「モータースポーツジャパン2009」リポート
F1やSUPER GTのマシン、Zのロードスターも先行展示

トヨタのF1カーもデモ走行したモータースポーツジャパン2009

2009年10月10日、11日開催



 10月10日、11日、東京・お台場の特設会場で「モータースポーツジャパン2009」が開催された。今年で4回目を迎えるモータースポーツジャパンは、クルマによるスポーツの感動、素晴らしさ、運転の楽しさを伝えることをコンセプトとし、普段接する機会の少ないモータースポーツの楽しさを体感してもらおうというもの。

 各自動車メーカーやさまざまなカテゴリーで活躍している車両展示ブースをはじめ、レース車両が実際に走る走行エリア、エコカー専門の展示ブース、カート走行エリアなどが設けられ、来場者がまる1日楽しめる企画が多数用意された。ここでは各ブースでのイベントや、走行エリアにおけるデモ走行の模様をお伝えしたい。

車両展示やブース出展も多数
 無料で入れる展示エリアには多くのブースが出展され、盛り上がりを見せていた。1965年にF1で初優勝したホンダRA272から、アイルトン・セナ、アラン・プロストが駆ったマクラーレンMP4/5・ホンダ、そしてトヨタF1マシンの2008年モデルTF108などが展示されたほか、F3マシンやGTマシン、ル・マンカー、WRCマシンなどジャンルを超えたモータースポーツ車両がズラリと勢揃い。さらにエコカーワールドと題して、ホンダ「FCXクラリティ」や日産「エクストレイル・クリーンディーゼル」、マツダ「プレマシー ハイドロジェンREハイブリッド」などを展示。これらは実際にパレードランを行ったほか、一部車両は同乗走行も行われていた。

ホンダRA272マクラーレンMP4/5・ホンダ2006年SUPER GT優勝のOPEN INTERFACE TOM'S SC430(左)と今シーズンもGT300クラスに参戦中のARTA Garaiya
ル・マン24時間に参戦した日産R85V(手前)、トヨタTS010(中)、マツダ787B(奥)同じくル・マン参戦の日産スカイラインGT-R LMやR390GT1も展示IRLインディカーのパノスGフォース・トヨタ(右)とF3のダラーラF307・トムス-トヨタ(左)
ラリーカーも勢ぞろい。スバルが初めてWRCに参戦したレガシィからインプレッサのWRカー(写真左)、1993年から2年連続シリーズ優勝したトヨタ・セリカST185、1970年サファリラリー優勝車の日産ブルーバード510(写真右)一部展示車は公道を使ったパレードランも行った。公道を走るGTマシンの姿は貴重だ

 トヨタやホンダ、日産、スバルなどのブースでは、F1の本物のパーツを実際に触って、その軽さを実感できるコーナーや、GTマシンのタイヤ交換を経験できるイベントなど、まさに肌でモータースポーツを体感できる催しが多数催された。日産ブースでは、10月に発売を予定している「フェアレディZ ロードスター」を展示、ルーフ開閉のデモンストレーションも行われた。また、スバルのブースには今シーズンよりSUPER GTに参戦した「レガシィB4」も展示され、注目を集めていた。

トヨタブースでは実走行も行ったF1マシンの整備が行われたほか、本物のF1のパーツを手に取って、その軽さを体感できるコーナーや、F1マシンに座ってのシミュレーター体験などが催された
ホンダブースにはフォーミュラ・ニッポンの今シーズンのチャンピオンマシンやGTマシンなどを展示。子供向けに実際にマシンに搭乗できる催しを実施していた
日産ブースではフェアレディZ ロードスターを先行展示
インテリア。シート後方にはロールバー、シフトレバーの後方にはルーフの開閉スイッチがある
ルーフのクローズ状態。ルーフはソフトトップでボディー色と同系統の色になっていたルーフオープン時は、最初に自動でドアガラスが下がる
続いてルーフが前後から折りたたまれ、リアゲートが開き、ルーフが収納される
ホイールのデザインもこれまでのZと異なる。リアホイールは特に立体的なデザインになっている本物のGTマシンを使ってタイヤ交換をする体験会も催された
スバルブースにはGTマシンのレガシィB4が展示されたシビックTYPE R EUROも展示。同乗走行も行われた
エコカーワールドと題して燃料電池車やハイブリッドカー、電気自動車の展示が行われたプラグインステラは充電中
富士スピードウェイのブースではクレインズがTシャツ&ジーンズ姿で物販イベント終了近くには松田次生選手が訪れ販売をアシスト。ブース前には一気に人だかりができたモビリティランドのブースではミニカーなどグッズが多数販売されていた
日本自動車大学校のNATSもブースを出展しており、フェラーリをベースに学生が作った車両を展示。インプレッサのトランスミッションを利用し、縦置きのミッドシップレイアウトにしている
グランツーリスモの試遊台も設けられた本山哲選手プロデュースのレーシングカート体験試乗会も開催選手と近づけるのもモータースポーツジャパンの魅力

メインステージでもイベント目白押し
 メインステージでも、さまざまなドライバートークショーなどが開催されたが、中でも注目だったのが、中嶋悟氏とその長男、一貴選手、そして英F3参戦中の次男 大祐選手が集まった、親子3人によるトークショーだ。2世ドライバーということで、父親をプレッシャーに感じないかという質問があったが、悟氏は自分もレースの監督業があるので、あまり見にはいけないとのこと。一貴選手、大祐選手も、見に来てもかなり遠くから見ているので、プレッシャーを感じることはないと述べた。悟氏は「僕が見に行くといつもよい結果が出るので、わるくはない」と言う。ただし今シーズンは鈴鹿が初めての観戦だったので、「今年はだめだったけどね」と加えた。話題が鈴鹿でのF1日本GPに移ると、一貴選手は「鈴鹿はウェットでもとてもグリップがよくて、昔のF3の時のイメージで走ることができた」とフリー走行での好調を振り返った。結果的には「悔しい思いをしたが、自分にとってよい経験になった」と述べた。

 このほかにも、レーシングドライバーによるグランツーリスモを使った最速決定戦も開催された。自宅にグランツーリスモのステアリングなどのセットを設置しているという石浦宏明選手が序盤にトップタイムを出したが、松田次生選手が記録を更新。いよいよ全選手走り終え、松田選手の優勝で決まりかと思ったところで、緊急参戦のためすっかり忘れられていた塚越広大選手が「僕まだ走ってません」と申告。最後の最後で大逆転となり、塚越選手がこの日の最速男となった。

メインステージでもさまざまなイベントが開催された中嶋親子が揃ってのトークショーは初めての開催本山選手とピーポくんの警視庁交通安全キャンペーンも開催
外苑前の市街地コースをチョイスし、マシンはフェラーリを使って争われたグランツーリスモ大会。1周のラップタイプで競われたが、最後の最後で塚越選手が逆転優勝。タイムは1分51秒063。2位の松田選手とはコンマ36秒差だ
最後はドライバーサイン会も開催。ジャンルを超えた13名のドライバーによる直筆サイン。1枚の色紙にこれだけ多くのサインが記されるのもこのイベントならではだ
今回のモータースポーツジャパンでは4輪だけでなく2輪の催しも開催された。小林直樹選手によるトライアルパフォーマンスでは、観客の目と鼻の先でパフォーマンスが行われ、黒山の人だかりを作っていた

走行エリアではF1マシンもデモ走行
 このモータースポーツジャパン2009の魅力は、トヨタのF1マシンをはじめ、SUPER GT、フォーミュラ・ニッポン、ラリーなど各カテゴリーで活躍しているレース車両が実際に走る姿を見られるところだろう。展示エリアに囲まれるような形で走行エリアが設けられ、そこで各プロドライバーが本番のレース時とはまた違った形でレーシングカーの魅力を伝えていた。

同乗走行はワンメイクレースに出場しているマシンによるもので、ARTAブースに展示されていたシビックのほか、ロードスター(NR-A)やマーチも登場した。そのほか三菱「i-MiEV」や「スバル プラグインステラ」といったエコカー、2人乗りのカートへの同乗体験会も実施

 特に、ニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦し、飯田章選手がドライバーを務めたレクサス「LF-A」や、F1に出場している「Panasonic Toyota Racing」チームの小林可夢偉選手によるトヨタF1カーのデモ走行、「AT&T Williams」チームの中嶋一貴選手の登場、そしてエンジンに火が入っただけで実際には走らなかったのだが、1989年にF1世界選手権に出場したマクラーレンMP4/5の登場時は多くの注目が集まっていた。

 LF-Aのドライバーを務めた飯田章選手からは、LF-Aについて「V型10気筒エンジンを搭載したスーパースポーツカーで、それでいてエレガントさも秘めている。トヨタ2000GTの現代版のようなモデル」と紹介。さらに「はっきりしたことは言えないですけど、おそらく販売されるんじゃ?」と、市販化についても言及していた。

 また、可夢偉選手は「とりあえずレースシートをつかめるよう頑張りたい」と話し、一貴選手からは「アブダビGPはどうなるか分からないですが、まずはブラジルGPで少しでもいい結果を残したい」と、それぞれ今後の抱負を述べていた。

LF-A。ドライバーは飯田選手
トヨタF1カーによるデモ走行。ドライバーは可夢偉選手
可夢偉選手がドライバーを務め、一貴選手が登場。先日行われたF1日本GPの様子を振り返り、「金曜日は手応えがあったが、決勝は残念な結果だった。残りのレースを全力で戦いたい」と述べたマクラーレンMP4/5。ホンダV10エンジンのサウンドに観客は魅了されていた

 なお、Car Watchではモータースポーツジャパンの1日目となる10日に取材を行ったが、翌11日には、トヨタブースで可夢偉選手のブラジルGPへの参戦発表が行われた。これは、日本GP予選のクラッシュで左足を負傷したティモ・グロック選手が、その後の検査で脊髄を痛めていることが判明し、ブラジルGPの出走を見合わせたためとのことだ。

 そのほか、SUPER GTから2008 XANAVI NISMO GT-R(本山哲選手)と2006 ARTA NSX(伊沢拓也選手)、フォーミュラ・ニッポンからNAKAJIMA RACING FN09(ロイック・デュバル選手)によるデモ走行のほか、ラリーアートスペシャルランとしてランサー エボリューションX(田口勝彦選手)の00カー、SUBARU IMPREZAスペシャルランとしてインプレッサWRカーやインプレッサWRX PWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)、新型のインプレッサWRX STI spec C(いずれも新井敏弘選手)、今年のニュルブルクリンク24時間に出場したインプレッサSTI(吉田寿博選手)が次々に登場。ド派手なパフォーマンスに会場は大いに賑わった。

2輪のトライアルデモンストレーションは、当初小林直樹選手により行われる予定だったが、急遽ミシュランマンがバイクに乗ることに。司会者からは「本当に乗れるの?」と、不安な声が上がっていたが、写真のように素晴らしいパフォーマンスを行った。ミシュランマンの中の方が誰かは不明NAKAJIMA RACING FN09のデモランでは、本番さながらのピット作業の様子も紹介
本山選手が2008 XANAVI NISMO GT-RをドライブGTマシンのホイールスピンは間近で見ると迫力がある2006 ARTA NSXを運転したのは伊沢選手
ランサー エボリューションXの00カー。00カーとは競技車両が走る前にコースを走るオフィシャルカーのことを指す田口選手が運転する00カーを突如追ってきたインプレッサWRX PWRC。ドライバーは新井選手その後、2台は走行エリア中央で2つの弧を描くようにドリフト。内側で00カーが小さく回り、その外側をインプレッサWRX PWRCが回った。タイヤスモークがハンパじゃない
新型のインプレッサWRX STI spec Cでのデモラン。新井選手曰く「市販車でもこれだけ走ってくれるのは素晴らしい」とベタ褒め1998年型インプレッサWRカーニュルブルクリンク24時間に出場したインプレッサSTI。ドライバーは吉田選手
新井選手は「今年はPWRCに新しい車両で参戦し、手応えもいい。ぜひ表彰台に上がりたい」と述べていた吉田選手は「ニュルブルクリンク24時間に出場したインプレッサSTIは、誰もが手にできるモデルでどこまでレースで勝負できるか、ということが課せられている」と紹介

(瀬戸 学、瀬戸学)
2009年 10月 13日