ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「BLIZZAK REVO GZ」レビュー
REVOシリーズの最新作を雪のテストコースで試す


 9月1日に発売されたブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「BLIZZAK REVO GZ(ブリザック レボ ジーゼット)」。Car Watchでも昨年レビュー記事「最新スタッドレスタイヤで走ってみた」を掲載した「BLIZZAK REVO 2(レボツー)」の後継となるモデルであり、“極(ごく)レボ、誕生。”のキャッチコピーとともに販売が展開されているタイヤだ。

 そのREVO GZを北海道士別市にあるブリヂストンのテストコース「北海道プルービンググラウンド」で試乗してきたので、REVO GZの技術概要とともにここにお届けする。

BLIZZAK REVO GZ。レボ発泡ゴムGZのほか非対称形状、非対称パターンなどさまざまな技術が投入された最新スタッドレスタイヤ

発泡ゴムの強化に加え、タイヤ構造を進化させたREVO GZ
 スタッドレスタイヤに要求される性能は実に過酷だ。凍結路面や圧雪路面、さらさらの新雪路面や、溶け始めた雪が覆う湿雪路面など、日本の雪道はさまざまに変化している。基本的なスタッドレスタイヤのメカニズムとして、圧雪路面ではトレッドに刻まれたサイプ(溝)によって雪をかみ、低温でも硬くならないゴムと排水性に優れたコンパウンドで“滑り”の原因となる水の膜を除いていく。

 ブリヂストンがスタットドレスタイヤに採用する発泡ゴムは、その排水性に優れるもので、初めて採用されたMZシリーズ以降、北海道や北東北のユーザーに高い支持を得てきた。その発泡ゴムも、「REVO 1(レボワン)」で雪をかむレボ発泡ゴムへと進化、「REVO 2」では水路を5倍に増やし排水性能をアップしてきた。

 その発泡ゴムもREVO GZではレボ発泡ゴムGZへと進化。新素材「コンティニューミクロパウダー」を配合することで、より効果的に水膜を取り除くと言う。


ブリヂストンのスタッドレスタイヤは、発泡ゴムの進化とともに改良されてきた日本の代表的な降雪地域で高い装着率になっていると言うREVO GZの商品特徴。4つの進化がうたわれている

 REVO GZの開発コンセプトとして挙げられているのは、氷結路・積雪路での性能向上を最優先し、ドライ路面やウェット路面での性能向上。そのために採り入れられたのが、キーテクノロジーとなるレボ発泡ゴムGZのほか、トレッドの「非対称パターン・新3Dサイプ」、「Playz」や「RE-11」にも採り入れられていたサイドウォールの「非対称形状」、タイヤの接地形状を横方向は狭く、縦方向は長くした「スリム&ロングコンタクト」になる。

氷雪上の性能を向上しつつ、ドライやウェット路面での性能を改善した
雪道での走行パターンを解析し、加速時、コーナリング時、ブレーキング時にトレッドに加わる力を解析。タイヤのイン側にラグ溝を増やし、アウト側に大きめのブロックを配するなどの工夫がされている
REVO 2に比べコーナリング性能がアップしていると言うそれぞれの技術がカバーする路面のイメージ図REVO GZでは、サイドウォール形状を非対称に。イン側のほうがきついカーブを描いている。Playzなどブリヂストンの最新タイヤに採り入れられているテクノロジー
非対称形状となったことで、REVO 2と比べ各路面での直進安定性が向上した
REVO GZのトレッドパターン。非対称パターンを採用しているため、左がイン側で、右がアウト側になる。イン側よりアウト側に大きめのブロックを配することで、コーナリング性能を向上している一方こちらはREVO 2のトレッドパターン。左右にZ字状に走るマルチZパタンが特徴的だった。左右対称のトレッドパターンとなる

確実に体感できる性能向上
 では、実際にREVO GZの性能向上は誰もが体感できるものなのだろうか。ブリヂストンの北海道プルービンググラウンド内には、圧雪されたテストコースや直線路、氷結した直線路や旋回路などがあり、これらさまざまなシチュエーションでREVO GZとREVO 2を乗り比べた。

 圧雪したテストコースは、適度なアップダウンとさまざまな曲率のカーブが組み合わされたコースで、2種類のルートが設定されていた。試乗した車は、FFのフォルクスワーゲン「ゴルフ」、FRの日産自動車「スカイライン」、4WDの日産「セレナ」など。それぞれの車の特性もあるのだが、共通して感じたのはコーナリング時の安心感。通常の雪道では出すことのない速い速度(60~70km/h)でコーナーに進入しても、不安なく曲がっていくことができ、直線に入った段階でしっかりトラクションをかけて加速できる。とくに素晴らしかったのが4WDのセレナで、2WDの車と比べどのコーナーでも安定して走行をすることができ、アップダウンなどトラクションの抜けやすい個所でもしっかりとした接地感を感じることができた。

北海道プルービンググラウンド内の圧雪路テストコース。カラーコーンで区切り、2種類のコースを設定。アップダウンやさまざまな曲率のコーナーが設定されていた2WDのFFやFR、4WDなど各種の車で圧雪路テストコースを走行した
FFのゴルフ。FFは一般的に上りの雪道に弱いが、REVO GZであれば上り坂においてもぐんぐん加速していく。雪煙が上がっているが、これはREVO GZがしっかり雪をとらえているため
とくに好印象だったのが4WDのセレナ。ミニバンだがその走りは安定感のあるもので、アップダウンの連続するコーナーにおいても破綻することなく走ることができた北海道士別市のパウダースノーをしっかりとらえるREVO GZのサイプ。REVO 2が「マルチZパタン」というイン/アウト対称のトレッドパターンだったのに対し、タイヤの接地を解析した非対称のものになっている

 REVO GZとREVO 2の履き比べを行い、その違いを体感できたのは、氷結した氷上直線路と氷結旋回路だ。氷上直線路では、右側の前後輪にREVO 2を、左側の前後輪にREVO GZを履いたトヨタ自動車「マークX」(FR)で走行。加速時にはREVO GZを履いた左側だけやや押し出され(つまりやや車が右に進もうとする)、ブレーキング時にはREVO 2を履いた右側が押し出されてしまい車が斜め左を向いて止まる。これは、氷結路におけるREVO GZのグリップ力がREVO 2に比べ優れているために起きる現象で、REVO GZであればREVO 2よりも短い距離で制動できるということ。車の特性に起因するものでないことを示すため、REVO GZを右に、REVO 2を左に履いた状態でのテストも行ったが、先ほどとは逆の現象が発生した。

右側にREVO 2、左側にREVO GZを履いたマークXでの加速。氷結路のグリップに優れるREVO GZを履いた左側が押し出され、車体は右を向くこの写真はブレーキング時。グリップの劣るREVO 2を履いた右側が押し出されるような挙動を示した

 顕著だったのは氷上旋回路。トヨタ「オーリス」(FF)で、REVO GZとREVO 2を履き比べて周回したのだが、最初にREVO 2装着車で走行した際には氷上旋回路をきっちり旋回できず、外周部に設けられていた雪の壁にぶつかってしまった。これは、REVO 2の問題もあるのだろうが、主には自分の運転の問題で、進むことよりも曲がることや止まることが難しいことの証明でもある。スピードコントロールをきっちり行えばREVO 2でも旋回できるのだが、REVO GZでの旋回ははるかに容易だった。REVO 2では進むことはともかく、曲がることや止まることが難しいのに対し、REVO GZではすべてを楽に行える。氷上直線路もそうだが、氷結路面においてREVO GZの性能は圧倒的とも言えるものだった。

雪上ハンドリング路と氷上旋回路のコース図。左側の青い周回路が氷上周回路となるREVO 2による氷上周回路の走行。REVO 2では注意深く走行する必要があったREVO GZによる氷上周回路の走行。REVO GZでは安定して旋回走行をすることができた

 そのほか、圧雪路面の雪上ハンドリング路において、特殊なトレッドパターンを刻んだタイヤでのテストも行った。これは、REVO GZのレボ発泡ゴムGZはそのままに、ブロックのみを残しサイプをなくしたタイヤ、アウト側のみトレッドパターンをなくしたサイプのないタイヤ、イン側のみトレッドパターンをなくしたサイプのないタイヤ、すべてのトレッドパターンがないタイヤ、通常のREVO GZを履き比べるもので、タイヤの接地部による役割の違いを体感するというもの。

 当然通常のREVO GZが一番優れる結果となったのだが、アウト側のみパターンがないタイヤはコーナリングに劣り、イン側のみパターンがないタイヤはブレーキングに劣るものとなっていて、タイヤのアウト側とイン側での働きの違いを如実に感じることができた。また、サイプのないタイヤと、通常のREVO GZではすべての能力でREVO GZが上回り、サイプがコーナリングやブレーキにかかわる役目を総合的に担っていることを実感。意外だったのはすべてのパターンがないタイヤで、まったく進まないかと思っていたのだが、トラクションがきちんとかかり、そこそこコーナリングできてしまう。これは、レボ発泡ゴムGZの特性が優れているためで、低温でもグリップ力を発揮できているということだろう。

通常のREVO GZアウト側のみパターンをなくしたタイヤ。イン側のブロックのサイプもなくしてあるイン側のみパターンをなくしたタイヤ
サイプのないタイヤなにもパターンが刻まれていないタイヤ。このようなタイヤでも雪上を走れるというのは、レボ発泡ゴムGZのおかげだろう

 今回のテストコースでの試乗には、Car Watch編集部の小林と谷川が参加し、さまざまな条件での試走を行うことができた。総合的な印象をそれぞれ記しておく。

●Car Watch編集部:小林隆
 以前、BLIZZAK REVO 2を使った試乗記のときも書いたが、スタッドレスタイヤを使ったのはREVO 2が初めてで、その扱いやすさに感動したことを記憶している。このときテストした車両はセレナの4WD車で、その相性もよかったのか、雪道だというのにごくごく普通に運転ができた。

 それだけに、後継モデルのREVO GZも実に興味深かった。興味というよりも、むしろ「あれ以上に進化するものなの?」という疑問ですらある。そんなところに北海道プルービンググラウンドで試乗する機会を得た。REVO GZの概要や、テストコースについては上記で触れているので、ここでは実際に使ってみた素直な感想を述べたい。

 圧雪したテストコースを走行して感動したのは、FRのスカイラインでも普通に走れたことと、やはりセレナの4WD車が実に安定していたこと。REVO 2との比較ではなく、REVO GZの単独試乗だったが、雪のある公道では絶対に出すことのない速度で走っても、どちらの車も破綻しない。この安心感は素直に“すごい”の一言。さらにその速度域からブレーキをガツっと踏んでも、雪をしっかりつかむように止まる。雪が積もる一般道での速度域であれば、雪道だということを感じさせることなく、普通に止まってくれるだろう。

 個人的に一番興味深かったのは氷上テスト。左右の片側がREVO 2で、もう一方がREVO GZの組み合わせだったのだが、ハンドルをまっすぐにした状態なのに、加速時はREVO GZ側のほうが前に進んで車体が斜めになり、ブレーキング時はやはりREVO GZ側のほうが氷をより捉えるため、REVO 2側が前に出てしまい、結果車体が斜めになった。あれだけ高性能だと思ったREVO 2よりも明確に高い性能であることを示す、実に分かりやすいテストだった。この後行われた雪上ハンドリング路における、特殊なトレッドパターンを刻んだタイヤでのテストでも、レボ発泡ゴムGZの性能を十分に体感できたことは言うまでもない。

 結局、自分の抱いた疑問などはいとも簡単に覆された。“雪道初心者”の自分でも十分に体感できるほど、REVO GZは進化していると断言できる。

●Car Watch編集部:谷川潔
 スタッドレスタイヤは20年以上にわたってこれまでいろいろ使ってきた。その中で、昨年の記事で使用したブリヂストンのREVO 2は非常に印象のよいタイヤで、一般道、高速道路、雪道と安心して使えるタイヤであった。今回雪のテストコースで存分にREVO 2とREVO GZを比較することができたが、雪道においてREVO GZが確実な性能の差を築いていたのには驚かされた。

 とくに氷結路面においては、その差は圧巻で、加速時・ブレーキング時ともに明確な差を感じることができる。REVO 2が“くっ”とグリップするのに対し、REVO GZは“ぐっ”という感触でグリップ。ブレーキの際には、REVO GZはREVO 2よりラフなブレーキ操作でも許容してくれるといったしだいだ。コーナリングも氷上旋回路において、より小さいステアリングの切り角で周回することができ、アクセル、ブレーキ操作とも安心して行え、その心理的な安心感がより確実な運転につながった。

 REVO GZを履いての圧雪路(北海道の雪なのでさらさら)では、解説の部分で記したように、FR、FF、4WDの各駆動方式の車で走行。どの駆動方式においても、安定してコーナリングでき、狙ったとおりに止まることができた。とくに最近のスタッドレスは性能が改善され、スピードを乗せていくことが可能なだけに、ブレーキ力に優れるというのは、何よりも大切なポイントだろう。

 また、非対称形状を採用したことによるステアリングのふらつき抑制に関しては、圧雪路でのゆったり感のあるハンドリングにその片鱗を感じることができた。Playzもそうなのだが、非対称形状を採用したタイヤを装着した車に共通して言えるのは、ステアリング操作に神経を使うことなく、車が真っすぐ走ろうとしてくれることだ。それでいて、ステアリングを切った際の横方向の力の発生も確実で、スムーズなコーナリングを開始することができる。REVO GZの性能向上は、レボ発泡ゴムGZやブロックパターンの改善などグリップ力の強化によるところが大きいと思うが、タイヤの構造を新しくしたことも少なからず影響しているのだろう。

 

 雪上性能の大幅な向上に加え、雪のないドライ路面やウェット路面での走行性能を改善したと言うREVO GZ。本記事では雪道におけるREVO GZのパフォーマンスをリポートしたが、一般路や高速道路における性能向上などについては、機会を改めてお届けしたい。

(編集部:谷川 潔)
2009年 11月 20日