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アディエント、レベル3~4の自動運転システム搭載車向けシートコンセプト「AI17」日本初公開

「AI17」開発責任者のリチャード・チャング氏がプレゼンテーション

2017年7月18日 開催

レベル3~4の自動運転システム搭載車に向けたシートコンセプト「AI17」を日本初公開
アディエント イノベーション&デザイン担当のリチャード・チャング副社長

 アディエントは7月18日、レベル3~4の自動運転システム搭載車に向けたシートコンセプト「AI17」を日本初公開した。同日、AI17の開発責任者であるイノベーション&デザイン担当 リチャード・チャング副社長が、日本の開発拠点であるアディエント ジャパンテクニカルセンター(神奈川県横浜市金沢区)でプレゼンテーションを実施したので、その模様をお伝えする。

 アディエントは2016年10月(現地時間)に米ジョンソンコントロールズインターナショナルから分社化された、自動車用のシートとシート部品において世界最大を誇るグローバルサプライヤー。世界33カ国にある230カ所以上の拠点で製造および組み立てを行なっており、世界中のクルマの3台に1台の割合で自動車シートを供給しているという。

 今回公開されたAI17は1月のデトロイトショーで発表されたもので、レベル3~4の自動運転システム搭載車を想定して開発されたシートコンセプト。このAI17についてプレゼンテーションを行なったチャング副社長は、はじめに「ドイツでは2030年以降、内燃機関車(ディーゼル含む)がほとんどなくなる」「中国では2025年までに自動車の20%が自動化され、2030年までに中国内で作られる自動車のうち、電気自動車が市場の40%を占めることになる」という予測を報告するとともに、レベル3の自動運転システム搭載車が導入されるとする2020年~2030年はカーシェアリングやライドシェアサービス「Uber(ウーバー)」などのニーズが増え、マイカーが減少する傾向に、レベル4(2030年~2040年)になると自動運転システムを搭載するタクシーや、BMWが展開するカーシェアリングサービス「DriveNow(ドライブナウ)」といった自動車メーカーが直接提案するサービスが増え、マイカーがさらに減少するという見解を示した。

 こうしたなか、レベル3~4の自動運転システムを搭載するモデルのインテリアがどのようなものであるべきかについて、チャング副社長は「ホテルのラウンジのようにリラックスできる場所」「オフィスやミーティングルームのように会話ができる」「家族や友人とさまざまな経験ができる場所」「オンデマンドでフレキシビリティのあるサービスが必要」と、多くの価値やサービスをユーザーに提供する必要があると説く。

 AI17はメルセデス・ベンツ「Sクラス」程度の居住空間を備えるモデルを想定してデザインされたという。その特徴だが、まずフロントシートは回転式となり、最大70度まで旋回して乗員を出迎え、そして送り出す機能を有する。また、車体外側のアームレストに収まるコントロールモジュールにより、通常の運転姿勢となる「DRIVE」モード、リクライニングして快適性を高める「RELAX」モード、乗降時にシートが回転することで乗降性を高める「ENTER/EXIT」モード、フロントシート双方が内側に15度旋回して前席に座った人同士が会話を楽しめる「CONVERSE」モードという4つのシートポジションの選択を可能にした。

 この「CONVERSE」モード利用時の旋回する角度については、「15度以上旋回するとドアトリムにぶつかってしまう」「15度以上になると足下のスペースが狭まる」という2点の観点とともに、「ダミー人形を使ったシミュレーションを行なったところ、18度まで旋回してもシートベルトがしっかり機能することが分かったが、足下の快適性を考慮して15度になった」(チャング副社長)と説明する。

チャング副社長が乗り込んだところ。フロントシートは最大70度まで自動で旋回
車体外側のアームレストにコントロールモジュールが収まる。タッチパネルで細かなシートポジションの調整が行なえるとともに、「DRIVE」モード、「RELAX」モード、「ENTER/EXIT」モード、「CONVERSE」モードという4つのシートポジションの選択が可能になっている
「RELAX」モードにしたところ
小型テーブルも用意される
ヘッドレストは前後左右の4方向に調整可能
「CONVERSE」モードを選択すると、左右のフロントシートがともに内側に15度旋回し、乗員同士がより会話を楽しめるようになる

 一方、リアシートは最大45度のリクライニングとともにオットマン機能を備えて快適性を高めた。また、後席中央のセンタークッションはカップホルダーとして利用できるほか、せり上がることでアームレストとして使うことも可能。さらに後席乗員同士のプライバシーを守る、出し入れ可能なシェードなどが用意されている。

 また、AI17で採用される前後シートの構造はスリムで軽量なものとしており、一般的なシートに比べて前後とも約15cmのレッグスペースを増加させることができること、シート骨格に軽量で柔軟なパネルを用いたことで重量を30%削減できたことが報告された。

後席座面を跳ね上げることで、大きな荷物などを積むことができる
リアシートは最大45度のリクライニングとともにオットマン機能を備えるとともに、後席乗員同士のプライバシーを守る出し入れ可能なシェードが用意される

 なお、9月14日(現地時間)に開幕するフランクフルトショーでは、前後席が対面するモードを備えたAI17の進化版が登場するとのこと。また、今回のAI17はSクラスサイズをベースにデザインされたとのことだが、将来的に自動運転化が進むとトランスミッションやサイドブレーキのレバー類が不要になるとしており、現在販売されるモデルよりもセンターコンソールのサイズが大幅に小さくなるとの予測が述べられた。そのため、メルセデス・ベンツのモデルでいうと「Cクラス」程度のサイズでもAI17で採用された機能を使うことができるのではないかとチャング副社長はコメントしている。

ドイツや中国における将来の予測
自動運転のレベルによって車内での行動が変化する
自動運転のレベルが高まるにつれてマイカー所有率は下がるという
レベル3~4の自動運転システムを搭載するモデルのインテリアがどのようなものであるべきか
AI17のインテリアは「新時代のプレミアム」をうたう
シートが旋回して乗員を迎える
後席の座面を跳ね上がることで収納スペースとして利用することも可能
「RELAX」モード
「CONVERSE」モード
リアシートは最大45度のリクライニングが可能なほか、オットマン機能などで快適性を高めている
後席乗員同士のプライバシーを守る出し入れ可能なシェードを用意
フロントシートのアームレスト内にコントロールモジュールを設定
PC利用時や食事の際に活用できる小型テーブル
後席のセンタークッションはアームレストとしても利用できる
カップホルダーも備わる
シート骨格に軽量で柔軟なパネルを用いたことで、従来シート比で重量を30%削減できたという
AI17のまとめ