止保持機能が加わったことで、これまでは渋滞中にクルマが停まったあとに人間がブレーキを踏んでクルマを止める必要があったが、システムが自動で行なってくれるので基本的にアクセルとブレーキ操作を行なわなくてよいメリットがある」とコメント。

 また、「両側に白線があることが作動条件になるが、ステアリングを制御して車線の中央付近を走るようにサポートする機能もある。古くは2001年ぐらいにF50型のシーマでレーンキープサポートシステム(直線路車線維持支援装置)という機能を採用していたが、これは70km/h以上という高速域でステアリングを制御するものだった。今回の『ProPILOT』では停止間際までステアリングを制御するという全車速域でステアリング制御を行なうのが新しい。結果、これらの機能を組み合わせると日本の高速道路で遭遇するケースというのはすべて網羅される」と、「ProPILOT」の特徴について説明を行なった。

「ProPILOT」の機能について

「ProPILOT」のシステムは、前方の車両や白線を認識するための高性能単眼カメラ(エマージェンシーブレーキ用としても使われ、人間も認識)をはじめ、カメラから得た情報をもとに「ECM(エンジンコントロールモジュール)」「EPS(電動パワーステアリング)」「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」という各ユニットをコントロールする「ADAS ECU」で構成される。また、新型セレナでは電動パーキングブレーキを採用しており、例えば事故渋滞などにより長時間の停止(3分以上)が必要になった場合にメカニカルに電動パーキングブレーキが作動する仕組みになっている。その際は「ProPILOT」の設定はキャンセルになる。

 この高性能単眼カメラについては、カメラ内の画像処理チップにモービルアイ製を用い、モービルアイ独自の画像解析技術により上記の機能を実現しており、矢作氏は「単眼カメラではあるが周囲の状況を立体的に把握しており、前方車両や白線を瞬時に三次元把握し、正確に制御できるとともに、カメラを使っている関係で横から割り込んできた車両を素早く検知することができる」と説明。

 そしてステアリングの制御については「従来のVDCと比べ、何度ステアリングが切れているかを20数倍細かく検知している。これだけの細かい情報を得ることで、例えばわだちがあるような不整地でまっすぐ走れるとか、道路の傾斜(カント)の影響を受けにくい、S字でふくらみのないライントレースができるなど、裏方として細かな制御が行なわれている」と述べ、舵角を高い分解能で検出し、正確なステアリング制御を実現しているとした。

 こうした自動制御システムで重要になるのがドライバーとのインターフェースになるが、新型セレナでは7インチの大型画面をセンターモニターとしてインパネ上部に設置。このモニターに先行車の検出状況、ステアリング制御の作動状況、設定車速、設定車間距離といった「ProPILOT」の作動状況を表示。システムの作動状況をドライバーが直観的に分かるデザインに仕上げたとしている。

「ProPILOT」では同一車線内での追従走行を行なうほか、先行車の停止に合わせて停車。さらに停止状態を保持する機能が備わる
「ProPILOT」のシステム構成
カメラ内の画像処理チップにモービルアイ製を採用する
舵角を高い分解能で検出し、正確なステアリング制御を実現。不整路やカントの影響を受けにくい特性を持つという
先行車の検出状況、ステアリング制御の作動状況、設定車速、設定車間距離といった「ProPILOT」の作動状況はインパネ上部に設置される7インチのセンターモニターに表示される
「ProPILOT」の使いやすさを追求するべく、日本の都市高速や幹線高速で開発車両を実際に走らせて検証を行なったという

 この「ProPILOT」の試乗については、自動車ジャーナリストの日下部保雄氏による別記事を参照いただきたい。