SUPERタイヤ転がしGP日本一決定戦がついに開催
模型教室などサブイベント充実のFN第4戦


富士スピードウェイの本コース上で開催されたSUPERタイヤ転がしGP日本一決定戦。ドライダーはペースカーの先導によって入場

 かねてからフォーミュラ・ニッポン第4戦富士のサブイベントとして告知されていた「SUPERタイヤ転がしGP日本一決定戦」。ブリヂストンのF1用タイヤを“ドライダー”と呼ばれる競技者が6人1組となり、富士スピードウェイのメインストレートをリレー形式で転がしていく競技で、その突飛な競技スタイルからネットなどでは話題になっていた。

 フォーミュラ・ニッポン第4戦そのものの記事は別記事に掲載したので、本項ではSUPERタイヤ転がしGP日本一決定戦ほか、模型教室など充実した内容で行われたサブイベントの模様をピックアップしてお届けする。なお、イベントステージで行われた「FNエンジン開発秘話」については、別記事で掲載したのであわせてそちらもお読みいただきたい。

ついにタイヤ転がし日本一が決定
 フォーミュラ・ニッポン第4戦の決勝戦が行われる直前に開催されたのが、SUPERタイヤ転がしGP日本一決定戦。本来は予選が行われるはずだったが、エントリーが11チームのため、いきなり決勝戦から行われた。

 ピットウォークと同じ時間帯にあわせた11時30分からレースは開催され、ピットから多くの観客が見つめる中、ペースカーの先導によって各ドライダーが50mおきに配置についた。レースと同様のカウントダウンが行われた後、11チームのドライダーは一斉にスタート。タイヤを転がし、たすきをつなげ、みるみるうちに富士スピードウェイのストレートを走り抜けていく。見事トップでゴールしたのは「ToyotaのFN応援団with絵夢レーシング」。ゴールタイムは1分38秒067で、コースレコードを記録するとともに、日本レコードも樹立したわけだ(笑)。

 無事順位が確定したら表彰式。上位3チームに加え、レース解説を行ったブリヂストンのMS・MCタイヤ開発本部長浜島裕英氏の特別賞となる「浜賞」を受賞した「大谷涼応援団」が、実際のレースで使われているポディウムに。賞金や賞品の目録などが手渡されたほか、上位3チームには富士スピードウェイ特製のタイヤクッションが贈呈されていた。

 今回が第1回のため、50チームの募集を大幅に下回った参加となったが、富士スピードウェイの定番イベントとなっている「ママチャリGP」も当初は知名度が低かったとのことで、SUPERタイヤ転がしGPもいずれ大きなイベントに発展していくのかもしれない。ぜひ、機会があれば今後も続けてほしいイベントだ。

各参加者が付けていたゼッケン。富士スピードウェイのキャラクターである「チェカ」が旗を振っているSUPERタイヤ転がしGPに使われたブリヂストンのF1タイヤ。ちょうど雨の降り始めに開催されたため、各チームのタイヤ選択は、ドライ、レインと半々。グリーンラインがないことからハード側のタイヤのようだおよそ50mおきに配置についたドライダー。レギュレーションに従いヘルメットを被らなければならないが、右端の選手はなぜか覆面
タイヤを転がして、次のドライダーへタイヤとたすきを渡す。このたすきを渡す部分がタイム短縮のポイントに見えた
優勝したToyotaのFN応援団with絵夢レーシングのアンカーはよろこびを爆発。雨で路面はウェットとなっていたが、ドライタイヤのほうが速かった(?)
富士スピードウェイのポディウムで浜賞を手渡すブリヂストンの浜島裕英氏1位から3位の入賞者と、浜賞受賞者での記念写真。レーサーでも簡単には立てないポディウムから見下ろす富士スピードウェイの風景は強く印象に残るだろうちなみにこれが3位までのチームにプレゼントされた富士スピードウェイ特製タイヤクッション
モデリングファクトリーブーズの協力で開催された模型教室。講師はモデラーの深田紗規子さん

模型教室を初開催
 富士スピードウェイは、フォーミュラ・ニッポンにあわせて模型教室を初開催。中学3年生までを対象にしたイベントで、ピットビル2階にある報道陣向けのメディアルームの一角を使って開催された。

 このイベントは模型雑誌「モデルグラフィックス」誌上でカーモデリングの記事などを執筆するモデリングファクトリーブーズの協力を得て行われ、模型メーカーの青島文化教材社やタミヤが協賛している。模型教室の講師はモデラーの深田紗規子さんで、青島文化教材社の1/32スケール「頭文字(イニシャル)D 拓海86リトラクタブル仕様」(トヨタ スプリンタートレノ)を組み立てていく。

 テーブルには、模型や組み立てるための工具、特製ステッカーなどが並び、子供たちは深田さんの教えてに従って模型を組み立てていく。組み立ては、ニッパーなどを用いた本格的なもので、色塗りはペン型のマーカーを使って行われていた。手慣れた手つきでニッパーを扱う参加者は見かけず、初めて使う工具に戸惑いつつも、付き添いの保護者に手伝ってもらいながら組み立ては進んでいく。およそ2時間30分程度で、模型は完成。すべての参加者に、完成品とともにタミヤのミニ四駆が記念品として渡されていた。

メディアルームの一角を使って開催された模型教室。メディアルームのため、モニターが多数並ぶ講師の机に置かれていた完成見本。1/32のトレノを作って行く参加者のテーブルに置かれていた頭文字D 拓海86リトラクタブル仕様。テーブルには、80系トレノのカタログのコピーも置かれ、模型工作の気分を盛り上げてくれる
用意された特製ステッカー。富士スピードウェイのマークや、モデルグラフィックスのロゴが並ぶ珍しそうにニッパーに触れる参加者。「ニッパーには刃の面があります」と語る講師の深田さんの説明を真剣に聞くニッパーの刃が平らになっている部分をうまく使いながら、ランナーから部品を切り出していく
マーカーを使って、立体的に見えるように墨入れ作業。この作業をすることで模型が引き締まるおよそ2時間30分後に完成。満足そうな笑顔が印象的でしたピットビルの2階にあるため、ピットロードが見下ろせる。模型教室が終わったときにはF3レースが開催されており、コースへと向かうレーシングマシンを興味深く見つめていた
富士スピードウェイの一角にある、「モビリタ」。フォーミュラ・ニッポンの開催にあわせて無料体験会を開催

お勧めのトヨタ交通安全センター「モビリタ」体験会
 富士スピードウェイの一角にはトヨタが運営する交通安全センター「モビリタ」があるのをご存じの方も多いだろう。ここでは、フォーミュラ・ニッポン第4戦の開催にあわせて「トヨタ ドライバー コミュニケーション無料体験会」が行われていた。

 この体験会はモビリタの施設を使って、低μ(ミュー:摩擦係数)路でのABS(Anti lock Brake System)、VSC(Vehicle Stability Control)の確認体験を行えるというもの。インストラクターとの同乗体験のほか、実際に自分で運転することもでき(要運転免許)、どちらも約10分間の特別プログラムが組まれている。

 インストラクターとの同乗体験では、まずブレーキのロックを防ぐABSと横滑りを防ぐVSCをOFFにした状態で、凍結路面と同様のμを持つ路面での50km/hからの急ブレーキ、圧雪路面と同様のμを持つ路面での急ハンドル・急加速を行い車の動きを体験。その後ABSとVSCをONにして同様に走り、違いを体感するというもの。実際、ABSとVSCをオフをOFFにして疑似凍結路面で急ブレーキをかけてもステアリングは効かずそのまま真っすぐ滑っていき、疑似圧雪路面で荒い運転をするとスピンしてしまう。

 次に両機能をONにした状態で、同様の操作を行うと、確かに疑似凍結路面ではステアリング操作に車は反応し、先ほどよりも短い距離で停止。疑似圧雪路面でもスピンすることなく走り抜けていった。

 そのほか、最大バンク角35度のバンクコースで右に傾いた状態で一旦停止して、いかに助手席側のドアを開けるのが難しいかを体験することもできた。インストラクターによると、斜面の山側のドアはとても重くなるため、ロックされているものだと勘違いしやすく、いざというときにパニックになりやすいと言う。こういったことを体験することで、いざというときへの備えとなり、緊急時の対応に差が出てくる。ちなみにこのようなときには、谷側のドア(右バンク状態では運転席のドア)が開けやすく、そちらを開けるのが脱出しやすいそうだ。

 実際に自分で運転するプログラムでは、疑似凍結路面での急ブレーキと、疑似圧雪路面での急ハンドル・急加速を体験できるほか、ゴーグルをかけて疑似泥酔状態でのスラローム走行が体験できる。運転してみたところ、確かにABSやVSCがONのときのほうが車が安定しており、安心して運転できた。

 モビリタによると、このプログラムはイベント開催時の特別プログラムとのことで、本来のプログラムの短縮版。有料ではあるものの、1日たっぷり使っての総合トレーニングや、半日のプログラムが用意されており、モビリタのWebページから申し込むことができる。次回の無料体験会は、8月2日に富士スピードウェイで開催されるスーパー耐久の第5戦を予定しており、詳しくはモビリタのWebページを参照してほしいとのこと。

モビリタへは、メインスタンドから歩いていくと30分以上かかってしまうため、場内を巡る無料シャトルバスの利用が便利用意されているプログラムは、インストラクターとの同乗体験と、実際に自分で運転するコース。自分で運転するコースは運転免許証の提示が必要だ受付のスタッフに名前を告げて順番を待つ。この日は雨だったためか、待ち時間はほとんどなかった
モビリタで使われている車は、トヨタのマークX。マークXが体験車両として使われているのは、FRのため挙動が分かりやすいからとのことマークXのインパネ。スピードメーターの左下に見えるのが、ABSやVSCの警告灯。警告灯が光っているのは、両機能をOFFにしているためだ
マークXの室内で目立つ変化点はセンターコンソール部に設けられた特別なスイッチ。このスイッチで普段はOFFにすることのできないABSに加え、VSCのコントールを行う同乗体験走行時にさまざまなことを解説していただいたインストラクターの藤田孝博氏。正確なステアリングさばきは、横で見ていて驚くほどで、スライド時のカウンターステアなどは結構勉強になる
疑似凍結路面での50km/hからの急ブレーキ。ABS&VSC OFFではステアリングを切っても、車は曲がらずそのまま滑って行く疑似凍結路面を車内から見たところ。色の変わっている部分に特別な舗装が施してある。黄色いパイロンの個所で急ブレーキを行った
色の若干変化している路面が疑似圧雪路面。ABS&VSC OFFでは、簡単にスピンしてしまう
泥酔運転体験時には特別なゴーグルを着ける。このゴーグルを着けた状態でスラローム走行を行うゴーグルから見える風景。メーターの表示がゆがんでいるのが分かるだろうか最大斜度35度のバンク。このバンクでいったん停車し、ドアを開ける際の重さを体感する
同乗走行は子供も体験でき、そのためのジュニアシートを用意インストラクターの藤田氏は、「緊急時に必ず役に立つ体験なので、ぜひ一度モビリタで車の運転を体感してみてください」とのこと

 そのほか、フォーミュラ・ニッポン第4戦富士では、レーサーや監督と身近に接することのできる「ピットウォーク」、レースクィーンや富士スピードウェイのイメージガール「クレインズ」が登場するステージイベント、フォーミュラ・ニッポンでは初開催となる「サーキットサファリ」、決勝後に本コースを自分の愛車で走れる「特別体験走行」など数多くのサブイベントが開催されていた。

 レースはあいにくの雨となったものの、富士スピードウェイを訪れた観客は思い思いにそれらのサブイベントをレースとともに楽しんでいたようだ。

決勝前日の予選日に開催された「キッズウォーク」。子供とその保護者限定のイベントで、子供がより安心してピットウォークを楽しめるようにとの配慮アンドレ・ロッテラー選手(左)、大嶋和也選手(右)と記念写真。2選手とも翌日の決勝では大活躍をした小暮卓史選手と握手
こちらは決勝日に開催されたピットウォーク。11時30分から開始されたが、この時刻から雨が降り始めたNAKAJIMA RACINGの中嶋悟監督。サインを求めて多くの人が列をなしていたル・マン24時間レースで、日本人初の総合優勝を果たした関谷正徳氏。SUPER GTでは、TEAM PETRONAS TOM'Sの監督を務める。ピットウォークではレーサーはもちろん、監督も積極的にサインに応えていたのが印象的
グランドスタンド裏の特設ステージでは、「ギャルオンステージ」と題したレースクィーンの紹介イベントが。SUPER GTでも同種のショーは行われているが、この日は雨のせいか観客が少なく、レースクィーンファンも余裕を持って撮影できていたようだった特設ステージでのショーを皮切りに、表彰式のお手伝いなど1日大忙しのクレインズ。右から、秋葉ミキさん、布施曜子さん、ますあやさん
フォーミュラ・ニッポンで初開催となったサーキットサファリ。練習走行を行うレーシングマシンを間近で見られるのはもちろん、星野一義氏、中嶋悟氏、関谷正徳氏がバスガイドとして各バスに分乗決勝終了後に行われた特別体験走行。隊列になって走るのだが、車間を広く取れるためか、はた目で見ていても100km/h以上出している区間もあったようだ。料金は別途5000円ほどかかるものの、2周の走行が可能

 

(編集部:谷川 潔)
2009年 7月 1日