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パナソニック、車載事業の2021年度売上目標を2兆5000億円に

伊藤社長「自動車部品メーカーのトップ10入りを果たす」

2017年5月30日 発表

自動運転コミューターの実験風景

 パナソニックは5月30日、アナリストを対象にした「Panasonic IR Day 2017」を開催。パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の伊藤好生社長が、パナソニックの車載事業などについて説明した。

 伊藤社長は「オートモーティブでは、IVI、eコックピット、ADAS、電動化による重点4カテゴリーでの受注構成比を拡大。エナジーでは、車載に対してリソースを集中。インダストリアル領域では、車載・産業向けデバイスを拡大する」とし、「これまでの大規模先行投資のフェーズから、収益を伴う成長を目指すフェーズに入ってきた。事業構造の変革を完遂し、成長に向けた反転攻勢に打って出る」と、車載事業の成長に意欲をみせた。

 2018年度の売上高は3兆900億円、営業利益は1600億円を計画。そのうち、車載事業では2兆円の売上高を計画。「2兆円に対しては、すでに93%の受注率になっており、手のうちに入っている数字だといえる。2021年度には2兆5000億円を目標にし、自動車部品メーカーのトップ10入りを果たす」と意欲をみせた。車載事業は、2016年度から2018年度の年平均成長率は24%増と高い成長を見込んでいる。

 伊藤社長は、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の2016年度実績について説明。「売上高は前年比5.4%減の2兆5612億円と減収だったが、為替影響を除く実質ベースでは増収。一方で、営業利益は増益となっているが、米国電池工場への先行投資もあり、実力ベースでは減益となっている。実質売上げや営業利益は目標を達成。売上げ成長に向けた先行開発、積極投資を行なった。車載を成長分野に定め、成長に向けて着実に体制を強化した1年だった」と総括。

 テスラと共同で進めている米ネバダ州の車載電池工場の稼働、中国・大連の車載電池工場建設などの積極投資を図ったほか、中国・北京での電動コンプレッサ合弁会社の設立、2015年に出資したフィコサへの追加出資による連結子会社化、車載ソフト開発のオープンシナジーの買収、ADASなどに向けての開発を進めるために車両試験場を横浜に設置するなどの取り組みを通じて、「成長への仕込みを行なった」と振り返った。

 一方、2017年度については、「オートモーティブ、エナジー、インダストリアルのすべてにおいて、収益を伴った成長を見込み、すべての開示事業単位で増収増益を計画している。成長投資を継続するとともに、固定費の増加を増販でカバーする」と発言。売上高で2兆6600億円、営業利益で930億円を目指すと述べた。

 2017年度の設備投資については、とくに車載分野への投資を加速するとして、エナジーでは、日本、米国、中国に車載電池における設備投資を加速。インダストリアルでは、xEV用フィルムコンデンサ、オートモーティブではインフォテインメントへの設備投資を進める。「車載需要を確実に捕捉すべく、前倒しを含めた積極投資を行なう」と語った。

 また、インフォテインメントシステムや車載エレクトロニクスでは、ソフトの再利用率の向上、プラットフォーム化の推進を進める一方で、社内外のリソースを活用する姿勢をみせた。

 伊藤社長は、車載事業については「快適」「安全」「環境」の3つの観点から事業を推進するとしており、「全世界規模で見た自動車産業は、安定的な成長が見込める。運転者負荷の軽減を実現する『快適』、高齢者などの交通事故の削減につなげる『安全』、環境負荷の低減による『環境』の観点から、コネクティビティ、自動運転、xEV(HEV、PHEV、BEV)が拡大。電子化、電動化が進み、パナソニックの有効需要が伸張し、年平均成長率は7%増となる」と予測した。

 快適領域では、2016年度の5400億円の売上高を、2018年度には6300億円に拡大。車載および民生用デジタルAV技術を生かして、システム展開やADAS連携を強化するという。とくに、eコックピットシステムでは、2017年度にジャガー・ランドローバーの「Range Rover Velar」に、Touch Pro Duoとヘッドアップディスプレイを納入。「2017年度には、新規システム、IVIコックピットシステムの構成比を60%にまで高める。新規のシステム納入が増加しており、システム受注が順調に推移している」という。

 安全領域では、3700億円から6200億円へと大幅に成長。センシングや画像処理技術を活用した取り組みを加速する。今後は、カメラやソナーによるデバイス単体での提案に留まらず、電子ミラー用カメラシステム、全周囲カメラシステムなど、デバイスと画像処理技術を組み合わせた新たなシステム提案を進め、ADAS事業を推進。自動駐車システムや自動運転などにシステム事業を拡大していくことになるという。同社では、自動運転コミューターの実験を行なっていることも明らかにしている。

 環境領域では、4000億円から7500億円へと拡大。高度な電池技術や電源技術を軸に、供給能力の強化と受注車種拡大に取り組むという。テスラとの連携をはじめとして、自動車メーカーとの連携を緊密化。2017年7月からは、テスラの「モデル3」向け車載電池の提供を開始することも明らかにした。また、「2017年3月時点で、50車種に納入しており、さらに18車種で受注している」という。角形電池では、兵庫県洲本の生産拠点においてラインを増強するとともに、中国・大連で量産を開始。円筒形では、米ネバダ州のテスラ ギガファクトリーにおいて、車種増産にあわせて能力を増強する。

 一方、連結子会社化したフィコサの協業を加速。自動車メーカーに対して、電子インナーミラーや通信モジュールの納入を開始したほか、今後、電子サイドミラーやカメラ洗浄システム、電子シフターなどの提案活動を加速する考えを示した。

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