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アディエント、日産「セレナ」のシートに採用された最先端技術説明会
独自のシートアレンジと軽量化技術で日産の「2017年グローバル・イノベーション賞」「2017年日産品質賞」受賞
2017年8月30日 20:19
- 2017年8月29日 開催
アディエントは8月29日、日産自動車の「2017年グローバル・イノベーション賞」「2017年日産品質賞-日本地域」をダブル受賞したと発表。合わせて日産「セレナ」に採用された最先端技術についての説明会が神奈川県横浜市金沢区にあるアディエント ジャパン・テクニカル・センターで開催された。
アディエントは、2016年10月31日にジョンソンコントロールズから分社化した“世界中のクルマの3台に1台はアディエントのシートを搭載している”という、自動車用のシートとシート部品における世界最大のサプライヤー。
今回、2017年日産品質賞-日本地域を受賞した理由については、品質レベルを向上させるためにグローバル製造標準システム「Adient Global Manufacturing Standard System(AMS)」の導入や、ティアーNサプライヤーとの4M(人、機械、材料、方法)管理、継続的な品質向上を挙げている。
日産品質賞は、「車体」「シャシー」「エレクトロニクス」「インテリア&エクステリア」「エンジン&ドライブ・トレイン」「コンポーネント(要素関連)」の6つの部品カテゴリーと、北米、南米、欧州、ASEAN、中国、日本の6つの地域に分けられ、部品カテゴリーと地域ごとにトップスコアのサプライヤーを選定して表彰を行なう。
2014年~2016年にかけては、アディエントの前身となるジョンソンコントロールズオートモティブで同賞を受賞。2017年はアディエントとして初めての受賞となった。
2017年グローバル・イノベーション賞の受賞理由については、セレナに採用されたシートでアディエントの最先端技術による「シートベルト内蔵の2列目スライドシートの開発」「セカンドシートの使用状況によらない良好な乗降性とこれまでに無い位置でのアレンジを実現」が評価されたとしている。
ジャパン・テクニカル・センターで開催された技術説明会では、セレナに搭載された最先端技術について、アディエント チーフ・エンジニアの近藤郁夫氏から説明が行なわれた。
まず、セレナのフルモデルチェンジにあたって、セレナの主要ユーザーであるファミリー層が求める使い勝手のいい多彩なシートアレンジに加えて軽量化に注力。ジャパン・テクニカル・センターで開発した「高強度アルミ超ロングスライド構造」「シートベルトを2つ内蔵した2列目運転席側シート」「シートフレームに1.2GPa級高強度材(ウルトラハイテン材)採用」の3つの技術を、自動車用シートに世界で初めて採用した。
具体的には、2列目中央の席のシートベルトを車体ではなく2列目の運転席側シートに内蔵。このことでシートベルトで動きが制限されることなくシートを大きく移動させることが可能になった。また、シートベルトを2つ内蔵することになる2列目運転席側シートのフレームに1.2GPaのウルトラハイテン材を採用するとともに、シートレールに高強度アルミを採用して、事故の衝撃に耐えられるように強度を確保。レールの可動部にはベアリング機構を搭載して、転がり抵抗により操作力を軽減して多様なシートアレンジを簡単に操作できるようにしている。
また、高強度アルミ材の使用で約1kg、ウルトラハイテン材の使用で約7kgの軽量化も実現した。
これらの新技術により、2列目中央の席を990mm動かすことができる「スマートマルチセンターシート」が新たに開発され、16パターンのシートアレンジが可能になり、そのうち5パターンが他車にないシートアレンジとなったとしている。
また、アディエント VPコマーシャルアジアの内田博之氏が、アディエントが各メーカーに対して行なった取り組みなどを説明。
6月29日のマツダを皮切りに、三菱自動車工業、スズキ、トヨタ自動車、スバル、本田技研工業、日産の各メーカーを10tトラック5台で巡る展示会を実施。この展示会では製品に採用している技術を説明するため、現行の製品だけでなく、すでに基礎となるデータがあり、4年後、5年後を見据えて実用化に向けた開発を行なえるという製品も展示して、多くの参加者から好評を得たと話した。
内田氏は「テクニカルドリブンの会社として、先を見据えてCEO自ら製品開発とイノベーション、顧客満足を重要と考えている。5年先を見越した投資をして、技術をきちっと守っていく、あるいは新しいものを作ってお客様に貢献しようということを考えている」と同社の強みを語った。
アディエント チーフエンジニアの毛利隆之氏はジャパン・テクニカル・センターについてのプレゼンテーションを行ない、グローバルでの開発におけるジャパン・テクニカル・センターの位置づけや、設備などを紹介した。
ジャパン・テクニカル・センターでは、衝撃データなどを用いて実際の事故と同じ状況を再現する「スレッド」と呼ばれる設備によりシートの衝突安全試験を実施。「J-NCAP」だけでなく、「IIWPG」「E-NCAP」などにも対応する試験も行なうことができ、実車を使用するよりも開発のコストや期間の削減などにつなげることができると話していた。