ニュース
580馬力のグローバルラリークロス参戦マシン「WRX STI」が本庄サーキットでテスト走行
新井敏弘選手がドライブするローンチスタートの様子を動画で紹介
2017年1月26日 18:41
- 2017年1月25日 実施
- 本庄サーキット(埼玉県)
STI(スバルテクニカルインターナショナル)は1月25日、アメリカで行なわれているレッドブル・グローバルラリークロスチャレンジ(GRC)参戦マシン「WRX STI」の開発のため、埼玉県にある本庄サーキットでテスト走行を実施した。
レッドブル・グローバルラリークロスチャレンジ(GRC)は、比較的短い距離の中に舗装路、ダート、ジャンプなどを織り交ぜた周回コースで争われるラリークロスのシリーズ戦。2016年、スバルオブアメリカはスバルラリーチームUSAよりWRX STIで参戦したものの、ライバルのフォルクスワーゲン、フォード、本田技研工業らの後塵を拝してしまった。
この結果を受け、本国たる日本のSTIが2016年までの技術支援にとどまらず、2017年の戦いに向けたマシンの開発を担当することとなり、その手始めとして今回は昨シーズンにアメリカで開発されたマシンの特性を確認するためのテスト走行を行なった。テストに使用された「スバル WRX STI GRC」と名付けられたマシンは、昨シーズンにクリス・アトキンソン選手が使用したもので、エンジンは45φエアリストリクター付きのEJ20ターボ、5800rpmで580馬力を叩き出すモンスターマシンだ。
今回の取り組みの指揮を執る、STIの野村章GRCチームリーダーが最初に掲げた目標はローンチコントロールシステムの改善、エンジンのパワーバンドの特性変更、そしてコーナーリングスピード向上の3点。とりわけ、ローンチコントロールはラリークロスにおいて非常に重要なポイントだと語った。
テスト走行はGRCの出場経験を持つ新井敏弘選手が担当し、午前中はマシンの特性や挙動などを確認しながら数周の走行とピットインを繰り返し、午後からは主にローンチスタートのテストを行なった。テストで使用された本庄サーキットは全長約1.1kmのショートサーキットで、最も長い直線でも260mと短く、この区間を使った今回のローンチスタートのテストでは6速まで使用し、速度は150~160km/h程度だったという。ちなみにマシン自体の最高速は200km/h程度と、GRCのマシンのトップスピードはそれほど高くない。エンジン特性としては低回転域を重視するものの、新井選手の主戦場であるラリーのマシンよりもパワーバンドを広くとる必要があるとのことだ。
また、コースサイドから見る限りその足まわりは非常にしなやかで、ロールの量も非常に大きいのが特長だ。フェンダーなどマシンの外観に使われている素材も、軽さを求めながらドライカーボンなどのように衝撃で割れてしまう素材ではなく、手で押すだけで変形し、復元性も高い柔らかい素材が使われている。マシン同士の接触が多いGRCならではのボディなのだ。
今回はマシンの素性を知り、今後の課題を出すことにとどまったが、1日の走行を終えてSTIの野村章GRCチームリーダー、新井敏弘選手ともに「まだまだ伸びしろがあり、STIの手による開発でかなり速いマシンに生まれ変わるだろう」と口をそろえた。STIの開発による2017年仕様のマシンは3月末ごろの完成予定で、テスト走行まで含めると残念ながら4月に開催予定のシリーズ初戦には間に合わず、第2戦からの投入となる予定。
WRC(世界ラリー選手権)を撤退して今なおラリーイメージを強く持つファンの多いスバルにおいて、日本での開催はないとはいえ、このレッドブル・グローバルラリークロスチャレンジの参戦、そして2017年の反撃はスバルファン期待のカテゴリーとなると同時に、そのエンターテイメント性の高いラリークロスの日本ブランド本格参戦は、多くのモータースポーツファンにとっても注目のカテゴリーとなるであろう。