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F1日本グランプリ直前企画
奥川浩彦の「F1流し撮り講座 2009」

第2回 流し撮りなどレース撮影テクニック


 前回はサーキットでのレース撮影に必要な機材などを紹介したが、第2回となる今回は流し撮りなど、実際の撮影のノウハウを詳しく紹介していく。

流し撮りのポイントはシャッター速度
レース写真を撮ろうと思った人が目指すのは“流し撮り”だろう。カメラとレンズを振って、被写体を追いかけながらシャッターを切るわけだが、この流し撮りでポイントとなるのが「シャッター速度」だ。実際にシャッター速度を変えながら撮った写真を見てみよう。なお、レンズの焦点距離に関しては、実焦点距離と筆者がEOS 20D/40Dを使っているため、35mmフィルム換算の焦点距離を○○mm相当として記載しておくので参考にしてほしい。

 同じ場所でシャッター速度を1/1000秒、1/500秒、1/250秒、1/125秒、1/60秒と変えて撮ってみた。背景の看板、スポンジバリア、マシンのタイヤ・ホイール、コースの路面、手前のエスケープゾーンなどを各写真で比較して見てほしい。シャッター速度を遅くすると背景が流れ、タイヤも回転し、動きの迫力が増すことが確認できる。なら遅いシャッター速度で撮ればよいかと言うと、遅くすれば当然ブレる率も高くなりボツ写真も増える。
200mm(320mm相当) 1/1000秒 F3.5。撮影場所は鈴鹿のS字手前。ホイールまで止まって見え、停止しているように見える 200mm(320mm相当) 1/500秒 F5。少し看板が流れ始めたが、ホイールのメッシュ部分がまだ見える 200mm(320mm相当) 1/250秒 F7.1。だいぶ動きが出てきた。看板、タイヤバリア、手前の地面、すべて流れてはいるがスピード感はない
200mm(320mm相当) 1/125秒 F10。やっと流し撮りというレベルになった。だが、この構図ではまだ迫力は感じられない 200mm(320mm相当) 1/60秒 F16。スピード感が出てきた。1/60秒の撮影は難易度が高い

 では実際にどれくらいのシャッター速度で撮ればよいのかを考えてみたい。静止物を撮る場合、一般的に「1/焦点距離」が手ブレしないシャッター速度と言われている。100mmの焦点距離(35mmフィルム換算)なら1/100秒、300mmなら1/300秒が目安となる。実際には腕のよい人なら100mmのレンズで1/30秒でも手ブレしないだろうし、撮影する姿勢などさまざまな条件で異なってくる。筆者は流し撮りのシャッター速度の基本を1/125秒にしている。これをベースに、条件や目的によって上げ下げして撮っている。

 筆者が初めてサーキット撮影したのは、1982年のGCシリーズ最終戦だった。昨年の「F1流し撮り講座 」でその日撮った写真を掲載しているが、マシンがまったくフレームに入っていないカットもあったと記憶している。最初は動くマシンを望遠レンズで追いかけるのは容易なことではない。そもそも焦点距離300mmのレンズで1/125秒で撮ることは、動かない静物撮影でも手ブレするのが普通だ。よってスローシャッターで動く被写体を撮ることが、それほど簡単にはいかないことが理解できるだろう。初心者であれば100枚撮って全部ボツでも気にすることはない。フィルム代がかからないデジカメならガンガン撮って慣れることが上達への近道だ。

 実際に筆者がどうやってシャッター速度を決めているかを説明していこう。まず、流し撮りにおけるブレについて考えてみたい。ブレを2つに分類してみた。一つは“失敗ブレ”(あえてそう呼んでみた)。これは単純にボツ写真で、シャッター幕が開いている間にマシンが上下左右にブレて何処も止まっていない写真だ。早い話が失敗写真ということだ。

 もう一つが“成功ブレ”。流し撮りで撮影した写真は、ヘルメットなど中心付近がブレないで芯として写り、前後はブレていることが多い。スローシャッターで撮影した写真は、特にその傾向が強い。この様に芯がブレないで、まわりがブレている写真をここでは成功ブレと呼んでみた。

30mm(48mm相当) 1/30秒 F11。富士スピードウェイのヘアピンで撮影。マシンのセンターに芯があり、前後はブレている

 まず次の連続写真を見てほしい。ほぼ一直線に走るマシンを横から連続で撮ったものだ。最初はマシンの右斜め前から撮っていて、真横になり、最後は右後方から撮っている。ここで気付いてほしいのは、ファインダーの中心にして、マシンは回転しているということだ。仮にヘルメットを常にファインダーの中心に捕捉しながら撮れたとしても、マシン全体は最初は顔を見せ、最後はお尻を見せるように回転している。掲載したのは連写したものだが、1枚の写真の撮影中にも同じことが起こっている。仮に1/125秒の間でも、わずかながらマシンはファインダーの中で回転運動をしている。結果としてマシンの中心部は止まっているが、フロントやリアのウィング付近は回転によってブレるのである。筆者はこれを成功ブレと考えている。

100mm(160mm相当) 1/160秒 F5。最初は斜め前から見え、真横へ 100mm(160mm相当) 1/160秒 F5.6 100mm(160mm相当) 1/160秒 F5.6
100mm(160mm相当) 1/160秒 F5.6。徐々に斜め後ろが見えてくる。ファインダーの中でマシンは回転している 100mm(160mm相当) 1/160秒 F5.6 100mm(160mm相当) 1/160秒 F5.6

 シャッター速度を1/125秒、1/60秒、1/30秒と遅くしていくと、失敗ブレも増えるが、成功ブレの量も増えていく。仮にマシンの一部(例えばヘルメット付近)は止まっていても、マシンの前後は回転により大きくブレることになる。

 この回転による成功ブレはマシンの走行ラインと撮影場所の影響を受ける。コーナーを走るマシンを撮影する場合、アウト側から撮るより、イン側から撮ったほうがマシンの前後のブレは減少する。もし100Rのコーナーの、イン側の旋回中心である100m離れた場所からマシンを見れば、常に真横から見られるはずだ。現実的に旋回の中心で撮影できることは、ほぼあり得ないと思うが、アウト側よりイン側から撮ったほうがマシンの回転量が少なくなり、全体(特に前後部分)のブレが小さい写真となる。

 実際にイン側とアウト側で撮った写真を比較してみよう。どちらもシャッター速度1/125秒で撮ったものだ。オレンジの48号車、立川祐路選手の写真はヘアピンのアウト側から撮影したものだ。真ん中付近のTACHIKAWAの文字とリアウイング翼端坂のLUMIXあたりの文字を比べるとブレ量が明らかに違う。次の白い31号車、ロイック・デュバル選手はヘアピンからスプーンへ向かうゆるやかな右コーナー(200R)をイン側から撮った写真で、車速は速くなっているが、フロントウイングのEPSONの文字やリアウイングの31の文字もそれほどブレていない。

200mm(320mm相当) 1/125秒 F16。コーナーアウト側から撮るとマシンの前後がブレやすい(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます) 200mm(320mm相当) 1/125秒 F11。イン側から撮影するとマシンの前後もブレにくい(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます)

 余談だが、2輪の場合はさらにイン側にメリットがある。アウト側はライダーが見えなくなることが多いが、イン側はライダーの姿勢をバッチリ撮影することができる。撮影ポイントの選び方の参考にしていただきたい。

200mm(320mm相当) 1/125秒 F20。2輪の場合はイン側から撮るとライダーがバッチリ写る

マシンの速度でシャッター速度を変えよう
 シャッター速度を条件によって上げ下げすると書いたが、その条件を順番に説明していこう。まずは「マシンの速度」。次の2枚の写真はどちらもシャッター速度1/250秒で撮ったものだ。最初の1枚はシャッター速度の比較用に撮った写真で、場所は鈴鹿のS字手前、もう1枚は130Rを抜けたところだ。1枚目より2枚目のほうが動きが感じられる。2枚は背景の違いもあるが、大きく異なるのはマシンの速度だ。130Rの方がマシンは速く走っている。

200mm(320mm相当) 1/250秒 F7.1。車速が遅いと流れない 200mm(320mm相当) 1/250秒 F16。車速が速いと流れる。慣れれば車速が速くても気にならない

 同じ場所、同じレンズでも被写体となるマシンの速度によって選択するシャッター速度は異なってくる。車速が速ければ、速いシャッター速度で撮っても背景は流れるが、車速が遅ければ止まった写真となる。慣れれば車速が速くてもマシンをフレームに収めることは難しくないが、遅いシャッター速度でマシンを正確に捕捉することは難しい。レース写真は遅いコーナーのほうが撮りやすいと言われることが多いが、筆者は少し慣れれば車速が速いほうが流し撮りはしやすいと思っている。

 マシンの速度とは○○km/hという速度ではなく、撮影ポイントとの距離による影響を考慮する必要がある。例えば、800km/hではるか上空を飛ぶ旅客機を地上から撮る場合と、20km/hの自転車が2〜3m横を通り抜けるのを撮影する場合を想像してほしい。旅客機はゆっくりとカメラを振って撮るが、自転車ははるかに速くカメラを振る必要がある。当然、背景はカメラを速く振ったほうが流れるのである。サーキットの場合、至近距離で撮れることは少ないが、距離によってマシン速度と背景のブレ量の関係が変化することは頭に入れておく必要がある。カメラを振る速度を表現するのは難しいが、速く振って撮る場合は、多少シャッター速度を上げても背景は流れることを覚えておこう。

広角レンズはスローシャッターで撮ろう
 次にシャッター速度を上げ下げする条件は「背景とレンズ」だ。同じ場所から撮っても、マシンがフレームいっぱい、あるいはフレームからはみ出す様な望遠レンズを選んだ場合と、比較的広角のレンズで背景をたっぷり入れ、マシンが小さめに写る場合でシャッター速度を変化させている。

 2枚の写真を比較してみよう。ツインリンクもてぎのダウンヒルストレートのエンドをほぼ同じ場所から撮ったもので、1枚は100mm(160mm相当)のレンズでシャッター速度1/160秒、もう1枚は標準ズームで38mm(60.8mm相当)、シャッター速度1/30秒で撮っている。望遠で撮って背景の写り込みが少ない場合はシャッター速度を速くしてもスピード感が出るが、広角でたっぷり背景を入れる場合はシャッター速度を遅くしないと背景が流れない。

100mm(160mm相当) 1/160秒 F8。1/160秒でもスピード感がある(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます) 38mm(60.8mm相当) 1/30秒 F13。1/30秒で撮影。広角で撮る場合はシャッター速度を遅くしよう(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます)

 次の2枚もほぼ同じ場所だが100mm(160mm相当)で撮ったものはシャッター速度1/125秒、200mm(320mm相当)で撮ったものはシャッター速度1/200秒を選択している。背景に写っている赤、緑のバリアにある白っぽい鋲が左右に流れているところに注目していただきたい。1/125秒のほうは隣の鋲まで届きそうなほど流れているが、1/160秒では半分くらい間隔が空いている。同じ解像度で見ると流れてる長さ(左右のピクセル数)は同じくらいだ。この流れる長さがある程度大きくないと動きを感じる絵にはならない。

100mm(160mm相当) 1/125秒 F11(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます) 200mm(320mm相当) 1/160秒 F16。望遠にすると速いシャッター速度でも流れて見える(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます)

 これは、一般的に言われる、望遠はブレやすく、広角はブレにくいことがそのまま反映されている。同じ場所で撮影しているので、カメラを振る速度は同じだが、広角ほど背景のブレは少なくなるのでスローシャッターで撮らないと流し撮りの効果は小さくなる。

 次の2枚も比べてみよう。シャッター速度は同じ1/125秒だが、マシン全体が写っているほうは、あまり動きが感じられない。マシンがアップになっているほうが、多少スピード感を感じないだろうか。実はこの2枚は同じ写真で、アップのほうは一部をトリミングしたものだ。背景がシンプルだとタイヤの回転などの効果で同じシャッター速度でも動きが感じられるようになる。上から見下ろす様な角度でアップの流し撮りをする場合は背景がシンプルになり、シャッター速度を上げて撮ってもスピード感が出る場合がある。
200mm(320mm相当) 1/125秒 F11。この写真ではスピード感がそれほどない 200mm(320mm相当) 1/125秒 F11。トリミングして背景をシンプルにすると、スピード感が出る

 最後は観賞サイズだ。これはそれほど差はないが、同じ写真をL判プリントなど小さなサイズで見るとスピード感がなくなることがある。大型の液晶モニターで見るとOKだったものをプリントすると“アレッ”っと感じたことはないだろうか。これも小さな観賞サイズにすると単純にブレ量が小さくなり、動きが感じられなくなるためだ。

いざサーキットへ
 デジタル一眼レフも用意した。レンズもOK。流し撮りの理屈は分かったような分からないような……。さぁ、いざサーキットへ。後は実戦で腕を磨くだけだ。サーキットのコース脇に陣取って、流し撮りに挑戦してみよう。

 何処で撮る?という話は、次回、鈴鹿サーキット撮影ポイントを紹介するので、そちらを参考にしていただきたい。まずは、基本的なカメラの設定を確認しよう。筆者の設定は

撮影モード:シャッター速度優先オート
連写モード:最高速
AFモード:コンティニュアスAF(AIサーボ)
AFポイント:センター1点(たまにほかのAFポイントも使用する)
ISO感度:ISO 100〜200(雨天のレースや、夜間のレースは高感度も使用)
ホワイトバランス:オート
ファイル形式/画質:JPEG/FINE

 ホワイトバランスは太陽光(晴天)で固定という人もいるし、JPEGでなくRAWで保存という人もいる。これはレース写真というより、デジタル写真に対する考え方なので、好みで選択していただければよいだろう。

 フォーカスや露出もマニュアルで撮る人もいるが、最初はある程度カメラ任せでスタートすればよいだろう。筆者自身はほとんどオートで撮っていて、モニターで確認して露出補正を少しマイナスにすることが多い。銀塩の時代は露出計やアスファルト路面から露出を決めたが、現在はSUPER GTマシンを正面から撮るときだけ、ヘッドライトの影響が出るのでマニュアル露出にすることがあるが、ほかのレースはほとんどオートで撮影している。

 設定を済ませたら撮影……その前に、野球やゴルフに素振りがあるように、まずはマシンが通るレコードラインに沿って素振りをしてみよう。流し撮りはある意味スポーツなのだ。ゴルフのスイングがテイクバックからフォロースルーまで大切なように、シャッターを押す前後も大切だ。カメラを振るスイングがシャッターを押す瞬間に影響する。

 ズームレンズの場合、最初はズームをやや広角側にして、マシンをファインダー内に小さく確実に写るように捕捉してみる。そこから徐々に望遠側にズームして、マシンを大きく捕らえてみよう。ズーム域にゆとりがあるなら、ヘルメットだけアップにしてカメラを振ってみよう。おそらく望遠になればなるほどフレーム内に収めるのが難しくなるはずだ。

 フレーミングは最初は少しゆとりがあったほうがよい。画面いっぱいにマシンをとらえると、マシンのフロントが切れたり、リアが切れるような写真が多くなる。デジカメは後からトリミングするのは簡単なので無理することはない。そこそこマシンを追従できる焦点距離で撮影を始めよう。

 シャッター速度は1/125秒が基本と書いたが、まずは1/250秒あたりで何枚か撮ってみる。シャッター速度のステップはカメラによって異なるが、そこから徐々に1/200、1/160、1/125くらいで撮り比べて感触を掴んでいただきたい。実際にシャッターを切ると、連写の場合はファンダーの消失時間でマシンを追従するのが少し難しくなる。だが、光学ファインダーを持つ一般的な一眼レフでは避けられない問題なので慣れるしかない。

 筆者が流し撮りで心掛けていることは、漠然とファインダーをのぞくのではなく、マシンの1点を見ることだ。筆者はAFポイントをセンター1点にして撮ることが多いので、フレーミングによってそのAF点をマシンのどこかにあわせて、その1点を見ている。上手な人は集中した位置に自在にピントの芯(ブレていない中心)を持ってくることができるらしいが、筆者にはそこまでの腕はない。

 ほかに心掛けているのは、流している途中でファインダーの中でマシンが上下左右に振れても、無理に修正せずにスムーズにスイングすること、後は両足のスタンスをシャッターを押す撮影ポイントに正対することを心掛けている。

 連写が単写かは意見の分かれるところだ。まずは撮影ポイントで連写が有効なケースとそうでないケースが考えられる。例えばコーナーのクリッピングポイントを真っ正面から撮りたい場合はシャッターチャンスは1回しかない。多少前後の位置でもOKなら連写が有効だろう。

 計算しやすいようにマシンが90km/hでコーナーを抜けるとしよう。秒速にすると25mなので、秒5コマならマシンは1コマの間に5m移動することになる。秒8コマでも約3mだ。狙った位置で撮りたいなら一写入魂だ。

 コーナーのイン側で流し撮りをする場合は連写がしやすくなる。ファインダー内のマシンの姿勢変化(回転)が小さいので使えるアングルが多いからだ。例えばツインリンクもてぎのS字1つ目のイン側(コース全体では外側)は約4秒、25枚ほど連写が可能だ。130Rを立ち上がったマシンがブレーキングをするあたりから撮影を開始して、S字1つ目を抜け芝生に沈んで行くまで撮ることができる。全部は多すぎるので、連写した中から5枚だけ並べてみよう。26枚連写した1、5、15、21、25枚目だ。この中で特に撮りたいポイントはブレーキングでブレーキローターが赤熱した5枚目の位置と、コーナーを抜けマシンの底が抜けて見える21枚目の2カ所だがその前後にも使えるものはある。

300mm(480mm相当) 1/160秒 F5。ブレーキングが始まったあたりから撮影開始、すでにブレーキローターは赤熱している。このアングルでも十分使える写真 300mm(480mm相当) 1/160秒 F5。ブレーキングエンド。撮りたいポイントはこのあたり 300mm(480mm相当) 1/160秒 F5。コーナー途中。絵としてわるくはない
300mm(480mm相当) 1/160秒 F5。マシンの底が抜けて見える位置。ここも撮りたいポイント 300mm(480mm相当) 1/160秒 F5.6。マシンが徐々に沈んで消えていく。後1枚連写して計26枚

 このコーナーで実際に連写と単写を比較してみた。結論からいうと、筆者の場合は連写のほうが使えるカットは多かった。単写でブレーキングエンドとコーナー立ち上がりの2カ所だけシャッターを切る場合はファインダーの消失がないのでマシンを追従しやすい。ここだと思った場所でシャッターを切ることができる。ところがその2枚が失敗なく撮れるかというと、残念ながら筆者の腕では難しい。

 逆に連写した場合はファインダーの消失で追従はしにくくなる。特に入り口はブレーキングで車速が急速に落ちるので、カメラを振りすぎてしまうことが多い。当然ボツカットも増えてしまう。成功率は連写のほうが低い感じだ。

 仮に単写したときの成功率を40%、連写で20%としよう。5台のマシンを撮った場合、単写は10枚撮って4枚成功、連写は125枚撮って25枚成功となる。連写はどの位置で成功するか分からないので4枚と25枚を単純に比較できないが、理論上は連写のほうが成功カットを多く撮れることになる。試した結果、筆者の場合は連写のほうが使えるカットは多かった。単写で確実に射止める腕があれば単写でよいのだろう。

 スプリントレースの撮影ではシャッターチャンスが限られている。お気に入りのマシンが数周でリタイヤすることだってある。筆者の腕では、成功枚数を増やすことが可能な連写が有効というのが結論だ。フィルム時代と違ってコストの問題はない。ボツカットは気にせず、バンバン撮ってその中からお気に入りが数枚撮れればよしとしよう。

 以上が一般的な横方向に走るマシンの流し撮りの基本的ノウハウだ。撮る前には理解できないことも多いだろう。一度撮影をして、自分で撮った写真を見ながら記事を読み直してもらうと理解できる部分もあるはずだ。幸いデジカメになって、撮った写真のデータを確認することができる。Exifの情報を見て自分で反省することも上達への近道だ。ちなみに今回掲載している拡大画像の多くはExif情報を消さないようにしている。トリミングをしているものもあるので、焦点距離は目安にしかならないが、シャッター速度など参考にしていただきたい。

正面から高速シャッターで写し止める
 レース写真と聞いて思い浮かぶのが流し撮りだろうと思い、流し撮りについて書いたが、初心者にもお勧めなのは正面からの撮影だ。長めの望遠レンズと撮影ポイントさえ見つければ、比較的容易に撮影できる。

 サーキットでコースを走るマシンを正面から撮れるのはヘアピンなどのコーナーが主となる。機材として必要なのは焦点距離が長めの望遠レンズだ。足りない場合はトリミングするか、縦位置で後方のマシンとのバランスを取るなど工夫すればよい。

 正面からマシンを写し止めるなら高速シャッターを使おう。目安としては1/1000秒から1/500秒くらいだ。撮影方法はシャッターポイントの少し手前からマシンをファインダーに入れ、小さくレンズを振って追従する感じだ。アウト・イン・アウトのラインやクリッピングポイントはドライバーによって異なるので微調整しながら撮ろう。特に雨の日のカントの付いたコーナーでは、水の溜まりやすいイン側を避ける走るマシンが多いのでレコードラインがドライと大幅にズレることがある。

 雨の日の注意点はもう一つある。レインタイヤは横溝があるのでタイヤの回転が分かりやすい。シャッター速度が速すぎるとタイヤが回転していないように見えてしまう。次の写真はシャッター速度1/500秒と1/200秒で撮ったものだ。タイヤの写り方に差があるのが分かるだろう。幸い雨の日は光量が落ちて高速シャッターを切りにくくなる。車速にもよるが、シャッター速度は1/500秒以下、なるべく遅めで切ればレインタイヤのブロックがはっきりと写りにくくなる。

300mm(480mm相当) 1/500秒 F4。1/500秒だとレインタイヤのブロックがギリギリ見える 300mm(480mm相当) 1/200秒 F8。1/200秒では見えなくなる

 F1を正面から高速シャッターで撮影する場合、筆者の好みの構図は、切り込んだ前輪が真っ直ぐこちらを向く位置と、マシンのボディーが真っ直ぐになる2つのポイントだ。連写性能の高いカメラなら連写で両方撮れるだろう。連写性能が低い場合は、好みの位置で一写入魂だ。

420mm(672mm相当) 1/640秒 F8。前輪が真っ直ぐ正対する位置 420mm(672mm相当) 1/640秒 F5.6。マシンが真っ直ぐ正対する位置

 撮影位置は低いほうがよい。好みではあるが、筆者はできるだけ低い位置で撮りたいと思っている。次の写真は鈴鹿のヘアピンで常設スタンドの最上段と再下段で撮り比べたものだ。大差ないとも言えるが、上から見下ろすより、低い位置で撮ったほうが迫力が出るのではないだろうか。ちなみに鈴鹿サーキットの観客席で一番低い位置で撮れるのは逆バンクの進入だろう。詳しくは連載の3回目以降で紹介するが、マシンの下が抜けて見える位置で撮ることができる。

300mm(480mm相当) 1/1000秒 F8。スタンド最上段から撮影 300mm(480mm相当) 1/1000秒 F8。最下段から撮影するほうが迫力がある?
ヘアピン最上段で撮影中。普段この位置から撮ることはない 420mm(672mm相当) 1/640秒 F5.6。逆バンク進入ではマシンの底が抜けて見える(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます)

 撮影ポイントは限られるが、正面からの撮影は、流し撮りと比べると難易度が低い。初心者にはお勧めだ。

正面でもスローシャッター
 ここからは応用編。正面とやや斜め方向からのスローシャッターでの撮影だ。まずシャッター速度を変えて正面から撮ったものを比べてみよう。1/500秒、1/250秒、1/160秒、最後にオマケで1/30秒を見てみよう。1/160秒まではパッと見ても大差ないだろう。細かく見るとリアウイングの文字がマシンが回り込む影響で徐々にブレていることが分かる。路面も少しずつ流れている。

300mm(480mm相当) 1/500秒 F5.6(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます) 300mm(480mm相当) 1/250秒 F11(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます)
300mm(480mm相当) 1/160秒 F13(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます) 300mm(480mm相当) 1/30秒 F22(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます)

 さすがに1/30秒は大きくブレて動きを感じる絵になっているが、筆者の腕では撮れたらラッキーというレベルで成功する確率は極めて低い。ヘルメット付近にピントの芯は残っているが、この手の絵は好みも分かれるところだ。1/160秒までの3枚は劇的に違いがあるとは言えない。レンズは300mmを使っているの焦点距離は480mm相当。当然シャッター速度を落とせばブレる確率は増えてくる。だとすれば成功率の高い1/500秒、1/1000秒で撮ればよいという結論になる。

 では次の3枚を見てみよう。ヘアピンへの進入、クリッピングポイント、立ち上がりを1/160秒で連写した中の3枚をそれぞれトリミングしている。これを1/500秒で撮影すると、進入、立ち上がりは動きのない写真になってしまう。正面からの撮影でシャッター速度を遅くすると、クリッピングポイントの前後もシャッターチャンスにすることができる。

300mm(480mm相当) 1/160秒 F6.3。1/160秒で撮ればヘアピン進入も絵になる 300mm(480mm相当) 1/160秒 F6.3。クリッピングポイント 300mm(480mm相当) 1/160秒 F6.3。立ち上がりも少しトリミングすると絵になる

 筆者は正面からの撮影のときは一脚を使用している。左右に大きくスイングする流し撮りは手持ちだが、弧を描くように少しだけ動かすときには一脚を使ったほうが撮影しやすい。

 正面からの撮影の基本は高速シャッターだと思うが、少し慣れたらシャッター速度を下げて撮影のバリエーションを増やしていただきたい。

絵作りは無限に広がる
 レース写真の基本は流し撮りと正面からの撮影だが、マシン後方からの撮影も絵になる。また、マシンを小さくフレーミングして景色を表現するなど、想像力があればさまざまな表現方法があるだろう。まずは基本を身に着け、そこからどんどん応用していただきたい。サーキットを歩き回って探せば撮影ポイントはいろいろなところに隠れている。天候や季節の変化も活かして撮れば絵作りは無限に広がるだろう。

300mm(480mm相当) 1/500秒 F16。8月末に開催されたSUPER GT第6戦で撮影。夕日が沈む直前に鈴鹿サーキットのスプーンコーナーで撮影。SUPER GTマシンはフォーミュラマシンより後ろ姿が絵になる(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます) 200mm(320mm相当) 1/80秒 F9。同じレースでヘアピンの立ち上がりを斜め後ろから撮影。ヘアピンの進入から立ち上がりまでシャッター速度1/80秒で連写した1枚(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます)
100mm(160mm相当) 1/160秒 F8。フォーミュラ・ニッポン第4戦富士。雨のレースで水煙を意識してマシンを左端に小さくフレーミング。雨の撮影は辛いが、雨でしか撮れない絵がある(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます) 300mm(480mm相当) 1/1000秒 F4。同じ場所でレンズを300mmに代えて撮影。600mm相当くらいのレンズがあればマシンのアップも撮れそうだが、焦点距離の足りないレンズを構図の工夫でカバーしてみた(クリックすると1920×1080ピクセルの画像が開きます)

 筆者自身がモータースポーツを撮影するきっかけになったのは、雑誌に掲載されたモノクロ2ページ程度の「レース写真の撮り方」を読んだことだった。「どうせ見に行くなら、写真を撮ってみよう」と思いカメラを買ってから30年近く経過した。なかなか上手にならないが、目や運動神経の衰えをカメラ技術の進歩がカバーしてくれている。レース写真は長く楽しめる趣味になるので、この記事が私のようにレース写真を撮るきっかけや、初心者の方の参考になれば幸いだ。次回はF1日本グランプリが開催される鈴鹿サーキットの撮影ポイントを具体的に紹介しよう。

(奥川浩彦、著者撮影:奥川彰吾)

2009年 9月 25日


 



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