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【連載】橋本洋平の「GAZOO Racing 86/BRZ Race」奮闘記

第28回:十勝ラウンド第2戦、2位に入賞するもすっきりしないのはなぜ?

事前準備に追われた十勝ラウンド

 土曜日に予選、決勝が行なわれた十勝。1Dayレースならそれで終了となり、普段なら帰路についている日曜日。だが、今回は日曜日にも予選、決勝が行なわれるという異例の事態である。7月に行なわれるはずだったオートポリス戦が震災のためキャンセルとなり、それを吸収するために土曜日にも1Dayレースが行なわれたというのが事の経緯。だから仕方ないといえば仕方ないのだが、それをこなすための準備が今回はかなり面倒だった。

 まずはタイヤをどう輸送するのか? 普段なら1セットはクルマに装着させ、もう1セットはクルマに載せておけば、練習も本番も何とかこなせる。だが、もう1レースあるとなると当然ながらタイヤが足りず……。結局は宅急便でタイヤをサーキットに送り付けるというところから実は十勝戦が始まっていた。

 それ以外のブレーキやオイル関係は金曜日の練習走行が終わった時点で全交換を行ない、そのまま日曜日まで通して使う予定でいた。クルマの負担などを考えれば土曜日が終わった段階で何かしらの交換をしたほうがよいかもしれないが、走行距離や時間を考えれば、そこまでの必要があるかといえば、答えはノーのような気がする。ひとまずブレーキフルードとクラッチフルードのエア抜きだけを行なって次のレースを迎えることにした。

 日曜日の予選は、とにかくポールポジションがマスト。前日のレースで前を行く菱井選手と横並びになりながらも、抜けずじまいだったからなおさらである。タイヤは前日とは違いド新品状態のものを投入することに決定。相棒のブリヂストン「POTENZA RE-71R」は、予選も決勝もライバルメーカーの新製品を寄せ付けないことが前日証明されたからなおさらだ。ロングランにおけるラップの安定性を求め、減らしたタイヤを選択する必要はもうない。一発の速さを出し、前にいることがとにかく重要。十勝の路面にはド新品がマッチすることを練習走行でつかんでいただけに、日曜日のタイヤ選択に迷いはなかった。

久々の表彰台。だけど……

 こうして迎えた予選。だが、走り始める前からドラマは始まっていた。それは、前日にチャンピオンを決めた松原選手が欠場することを表明したことである。無駄に走ってクルマを傷つけたくないという思いからだったようだが、その気持ちはよく理解できる。クラッシュすること、さらには走ればすぐに寿命がくるトランスミッションなど、レースに出場するリスクは計り知れない。チャンピオンを打ち破るという楽しみはなくなったが、ポジションが1つ上がると思えばまあいい。

 予選が始まれば狙いはドンピシャ。前日とは打って変わって開始直後にあっさりと1番時計を記録することに成功した。今季2度目のポールポジション獲得か!? だが、現実は最後の数分で菱井選手にひっくり返されることに。その差は1000分の27秒……。いつかどこかで聞いたことのあるようなタイム差がそこにはあった。本当にわずかな差でいつも負けるのはどうしてだろう? 持って生まれた運勢なのか、わずかな差で勝てたことは人生1度もない(苦笑)。

 やはりいつも話題にする体重なのか? ちなみに菱井選手は54kgでワタクシ75kg。セルフウェイトハンデ21kg(汗)。決して北海道の食事が美味すぎて太ったわけではなく、デフォルトでそれなのだから厄介だ。レース主催者様、いっそドライバーの体重込みで最低重量を揃えてはいただけませんか? いくら絶食をしたところで、50kg台なんか夢のまた夢。というか、そこまで痩せたら間違いなく決勝レースで気絶しちゃいます。そんなことになる前にぜひ! ま、そこまでストイックに痩せることなんてできないと思いますから心配ありませんけれどね(笑)。

 悔やんでも仕方ない。決勝はまたしても偶数列の2番手。トラクションが得られない偶数列であることも、前日の状況からよく理解している。だが、少しでも前に行こうと、前日よりも慎重にスタートしてみると……。なんとか3番手の手塚選手を抑えられるところまでは頑張れた。だが、そこから先は手塚選手を抑え込むので精一杯。トップの菱井選手は減らしたタイヤで走っているらしく、ラップタイムも安定して逃げていく。こちらはド新品から予選を戦ったために、決勝時は応答性がややわるく、ラップタイムを安定させるにはひと苦労といった状態だった。結果として順位は変わらずそのままゴール。久々に表彰台に乗れたことはよかったが、なんだかスッキリとしない悔しいレースだった。

 その後に行なわれたプロクラスのレースを見て、やりようによっては勝てたのかもと思えるよい例があったから悔しさは倍増だ。それは度々ここにも登場してもらっているブリヂストンユーザーの佐々木雅弘選手が、予選2番手からトップに食らいつき、1コーナーでズバッとオーバーテイクしてそのまま優勝したからだ。さらに佐々木選手はシリーズチャンピオンを手にすることにも成功した。本当におめでとう!

2番手でスタートするも、3番手の手塚選手を抑え込むので精一杯。順位は変わらずそのままゴールとなった

 実は佐々木選手の予選はポールタイムを記録するセクタータイムを連発していたのだが、最終コーナーで前を行くクルマが大クラッシュ。それをスレスレでかわして記録したために2番手になってしまったという不運があった。すなわち、一発の速さはもともと持っていたから決勝でトップに立てたという理由もあるだろう。だが、レースを見ていて感じることはそれだけではない。常にプッシュを続けて前との差を縮め、迷うことなく一発でオーバーテイクを決める。これは気力とバトルの経験がものをいう世界だと思うが、佐々木選手の走りにはそのどれもがあったと思えたのだ。

久々の表彰台!
プロクラスでは佐々木雅弘選手がシリーズチャンピオンに。本当におめでとうございます!

 対する僕は、前日から菱井選手を追い詰めるも一発でオーバーテイクできず、何度も仕掛けて撃沈。そのうち気持ちも萎えてくるという悪循環があったように思える。抜きにくいと言われている十勝、そして練習走行でクラッシュ寸前の大スピンをしてしまい、どこかトラウマがあって攻め切れていなかったこともあっただろう。

 優勝するチャンスがあったにも関わらず勝てなかったこと、これがとにかく悔しい。少しでも痩せて、次の鈴鹿でリベンジしたい!

練習走行でのクラッシュ寸前の大スピン。スピードが乗っているこの1コーナーではほかにもスピンが続出し、なかには100万円クラスの修理費が必要になったケースもあると聞いた。今思い返してもヒヤヒヤだ